入試動向分析

2022年 私立大 一般選抜志願者動向分析【2022年6月】

2022(令和4)年度

 2022年私立大一般選抜について、難関校を中心に、人気度を示す「志願者動向」を分析する。
 あわせて、難易変動の指標となる「実質倍率」の変化も見ていく。
 全体にコロナ禍の影響が続き、「志願者微増、合格者大幅増」で易化した模様だ。

 

※この記事は「螢雪時代(2022年6月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 


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【全体解説】
志願者1%増、コロナ禍前の水準には遠く及ばず。
難関大志向復活で二極化、合格者大幅増で易化傾向

 


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独自入試は志願者2%増
共テ利用方式は2%減

 『螢雪時代』編集部では、学部学生の募集を行う全国の私立大学(586大学。通信制と専門職大学を除く)に対し、2022年(以下、22年。他年度も同様)の一般選抜の志願者数を調査した。4月中旬現在で集計した確定志願者数のデータは「236大学:約290万3千人」にのぼる。
 この集計は2月に行われた各大学の独自入試(大学が独自の試験問題等で行う入試)と大学入学共通テスト(以下、共テ)利用入試を主な対象とし、2月下旬~3月の「後期募集(共テ利用を含む)」も集計に一部加えている。
 その結果、私立大一般選抜の志願者数は、21年の同時期に比べ約1%増加したことがわかった。今後発表される大学の志願者数を加えても、最終的に私立大の一般選抜志願者数は「1%程度の増加」となりそうだ(グラフ1)。複数の入試日程・方式等を合計した「延べ志願者数」なので、学内併願などの重複を除いた実質的な志願者数は、見かけほど増えていない可能性もあるが、それでも志願者が微増か、ほぼ前年並みとなったことは間違いない。
 私立大一般選抜の志願状況を方式別に見ると(グラフ2)、大学の独自入試は2%増、共テ利用方式と独自・共テ併用型(独自入試の指定科目と、共テの高得点または指定科目を合計して判定)が2%減と、対照的な結果になった。

 

グラフ1.私立大一般入試志願者数と大学受験生数の推移

 

グラフ2.2021年私立大一般選抜 方式別志願状況(228大学:旺文社集計)

 


コロナ禍の影響で志願者戻らず
難関大志向は復活、二極化進む

 22年の4(6)年制大学の受験生数は、『螢雪時代』編集部の推定では21年に比べ約3%減となる見込み。また、共テの志願者も0.9%減と、基礎となる数値が縮小していることを考慮すると、私立大人気は復活したかのように見える。
 しかし、昨年(21年)の私立大一般選抜は、文部科学省の最終集計によると「志願者15%減、合格者7%増」で、全体的に志願者激減で易化した。その反動から、22年は一昨年(20年)に近い水準まで志願者が戻ることが予想されたが、実際にはかなり弱めの反動に留まった。新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)以前の水準に遠く及ばず、志願者が減少したまま、ということになる。
 このような現象が起きた理由も含め、22年私立大一般選抜の志願動向の特徴として、次の3つのポイントが挙げられる。

(1)コロナ禍の影響続く
 前年の志願者大幅減の主な要因は、やはりコロナ禍の影響であり、その反動が22年入試で見られたことは確かだ。特に、大都市圏の難関~準難関校が21年に軒並み易化したことは、受験生にとってチャンスと捉えられ、チャレンジ志向に結びついたと見られる。
 ワクチン接種など対策が進んだことが、遠隔地受験の心理的なハードルを押し下げた。もちろん、大学の授業の多くがオンライン形式、サークル活動など学生同士の交流が困難、コロナ禍に伴う経済不況(以下、コロナ不況)による家計不安といった、大学生を取り巻く環境の厳しさは続いている。それでも、大都市圏でも対面授業が増えるなど、前年より改善の兆しは見られ、それが地区をまたいだ受験生の流動、特に大都市圏への進出に結びついた模様だ。
 一方で、家計不安から「節約志向」が続き、出願の仕方は、合格確保校への併願を絞る、弱めの「逆T字型」となった模様。特に、大都市圏の中堅校では志願者減が顕著で、全体の志願状況は「二極化」した。
 難関~準難関校も、コロナ禍以前に回復したとはいえない状況だ。過去3か年の同時期(20年は4月17日現在)で比較すると、青山学院大の志願者は19%増加したが、20年と比べると17%減。また、東京理科大が「前年比=9%増、20年比=5%減」、立命館大も「前年比=6%増、20年比=15%減」と、けっしてコロナ禍以前まで戻っていないことがわかる。

