入試動向分析

2022年 国公立大入試 志願者動向分析【2022年5月】

2022(令和4)年度


 2022年国公立大一般選抜について、人気度を示す「志願者動向」を分析する。
 志願者数は前年比1%増。そのうち、国立大後期日程が4%増えた。
 共通テストの平均点ダウンにもかかわらず、「初志貫徹」の出願傾向が見られた。

 

※この記事は「螢雪時代(2022年5月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

共通テストの難化に負けず、「初志貫徹」の出願傾向。東京大や大阪大など、難関校で志願者増が目立つ


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国立大2%増、公立大2%減。国立大後期が4%増

 

 文部科学省の発表によると、2022年(以下、22年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は428,657人で、21年に比べ0.8%増加(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大・叡啓大・芸術文化観光専門職大と、新設の川崎市立看護大は集計に含まれない)。全募集人員(98,635人)に対する倍率(志願倍率)は、21年・22年とも4.3倍と変動がなかった(グラフ①)。
 4(6)年制大学の受験生数は前年比で約3%減(『螢雪時代』推定)、大学入学共通テスト(以下、共テ)の志願者数も微減(0.9%減。国公立大志望が多い既卒者は5.2%減)と、基本ベースが縮小する中で、国公立大一般選抜の志願者はわずかでも増えたことになる。
 ここからは、新設の川崎市立看護大(初年度から共テを課す前期・後期で実施)を集計に加えた。入試日程別に志願状況(グラフ②)と志願倍率の変化(21年→22年)を見ると、前期は「0.4%減:2.9 倍→ 2.9倍」、後期は「1.5%増:9.6 倍→ 10.0 倍」、公立大中期は「7.9%増:12.3 倍→ 13.4 倍」となった。
 募集人員の増減(前期0.1 %増、後期2.1%減、公立大中期0.6%減)と比べると、後期と公立大中期が、学校推薦型選抜(以下、学校推薦型)や総合型選抜(以下、総合型)の導入や募集枠拡大に伴い募集人員が減少したにも関わらず、志願者が増加したことが特筆される。
 さらに、国立・公立を日程別に比べると、国立大が「前期1.2%増、後期4.1%増」といずれも志願者が増加したのに対し、公立大は「前期5.1%減、後期5.7%減」と対照的な結果になった。特に、募集人員減(1.8%減)の国立大後期の増加が目立つ。
 21年の導入初年度に比べ、共テは平均点が大幅ダウン(=難化)した。これまでなら、受験生が自信を失って慎重になり、国公立大の出願を控えて志願者減となることが多かったが、今年はその逆になった。その要因は何だったのか?

 

グラフ❶大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移
グラフ❷2021年国公立大入試 日程別志願状況

 
 

成績上位層は難関大志向。地方公立大人気は弱まる

 

 共テの平均点ダウンは、その前身である共通1次試験やセンター試験(以下、セ試)の前例を見ても、導入2年目のため予想はされていたが、その難化ぶりは想定を超えていた。
 国公立大受験の共テ科目の標準となる、文系・理系に共通の5教科6科目(地歴・公民合わせて1科目として100点、理科1科目として100点の800点満点)の加重平均点(科目別平均点と受験者数から算出。ただし、理科基礎は2科目受験者の加重平均点で、追試を含む)を算出すると424.9点で、21年に比べ47.4点ダウン。得点率は53.1%と、センター試験(以下、セ試)以来、過去最低を記録した。共テらしい思考力重視の出題傾向がさらに強まり、問題文の長文化や出題形式の複雑化が見られた。
 科目別に見ると(表1)、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・B、生物、化学、日本史Bなどで平均点が大幅にダウンし、国語などもややダウン。セ試・共テを通して、初めて得点率が40%を割り込んだ数学Ⅰ・Aをはじめ、日本史B、化学、生物、生物基礎が過去最低を記録した。
 特に、文系・理系ともに受験する基幹科目の数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・Bの大幅ダウンは、受験生にとって「数学ショック」ともいうべき逆風となり、国公立大の志願者減につながると予想されたが、実際にはそうならなかった。
 22 年は国立大の志願者が増加した。しかも、東京大や大阪大など、難関国立大の志願者増が目立った。また、準難関校や中堅校でも、後期で志願者が増加する傾向が見られた。
 国公立大への合格実績が高い進学校の先生方に取材した結果を総合すると、難関大は個別試験(以下、2次)の配点比率が高いため、成績上位層は「みんなできなかったのだから、思い切って2次勝負」と、初志貫徹で強気に出願したという。今回の共テは、「ある特定の得点域が減少」といった部分的な変化ではなく、上位層をはじめとして、全体的に下方へずれたからだ。
 また、新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)に伴う家計不安などから、「どうしても国立大」という受験生が後期まで粘って合格を勝ち取ろうとした意欲が見て取れる。これは「共テの科目数の多いタイプで、特定科目の平均点ダウンのリスクを分散」という進路指導が徹底された結果でもあるという。
 一方で、公立大に手が届くはずだった受験生層が、共テの難化に動揺し、前年の「地方公立大人気」の反動もあって出願をあきらめ、私立大へ志望変更した模様。特に、数学・理科の平均点ダウンの影響を強く受けた、理系の少数科目型が敬遠された模様だ。

