2026年私立大一般選抜について、難関校を中心に、人気度を示す「志願者動向」を分析する。あわせて、難易変動の指標となる「実質倍率」の変化も見ていく。受験生数の増加率を大きく上回り、志願者は10%増。一方、合格者は絞り込まれた。
《全体解説》
志願者10%増、共テ難化で併願増やす傾向
全地区で私立大人気が高まり、文理ともに増加
[26年私立大入試の結果概要]
2年連続で志願者大幅増か
『螢雪時代』では、学部学生の募集を行う全国の私立大学(584大学、通信制と専門職大学を除く)に対し、2026年(以下、26年。他年度も同様)の一般選抜の志願者数を調査した。4月中旬現在で集計した確定志願者数のデータは「220大学:約331万人」にのぼる。
この集計は2月に行われた各大学の独自入試(大学が独自の試験問題等で行う入試)と大学入学共通テスト(以下、共テ)利用方式を主な対象とし、2月下旬~3月の「後期募集(共テ利用を含む)」も集計に一部加えている。
その結果、私立大一般選抜の志願者数は、25年の同時期に比べ、10%増加したことがわかった。今後発表される大学の志願者数を加えても、最終的に私立大の一般選抜志願者数は9~10%の増加となる見込み(グラフ1)。2年連続の大幅増(25年は8%増:文部科学省の最終集計)となるのは必至だ。複数の入試日程・方式等を合計した「延べ志願者数」なので、学内併願などの重複を除いた実質的な志願者数は、見かけほど増えていない可能性もあるが、全体として積極的な志願状況だったと言える。
26年の4(6)年制大学の受験生数は、25年に比べ約2%増(旺文社推定)となる見込み。また、共テの志願者は前年並みにとどまったが、私立大一般選抜の志願者数は、それらをはるかに上回る増加率を示した。
また、入試方式別に見ると(グラフ2)、大学の独自入試は10%増、共テ利用方式は12%増、独自・共テ併用型(独自入試の指定科目と、共テの高得点または指定科目を合計して判定)は5%増となった。
[志願者増の3つのポイント]
共テ難化と併願割が影響か
このような結果となった理由としては、次の3つのポイントが挙げられる。
(1)共通テスト難化で併願が増加
25年まで3年連続でアップした共テの平均点が、26年にダウン(=難化)した影響は大きかった。従来からの強い現役志向がさらに強まり、国公立大志願者が併願を増やす動きがあった。また、地方国公立大の志願者は、共テの難化を受けて私立大に志望校を変更する傾向が顕著に見られ、独自入試の志願者増に結びついた模様だ。
一方、共テ利用方式も人気を集めた背景には、26年共テの難化予測があると見られる。新課程入試の翌年は難化するという過去の傾向から、26年も難化する予測があった。そのため強い現役志向から、国公立大志願者が合格確保のために、私立大の共テ利用方式を積極的に活用したと見られる。
(2)「年内入試」人気の影響
強い現役志向から、「早く、確実に」合格を確保するため、学校推薦型選抜(以下、推薦型)・総合型(以下、総合型)、いわゆる「年内入試」の志願者が大幅に増えたことが、一般選抜にも影響した。推薦型・総合型合計で志願者12%増(25年12月末現在:116大学集計)。25年に続いて首都圏で「学力試験型」(=学科試験中心、併願可の方式)の導入が相次ぎ、競争が激化した。他方、合格者は3%増と抑え気味で、入学手続率も良好だった模様。その結果、次の3つの現象が一般選抜の志願者数を押し上げたものと見られる。
1.推薦型・総合型の倍率(志願者÷合格者)が2.4倍→2.6倍にアップ(=難化)、不合格者が例年より多く発生し、再挑戦組として2月の一般選抜に流れ込んだ。
2.実戦練習を兼ね、「学力試験型」で合格を確保し、1ランク上の一般選抜合格を目指す、京阪神では一般的な併願パターンが首都圏でも増えた。
