入試動向分析

2024年 私立大一般選抜志願者動向分析【2024年5月】

2024(令和6)年度

2024年私立大一般選抜について、難関校を中心に、人気度を示す「志願者動向」を分析する。あわせて、難易変動の指標となる「実質倍率」の変化も見ていく。受験生数の減少にかかわらず志願者は前年並み。合格者はやや増加した。


【全体解説】

志願者は前年並み、チャレンジ志向で前年の反動も顕著
大都市圏志向が強まり、弱めの「文高理低」に


独自入試は志願者1%減
共テ利用方式は3%増

 『螢雪時代』編集部では、学部学生の募集を行う全国の私立大学(586大学。通信制と専門職大学を除く)に対し、2024 年(以下、24 年。他年度も同様)の一般選抜の志願者数を調査した。4月中旬現在で集計した確定志願者数のデータは「231大学:約280 万2千人」にのぼる。

 この集計は2月に行われた各大学の独自入試(大学が独自の試験問題等で行う入試)と大学入学共通テスト(以下、共テ)利用方式を主な対象とし、2月下旬~3月の「後期募集(共テ利用を含む)」も集計に一部加えている。

 その結果、私立大一般選抜の志願者数は、23年の同時期に比べ、ほぼ同数であることがわかった。今後発表される大学の志願者数を加えても、最終的に私立大の一般選抜志願者数は前年並みに落ち着きそうだ(グラフ1)。複数の入試日程・方式等を合計した「延べ志願者数」なので、学内併願などの重複を除いた実質的な志願者数は、見かけより減っている可能性もあるが、全体に「波静かな」志願状況だったと言える。

 私立大一般選抜の志願状況を方式別に見ると(グラフ2)、共テ利用方式の3%増に対し、大学の独自入試と独自・共テ併用方式(独自入試の指定科目と、共テの高得点または指定科目を合計して判定)がいずれも1%減と、共テのみで判定する方式の増加が目立つ。



チャレンジ志向と併願増
共通テストの易化も影響

 24年の4(6)年制大学の受験生数は、『螢雪時代』編集部の推定では23年に比べ約3%減となる見込み。また、共テの志願者も4.0%減と、基礎となる数値が縮小したことを考慮すると、私立大の志願状況は実質的な増加ともいえる。

 こうした結果となった理由も含め、24年私立大一般選抜の志願動向の特徴とその要因として、次の4つのポイントが挙げられる。


(1)「後がない」意識は意外に弱め

 24年入試は、25年新課程入試を直後に控え、当初は浪人できない「後がない」意識から、安全志向が過度に強まり、「早く、確実に」合格を確保するため、学校推薦型選抜(以下、推薦型)・総合型選抜(以下、総合型)の志願者が大幅に増えると見込まれた。しかし、実際はそこまで「後がない」意識は強くなく、推薦型・総合型合計で前年比2%増(23年12月末現在:126大学集計)と予想外の小幅に留まった。

 その背景には、一般選抜の易化と、25年新課程入試になっても私立大にはさほど変化がないと認識されたことが挙げられる。

【一般選抜の易化傾向】文部科学省の最終集計では、私立大一般選抜全体の実質倍率(受験者数÷合格者数)は「21年2.8倍→22年2.7倍→ 23 年2.6 倍」と低下し続け、「私立大は易化した」との意識が浸透した。しかも、難関~準難関校も合格者増で倍率低下傾向だったことが、チャレンジ志向に結びついたものと見られる。

【新課程科目への対応】また、私立大の25年入試科目がある程度発表された結果、情報Ⅰや歴史総合(近現代の日本史と世界史の融合科目)など、新課程科目による変更が最小限に留まるとわかったことも一因だ。

 例えば、共テの情報Ⅰは国立大でほぼ必須だが、私立大の共テ利用では「選択、または課さない」。独自入試でも、情報を課す入試方式はごく少数で、世界史・日本史の出題範囲に歴史総合を含まない大学もある。そもそも、25年は既卒者(浪人)に対する経過措置が取られ、共テは旧課程科目が用意され、独自入試も新旧課程の共通範囲からの出題や選択問題が用意される。このため、浪人回避の安全志向が強まらなかったものと見られる。