 

表1 2021年大学入学共通テスト「第1日程」科目別平均点

 
 

感染対策が進んだ結果、遠隔地受験がやや復活か

 

22年入試では、コロナ禍は続いているものの、ワクチン接種など対策が進んだこともあり、受験生の“超地元志向”がやや弱まり、遠隔地受験の心理的なハードルがやや下がったことも、難関大の志願者増につながったと見られる。
 もちろん、大学の授業の多くがオンライン形式、サークル活動など学生同士の交流が困難、アルバイト求人難、コロナ禍に伴う家計不安、といった大学生を取り巻く環境の厳しさは続いている。
 それでも、大都市圏でも対面授業が増えるなど、前年より改善の兆しは見られ、それが地区をまたいだ受験生の流動に結びついた模様。ただし、それは私立大についても同様であり、地方公立大の志望者層の一部が、共テ難化の影響で大都市圏の私立大へ志望変更することにもつながったと見られる。

 
 

横浜国立大が2次復活で志願者激増、首都圏で影響大

 

 昨年の21年入試ではコロナ禍への対応で、接触を抑える変更(集団面接・討論を個人面接に変更、面接のオンライン化、2次自体の中止と共テの成績・書類審査等による合否判定への変更)や、長期休校措置による「学業の遅れ」、スポーツ・文化活動の大会や各種資格・検定の中止・延期への配慮などから調査書等の点数化を中止する、といった変更を行う大学が続出し、志願動向に局所的な影響を与えた。
 特に、宇都宮大、横浜国立大、山陽小野田市立山口東京理科大などで2次を中止、主に共テの得点による合否判定に切り替えた結果、志願者大幅減が相次いだ。
 22年入試では各大学とも2次の実施を復活したため、横浜国立大の「21年45%減→22年74%増」をはじめ、宇都宮大が「21年12%減→22年31%増」、山陽小野田市立山口東京理科大が「21年26%減→22年13%増」と大きく揺れ戻し、周辺の志願動向に影響した。
 特に、横浜国立大は首都圏の準難関校の「台風の目」となり、千葉大(8%減)、東京農工大(7%減)、東京都立大(13%減)などの志願者減に影響。理工学部(前期74%増、後期94%増)を例にとると、埼玉大-工の前期(12%減)・後期(18%減)、千葉大-工の前期(10%減)、東京農工大-工の前期(19%減)、東京都立大-システムデザインの前期(9%減)・後期(35%減)の志願者減に結びついたものと見られる。
 一方、調査書や提出書類の点数化などは、21年に続き、実施を取りやめる大学が見られ、配点の小ささの割に志願動向に影響した。人文社会科学・理工・農学生命科学・医〈保健〉の4学部等で志望理由書の点数化を取りやめた弘前大の大幅増(58 %増)は、その象徴といえる。

 
 

【ここポイント!】
共テの難化に負けず難関大に挑戦
公立大は前年の反動で志願者減が目立つ
「2次復活」の大学が人気回復


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地区・系統ごとに見ると?