3.一方、年内の入学手続者が増えた中堅上位~中堅校は、定員超過を避けるべく、2月の一般選抜の合格者を絞り込む必要が生じた。その結果、さらなる不合格者が3月の一般選抜に流れ込んだ。
(3)経済的な負担軽減
志願者大幅増の要因として、複数の学部等や方式を学内併願する際に受験料を割り引く「併願割」や、一定の受験料で複数の学部等を併願できる「定額制」を導入する大学の増加も挙げられる。これらは「見かけの志願者増」に結びつくため、冷静に見る必要がある。
一方、国の「修学支援新制度」の拡充で、学費減免や給付型奨学金の対象が少しずつ広がり、従来の短大・専門学校の志願者層が四年制大学に目を向けるようになっている。
この他、英語外部検定利用の拡大傾向も、出願を促した要因の1つと見られる。
《地区・系統ごとに見ると?》
[地区別・系統別の動向]
全地区・全系統で志願者増
グラフ3で全国6地区ごとの志願動向を見ると、各地区でまんべんなく増加していることがわかる。
このうち中国・四国は、前年の反動もあると見られる。前年の難化傾向にもかかわらずチャレンジ志向が続き、国公立大の後期縮小もあって、首都圏や京阪神の難関~準難関校への併願が増加。さらに共テの難化を受け、大都市圏以外の受験生が各地区の国公立大から中堅上位~中堅私立大に志望校を変更したことが、各地区の増加率を押し上げた模様だ。
次に、グラフ4で学部系統別の志願状況を見てみよう。23年まで「文低理高」の傾向が続いていたが、24年以降は文系人気が復活。26年もその傾向は続き、法、経済・経営・商、文・教育・教養、国際・国際関係・外国語の大幅増など、文系が軒並み増加。就職事情の好転や受験料の併願割引拡大の影響などが要因と見られる。
一方、大幅増の農・水畜産・獣医をはじめとする理系も概ね増加傾向のため、全体的に高水準の「文理均衡」となった。その中で、医が微増にとどまったのが注目される。
[志願者数の多い大学]
日本大・近畿大が大幅増
ここから、各大学の志願状況を見ていこう。表1では、志願者数(大学合計:4月中旬現在)の多い順に、上位20大学を示した。志願者数の合計は、全体(220大学:約331万人)の約52%と半数以上を占める。
近畿大(11%増)は、昨年の2位から2年ぶりに志願者数トップに返り咲いた。看護学部の増設や、共テ利用で新たな方式を実施したことなどが要因と見られる。
【首都圏】表1以外の大学も含め、難関~準難関校では、学習院大(11%増)・国際基督教大(13%増)・上智大(10%増)・東京理科大(13%増)・立教大(12%増)が大幅増、青山学院大(7%増)・慶應義塾大(5%増)・法政大(6%増)も増加。東京理科大は創域情報学部の増設や、共テ利用A方式を4タイプに分割したことが人気材料になったと見られる。
一方、中央大(1%減)と早稲田大(2%減)は微減。明治大はほぼ前年並みだった。
また、いわゆる「日東駒専」は専修大(11%増)・日本大(21%増)が大幅増、東洋大(5%増)・駒澤大(9%増)も増加した。
【京阪神】いわゆる「関関同立」のうち、関西大(9%増)と同志社大(5%増)が増加、立命館大(2%増)と関西学院大(2%増)は微増にとどまった。
また、いわゆる「産近甲龍」では、京都産業大(29%増)・龍谷大(10%増)・近畿大(11%増)が大幅増。一方、甲南大(2%減)は微減となった。龍谷大は、国際以外の9学部の一般中期で高得点2科目方式(文系型、理系型)を新規実施したことなどが人気材料になったと見られる。
[志願者大幅増の要因]
経済的負担軽減で「バブル増」
表2では、志願者1,000人以上で、構成する全学部が志願者数を発表した大学について、増加率が高い順に上位20大学を示した(同指数が複数あるため掲載は21大学)。
前年の志願者減や倍率ダウンの反動に加えて、入試の変更や学部・学科増設などが複合的に作用した結果と言える。たとえば増加率トップの大阪学院大は、入試の新方式、受験料割引制度や英語外部検定利用の導入などが、志願者が約3.7倍に膨れ上がる要因になった。4位の摂南大も、入試の新方式や受験料割引制度、前年の志願者大幅減の反動など複数の要因で志願者が約2.3倍になった。