(2)共通テストの難化
 共テは数学をはじめ、当初の予想をはるかに超え、大幅に平均点が低下(=難化)した。その影響は私立大の共テ利用方式にも及び、本試験日の後に締め切る「事後出願」の日程・方式(独自・共テ併用型が多い)は、結果を見てから出願できるため、志願者減が目立った。
 一方、地方公立大の受験者層の一部が、共テの難化の影響で、地方の主要私立大へ志望変更することにもつながった模様だ。

(3)学校推薦型・総合型の合格者増
 学校推薦型選抜(以下、学校推薦型)・総合型選抜(以下、総合型)の合格者大幅増も、一般選抜の志願動向に影響を及ぼした。後述するが、やはりコロナ禍に伴う長期の休校措置などの影響がなくなったため、学校推薦型(公募制)・総合型合計で志願者7%増。そして、早めの入学者確保を見据え、合格者を多めに出す大学が続出し、合格者は前年比20%増で易化した模様だ。このため、もともと一般選抜の受験者層は厚みを失っていたと見られる。
 これも後述の通り、2月入試では合格者増で倍率ダウンする大学が続出した結果、共テ利用も含めた3月入試(後期募集)の志願者は7%減。学校推薦型・総合型も2月入試も合格者が多めに出され、さらに追加合格・補欠合格が続々と出される状況では、もはや受験生が残っていなかったのだ。

 


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地区・系統ごとに見ると?


資格志向強まり「文低理高」
大都市圏回避はやや弱まる

 全国6地区ごとの志願動向を見ると(グラフ3)、大都市圏を擁する関東・甲信越、関西がやや増加する一方、北陸・東海、中国・四国の減少が注目される。北海道・東北(8%増)のように根強い地元志向も続く中、コロナ禍対策の進展から、大都市圏回避の傾向はやや弱まり、北陸・東海から首都圏や京阪神の難関~準難関校への受験生の流れが復活した模様だ。
 次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。コロナ不況の影響で、就職を見据えた「資格志向」が強まり、理・工、歯、薬など理系学部が増加する一方、未だに海外留学が難しい国際・国際関係・外国語をはじめ、文系学部は減少し、全体的に「文低理高」となっている。その中で、法の人気アップが注目される。やはり「資格志向」の表れで、地方公務員人気によるものと見られる。

 

グラフ3.2021年私立大一般選抜 地区別志願状況(228大学:旺文社集計)

 

グラフ4.2021年私立大一般選抜 学部系統別志願状況(228大学:旺文社集計)

 


