2021年国公立大入試について、人気度を示す「志願者動向」を分析する。一般選抜の志願者数は前年比3%減。そのうち、公立大後期日程のみ4%増えた。共通テストの平均点アップ、コロナ禍に伴う「超地元志向」の影響と見られる。
※この記事は「螢雪時代(2021年4月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)
共通テストの平均点アップで「やや強気」の出願に。「超地元志向」が影響し、公立後期が志願者4%増
国立大4%減、公立大2%減。募集枠縮小の後期は実質増!?
文部科学省の発表によると、2021年(以下、21年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は425,415人で、20年に比べ3.2%減少(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大、および21年新設の三条市立大・叡啓大は集計に含まれない)。全募集人員(98,978人)に対する倍率(志願倍率)は20年4.4 倍→21 年4.3 倍とややダウンした(グラフ①)。
4(6)年制大学の受験生数は前年比3.9%減(本誌推定)、大学入学共通テスト(以下、共テ)の志願者数も4.0%減で特に既卒者が大幅減(19.3%減)。これが国公立大一般選抜の志願者3.2%減の素地となった。しかし、私立大一般選抜の志願者が大幅減(約13%減:2月末現在)となったのに比べ、減少率が小幅に留まったのは、国公立大志向の復活といえるだろう。
入試日程別に志願状況(グラフ②)と志願倍率の変化(20 年→ 21年)をみると、前期は「3.1%減:3.0倍→2.9倍」、後期は「2.5%減:9.3倍→9.6倍」、公立大中期は「7.4%減:13.3倍→12.3倍」となった。また、募集人員の増減(前期0.2%減、後期5.9%減、公立大中期0.4%増)と比べると、後期は募集人員の減少幅ほど志願者が減らず、志願倍率がアップした。
学校推薦型選抜(以下、学校推薦型)や総合型選抜(以下、総合型)の新規実施や募集枠拡大に伴い、後期に募集停止・縮小が相次いだことを考えると、実質的な志願者増ともいえる。
さらに、国立・公立を日程別に比べると、前期は「国立3.0%減、公立3.4%減」とほぼ同様に志願者が減少したが、後期は「国立4.5%減、公立3.7 %増」と、公立大後期のみ増加した。
後述するが、20年センター試験(以下、セ試)に比べ、共テの平均点はややアップ(=易化)した。後期は共テの配点比率が前期より高い大学・学部等が多いため、持ち点による逃げ切りを狙いつつ、後期まで粘って合格を勝ち取ろうとする意欲が見て取れた。
コロナ禍で大都市圏回避。共テ数学の易化が影響大
21年国公立大入試に影響を与えた要素は、大きくは新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)に伴うかつてない地元志向の強まりと、共テの平均点アップの2つに絞られる。
(1)コロナ禍に伴う「超地元志向」
21年入試の受験生に最も影響を与えたのが、コロナ禍とその対応の影響だ。
全国的な感染拡大で緊急事態宣言が発出された結果、地方在住の受験生の多くが、首都圏をはじめ、感染状況のより厳しい大都市圏にある大学への進学をためらったと見られる。
また、20年度はキャンパス入構制限で、大学の授業の多くが対面式からオンライン形式になった。サークル活動など学生同士の交流が困難になり、コロナ禍に伴う経済不況(以下、コロナ不況)からアルバイトの求人も減少、在宅のまま精神的にも経済的にも苦しい学生生活を送る先輩たちの状況を見て、あえて自宅から遠い大学に行く必要を見出せない受験生が増えたのではないだろうか。
さらに、コロナ不況が家計に影響し、遠隔地の大学(特に私立大)への進学が難しくなった結果、自宅から通える国公立大を希望する受験生も増えたと考えられる。
その結果、地元志向がかつてなく強まり、「超地元志向」ともいうべき現象となり、地方国公立大の志願者増につながったと見られる。
(2)共通テストの平均点アップ
もう一つの要因は、初めての実施となった共テで、受験生が意外に得点できたことだ。
国公立大受験の共テ科目の標準となる、文系・理系に共通の5教科6科目(地歴・公民合わせて1科目として100点、理科1科目として100点の800点満点)の加重平均点(科目別平均点と受験者数から算出。ただし、理科基礎は2科目受験者の加重平均点で、追試を含む)を算出すると472.27点(得点率59.0%)で、20年に比べ15.05点アップした。