(2)併願パターンは「凸字→十字」に

 新型コロナウイルス感染症の扱いが通常の感染症と同様の「5類」に移行し、社会全体が「コロナ慣れ」したことが、大都市圏進学の心理的なハードルを押し下げた。その結果、大都市圏の“ブランド校”への志向が強まった模様だ。

 一方、「後がない」意識が全くなかったわけではなく、家計不安から「節約志向」は続いているものの、合格確保校の併願を若干増やす傾向が見られた。そのため、併願パターン(下図を参照)は23年の凸字型(合格確保校の併願を絞る、または受けない)から、オーソドックスな十字型に変化したものと見られる。

 ただし、中堅校では23年と同じく志願者減が顕著。私立専願型の成績中~下位層にとって入試本番は推薦型・総合型にシフトしており、一般選抜まで志願者が残っていない中堅校も目立つ。難関~中堅上位校と中堅校の間で、ますます「二極化」が進行している。


(3)共通テストの2年連続の易化

 共テは国語をはじめ、23年に比べ平均点がアップ(=易化)した。2年連続の共テの易化の影響は私立大の共テ利用方式にも及び、共テ本試験日の前に締め切る「事前出願」の日程・方式では23年の易化が、後に締め切る「事後出願」の日程・方式では24年の易化が、それぞれ追い風になった模様で、いずれも志願者増が目立った。特に国公立大志望者が、共テ利用方式によって大都市圏の私立大への併願を増やしたものと見られ、共テ利用方式だけ志願者が増えた要因となった模様だ。


(4)「女子大離れ」が進む

 「女子大離れ」が顕著だ。女子大だけの集計では前年比9%減。前年同時期の「22年7%減→23年13%減」に続く大幅減となった。「共学志向」の強まりに加え、小規模校が多く、学部系統の選択肢が限られることも、人気低下の要因と見られる。そのため、近年は多様な学部展開を図っているが、それでも日本女子大・京都女子大・同志社女子大・武庫川女子大など、規模の大きなブランド校でさえ大幅減となり、「女子大離れ」の根強さが見て取れる。

【共学化予定】なお、25年から清泉女学院大(清泉大に改称予定)、名古屋女子大(名古屋葵大に改称予定)、神戸松蔭女子学院大(神戸松蔭大に改称予定)が全学部で共学に移行し、東京家政学院大・園田学園女子大(園田学園大に改称予定)も一部の学部を共学化する予定だ。


地区・系統ごとに見ると?


大都市圏志向が強まる
弱めの「文高理低」に

 全国6地区ごとの志願動向を見ると(グラフ3)、大都市圏を擁する関東・甲信越、北陸・東海が微増、関西は微減と、ほぼ前年並みだったのに対し、北海道・東北、九州は減少。社会の「コロナ慣れ」やワクチン接種など対策が浸透したことから、大都市圏志向の強さは「コロナ以前」に戻りつつあり、首都圏や京阪神の難関~中堅上位校へ、主に国公立大志望者の共テ利用による併願が増えた模様だ。なお、中国・四国の大幅増は、広島修道大(表2を参照)の受験料併願割引を伴う入試改革の影響が大きい。

 次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。近年は「文低理高」傾向が続いていたが、24年は一転。文・教育・教養、国際・国際関係・外国語の人気復活をはじめ、文系の増加が目立つ。就職事情の好転に加え、特に国際・国際関係・外国語の場合は海外留学の可能性が開けたことや、ここ数年の減少傾向の反動などが要因と見られる。

 一方、社会の「コロナ慣れ」などから「理系の資格志向」が弱まり、歯、薬、医療・看護といった医療系が減少。その他の理系でも、情報科学系の学部増設が相次いだにもかかわらず、理・工はほぼ前年並みに留まるなど、弱めの「文高理低」状態となった。その中で、医学部人気の突出ぶりが目立つ。なお、家政・生活科学の大幅減は「女子大離れ」の影響が大きい。



