入試動向分析

2023年 一般選抜 合格ライン突破プラン【2022年12月】

2022(令和4)年度

得意科目を生かす戦略と「捨てて勝つ」戦術で
難関大の合格点を突破しよう!


大学受験に満点は要らない。合格ラインをクリアすればいい。
最難関の医学系で得点率80%以上、その他の学部系統で60〜70%台とされる合格ラインを上回るための作戦を立てよう。
具体的には、得意科目で高得点を取り、不得意科目の失点を最小限に防ぐ戦略と、冷静に「捨てて勝つ」戦術が必要だ。
目指す大学の合格ラインを突破するプランを紹介する。

 

※この記事は『螢雪時代・2022年12月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

共通テストで70%、国公立大2次試験は50~60%、難関私立大では60~70%を確保!


総合点の「合格ライン」クリアを目標にしよう

大学入学共通テスト(以下、共テと略)、そして一般選抜の本番を直前に控え、「どれくらい点を取れば合格できるか」と不安なことだろう。ある程度の目安となるのが、各大学の案内やホームページに載っている「合格最低点」だ。
 入試の合否は、たいてい「総合得点」で決まる。総合得点とは、受験した全ての教科・科目の合計得点だ。国公立大ならば共テ(5または6教科が主)と2次の個別試験(2〜3教科が主)の合計得点、私立大ならば2〜3教科の合計得点ということになる。合格最低点は合格者のうち順位が最下位の人の得点だ。発表方法は、大学・学部によって素点(選択科目は得点調整後の場合も)だったり、得点率(合格最低点÷満点)だったりするので、「合格ライン」「ボーダーライン」とも呼ばれる。合格するには、とにかくこのラインを上回ればいい。特待生を狙わない限り、満点でも合格最低点でも、合格に変わりはない。
 もちろん、共テをはじめ、年ごとの入試問題の難易や倍率の変動、科目数や配点の変更などによって、合格最低点も上下する。それでも、具体的な合格者像をイメージできる、最も現実的な目安であることは確かだ。普段の過去問演習では、年ごとの合格ラインと自分の実力との距離を常に意識し、克服していこう。


【突破プラン 私立大一般選抜編】
3科目で「8・7・6」を目標に、全体で60~70%台を確保!

合格ラインについて、まず私立大一般選抜(各大学の独自入試)のケースを見てみよう。
 難関私立大の2022年(以下、22年。他の年度も同じ)入試結果を見ると、大都市圏の難関~準難関校で21年の大幅減の反動で志願者は増加した一方、追加・補欠合格の増加によって倍率がダウンした例が目立ったものの、それでもやはり厳しい競争が見られた。
 図1に、龍谷大-経営(前期日程:文系型スタンダード方式)の22年入試で、合格ライン付近の人数分布を示した。同方式の科目・配点は「英語」「国語」「世界史、日本史、政治・経済、数学から1」の3科目で各100点、計300点。受験者数1,609人に対し合格者数342人で、実質倍率は4.7倍。合格最低点は191点(得点率63.7%)だった。その分布状況を見ると、下記のような特徴がある。

①合格最低点を含め、上10点幅のゾーンに、125人と全合格者の36%ほどが集中している。
②不合格者の最高点(190点)を含め、下10点幅のゾーンに137人もいる。
③合格最低点での合格者は14人、1点差での不合格者も12人いる。

 合格ライン付近では、総合的にほぼ同じ学力の受験生がひしめきあい、わずか1点差で合否が決まる。では、“1点差”を争う合格ラインを、どうやって突破するのか?
 図1の右側に、合格最低点とその1点下の受験者から、特徴のある得点パターンをピックアップした。ここからわかるのは、「得意科目」の大切さと、「苦手科目」克服の必要性だ。
 3科目入試では1科目の比重が大きい。Aさんのように得点が8割に迫るような得意科目があれば、他が普通、またはやや苦手であっても心強い。ただしDさんのように極端に苦手な科目があると、得意科目で8割超を稼いだとしてもカバーしきれず、1点差に泣くことになる。
 得意科目での優位を生かすには、苦手科目を「やや苦手~普通」までにレベルアップし、6割以上の得点がほしいところだ。極端に苦手な科目を「やや苦手~普通」レベルに引き上げられれば、勝機が見えてくる。
 私立大一般選抜で合格ライン(7割台)をクリアするためには、安定して高得点を狙える得意科目(8割台)を持ち、残り2科目で7割台(やや得意~普通)と6割台(やや苦手~普通)をキープする、「8・7・6」パターンを目標にしよう(図2)。

図1 龍谷大 ‐ 経営(前期日程)文系型スタンダード方式  合格ライン付近の合格状況

図2 私立大一般選抜(3科目型)
「8・7・6」パターンのイメージ


難関私立大の共テ利用は、80%台の確保が必要になる!