共テには、思考力・判断力・表現力を問う新しい出題形式(複数正解、複数資料の読解など)が盛り込まれた。英語でも、リスニングが「2回読み」と「1回読み」の併用に変わり、入試における設定は各大学次第だが、リーディングとリスニングの配点が「100点:100点」となった(セ試では200点:50点)。試行調査の難度の高さや、出題レベルの目標が、平均点で「セ試=6割台」に対し「共テ=5割台」と言われていたことから、共テの平均点はセ試より下がる、つまり難化するものと予想されてきた。
しかし実際には、当初の予想を覆し、共テの平均点が20年の「最後のセンター試験」を上回った。共テは全体に、複数資料や長い説明文の読解など、「思考力問題」を盛り込む出題傾向が顕著だったが、国語で「実用的な文章」が出題されないなど、過去2回の試行調査より難度を抑えた出題となっていた。
科目別に見ると(表1)、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・B、生物、地学基礎、倫理などで平均点がアップし、英語リーディング、同リスニング、国語もほぼ前年並みの平均点となった。特に、文系・理系ともに受験する基幹科目である、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・Bのアップが大きく影響した。また、理科②(発展科目)において、生物と化学の間の平均点差が20点を超えたため、得点調整が行われた結果、物理・化学の平均点も前年を上回り、理系受験生を後押しした。
平均点が文系・理系ともにアップしたため、「やや強気~初志貫徹」の出願傾向につながった。このうち、成績上位層は難関校へのチャレンジ志向につながり、中~下位層は手が届くレベルの公立大へ流れたものと見られる。
ただし、英語リスニングであまり得点が伸びず、化学基礎・生物基礎がマイナス要因となった文系は、理系に比べやや慎重な出願となった模様だ。
急な選抜方法の変更が局所的に志願動向に影響
21年入試はコロナ禍の影響で、早くから発表していた実施方法を変更する国公立大があり、志願動向に局所的な影響を与えた。
入試改革初年度のため、個別試験(以下、2次)でも「思考力・表現力・判断力」を測る、または「主体性・多様性」を評価するため、多様な入試方式の変更を各大学が発表していた。
しかし、感染拡大防止のため、接触を抑える変更(集団面接・討論を個人面接に変更、個人面接のオンライン化、実技を動画提出に変更、2次自体の中止と共テの成績・書類審査等による合否判定への変更)や、長期休校措置による「学業の遅れ」、スポーツ・文化活動の大会や各種資格・検定の中止・延期への配慮などから、調査書等の点数化を中止する、といった再変更を行う大学が続出した。
こうした「コロナ禍対応」で最大の変更は、横浜国立大が選抜要項の段階で発表した、21年入試限定の2次中止だろう。経済・経営・理工・都市科学では、学科試験(2~3教科)を課していたが、代わりに各学部が指定した共テの教科・科目の得点を利用し、あらためて2次の配点として重みづけを行った。また、教育は集団面接・小論文・実技の代替措置として、写真、動画、レポート等の提出物を設定した。
2次逆転が不可能になり、なおかつ自己採点のボーダーラインが高めに出たことから敬遠され、全学の志願者はほぼ半減(45 %減)した。
年が明けてからも、宇都宮大、信州大-人文・経法、山陽小野田市立山口東京理科大が2次の実施を中止し、共テによる合否判定に切り替えた。その結果、志願者は宇都宮大(全学で12 %減)、信州大-人文(前期39%減、後期25 %減)・経法(前期17%減)、山陽小野田市立山口東京理科大(全学で26 %減)と大幅に減少した。
21年入試限定で中止されたものに「学外試験会場」も挙げられる。
2次の面接等をオンライン実施に切り替えた長野県立大・名桜大、上記の信州大-人文・経法、山陽小野田市立山口東京理科大や、三重大・山口大・長崎大・宮崎大・鹿児島大・秋田公立美術大・宮崎公立大が学外試験会場の設置を取りやめた。
一方、予定通り設置した都留文科大(12 会場:13%減)や下関市立大(6会場:12%減)は、遠距離進学を敬遠する傾向から、志願者が集まりにくかったと見られる。
【ここポイント!】
共テの平均点アップが受験生を後押し
「超地元志向」で公立大後期が人気
コロナ禍による入試変更も影響
地区・系統ごとに見ると?