東洋大・関西学院大が大幅増
日本大・京都産業大が大幅減

 ここから、各大学の志願状況を見ていこう。
下の表1では、志願者数(大学合計:4月中旬現在)の多い順に、上位20大学を示した。志願者数の合計は、全体(231大学:約280万2千人)の約53 %と半数以上を占める。

 志願者数トップは近畿大だが、2年連続で減少(3%減→4%減)。推薦型の易化(志願者2%増に対し、合格者17 %増)が要因と見られる。

 首都圏の難関~準難関校では、学習院大(12%増)・上智大(11%増)が大幅増、青山学院大(7%増)・東京理科大(3%増)・法政大(3%増)も増加。慶應義塾大(1%増)・明治大(1%増)も微増となった。一方、中央大(3%減)・立教大(3%減)・早稲田大(2%減)はやや減少。全体的にはチャレンジ志向で、共テ利用方式の増加が目立ったが、前年の反動も顕著に見られた。

 上智大はTEAP利用方式、学部学科試験・共テ併用方式で、出願締切日を「1/18→1/22」、試験日程を「2/3~7→2/6~11」に繰り下げたことが、大幅増の一因となった模様だ。

 いわゆる「日東駒専」は、日本大(23%減)が大幅減の一方で、専修大(14%増)・東洋大(18%増)が大幅増、駒澤大(1%増)も微増となった。日本大は不祥事による混乱が影響した模様で、専修大・東洋大に志望者層が流出したものと見られる。また、東洋大は隔年現象(1年おきに増減を繰り返す)と生物科学系2学部のキャンパス移転、専修大は全学部入試・奨学生入試の募集回数増も要因となった。

 京阪神では、いわゆる「関関同立」のうち、関西学院大(20%増)が3年連続で大幅増、同志社大(2%増)・立命館大(5%増)も増加したが、関西大(6%減)は減少した。関西学院大は学部個別日程の配点による複線化と受験料併願割引制度の拡充、立命館大は情報理工・映像の2学部を交通至便な大阪府のキャンパスに移転したことが人気の要因と見られる。一方で、関西大は両大学に挟撃される形となった。

 また、いわゆる「産近甲龍」では、甲南大(11 %増)の大幅増に対し、龍谷大(2%減)・近畿大(4%減)はやや減少、交通アクセスがやや不利な京都産業大(20 %減)が大幅減となった。


受験生の経済面の負担軽減が志願動向に影響

 下の表2では、志願者1,000人以上で、構成する全学部が発表した大学について、増加率が高い順に上位20 大学を示した。

 このうち7大学で前年の志願者減や倍率ダウンの反動がベースにあり、さらに入試の変更や学部・学科増設などが複合的に作用した結果といえる。例えば、増加率トップとなった神戸女学院大は、2学部の増設と前年の大幅減の反動が、志願者3倍増の主要因となった。

 注目したいのが、受験料併願割引や定額制、特待生制度の導入など、家計不安に苦しむ受験生の経済的負担の軽減策だ。表2では、関西学院大をはじめ、大東文化大・拓殖大・長浜バイオ大・広島修道大が該当する。特に、広島修道大は同時併願の範囲の拡大と、受験料のセット割引の導入が志願者55%増の要因となった。

 また、大東文化大(30%増)の英語外部検定利用の導入も要注目だ。受験機会が複数あり、取得した級・スコアが複数大学で使用できる。しかも、一般選抜で英語外部検定を利用する私立大は、24年は258大学と前年に比べ30大学も増加し、全私立大の44%を占める。高校生の英語検定・資格試験の受験が一般化し、有資格率も上がっている現状では、私立専願型の受験生にとって使い勝手の良い方式といえる。