法政大・関西学院大が大幅増
上智大・中央大が大幅減

 ここから、各大学の志願状況を見ていこう。表1では、志願者数(大学合計:4月中旬現在)の多い順に、上位20大学を示した。志願者数の合計は、全体(236大学:約290万3千人)の約52%と半数以上を占める。
 表1以外の大学も含め、首都圏や京阪神の難関〜中堅上位校で、21年から一転して志願者増が目立つ。法政大・明治大の志願者数が2年ぶりに10 万人を超えたのが象徴的だ。
 志願者数トップは9年連続で近畿大(16%増)。近年人気の高い情報科学系の学部増設や、大阪公立大(大阪市立大と大阪府立大が統合)からの志望変更などが要因と見られる。また、2位の千葉工業大(28%増)は、コロナ禍対応で21年に続き共テ利用選抜の受験料を免除したことと、独自・共テ併用方式の導入、英語外部検定利用の拡大が、大幅増の要因となった。
 首都圏の難関〜準難関校では、青山学院大(19%増)・東京理科大(9%増)・法政大(19%増)が大幅増、慶應義塾大(3%増)・明治大(3%増)・早稲田大(2%増)もやや増加と、難関大志向の復活が見られた。一方、国際基督教大(11%減)・上智大(14%減)・中央大(17%減)は大幅減、学習院大(3%減)・立教大(4%減)もやや減少した。
 青山学院大・早稲田大は、21年に「入試改革」路線を強め、一般選抜の共テ併用化、あるいは記述式・思考力問題の導入などを積極的に進めたことの認知度が高まったといえる。一方、上智大は21年から独自・共テ併用に切り替えた学部・学科試験が「事後出願」のため、共テの難化の影響を強く受けたと見られる。
 いわゆる「日東駒専」は、東洋大(9%増)が増加したが、駒澤大(2%減)・専修大(2%減)・日本大(4%減)は減少した。東洋大は前年の反動に加え、共テ利用前期で新たに英語外部検定を利用可能にしたことが起爆剤となった。一方、日本大は前年の大幅減(14%減)から回復できず、不祥事によるイメージダウンと私学補助金の不交付が影響したと見られる。
 京阪神では、いわゆる「関関同立」のうち、関西学院大(15%増)が大幅増、同志社大(3%増)・立命館大(6%増)も増加し、関西大は前年並み。やはり難関大志向の表れといえる。関西学院大は、全学部日程の受験機会拡大、文系10学部の共テ利用の7科目型追加、やはり共テ利用での英語リーディング・リスニングの配点比率変更(神戸大など併願先の国公立大にそろえた)などの変更も人気を集めたと見られる。
 また、いわゆる「産近甲龍」のうち、近畿大のみ増加し、龍谷大(1%減)・甲南大(1%減)は微減、京都産業大(8%減)は減少した。京都産業大は学校推薦型・総合型が易化(志願者2%増に対し合格者32%増)したため、一般選抜への再挑戦組が減少したものと見られる。

 

受験生の経済面に関わる
変更が志願動向に影響

 表2では、志願者1,000人以上の大学について、増加率が高い順に上位20大学を示した。このうち16大学で前年の志願者大幅減の反動がベースにあり、さらに入試の変更や学部・学科の増設といった人気材料が複合的に作用した結果といえる。
 特に注目したいのが、受験生の経済面の負担軽減と、英語外部検定利用の導入・拡大だ。表2では、大阪経済法科大・大和大が前者、獨協大・大妻女子大・法政大が後者、東北学院大・千葉工業大がその両方に該当する。
 コロナ不況の下では、受験料の減免や併願割引は人気材料となる。一方、対照的だったのが中央大だ。併願割引の対象を縮小し、一部の方式の受験料を増額。さらには学外試験場の規模も縮小したため、共テ利用方式を中心に2年連続の志願者大幅減となった。
 一般選抜で英語外部検定を利用した私立大は222大学で、前年より8大学増え、全私立大の約38%に達した。高校生の英語検定・資格試験の受験が一般化し、有資格率も上がっている現状では、受験生にとっても大学にとっても、使い勝手の良い方式といえる。

表1 志願者数の多い大学 TOP20

 

表2 志願者の増加率が高い大学 TOP20

 


大都市圏の中堅校が減少
全学的改編の東海大は3%増

 

 ここまで紹介した大学以外について、各地区の志願状況(主に2月入試)を見てみよう。

①首都圏
 難関~中堅上位校では、國學院大(11%増)・成城大(15%増)・武蔵大(20%増)が大幅増、成蹊大(4%増)もやや増加するなど、前年の反動が目立つ。また、津田塾大(2%増)・東京女子大(23%増)・日本女子大(8%増)と、女子大上位校がそろって人気復活したのも注目される。一方、明治学院大(4%減)はやや減少した。
 理工系中心の大学では、工学院大は12%増、東京都市大は14 %減と明暗が分かれた。
 中堅校では、獨協大(18%増)が大幅増、神奈川大(9%増)も増加する一方で、亜細亜大(15%減)・桜美林大(20%減)・大東文化大(15%減)・玉川大(17%減)は大幅減。東海大は全学・全国規模の再編(5学部を増設、熊本キャンパスで2→1学部に統合)を行ったが、志願者3%増に留まった。なお、調査書点数化を導入・拡大した女子大のうち、大妻女子大(20%増)は大幅増、共立女子大(20%減)・東京家政大(18%減)は大幅減と明暗が分かれた。

