入試動向分析

2023年度 学校推薦型・総合型選抜結果レポート【2023年5月】

2023(令和5)年度

2023年度の学校推薦型選抜と総合型選抜の実施結果を調査・集計した。
「withコロナ」も定着し、両選抜を合わせた「年内入試」は人気アップ。
2023年入試の前半戦として注目された両選抜の実施結果をレポートする。


全体解説:
国公立大、私立大ともに学校推薦型・総合型合計の志願者は増加。
コロナ禍も3年目で出願条件が整う!?


国公立大:共通テスト免除
共テ警戒と募集枠拡大が影響か

 『螢雪時代』編集部では、国公立大の共通テストを課さない(以下、共テ免除)学校推薦型選抜と総合型選抜(以下、「選抜」を略)について、2023 年度(以下、23年度。他年度も同じ)入試結果の調査を行った。

 22年12月23日現在(調査締切日)の、共テ免除の両選抜合計の集計データ(87 校:志願者数=約2万3千人)では、前年比で「志願者2%増、合格者2%増」とやや増加し、倍率(志願者数÷合格者数。以下同じ)は2.3倍でほぼ変動がなかった(グラフ①)。

 要因として、23年度はコロナ禍も3年目を迎え、昨年よりさらに通常に近い形で授業が進み、進路指導も行われたことや、例年に近い形で部活動や課外活動、資格・検定取得など、アピールポイントを獲得する機会があったことから、学校推薦型や総合型に出願する条件が整ったことも背景にあると見られる。一方、コロナ禍や国際情勢に伴う経済状況の悪化も、早期に結果が出て受験費用を抑えられる学校推薦型・総合型人気を後押しした可能性がある。

 加えて国公立大は、ここ数年で一般選抜、特に後期日程から学校推薦型・総合型選抜へ募集人員を移す傾向が強まっていることが挙げられる(23 年度の募集人員は、後期が2%減、学校推薦型・総合型が3%増)。さらに、22年共テの大幅な難化を受けて、共テを免除する受験方式が狙われた事情もあるだろう。

 共テ免除の学校推薦型・総合型合計では、志願者数は「国立大5%増、公立大1%減」で、合格者数は「国立大4%増、公立大1%増」という結果になった。学科重視の総合型が人気の東北大(16%増)、一般後期を募集停止した岡山大(17%増)の志願者大幅増が目立つ。そして倍率は、国立大2.5倍→2.5倍、公立大2.2倍→2.1倍と、ほぼ前年並みに落ち着いた。

 学部系統別では、経済系の人気が復活。医療・看護系の人気も根強い。一方、教員養成系では志願者減の傾向が継続して見られた。


私立大:学校推薦型・総合型
前年の合格者増が人気材料に

 『螢雪時代』編集部では、私立大の学校推薦型(指定校制を含む)と総合型についても調査した。22年12月23日現在(調査締切日)の集計データ(127校:志願者数=約29万人)では、前年比で「志願者4%増、合格者6%増」、倍率は2.3倍とほぼ前年並みだった(グラフ②)。

 私立大では、22年度が合格者大幅増で入りやすかったことが志願者増につながった。また、22年度までと異なり、指定校制に流れず公募制や総合型を選ぶ傾向も見られた。さらに、もともと学校推薦型・総合型選抜の志願者は「確実な合格」を目指していることもあり、一般選抜よりも強い「安全志向」が見られた。

 私立大はここ数年、難関校の一般選抜で追加合格・補欠合格が相次ぎ、それが玉突き状に中堅校に波及し、各大学は歩留まりが読めず苦しんでいる。ただし、定員管理の方式が「入学定員の単年度管理」から「収容定員の複数年度管理」に変わり、柔軟な運用が可能になったためか、合格者は前年ほど増えなかった。

 地区別に見ると、学科試験中心、併願可能な大学が多い京阪神地区で合格者増が顕著となっている。注目すべきは、京都産業大の倍率アップ(3.0倍→3.6倍)。志願者6%増に対し合格者は11%減で、合格者を絞り込んだ数少ないケースだ。前年の合格者大幅増(32%増)の反動で、定員管理の観点から調整したものと見られる。この他、京都女子大が前年の合格者24%増の反動で14%減となり倍率アップ(2.2倍→2.4倍)、志願者大幅増(85%増)の甲南大(3.0倍→ 4.1 倍)もアップした。

 一方で、同志社女子大(3.3倍→2.3倍)、佛教大(3.3倍→2.4倍)、追手門学院大(3.7倍→ 2.8 倍)、大阪経済大(4.4倍→ 3.7 倍)などが倍率ダウンとなり、易化したと見られる。

 主な学部系統ごとに見ると(グラフ③)、文理ともに志願者増の系統が多い中で、医療系・教員養成系の人気ダウンと易化が目立つ。


【ここポイント!】

国立大が志願者・合格者ともに増加
私立大は志願者増を上回る合格者増、
特に京阪神地区は合格者増が顕著


この記事は「螢雪時代(2023年5月号)」より転載いたしました。

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