 なお、学習院女子大(74%増)は最短で26年に学習院大と統合予定のため、「先物買い」として人気を集めた模様だ。


成蹊大・成城大・武蔵大など
準難関に次ぐクラスが大幅増

 ここまで紹介した大学以外について、各地区の志願状況(主に2月入試)を見てみよう。


①首都圏

 準難関~中堅上位校では、獨協大(14 %増)・成蹊大(17%増)・成城大(15%増)・武蔵大(16%増)の大幅増が注目される。前年の反動もあるが、準難関校に次ぐクラスの目標校として人気を集めた模様。

 また、女子大上位校では津田塾大の5%増に対し、東京女子大は3%減、日本女子大(15%減)は大幅減となった。

 理工系中心の大学では、東京電機大(7%増)・東京都市大(7%増)の増加に対し、芝浦工業大(4%減)がやや減少、工学院大(11%減)が大幅に減少した。東京電機大・東京都市大は、日本大の理工系学部からの流入もあった模様。

 中堅校では、武蔵野大(11%増)が大幅増、国士舘大(8%増)・東京経済大(6%増)も増加。一方、亜細亜大(23%減)・桜美林大(17%減)は大幅減、玉川大(9%減)・東海大(8%減)も減少した。また、女子大では大妻女子大(5%増)・東京家政大(24 %増)の増加に対し、共立女子大(9%減)・昭和女子大(17%減)は減少と、前年の反動もあって明暗が分かれた。


②京阪神地区

 神戸女学院大以外の主な女子大は、京都女子大(25%減)・同志社女子大(19%減)・武庫川女子大(19%減)とそろって大幅減となった。

 また中堅校では、佛教大(10%増)・大阪産業大(46%増)・桃山学院大(13%増)が大幅増、大阪経済大(7%増)・関西外国語大(7%増)も増加した。一方で、京都橘大(16%減)・大阪電気通信大(18%減)・神戸学院大(16%減)は大幅減、追手門学院大(4%減)・大阪工業大(9%減)・摂南大(7%減)も減少した。


③その他の地区

 各地域の主要大学のうち、志願者が増えたのは広島修道大と中部大(75%増)・名城大(10%増)が目立つ程度。

 一方、北海学園大(1%増)は微増、愛知大・西南学院大・福岡大は前年並みを保ったが、東北学院大(4%減)・中京大(6%減)・南山大(2%減)が減少、岡山理科大(11%減)・九州産業大(18%減)は大幅減。大都市圏志向の影響が見られた。


【ここがポイント】

「後がない」意識は意外に弱め、チャレンジ志向だが合格確保校も併願
大都市圏志向が加速、文・国際系が人気復活、「理系の資格志向」は弱まる


合格状況はどうなったか?


「志願倍率」に惑わされず
「実質倍率」に注目しよう

 次に、私立大一般選抜の合格状況を見よう。中でも倍率の変化は、「難化・易化」を測る物差しとなる重要データだが、一般的に使われる「倍率」には次の2通りあることに注意したい。
*志願倍率=志願者数÷募集人員=見かけの倍率
*実質倍率=受験者数÷合格者数=実際の倍率

 私立大では合格者の入学手続率を考え、独自入試で募集人員の5〜10倍、共テ利用方式では10〜15倍の合格者を出すのが普通だ。

グラフ5で関西学院大- 工の例を見てみよう。一般入試(全学部日程)の志願倍率は18.8倍だが、合格者(補欠合格を含む)を募集人員の8.3倍出しているので、実質倍率は2.2倍となる。また、共テ利用入試(1月出願)の志願倍率は52.9倍もの超高倍率だが、合格者を募集人員の24.0倍も出しているので、実質倍率はやはり2.2倍に収まった。これなら「とても手が出ない」という倍率ではないだろう。

 見かけの倍率に惑わされることなく、実際の倍率を志望校選びのデータとして活用しよう。


受験者前年並み、合格者2%増
倍率は2.9倍→2.8倍と低下

 『螢雪時代』編集部が私立大一般選抜(主に2月入試)の受験・合格状況について調査したところ、正規合格者まで発表した139大学の集計(4月中旬現在)では、受験者数(未公表の場合は志願者で代替)は前年並みに対し、合格者数は2%増のため(グラフ6)、実質倍率(以下、倍率)は23年2.9倍→24年2.8倍とややダウンした。