注目したいのが、前述の「併願割引制度」導入だ。表2では愛知大・京都先端科学大・大阪学院大・摂南大が該当し、桜美林大も25年に導入した受験料定額制が人気要因になっている。受験生の経済的負担軽減になるため、Web出願もあって出願へのハードルが下がり、爆発的な増加の要因となる。
また、成蹊大・神奈川大・関西外国語大・帝塚山大は、英語外部検定利用の導入・拡大も大幅増の要因となっている。
[各地区の志願状況]
中堅校も大幅増が相次ぐ
ここまで紹介した大学以外について、各地区の志願状況を見てみよう。
(1)首都圏
中堅上位校では、成蹊大(38%増)・成城大(35%増)の大幅増が注目される。準難関校に次ぐクラスの目標校として人気を集めた模様。獨協大(4%増)も増加したが、前年の反動か、武蔵大(18%減)が大幅減、國學院大(3%減)も減少した。
理系中心の大学では、芝浦工業大(38%増)・東京農業大(11%増)・工学院大(17%増)が大幅増。東京都市大(9%増)・東京電機大(4%増)も増加した。
中堅校では、亜細亜大(29%増)・国士舘大(21%増)・拓殖大(25%増)・東海大(23%増)・東京経済大(22%増)・神奈川大(44%増)が大幅増。大東文化大(4%増)・玉川大(8%増)・立正大(5%増)も増加した。受験料定額制や、「学力試験型」年内入試の不合格者の再チャレンジが志願者数を押し上げたと見られる。女子大では、大妻女子大(14%増)・実践女子大(24%増)・昭和女子大(55%増)・津田塾大(11%増)・東京家政大(92%増)・日本女子大(32%増)が大幅増。前年の志願者減の反動も影響したと見られる。一方、東京女子大(2%減)は微減だった。
(2)京阪神地区
女子大では、京都女子大(13%増)が大幅増、神戸女学院大(4%増)・武庫川女子大(9%増)も増加したが、同志社女子大(1%増)は微増にとどまった。
中堅校では、京都橘大(34%増)・追手門学院大(35%増)・大阪工業大(14%増)・関西外国語大(55%増)・桃山学院大(43%増)・大和大(22%増)が大幅増、神戸学院大(9%増)も増加した。一方、大阪産業大(21%減)は大幅減、佛教大(4%減)・大阪経済大(1%減)も減少した。
(3)その他の地区
国公立大との併願が多い各地域の主要大学のうち、北海学園大(28%増)・愛知大(41%増)・中京大(19%増)・名城大(26%増)・岡山理科大(11%増)・広島修道大(16%増)・九州産業大(21%増)が大幅増。南山大(4%増)も増加し、東海地区の地元志向が強く表れた。福岡大(8%増)も増加したが、東北学院大(1%増)・西南学院大(1%増)は微増にとどまった。一方、熊本学園大(12%減)は大幅減となった。
《合格状況はどうなったか?》
[倍率の考え方]
「実質倍率」に注目しよう
次に、私立大一般選抜の合格状況を見よう。倍率の変化は、「難化・易化」を測る物差しとなる重要データだが、一般的に使われる「倍率」には、次の2通りあることに注意したい。
*志願倍率=志願者数÷募集人員=見かけの倍率
*実質倍率=受験者数÷合格者数=実際の倍率
私立大では合格者の入学手続率を考え、独自入試で募集人員の5~10倍、共テ利用方式では10~15倍の合格者を出すのが普通だ。
グラフ5で関西学院大‐工の例を見てみよう。一般入試(全学部日程)の志願倍率は19.5倍だが、合格者(補欠合格を含む)を募集人員の5.7倍出しているので、実質倍率は3.3倍となる。また、共テ利用入試(1月出願)の志願倍率は71.2倍もの超高倍率だが、合格者を募集人員の29.1倍も出しているので、実質倍率は2.4倍に収まった。これなら、「とても手が出ない」という倍率ではないだろう。
