入試動向分析

2022年度 学校推薦型・総合型選抜結果レポート【2022年6月】

2022(令和4)年度

2022年度の学校推薦型選抜と総合型選抜の実施結果を調査・集計した。
コロナ禍の影響は続くも、昨年に比べ従来に近い環境の下で実施された。
2022年入試の前半戦として注目された両選抜の実施結果をレポートする。

 

※この記事は『螢雪時代・2022年6月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 
 

全体解説:
国公立大は募集枠拡大も志願者増に結びつかず。
私立大学校推薦型・総合型は合格者大幅増で易化!?

 
 

国公立大:共通テスト免除
「一般選抜志向」が影響か

 

 『螢雪時代』編集部では、国公立大の共通テストを課さない(以下、共テ免除)学校推薦型選抜と総合型選抜について、2022年度(以下、22年度)入試結果の調査を行った。21年12月24日現在(調査締切日)の、共テ免除学校推薦型の集計データ(76校:志願者数=約1万5千人)では、前年比で「志願者1%減、合格者1%増」、倍率(志願者数÷合格者数。以下同じ)は2.2倍と、昨年とほぼ同じだった。一方、同総合型の集計データ(42校:志願者数=約5千人)では、前年比で「志願者6%減、合格者4%増」、倍率は3.1倍2.8倍とダウンした。
 22年度は、学校推薦型・総合型ともに拡大傾向にあり(実施学部数は、21年→22年で「学校推薦型=478→486、総合型=324→335」、募集人員は「学校推薦型1%増、総合型4%増」)、合格者増はその結果といえる。一方、志願者が減少したのは、21年度と異なり、共テへの警戒感がやや薄れたのと、各大学で新型コロナウイルス感染(以下、コロナ禍)の下での個別試験(2次)実施にめどが立ったことから、一般選抜志向が強まったことが要因と見られる。
 共テ免除学校推薦型(グラフ1)の倍率は、国立大2.4倍2.3倍公立大2.2倍2.1倍と、いずれもややダウンした。
 一方、共テ免除総合型の内訳は、志願者数が「国立大5%減、公立大8%減」、合格者数は「国立大5%増、公立大3%増」で、倍率は国立大3.1倍2.8倍公立大3.3倍2.9倍といずれもダウンした。
 学校推薦型・総合型を合計して学部系統別に見ると、教員養成系がやや人気復活。一方、法、国際・外国語、医療・看護で志願者減が目立った。

 

グラフ① 2021年度/国公立大「共通テスト免除学校推薦型」志願者・合格者動向

 

私立大:学校推薦型・総合型
入学者確保のため合格者増!?

 

 『螢雪時代』編集部では、私立大の学校推薦型と総合型についても調査した。学校推薦型から総合型へ(またはその逆)の変更や、合算した結果発表が目立ったため、学校推薦型(公募制)と総合型の合計で志願・合格状況を集計し、前年度と比較した。
 21年12月24日現在(調査締切日)の集計データ(128校:志願者数=約27万2千人)では、前年比で「志願者7%増、合格者20%増」、倍率は2.8倍2.5倍とダウンした(グラフ2)。
 また、学校推薦型(指定校制)の志願者(≒合格者。37校:約1万人)も4%増となった。
 志願者増の要因は大きく二つある。
①環境が整った 21 年度に比べ、長期の休業期間がなく、例年に近い形で授業や進路指導が行われた。また、やはり例年に近い形でスポーツ・文化活動の諸大会・行事や、各種資格・検定が実施された結果、学校推薦型・総合型の出願資格・要件を満たす環境が整ったことが挙げられる。さらに、総合型は出願開始の繰り上げ(9月15 日→同1日)も影響したと見られる。
②前年の易化の反動 文部科学省発表の21年度の最終集計によると、私立大の学校推薦型・総合型合計で「志願者4%減、合格者6%増、倍率1.9倍→1.7倍」。前年に倍率ダウンで易化したことが、人気復活につながったと見られる。
 一方、22年度は前年度を上回る合格者増となった。私立大は21年一般選抜において、難関校で追加・補欠合格が相次ぎ、それが玉突きで中堅校に波及し、各大学は入学手続率が読めず苦しんだ。そのため、各大学が早めの入学者確保に動いたことが、合格者大幅増の要因と見られる。
 地区別に見ると、志願者全体の約8割を占める京阪神(3.2倍→2.8倍)の、合格者増による倍率ダウンが注目される。京都産業大(3.9倍→ 3.0 倍)、龍谷大(4.5倍→ 3.9 倍)、追手門学院大(6.0倍→ 3.7 倍)、摂南大(2.4倍→ 2.0 倍)、神戸学院大(3.0倍→1.9倍)などが倍率ダウンし、易化した模様。一方、佛教大(3.1倍→ 3.3倍)、大阪工業大(2.5倍→ 2.7 倍)、近畿大(4.0倍→ 4.4 倍)などが倍率アップした。
 主な学部系統ごとに見ると(グラフ3)、文理ともに満遍なく合格者増が顕著だ。その中で、法、理・工の志願者大幅増が注目される。

 

グラフ② 2021年度/私立大 学校推薦型(公募制)・総合型/地区別志願者・合格者動向


グラフ③ 2021年度/私立大 学校推薦型(公募制)・総合型/主な学部系統の志願者・合格者動向

【ここポイント!】
国公立大は総合型選抜で易化が目立つ
私立大は前年度の易化で狙われるも、
京阪神は合格者大幅増で倍率ダウン

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2022年6月号)」より転載いたしました。

 


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