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「東高西低」の志願状況
遠隔地受験がやや復活か

 

 全国6地区の志願動向(グラフ③)を見ていこう。北海道・東北と関東・甲信越が3%増えたのに対し、北陸・東海と中国・四国は2%減、関西と九州も微増(1%増)に留まり、全体的に「東高西低」となった。
 前述の通り、北海道・東北では弘前大が志望理由書の点数化の中止、関東・甲信越では宇都宮大・横浜国立大が2次復活で、いずれも志願者が大幅に増加した影響が大きい。
 各地区とも、従来から地元志向が強いので、基本的に地区内で出願が完結する。それでも、「北陸・東海→関東・甲信越」「中国・四国→関西」の出願校変更の流れがうかがえる。
 特に医学部志望者は、もともと全国を視野に入れて受験するのと、後期日程の募集停止や縮小が続いて併願先が限られるため、流動性が高い。22年は富山大-医〈医〉の後期募集停止の影響が大きく、後期のみ募集の山梨大-医〈医〉が志願者大幅増(53%増)となった。

 

グラフ❸ 2021年国公立大入試 地区別志願状況

 
 

全体的に「文低理高」だが国際・外国語系も志願者増

 

 次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ④)。全体的に「文低理高」傾向が見られ、理、工、農・水畜産・獣医、医、薬が志願者増。コロナ不況に由来する「理系の資格志向」が見て取れる。理、農・水畜産・獣医、薬は、ワクチン開発などメディアの露出度が高く、化学・生物系への関心が高まったことも要因であろう。
 文系では法、社会・社会福祉が減少したが、前年の反動もあり経済・経営・商、国際・国際関係、外国語が増加。特に、国際・国際関係、外国語は、コロナ禍の影響で海外留学が困難など、逆風が吹いているにもかかわらず、その先を見据えた人気復活の兆しとして注目される。
 教員養成系は、定員減が目立った(宮城教育大、富山大-教育、熊本大-教育)ことに加え、教員を取り巻く環境の改善が進まないこともあり、人気低下が続いている。

 

グラフ❹ 2021年国公立大入試 学部系統別志願状況

 
 

【ここポイント!】
地域を越えた出願の流れが一部復活
理・工・農・医・薬が志願者増
国際・外国語系に人気復活の兆し


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大学・学部ごとに見ると?


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「前年の反動」や入試科目・募集人員の変更は要注意

 

 大学・学部別の22年一般選抜の志願状況を見るためには、次の4つのポイントを押さえておこう。23年一般選抜の志望動向を予測する時にも生かせるポイントだ。

①前年度の倍率アップダウンの反動
 受験生は前年の倍率や、志願者の増減を気にする。高倍率や倍率アップ、志願者増なら敬遠、低倍率や倍率ダウン、志願者減なら人気を集めるため、前年の反動、さらには1年おきに増減を繰り返す“隔年現象”が起きやすい。これが、最も志願者動向の変化が起こりやすいパターンだ。
②入試科目の変更、科目数の増減
 入試科目数の増減、新方式実施、2段階選抜の廃止(導入)や予告倍率緩和(引き締め)など、負担の変化が志願者増減に結びつく傾向がある。また、コロナ禍の下の入試に特有の事情として、21年にコロナ禍対応で変更した実施方法を、22年に本来の形に戻したり、逆に調査書等の扱いや面接の実施方法を変更したりした結果、志願動向に影響したケースもある。
③学部・学科の増設・廃止、募集人員の変更
 後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の募集人員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。また、学部・学科の新設や、新たに前・後・中期で入試を実施、あるいは後期(または前期)を募集停止したりする場合、周囲の大学・学部に対する影響は大きく、最大級の変動要因となる。
④他大学への「玉突き」
 志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、後期日程の廃止・縮小、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きる。国公立大では、①の次に起こりやすいパターンだ。
 具体例として、弘前大-人文社会科学、名古屋大-医〈医〉、岡山大-工、佐賀大-教育を紹介する(以下、【前】=前期日程、【後】=後期日程、【中】=公立大中期日程)。