総合点でどれくらい取れば合格できるのか、難関私立大の22年一般選抜(共テ利用を除く独自入試)の合格ライン(得点率)を、もう少し見てみよう。
 表1の同志社大(学部個別日程:正規合格者のデータ)を見ると、文系が60%台後半から70%台、理系がほぼ50%台に合格ラインが分布している。また、他大学の合格ラインを見ても、ほぼ「文系=60%〜70%、理系=50%〜70%」に分布していることが多い。
 関西学院大では、合格最低点を総合点だけでなく科目別でも公表している。例えば国際学部の全学部日程(3科目型)の場合、英語は117.9点(得点率59.0%)だが、総合点は365.0(同66.4%)なので、残り2科目の国語と選択科目(数学・地歴)の合計で247.1点(同70.6%)が必要となる計算で、ほぼ「8・7・6」パターンがあてはまる。
 一方、難関私立大の共テ利用入試では、標準的な3教科型の場合、合格ラインは文系・理系とも70%台後半〜80%台と、一般選抜に比べてかなり高い。表2の青山学院大(共テ利用入学者選抜。独自・共テ併用を除く)では、80%以上が多く、中には90%近いケースもある。合格者を募集人員の10倍程度出すことも珍しくない共テ利用入試だが、それでも相当な高得点が必要となるのだ。共テ利用入試は一般選抜に比べて受験の負担は多くないが、難関私立大における共テ利用入試の合格ハードルは決して低くないことを覚えておこう。

表1 2022年入試/同志社大(学部個別日程)の合格ライン

表2 2022年入試/青山学院大(共通テスト利用入学選抜)の合格ライン


得点調整で選択科目間の有利・不利を解消

受験生にとって不安なのは「選択科目」の扱いだ。文系は「地歴・公民・数学から1科目」、理系は理科で「物理・化学・生物から1科目」選択することが多いため、科目の難易で有利・不利が生じ、得点に較差が出てくるからだ。ただし、多くの大学・学部では、偏差値(得点を「平均が50、標準偏差10の正規分布での値」に換算したもの)や中央値補正法(成績順で中央に位置する人の得点を、その科目の満点の5割となるように全体を補正)などを用いて調整する。偏差値を用いれば満点が異なっても、ほぼ「30〜70の値」に換算できる。22年一般選抜(独自入試)の例を見ると、関西学院大では選択科目で中央値補正法によって得点調整を行った。また同志社大が全学部で選択科目間の得点調整を実施した。


【突破プラン 国公立大一般選抜編】
共テは「6・6・6・8・9」パターンで70%確保する!

次は国公立大について解説する。まず、共テでどの程度得点すればいいのか考えてみよう。
 20年まで実施されたセンター試験の受験者全体の平均点は、例年ほぼ60%前後だった。21年から導入された共テの出題レベルは当初、受験者平均で50%程度になると見られていた。
しかし、実際の21年共テ(第1日程)の受験者平均点(各科目の平均点と受験者数から全体の平均点を算出)は、5教科6科目(地歴・公民あわせて1教科1科目として100点、理科1科目として100点)の800点満点で472.3点(得点率59.0%)と得点率は60%近くだった。この結果から、22年の共テの出題レベルはやや難化すると予想されていたが、実際には予想をさらに超えて難化。5教科6科目の平均点は424.9
点(得点率53.1%)となった。
 それでは、国公立大の22年入試データで、共テの合格最低点の得点率を見てみよう。
 表3の金沢大(前期)はおおむね50%台後半〜60%台半ばで、医学類が70%超となっている。表4
の岡山大(前期)では、夜間主コースを除くと、文系は60%台、理工農系は50%台、医療系は50%台~70%台に分布し、医学部医学科の71.8%が際立って高かった。他大学を見ても、共テの合格ラインは、医・薬や超難関校の80%台を除くと、全体的に60%台前後が多かった。
 共テの目標得点を7割とすると、5(6)教科とも均一に70%台を取れればいいが、科目数が多い上に、得意・不得意があるから、そうはいかないのが普通だ。そこで、5教科(ここでは地歴・公民をあわせて1教科とする)の得点割合を「6・6・6・8・9」と設定し、「3教科は受験者平均をやや上回る60%、準得意教科は80%台、得意教科は90%台」で平均70%を確保しよう。私立大と同じく、得意教科の上積みで失点をカバーする計画だ(図3)。志望校が傾斜配点(特定教科の比率を高める)で、得意教科の配点が他教科より高ければ、この計画はさらに有効となる。

表3 2022年入試/金沢大(前期日程)合格ライン

図3 国立大共通テスト
「6・6・6・8・9」パターンのイメージ

《出願校決定に役立つ 進路の先生〝オススメ〟の使い方》
 ●共テの自己採点の後、22年との平均点差を考えながら、志望校の前年の合格最低点から、2次で何点取れば合格に届くか具体的な目標を算出し、出願校決定に役立てよう。
 ●私立大独自入試では、合格ラインの高低で出題の難易を測れる。過去3か年の平均、同じ学部系統の比較で、合格ラインが高い大学は基本問題中心、低ければ難しめの出題と考えてよい。過去問と照らし合わせ、自分との相性を確認しよう。


国公立大の2次試験は50~60%台を確保しよう!