「西高東低」の志願状況。遠隔地への受験を敬遠か
全国6地区の志願動向(グラフ③)を見ていこう。北海道・東北(9%減)と関東・甲信越(5%減)がかなり減少したのに対し、関西(1%減)は微減、北陸・東海と九州は前年並みに達し、全体的に「西高東低」となった。中~西日本で地元国公立志向が強まったものと見られる。
各地区とも、従来から地元志向が強いので、基本的に地区内で出願が完結するが、周囲の地区からの影響が及ぶケースもある。
コロナ禍による遠隔地敬遠の「障壁」について、受験生の流出入の関係性が高い「東北と関東」の動きから見てみよう。東北地区では弘前大(32 %減)・岩手大(7%減)・秋田大(14%減)・福島大(17%減)で志願者減。それに比べ、関東地区では茨城大(12 %増)・群馬大(10%増)・千葉大(13%増)が大幅増、埼玉大(1%増)も微増。北~東関東の受験生は、従来は東北方面への進出が見られたが、21年は共テの平均点アップと「超地元志向」が相まって、東北地区には進出しなかったものと見られる。東北地区は、従来は北陸・東海、関西からの進出も多いが、21年はその流れも止まったようだ。
社会福祉・薬・看護など、コロナ不況で資格志向が強まる
次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ④)。全体的に文理ともにやや減少する中、社会・社会福祉、薬、医療・看護、家政・生活科学が志願者増。また、農・水畜産・獣医、医も微減に留まっている。医は後期募集停止が相次いだことを考えると、安定人気ともいえる。
文系では経済・経営・商、国際・国際関係、外国語の減少が目立つ。コロナ不況に伴う就職内定率の低下が影響した模様。特に国際・国際関係、外国語の場合は、観光業や航空会社など、主な就職先がコロナ禍で打撃を受け、採用が冷え込んだことや、これもコロナ禍の影響で海外留学が困難になったことが要因といえる。
一方、理系では理の9%減が目立つ程度で、相対的な「文低理高」状態といえる。
増加した4系統や、医の安定人気からは、コロナ不況に由来する資格志向の復活が見て取れる。医療現場への関心の高まりや、ワクチン開発などメディアの露出度が高いのも要因であろう。公立大の学部増設(福島県立医科大-保健科学、和歌山県立医科大-薬)も要因の一つ。共テの生物の大幅易化も、農や看護系への出願をあと押ししたものと見られる。
ただし、同じく資格系の教員養成は、後期の募集停止が多かった(新潟大・岐阜大・高知大・長崎大・琉球大)ことに加え、教員を取り巻く環境の改善が進まず、人気低下が続いている。
【ここポイント!】
「関東→東北」ルートをはじめ、地域を越えた出願の流れが止まる
医療系の資格志向が復活か
大学・学部ごとに見ると?