例1:弘前大-人文社会科学【前】
 弘前大-人文社会科学【前】は2次で志望理由書の点数化を中止(→②)。また、学外試験場を仙台に設置(→②)。これが人気材料となり、前年の志願者32%減の反動(→①)もあって、志願者は36%増。岩手大-人文社会科学【前】の19%減に影響したものと見られる(→④)。
例2:名古屋大-医〈医〉【前】【後】
 名古屋大-医〈医〉【前】【後】では2段階選抜を復活(→②)。しかも得点基準(共テ900点満点中700点以上)のため、共テの平均点大幅ダウンの今年は強い敬遠材料となり、前期は前年の志願者17%増の反動もあり(→①)、志願者は「前期57%減、後期30%減」。岐阜大-医〈医〉【前】(31%増)、三重大-医〈医〉【後】(16%増)に影響した(→④)。なお、岐阜大-医〈医〉【前】は募集人員増(37 人→ 45人。→③)も影響した。
例3:岡山大-工【前】【後】
 岡山大-工【前】【後】は、学校推薦型の拡大に伴う募集人員減(前期429人→400人、後期40人→ 35人。→③)に加え、後期の2次が面接のみである(=2次逆転が難しい)ことが敬遠され、志願者は「前期13%減、後期44%減」。徳島大- 工[昼] 【前】(24%増)・同【後】(14%増)、香川大-創造工【前】(66%増)に影響した(→④)。
例4:佐賀大-教育【前】【後】
 佐賀大-教育【前】【後】は、隔年現象(前期=20年35%増→21年32%減、後期=20年108%増→46%減)の揺れ戻しで、志願者が「前期25%増、後期38%増」(→①)。募集人員減(177→161人。→③)の熊本大-教育【前】(13%減)から流入した模様。また、長崎大-教育【前】(8%減)、鹿児島大-教育【前】(18%減)・同【後】(12%減)の減少にも影響したと見られる(→④)。

志願者最多は2大学統合の大阪公立大だが4%減

 表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧にした。国公立の難関~準難関校が連なる中で、特に注目されるのが東京大や京都大など難関校の志願者増と、横浜国立大の激増だ。
【難関校】志願者数で第5位の東京大(5%増)は理科二類(13%増)・理科三類(9%増)の増加が目立った。第4位の北海道大(10%増)は、総合型の拡大に伴う募集人員減にもかかわらず、前年の大幅減(12%減)の反動から、他地区からの流入が増えたものと見られる。
 この他、表2以外の大学も含めると、難関大志向の強まりを反映し、東京工業大(5%増)・一橋大(6%増)・京都大(2%増)・大阪大(7%増)が増加、東北大(増減なし)・九州大(1%増)・神戸大(1%減)も安定。
 一方で名古屋大(6%減)が減少。前述の通り、医学部医学科の大幅減が主な要因となった。
【準難関校】志願者数が最も多い国公立大は、大阪市立大・大阪府立大が統合して開学した「大阪公立大」だが、旧2大学の合計と比べ、志願者は4%減少した。募集人員減(4%減)に見合った志願状況だが、西日本で最大の変動要因と見られていただけに、他大学への影響は意外に小さく、開学初年度は旧2大学のブランドイメージを受け継ぎきれなかった観がある。
 例えば、大阪公立大-工(大阪市立大-工と大阪府立大-工学域を統合)は、前期・中期を継続し、後期を募集停止。募集人員増(225人→269人)の前期に他大学から志望変更、逆に他大学の後期への併願増が予想された。しかし、実際には前期の志願者は伸びず(1%減)、後期の受け皿として中期が機能した(33%増)ため、神戸大-工【後】、徳島大- 理工[ 昼] 【後】への併願がやや増えるに留まった模様。
 その他の準難関校は、横浜国立大をはじめ、東京外国語大(13%増)・広島大(13%増)が大幅増。その一方で、筑波大(3%減)・千葉大(8%減)・東京農工大(7%減)・熊本大(2%減)が減少、東京都立大(13%減)・岡山大(10%減)は大幅減となった。難関校の志望者層と異なり、準難関校の志望者層は共テ難化の影響を強く受け、ランクダウンしたものと見られる。
【中堅校】各地区の国公立大中堅校では、前年の志願者増減の極端な反動が随所に見られた。中でも、前年に人気を集めた地方公立大で減少が目立つ。また、学校推薦型・総合型への募集人員の移行も影響した模様だ。特に変動が大きかった主な大学は次の通り。