国公立大の2次試験(個別試験)は記述式の2~3教科が主流なので、基本的には私立大一般選抜(独自入試)と同様に考えよう。
 まず、22年の総合点(共テ・2次合計)の合格ラインを見ていこう。表3の金沢大(前期)を見ると、文系は50%台後半~60%台前半、理工系は60%前後、医療系は50%台から60%前後を中心に分布し、薬学類は66%、医学類は73%に達する。
 さらに、表4の岡山大(前期)や神戸大・熊本大などの前期の合格ラインを見ると、「文系60%~70%程度、理工農系・医療系55%~65%程度、医は70~80%程度」と、おおむね共通した傾向を示す。
 次に、2次の合格最低点を見てみよう。金沢大・岡山大とも、意外と低い学部・学科もあるが、その場合は共テで高得点を取らないと、総合点の合格ラインに届かなかった。
 例えば、配点が2次重視である金沢大-生命理工学類(前期)の2次の合格最低点は734.4点(54.4%)だが、総合点では1377.5点(61.2%)なので、共テで643.1点(71.5%)と、合格者平均(65.4%)を上回る必要があった。また、配点が共テ重視である岡山大-経済[昼](前期)の2次の合格最低点は289.5点(48.3%)だが、総合点では929.7点(62.0%)なので、共テで640.2点(71.3%)と、やはり合格者平均(69.1%)を上回る高得点が求められた。
 受験生、特に現役生の学力は入試直前で大きく伸びる。配点にもよるが、なるべく医学部志望者は「共テ9割+2次7割」で総合点8割台、それ以外は「共テ7~8割+2次5~6割」で総合点7割台を確実に得点し、無理なく合格ラインをクリアしたいところだ。
 東北大の前期における各学部(学科・専攻)の、共テ・2次それぞれの合格者平均得点率を見ると(図4)、医学部医学科のみ「共テ81.1%、2次73.8%」と突出しているが、その他は共テがほぼ70%前後~75%前後の範囲、2次は50%~60%の範囲におさまっている。
 共テで8割を得点するのはハードだが、2次で5~6割を得点するのも決して簡単ではない。特に、数学・理科は記述式で計算量も多いので得点しにくい。しかも各大学の個別試験だから、それぞれの大学の個性が強く出る。過去問を徹底研究し、出題傾向を把握しておくことが、合格ライン突破のカギを握っていることに変わりはないといえる。

表4 2022年入試/岡山大(前期日程)の合格ライン

図4 2022年入試/東北大(前期日程)共通テスト・2次試験合格者平均得点率(%)の比較


【突破プラン 入試本番編】
試験では「捨てて勝つ」戦術で確実に得点しよう!

ここまで紹介してきた得点パターンをもとに、合格ラインを突破するプランを決めたら、入試本番ではその方針に沿って問題を解いていこう。本番独特の空気に心を惑わされず、事前に決めたプラン通りに行動することが重要だ。問題用紙が配られたら、まず全問を見渡す。第1問から順番に解くのではなく、解けそうな問題から着手し、確実に得点していこう。この方法は全教科に共通するが、特に数学や物理・化学など理系科目で有効だ。その際は、次の手順を忘れないことが大切になる。

①全体に目を通す(詳細に読む必要はない)。
②問題ごとに、「解けそうだ」=〇、「いけるかもしれない」=△、「無理かもしれない」=×、と印をつける。
③〇から先に解く(問題番号順に解く必要はない)。

 ×には手をつけず、まず〇から始め、次は△へ……というように、解けそうな問題から集中的に解く。1題解けると落ち着き、次の〇や△も普段通りの実力を発揮できることが多い。何よりも大切になるのは「時間配分」だ。解けそうもない問題に時間を費やすより、着実に点を稼げそうな〇や△を優先しよう。
 数学で、〇や△が完全に解けない場合は、とにかく小問(1)だけを解こう。例えば、大問が小問2つで構成されていれば、(1)は教科書にある基本的な解法で解けるように作成してあり、(2)は(1)の結果を利用すれば解けるようになっているケースが多い。また、×の問題にも比較的易しい小問が用意されていることがあり、各大問のうち小問(1)のみを解くだけで、全体の得点の3〜4割近くを取れる。
 取りこぼさず、そして部分点を稼ぐ。その積み重ねが合格ラインの突破につながる。
*    *    *
 以上の「捨てて勝つ」戦術は、普段の過去問演習の際に指定時間内に解くことを強く意識し、手順をしっかり身につけよう。時間内で、各年度の合格ラインを常に超えらえれるようになれば、本番でも冷静に対処できるはずだ。本番でしっかり実力を発揮し、後悔のない受験にできるよう、いまから備えておこう。

 

ここがPOINT
●国公立大共通テストは「6・6・6・8・9」
●私立大一般選抜は「8・7・6」で7割
●冷静な時間配分と「部分点狙い」が大事

 

この記事は「螢雪時代(2022年12月号)」より転載いたしました。


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