②京阪神地区
 女子大では、京都女子大(12%減)・同志社女子大(8%減)・神戸女学院大(22%減)・武庫川女子大(8%減)とそろって減少した。
 中堅校では、関西外国語大(20%減)・摂南大(21%減)・桃山学院大(21%減)が大幅減、大阪工業大(5%減)・大阪電気通信大(7%減)・神戸学院大(9%減)もやや減少。減少傾向に歯止めがかからず、小規模校では半数以下に落ち込むケースも見られた。
 一方、志願者増は京都橘大(8%増)・佛教大(9%増)・追手門学院大(12%増)と少数派。佛教大は一般A日程の複線化(2科目型導入)、追手門学院大は学部改組(国際教養→文・国際)と独自・共テ併用の実施学部増(1→7学部)が主な要因と見られる。

③その他の地区
 国公立大との併願が多い各地域の拠点大学のうち、東北学院大(32%増)の大幅増をはじめ、北海学園大(8%増)・愛知大(7%増)・南山大(7%増)・名城大(10%増)・松山大(4%増)・九州産業大(4%増)が増加。西南学院大(1%増)・福岡大(1%増)も堅調だったが、中京大(4%減)・岡山理科大(5%減)は減少、広島修道大(13%減)は大幅減となった。


ここポイント!

コロナ禍で前年大幅減の反動が弱まる
難関大志向が復活、中堅校は減少目立つ
受験料減免、英語外部検定利用も影響

 


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合格状況はどうなったか?


「志願倍率」に惑わされず
「実質倍率」に注目しよう

 次に、私立大一般選抜の合格状況を見よう。中でも倍率の変化は、「難化・易化」を測る物差しとなる重要データだが、一般的に使われる「倍率」には次の2 通りあることに注意したい。

 

*志願倍率=志願者数÷募集人員=見かけの倍率

*実質倍率=受験者数÷合格者数=実際の倍率

 

 私立大では合格者の入学手続率を考え、独自入試で募集人員の5 倍程度、共テ利用方式では10倍程度の合格者を出すのが普通だ。
 グラフ5で関西学院大-工の例を見てみよう。一般入試(全学部日程)の志願倍率は18.6倍だが、合格者(補欠合格を除く)を募集人員の6.8倍出しているので、実質倍率は2.7倍となる。また、共テ利用入試(1月出願)の志願倍率は45.8倍もの超高倍率だが、合格者を募集人員の16.9倍も出しているので、実質倍率は2.7倍におさまった。これなら「とても手が出ない」という倍率ではないだろう。
 見かけの倍率に惑わされることなく、実際の倍率を志望校選びのデータとして活用しよう。

グラフ5.志願倍率と実質倍率の違い 同志社大-理工の例(2021年入試)

 