見かけの倍率に惑わされず、実際の倍率を志望校選びのデータとして活用しよう。
[一般選抜の受験・合格状況]
受験者13%増、合格者3%減
『螢雪時代』が私立大一般選抜(主に2月入試)の受験・合格状況についても調査したところ、138大学の集計(4月中旬現在)では、受験者数(未公表の場合は志願者で代替)の13%増に対し、合格者は3%減のため(グラフ6)、実質倍率(以下、倍率)は25年3.0倍→26年3.5倍にアップした。
入試方式別では、共テ利用方式(併用方式を含む)の「受験者13%増、合格者1%減」に対し、独自入試が「受験者12%増、合格者5%減」となり、後者で合格者の減少がより顕著だった。また、地区別の集計では首都圏(3.5倍→3.9倍)、京阪神(3.1倍→3.6倍)、その他の地区(2.6倍→3.2倍)といずれもアップした。
こうした倍率アップと合格者減については、合格者を絞り込んだ大学の存在が挙げられる。前述のように、推薦型・総合型が志願者12%増、合格者も3%増加(116大学集計)。その上、入学手続率も良好だった模様。定員の大幅な超過を避けるため、一般選抜の2月入試、特に独自入試では合格者を絞らざるを得なかったと見られる。さらに、一般選抜も入学手続率が良好のため、追加合格も減少した模様だ。
以下、主な大学で目立って倍率アップしたケースを紹介する(*は「志願者÷合格者」、その他は実質倍率。主に2月入試の集計)。
亜細亜大2.3倍→2.9倍、国士舘大3.1倍→4.6倍、上智大4.2倍→4.7倍、東京経済大2.9倍→3.8倍、東京電機大5.5倍→6.7倍、東京農業大3.7倍→4.2倍、日本女子大2.9倍→3.3倍、中京大2.9倍→4.5倍*、名城大2.9倍→3.3倍、京都産業大2.9倍→4.1倍、京都女子大1.5倍→2.2倍、京都橘大4.0倍→4.5倍、佛教大3.4倍→3.8倍、龍谷大3.3倍→3.8倍、追手門学院大3.5倍→5.0倍、関西大4.1倍→4.5倍、近畿大4.0倍→4.5倍、摂南大2.3倍→3.7倍、桃山学院大2.4倍→4.7倍、関西学院大3.1倍→3.5倍、神戸学院大2.6倍→3.3倍、広島修道大1.6倍→2.2倍、福岡大2.9倍→3.6倍
倍率ダウンの大学は、武蔵大(5.0倍→3.9倍)、大阪経済大(5.1倍→4.7倍)など少数にとどまっている。
このうち、上智大は受験者9%増に対し、合格者は2%減。また、関西学院大は受験者1%増に対し、合格者8%減。さらに、福岡大は受験者7%増に対し合格者14%減と絞り込み、倍率アップで難化したと見られる。
一方、武蔵大は受験者17%減に対し、合格者5%増で倍率ダウン、易化した模様だ。
[ボーダーライン付近の激戦]
1点の重みが明暗を分ける
受験生の中には、普段「1点の差」を気にも留めない人がいるだろう。しかし、入試本番では、その「1点」が大切なのだ。
グラフ7に、関西大‐商の2月一般入試(全学日程1・2の合計)の26年入試結果から、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。受験者は5,965人、合格者1,064人で倍率は5.6倍。合格最低点は450点満点で295点(得点率65.6%)だった。なお、26年から全学日程2で、従来の傾斜配点に加え、均等配点(満点は同じ)の方式も導入。この集計に含まれている。
注目すべきは、最低点を含めた「上10点幅」の部分で、ここに合格者全体の約25%が集中する。最低点ぴったりのボーダーライン上にいるのは31人。高校のほぼ1クラス分の人数だ。わずか1点差での不合格者も25人。10点差以内の不合格者は322人もいる。合格ライン付近は、同じ得点帯の中に、多くの受験生がひしめきあっているのだ。
たった1つのケアレスミスが命取りになり、合否が入れ替わるのが入試本番。普段の勉強から解答の見直しを習慣づけよう。