 地区別の集計では、首都圏(3.1倍→3.2倍)、京阪神(3.1倍→2.9倍)、その他の地区(2.3倍→2.1倍)となり、首都圏が合格者減で倍率アップに対し、京阪神は合格者増で倍率ダウンと、対照的かつ前年と逆の結果になった。

 特に、京阪神は23年の「合格者絞り込み」から一転、21・22年と同じ傾向に戻った。その要因としては、①当初は「後がない」意識から大幅増が予想された推薦型・総合型の志願者が意外に伸びず(2%増:40大学集計)、一般選抜で入学者確保に努めることになった、②定員管理の方式が23年から「入学定員の単年度管理」から「収容定員の複数年度管理」に変わり、柔軟な運用が可能になったため、24年は再び増加の方向に調整した、等が挙げられる。

 以下、主な大学で倍率が目立って変動したケースを紹介する(*は「志願者÷合格者」、その他は実質倍率。主に2月入試の集計)。

①倍率アップ 上智大3.8倍→4.5倍、東京経済大2.7倍→3.2倍、東洋大2.9倍→3.2倍*、愛知工業大2.0倍→2.3倍、摂南大2.3倍→2.7倍、桃山学院大1.4倍→2.3倍、甲南大3.1倍→3.5倍、岡山理科大1.7倍→2.1倍

②倍率ダウン 東北学院大2.2倍→1.9倍、明治学院大2.9倍→2.6倍、中京大3.0倍→2.4倍*、京都産業大3.2倍→2.7倍、追手門学院大4.2倍→3.8倍、大阪工業大3.1倍→2.7倍、近畿大4.1倍→3.6倍、西南学院大3.3倍→3.0倍

 このうち、近畿大は受験者4%減に対し合格者11%増。京都産業大は受験者20%減、合格者6%減とやや絞ったが、いずれも倍率ダウン。上記以外では、龍谷大も受験者1%減に対し合格者5%増で3.0倍→2.8倍にダウン。いわゆる「産近甲龍」のうち3大学がやや易化した模様だ。思い切って挑戦した結果、意外な合格を手にした受験者もいたのではないだろうか。

 一方、上智大は受験者11%増に対し、合格者を6%減と絞り込み、倍率大幅アップ。また、甲南大は受験者11%増に対し、合格者は1%増に留まり、2年連続で倍率アップ。摂南大は受験者4%減だが、さらに合格者を20%も減らしたため、かえって倍率アップ。上記以外では、受験者21%増の関西学院大も、合格者大幅増(10%増)にかかわらず、2.5倍→2.7倍に倍率アップした。いずれも、やや難化したものと見られる。


ボーダーライン付近は激戦
明暗を分ける1点の重み

 受験生の中には、ふだん「1点の差」を気にも留めない人がいるだろう。しかし、全体的に易化傾向にあるとはいえ、入試本番ではその「1 点」が大切なのだ。

グラフ7に、関西大- 商の2月一般入試(全学日程1・2の合計)の24年入試結果から、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。受験者5,203人、合格者1,295人で倍率は4.0倍。合格最低点は450点満点で270点(得点率60.0%)だった。

 注目すべきは、最低点を含めた「上10点幅」の部分で、ここに合格者全体の約24%が集中する。最低点ぴったりのボーダーライン上にいるのは35人。高校のほぼ1クラス分の人数だ。わずか1点差での不合格者も42人(やはり約1クラス分)、10点差以内の不合格者は354人もいる。合格ライン付近は、同じ得点帯の中に、多くの受験生がひしめき合っているのだ。

 たった1つのケアレスミスが命取りになり、合否が入れ替わるのが「入試本番」。ふだんの勉強から解答の見直しを習慣づけよう。


【ここがポイント】

京阪神で合格者増、京都産業大・龍谷大・近畿大が倍率ダウン
実質倍率で実態を把握、「1点の重み」の大切さを認識しよう


25年変更点は何か?