受験者:前年並み、合格者9%増
全体で3.1→2.8に倍率低下

 『螢雪時代』編集部が私立大一般選抜(主に2 月入試)の受験・合格状況について調査したところ、正規合格者まで発表した127大学の集計(4月中旬現在)では、受験者数(未公表の場合は志願者で代替)は前年並みだが、合格者数は9%増のため(グラフ6)、実質倍率(以下、倍率。21年→22年)は3.1倍→2.8倍とダウンした。
 地区別の集計では、首都圏(3.5 倍→ 3.1 倍)、京阪神(3.2倍→3.0倍)、その他の地区(2.6倍→2.4倍)といずれもダウンしたが、大都市圏の大学で、追加合格や補欠合格の増加も含め、合格者増と倍率低下が目立った。
 合格者増の要因は、21 年と似通っている。
 ①共テの難化にもかかわらず「国立大志向」が強まったため、私立難関〜準難関校では入学手続率を予測しにくく、合格者を多めに出し、併願先の中堅上位〜中堅校もそれを想定して、玉突き状に合格者増が連鎖した、②難関〜準難関校で追加合格や補欠合格が増えた結果、①と同じ理由で併願先の中堅上位〜中堅校でも追加合格や補欠合格を増やさざるを得なかった、などが挙げられる。
 以下、主な大学で倍率が目立って変動したケースを紹介する(*は「志願者÷合格者」、その他は実質倍率。主に2 月入試の集計)。

①倍率アップ 東北学院大2.0 倍→2.4 倍、佛教大2.3倍→3.1倍、大阪工業大3.0倍→3.7倍、近畿大3.5 倍→ 3.8 倍
②倍率ダウン 亜細亜大3.4 倍→2.2 倍、学習院大4.4 倍→3.3 倍、上智大7.0 倍→4.6 倍*、東京経済大3.5 倍→3.0 倍、明治学院大3.3 倍→2.7倍、早稲田大6.5倍→5.7倍、中部大3.1倍→2.1 倍、京都産業大3.4 倍→2.8 倍、京都女子大2.6 倍→1.8 倍、京都橘大3.3 倍→2.8 倍、龍谷大3.0 倍→2.5 倍、追手門学院大6.6 倍→5.2倍、関西外国語大2.7倍→1.9 倍、摂南大3.8 倍→2.4 倍、西南学院大3.4 倍→2.9 倍

 

 このうち、学習院大は受験者3%減に対し、合格者を30%増やし、上智大も志願者14%減に対し、やはり合格者を30%増やしたため、いずれも倍率は大幅ダウン。また、上記以外になるが、受験者15%増の関西学院大も、合格者大幅増(33%増)のため、実質倍率は3.0倍→2.6倍にダウンした。思い切って挑戦した結果、意外な合格を手にした受験者も多かったのではないだろうか。
 一方、佛教大は受験者8%増に対し、合格者を20%減と絞り込んだ数少ないケースで、全体に難化したと見られる。また、これも上記以外になるが、国際基督教大は志願者11%減ながら合格者も8%減のため、倍率(志願者÷合格者)のダウンは小幅(3.9倍→3.8 倍)に留まり、ハイレベルを保った。

グラフ6.2021年私立大一般選抜地区別/受験者・合格者動向(4月中旬現在)

 

 


ボーダーライン付近は激戦
明暗を分ける1点の重み

 受験生の中には、ふだん「1 点の差」を気にも留めない人がいるだろう。しかし、全体的に易化傾向にあるとはいえ、入試本番ではその「1点」が大切なのだ。
 グラフ7に、関西大学商学部の2 月一般入試(全学日程1・2 の合計)の22 年入試結果から、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。受験者5,964 人、合格者1,366人で倍率は4.4倍。合格最低点は450 点満点で273 点(得点率60.7%)だった。
 注目すべきは、最低点を含めた「上10 点幅」の部分で、ここに合格者全体の約26%が集中する。最低点ぴったりのボーダーライン上にいるのは39 人。高校の1 クラス分の人数だ。わずか1点差での不合格者も43人(やはり1クラス分)、10 点差以内の不合格者は386 人もいる。合格ライン付近は、同じ得点帯の中に、多くの受験生がひしめき合っているのだ。
 たった1 つのケアレスミスが命取りになり、合否が入れ替わるのが「入試本番」。ふだんの勉強から解答の見直しを習慣づけよう。

グラフ7.ボーダーライン付近の人数分布:関西大‐商〈全学日程1・2〉の例(2021年入試)

 


ここポイント!

合格者増が連鎖反応を起こし、
大都市圏を中心に倍率低下で易化
でも「1点の重み」は大事!

 

 


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23年変更点は何か?