「前年の反動」や入試科目・募集人員の変更は要注意
大学・学部別の21年の志願状況を読み解くためには、次の5つのポイントを押さえておこう。①~④は、22年一般選抜の志望動向を予測する時にも活かせるポイントだ。
さらに、21年入試の特殊事情として、⑤のような、コロナ禍による今年度限定の急な変更も挙げられる。
①前年度の倍率アップダウンの反動
受験生は前年の倍率や、志願者の増減を気にする。高倍率や倍率アップ、志願者増なら敬遠、低倍率や倍率ダウン、志願者減なら人気を集めるため、前年の反動、さらには1年おきに増減を繰り返す“隔年現象”が起きやすい。
②入試科目の変更、科目数の増減
入試科目数の増減、新方式実施、2段階選抜の廃止(導入)や予告倍率緩和(引き締め)など、負担の変化が志願者増減に結びつく傾向がある。また、共テ英語のリーディング・リスニングの配点比率や、調査書等の点数化、面接の追加なども影響する可能性が高い。
③学部・学科の増設・廃止、募集人員の変更
後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の募集人員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。また、学部・学科の新設や、新たに前・後・中期で入試を実施、あるいは後期(または前期)を募集停止したりする場合、周囲の大学・学部に与える影響は大きく、最大級の変動要因となる。
④他大学への「玉突き」
志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、後期日程の廃止・縮小、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。
⑤コロナ禍による変更
前述の通り、コロナ禍の影響で入試方式の変更を行った大学が見られた。特に、2次の実施を取りやめ、主に共テの成績による判定に切り替えた大学・学部は志願者大幅減となった。
具体例として、千葉大-工、東京都立大-人文社会、大阪大-薬を紹介する(以下、【前】=前期日程、【後】=後期日程の略)。
例1:千葉大-工【前】【後】
千葉大-工【前】【後】は、前期の2次で英語外部検定を新規利用(→②)、前年の志願者減(前期6%減、後期13%減)の反動(→①)もあり、志願者は前期10%増、後期28%増。一方、横浜国立大-理工【前】【後】は2次の実施を中止した影響で志願者大幅減(前期50%減、後期55%減。→⑤)、2次逆転を狙う志望者層が千葉大-工、東京農工大-工(前期29%増、後期13%増)に流入したものと見られる(→④)。
例2:東京都立大-人文社会【前】【後】
東京都立大-人文社会【前】【後】では、一般選抜の募集人員を「前期131人→118人、後期25人→10人」に削減(→③)。前期の2次の変更(外国語→小論文。→②)、前年の志願者増(前期10%増、後期11%増)の反動もあり(→①)、志願者は「前期15%減、後期34%減」。千葉大-文【後】(18%増)などに影響した(→④)。
例3:大阪大-薬【前】
大阪大-薬【前】は、2段階選抜の予告倍率を「募集人員の約4倍→約2.5倍」に引き締め、2次に小論文・面接を追加(→②)。いずれも敬遠材料となり、志願者は33%減。新設の和歌山県立医科大-薬【前】(→③)への志望変更があったものと見られる(→④)。
志願者最多は6年連続で千葉大。神戸大・東京農工大が大幅増
表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧にした。国公立の難関~準難関校が連なる中で、特に注目されるのが千葉大・神戸大の志願者大幅増だ。
【難関校】志願者数で第3位の東京大(2%減)は、最難関の文科一類(10 %減)・理科三類(7%減)の減少が目立った。第2位の神戸大は10%増、難関大志望者に「やや強気」な中にも安全志向が働き、京都大(4%減)・大阪大(6%減)から志望変更と併願増があった模様。また、北海道大(12 %減)は他地区からの流入減と見られる。
この他、表2以外の大学も含めると、名古屋大(4%増)・九州大(5%増)が増加、東北大(増減なし)・一橋大(1%増)が安定、東京医科歯科大(13%減)・東京工業大(15%減)が大幅減となった。名古屋大・九州大は難関大志望者の地元志向の強まり、東京工業大は生命理工学院の後期募集停止が要因と見られる。東北大は文系・理系入試の導入2年目の経済が人気を集めた(前期23%増、後期11 %増)。
【準難関校】志願者数が最も多い国公立大は、6年連続で千葉大となり、前年比13%増。法政経・教育・理・工・薬の前期(一部学科を除く)の2次で英語外部検定が利用可能になったこともあるが、最大の要因は2次を中止した横浜国立大(45%減)からの志望変更と見られる。