[1] 国立大
【志願者増】室蘭工業大18%増、弘前大58%増、宇都宮大31%増、新潟大15%増、福井大24%増、山梨大32%増、愛知教育大18%増、奈良女子大27%増、徳島大26%増、大分大29%増
【志願者減】北海道教育大20%減、福島大11%減、富山大10%減、名古屋工業大13%減、三重大14%減、奈良教育大12%減、山口大19%減
[2] 公立大
【志願者増】岩手県立大20%増、秋田県立大18%増、福井県立大22%増、京都府立大23%増、島根県立大28%増、高知工科大29%増、長崎県立大23%増
【志願者減】高崎経済大14%減、埼玉県立大10%減、静岡県立大13%減、兵庫県立大13%減、県立広島大29%減、下関市立大27%減
 前述の弘前大・宇都宮大や、女子大初の工学部を開設した奈良女子大の大幅増が注目される。表3では、志願者の増加率が高い順に上位11大学を示した(9位が3大学のため)。表2と異なり、公立が7大学、単科大学(1学部のみ)が6大学を占め、医、歯、薬、医療・看護に関する大学が目立つ。ただし、弘前大・横浜国立大・山梨大と国立の総合大学が並んでいるのが、例年と異なる特徴といえる。
 1位の新潟県立看護大は志願者が3倍近くに膨張。同校も含め、7大学で前年の志願者大幅減の反動が出ている。ちなみに、昨年は志願者85%増で1位だった福島県立医科大は、開設2年目の保健科学部が激減し、16%減となった。
 なお、「私立大→公立大学法人」に移行した周南公立大(旧徳山大)は、22年入試では私立大として一般選抜を実施したが、3月中旬時点で志願者は前年の約13 倍に膨れ上がった。

 

表2 志願者数の多い国公立大学TOP10
表3 志願者の増加率が高い国公立大学TOP 10

 
 

志願倍率トップは山陽小野田市立山口東京理科大-工の中期

 

 次は、各入試日程で特に志願倍率(志願者数÷募集人員)が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4・5・6。同倍率が多数の場合は20を超えて掲載。医学部医学科や看護学科などは1学部として扱う)。なお、「受験者数÷合格者数」で割り出す、実際の倍率を「実質倍率(または競争率)」という。
 まず、表4・5の「高倍率の学部等」から見ていこう。前期では医学部医学科が目立ち、変わらない難関ぶりを物語る。その中で、徳島大-総合科学【前】が前年の志願者59%減の反動で倍率が急上昇しているのが注目される。
 後期・中期は募集人員が少なく、加えて後期は実施学部・学科も減っているので、最高倍率(50.7倍)の山陽小野田市立山口東京理科大-工【中】のように、前期以上の「超高倍率」になる。特に、公立大は中期の実施校が増え、後期も国立大より残っていることから、併願先の私立大が限られる大都市圏以外の地域では、志願者が集中しがちだ。ただし、欠席率の高さ(例えば後期の場合、前期の入学手続者が欠席するので、志願者の約60%が欠席)を割り引いて考える必要がある。
 一方で、表6のように前期で志願倍率が1倍台のケースもある。こちらは、学部・学科が多様であることが特徴だ。なお、山口大-工【前】は隔年現象(20 年33 %減→ 21 年74 %増→22年61%減)によるもので、23年は再び揺れ戻す可能性があるので要注意だ。

 
 

第1段階選抜の不合格者は前・中・後期合計で8,136人

 

 最後に、前期、および後期・中期の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。
 前期では、予告した学部(64大学168学部等)に対し、実際に行ったのは29 大学48 学部等で、前年より5大学11学部等も増え、第1段階選抜の不合格者も「21 年2,139人→ 22 年3,029人」と前年比42%も増加した。
 大学別に見ると、不合格者が最も多い東京大では、全6科類で第1段階選抜を行い、21年より大幅増(482人→837人:74%増)。次に多いのが東京都立大だが、21年の不合格者37%増の反動から、やや減少(445人→ 367人)した。
 一方、後期・中期では、予告した学部(45 大学93学部等)に対し、実際に行ったのは26大学32学部等で前年とほぼ変わらなかったが、第1段階選抜の不合格者は「21年4,151人→22年5,107人」と、やはり21年より大幅増(23 %増)となった。
 最も多かったのが山梨大(713人)で、次いで大阪公立大(681人)、奈良県立医科大(563人)、一橋大(434人)…と続く。後期まで粘った出願傾向に加え、共テの平均点ダウン、さらに後期の募集枠縮小(特に医学部医学科)が相俟って、不合格者の大幅な増加に結びついたものと見られる。

 

表4 前期日程で高倍率の学部等
表5 後期日程・公立大中期日程で高倍率の学部等
表6 前期日程で低倍率の学部等

 
 

【ここポイント!】
国公立大の志願状況を見るには「4つのポイント」を抑えよう
特に「前年の反動」には要注意!

 


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(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2022年5月号)」より一部改変のうえ、転載いたしました。


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