東北学院大- 教養を4学部に分割
早稲田大- 教育で共テを新規利用

 ここからは、私立大の23年入試について、4月中旬までに判明した主な変更点の一部を紹介する(以下、新増設大学・学部等は全て予定で、名称は仮称)。詳しくは、5月以降に発表される各大学からの情報を確認してほしい。

●新設予定大学等
 電動モビリティシステム専門職大・東京情報デザイン専門職大・ハリウッド専門職大・AMG文化芸術専門職大・グローバルBiz専門職大・ビューティ&ウェルネス専門職大の6校が新設を予定している。

●女子大の共学化
 神戸親和女子大と鹿児島純心女子大(鹿児島純心大に改称予定)が共学に移行する予定だ。
●学部等の増設・改組
 東北学院大が大規模な再編を予定。教養学部を地域総合・情報・人間科学・国際の4学部に分割し、他の5学部も含め全学部を仙台市中心部(新設キャンパスを含む)に集約する予定だ。
 学部・学科等の増設は、情報科学、医療・看護、心理、教員養成といった分野で目立つ。特に情報科学系の増設が多く、順天堂大- 健康データサイエンス、東京都市大- デザイン・データ科学、北里大-未来工、神奈川大-情報、京都女子大-データサイエンス、武庫川女子大-社会情報など、文理ともに予告が相次いでいる。
 それ以外では、共立女子大- 建築・デザイン、東京理科大- 創域理工(理工を改組)、東洋大- 福祉社会デザイン・健康スポーツ科学、日本女子大- 国際文化、立教大-スポーツウエルネス、龍谷大-心理、武庫川女子大-心理・社会福祉、天理大- 医療(天理医療大を統合)などが注目される。

●学校推薦型・総合型の変更
 芝浦工業大で公募制推薦(女子)の実施学部を「1→4」に増加/日本女子大で学校推薦型(公募制)を新規実施/早稲田大-人間科学で、FACT選抜を「学校推薦型→総合型」に変更。選考日程を2か月ほど繰り上げ、出願資格A(国内者向け)を「現役のみ→1浪まで可」に緩和する。

●一般選抜の変更
【共テ利用】早稲田大-教育で独自・共テ併用のC方式とD方式(D方式は生物学専修のみ)を新規実施。募集人員は学部合計でC方式120人・D方式10人。C方式は学科により共テが7~8科目、個別試験は「教育・社会・複合文化=総合問題、国語国文=国語、英語英文=英語、理学=理科、数学=数学」で、共テによる2段階選抜も実施する。一方、D方式(共テ5科目、個別=理科)は2段階選抜を行わない。
 この他、立命館大-総合心理の共テ方式(2・3月選考)で3教科型を追加し、同-産業社会の共テ併用方式と共テ方式(各3教科型)で、共テの国語を必須として追加/関西外国語大の一般前期で共テプラス型(独自・共テ併用)を、共テ利用前期で5科目型を新規実施/関西学院大の共テ利用1月出願の英語資格・検定試験活用型で、英語を「免除→課す」に変更し、出願資格を「CEFRB2 →B 1」に緩和する。

【独自入試】学習院大-法の一般選抜でプラス試験(他学部のメイン試験日に共通問題で選抜を実施)を導入/成城大の学部別選抜(A方式)が全学部・学科で試験日を複数化(同一学部・学科も受験可)/玉川大は全学統一入試前期の試験日を1→4日間に増やし、試験日自由選択制を導入(学部別入試を廃止)/東京薬科大-薬で共テ併用のS方式(3科目)を廃止し、B方式Ⅱ期(独自2科目)を新規実施する。

●キャンパス移転
 中央大- 法が郊外(東京都八王子市)から都心の新設キャンパス(同文京区)に移転する。

 


ここポイント!

情報科学系の新増設が目立つ
一般選抜では、独自・共テ併用型の導入や
独自入試の日程複数化に注目!

 

(文責/小林)

この記事は「螢雪時代(2022年6月号)」より一部改変のうえ、転載いたしました。

 


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