筑波大は前期の募集人員を分割し、入学後に専門を決める総合選抜(文系・理系の大括り募集)を導入。さらに学類・専門学群選抜でも、学群・学類によって募集人員の変更(2学類で前期募集停止、3学類で後期募集停止、5学類で後期新規実施など)、2段階選抜の新規実施や予告倍率変更など、多彩かつ複雑な入試変更を行ったが、志願者は微減(2%減)に留まった。
その他の準難関校は、東京農工大(16%増)・岡山大(10%増)が大幅増。埼玉大(1%増)・東京都立大(2%減)はほぼ前年並み、22年に「大阪公立大」として統合予定の大阪市立大・大阪府立大も、いずれも前年並みを保った。一方、広島大(8%減)・熊本大(6%減)はやや減少、東京外国語大(19%減)・金沢大(23%減)は大幅減となった。東京外国語大はコロナ禍による国際・外国語系統の人気急落、金沢大は全学類の後期募集停止が主要因となった。
【国公立中堅校】各地区の国公立大中堅校では、前年の志願者増減の極端な反動が随所に見られた。また、地方公立大で大幅増が目立つ。国立大の場合、理工系を中心とした学部改組(複数学科を1学科か、より少数の学科に統合)、学校推薦型・総合型への募集人員の移行も影響した模様。特に変動が大きかった主な大学は次の通り(表3に掲載した大学は除く)。
[1] 国立大
【志願者増】茨城大12%増、群馬大10%増、三重大18%増、山口大19%増、宮崎大19%増、鹿児島大11%増
【志願者減】弘前大32%減、秋田大14%減、福島大17%減、宇都宮大12%減、新潟大13%減、山梨大14%減、福井大19%減、滋賀大14%減、奈良女子大15%減、島根大14%減、佐賀大10%減、大分大22%減
[2] 公立大
【志願者増】埼玉県立大15%増、富山県立大28%増、長野大12%増、静岡県立大13%増、愛知県立大13%増、兵庫県立大12%増、広島市立大23%増、福岡県立大37%増
【志願者減】秋田県立大16%減、国際教養大12%減、福井県立大19%減、都留文科大13%減、京都府立大14%減、下関市立大12%減、高知工科大20%減
表3では、志願者の増加率が高い順に上位10大学を示した。表2と異なり、公立が9大学、単科大学(1学部のみ)が6大学を占める。また、8大学で医、歯、薬、医療・看護に関する学部・学科を有しているのも特徴といえる。
1位の福島県立医科大は志願者が倍近くに増加。前年(59%減)の反動に加え、保健科学部の増設が人気を集めた模様だ。
同校も含め、9大学で前年の志願者大幅減の反動が出ている。ちなみに、昨年は志願者129%増で1位だった島根県立大は、学部を分割(総合政策→国際関係・地域政策)したにもかかわらず、60%減と過半数を割り込んだ。また、石川県立看護大・公立小松大の場合は、金沢大の全学類の後期募集停止が影響し、併願が増加したものと見られる。
なお、別日程で一般選抜を実施した新設の三条市立大は、コロナ禍対応の学外試験会場(3会場)設置もあり、募集人員72人に対し、志願者802 人(志願倍率11.1 倍)を集めた。
志願倍率トップの学部は岐阜大-医〈医〉の後期
次は、各入試日程で特に志願倍率(志願者数÷募集人員)が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4~6。同倍率が多数の場合は20を超えて掲載。医学部医学科や看護学科などは1学部として扱う)。なお、「受験者数÷合格者数」で割り出す、実際の倍率を「実質倍率(または競争率)」という。
まず、表4・5の「高倍率の学部等」から見ていこう。前期では、医学部医学科が目立ち、「医学部人気」は収まったとはいえ、難関ぶりは変わらない。また、大都市圏以外の大学が多く、“超地元志向”がうかがえる。この他、筑波大-社会学類【前】・心理学類【前】の場合は、総合選抜(大括り募集)の導入に伴い学類選抜の募集枠を縮小(社会学類64人→40人、心理学類38人→26人)した影響が出ている。
後期・中期は募集人員が少なく、実施学部・学科も減っているので、最高倍率(45.6倍)の岐阜大-医〈医〉【後】など、前期以上の「超高倍率」になるが、欠席率の高さ(例えば後期の場合、前期の入学手続者が欠席するので、志願者の約50%が欠席)を割り引いて考える必要がある。公立大は中期の実施校が増え、後期も国立大に比べ多く残っていることから、併願先となり得る私立大が限られる大都市圏以外の地域では、志願者が集中しがちだ。
一方で、表6のように前期で志願倍率が1倍台のケースもある。理、工、農、医療・看護といった学部・学科が多いことが特徴だ。また、金沢大-国際学類【前】の場合は後期募集停止に伴う募集人員増(48人→53人)も影響した。なお、高知工科大-環境理工学群【前】は隔年現象(19年10%減→ 20 年28 %増→ 21 年71 %減)によるもので、22年は再び揺れ戻す可能性があるので注意しよう。
【ここポイント!】
国公立大の志願状況を見るには「5つのポイント」を押さえよう
特に「前年の反動」には要注意!
(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2021年4月号)」より転載いたしました。