早稲田大の2学部が共テ併用化
立命館大で共テ情報必須の新方式

 ここからは私立大の25年入試について、新課程移行に伴う変更を除き、4月中旬までに判明した主な変更点の一部を紹介する(以下、新増設大学・学部等は予定で、名称は仮称)。詳しくは各大学の入試ガイド等を確認してほしい。


●新設予定大学等

 博多大と、通信制の東京経営大・ZEN大が新設予定。また、事業創造大学院大学(修士課程のみ)が通信制の四年制学部を増設し「開志創造大」に名称変更する予定。一方、ルーテル学院大・高岡法科大・桃山学院教育大(桃山学院大と統合)が募集停止する予定だ。


●学部等の増設・改組

 国の理系拡大の方針に伴い、北海道科学大-情報科学、大妻女子大- データサイエンス、金沢工業大- メディア情報・情報デザイン・情報理工、日本福祉大- 工、追手門学院大- 理工、関西大- ビジネスデータサイエンス、安田女子大- 理工、松山大- 情報など、理工系や情報科学系の学部等の増設・改組が相次ぐ。


●キャンパス移転

 東京理科大- 薬が「千葉県野田市→東京都葛飾区」に移転。また、龍谷大- 社会も「滋賀県大津市→京都市伏見区」に移転する予定だ。


●学校推薦型・総合型の変更

 慶應義塾大- 経済で推薦型(指定校制)を新規実施/東京経済大- 経済・経営で総合型の探究活動評価型選抜を新規実施/東洋大で学校推薦入試(基礎学力テスト型)を新規実施/早稲田大では、教育で共テ課す総合型の地域探究・貢献入試を、スポーツ科学で共テ課す総合型のスポーツサポート歴入試を新規実施。商で地域探究・貢献入試を廃止/立命館大- 政策科学・総合心理・情報理工・生命科学で、AI学習プログラム活用のAO(総合型)を新規実施/甲南大の推薦型(教科科目型)で面接方式を廃止。


●一般選抜の変更

【共テ利用】専修大- ネットワーク情報の共テ併用AS方式で、共テの情報Ⅰを必須に/日本女子大は共テ利用前期に5科目型を追加/聖マリアンナ医科大で共テ利用選抜を新規実施/愛知医科大は医で共テ利用後期を廃止、看護で共テ併用型を新規実施/立命館大は産業社会・理工など7学部の共テ併用方式で情報活用型(共テの情報Ⅰが必須)を新規実施。

【独自入試】青山学院大- 国際政治経済の個別学部日程で、国際政治・国際コミュニケーションの2学科はB方式(共テ併用)からの変更、国際経済学科は新規で、B方式(英語外部検定利用)を実施/慶應義塾大- 文の外国語で英語外部検定が利用可に(得点換算)/芝浦工業大の一般前期・全学統一日程を、A(3教科)・B(2教科)方式に分割し、英語の独自試験を廃止。A方式は共テ英語または英検を利用(得点換算)、B方式は英語外部検定を出願資格に利用/玉川大の全学統一入試前・後期で英語の個別試験を廃止し、共テの英語または英語外部検定を新規利用/東邦大は全5学部の「統一入試」を新規実施/早稲田大では、商の一般選抜で英語4技能テスト利用型を廃止。社会科学の一般選抜を、独自試験(3教科)から共テ併用(共テ3科目、個別2科目)に変更、総合問題型・数学型の2方式に分け、450人→370人に募集人員減。文・文化構想では、一般選抜・英語4技能テスト利用方式の募集人員の比率を「文=340人:50人→260人:85人/文化構想=370人:70人→330人:110人」に変更。人間科学の一般選抜を独自試験から共テ併用(国英型・数英型)に変更/京都産業大- 理・情報理工の一般前期で情報必須の「情報プラス型」を追加/京都薬科大で一般後期を新規実施。


【ここがポイント】

25年も理工系・情報科学系の新増設が相次ぐ
一般選抜では独自・共テ併用型の導入や英語外部検定利用の拡大に注目!


この記事は「螢雪時代(2024年6月号)」より転載いたしました。

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