2021年度から、推薦入試は「学校推薦型選抜」、AO入試は「総合型選抜」となった。
入試改革の目玉の一つであり、2021年“新入試”の前半戦として注目されてきた。
日程や選考方法の変更など、コロナ禍に翻弄された両選抜の実施結果をレポートする。
※この記事は『螢雪時代・2021年5月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)
全体解説:
国公立大は実施方式の変化が志願動向に直結。
私立大学校推薦型・総合型は合格者大幅増で易化!?
国公立大:共通テスト免除
総合型は拡大したが倍率低下
『螢雪時代』では、国公立大の共通テストを課さない(以下、共テ免除)学校推薦型と総合型について、21年度入試結果の調査を行った。20年12月25日現在(調査締切日)の、共テ免除学校推薦型の集計データ(85 校:志願者数=約1万8千人)では、前年比で「志願者2%減、合格者2%増」、倍率(志願者数÷合格者数。以下同じ)は2.3倍→2.2倍とややダウンした。一方、同総合型の集計データ(49 校:志願者数=約6千人)では、前年比で「志願者4%増、合格者16 %増」、倍率は3.3倍→3.0倍とダウンした。
21年度は、総合型の新規実施や募集枠拡大、学校推薦型の「共テを課す」方式への移行が目立った(実施学部数は、20年→21年で「学校推薦型=共テ免除348→321・共テ課す228→254、総合型=共テ免除200→231・共テ課す125→147」、募集人員は「学校推薦型:前年並み、総合型29%増」)。この変化が、ほぼ全体的な志願・合格動向を決定付けたといえる。
共テ免除学校推薦型の内訳(グラフ1)は、志願者数が「国立大4%減、公立大1%減」、合格者数は「国立大:前年並み、公立大3%増」で、倍率は国立大2.5倍→2.4倍、公立大2.2倍→2.1倍とわずかにダウンした。
一方、共テ免除総合型の内訳は、志願者数が「国立大:前年並み、公立大14 %増」、合格者数は「国立大15%増、公立大18%増」で、倍率は国立大3.4倍→3.0倍、公立大3.2倍→3.1倍と、合格者大幅増の影響でダウンした。
学校推薦型・総合型を合計して学部系統別に見ると、経済・経営・商、文・人文・教養、教員養成の志願者増に対し、社会・社会福祉、農・水畜産・獣医の志願者減が目立った。
私立大:学校推薦型・総合型
コロナ禍が志願者減に影響大
『螢雪時代』では、私立大の学校推薦型(公募制・指定校制)と総合型についても調査した。従来の公募制推薦を「総合型」に変更する大学が目立ったため、学校推薦型(公募制)と総合型の合計で志願・合格状況を集計し、前年度と比較した。20年12月25日現在(調査締切日)の集計データ(140校:志願者数=約26万7千人)では、前年比で「志願者7%減、合格者15%増」、倍率は3.4倍→2.8倍とダウンした(グラフ2)。
また、学校推薦型(指定校制)の志願者(47 校:約1万2千人)もほぼ前年並みに留まった。
当初、共テなど“新入試”による2021年一般選抜を回避するため、学校推薦型・総合型に志願者が大量流入すると予想された。それが覆されたのは、新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)とその対応の影響が大きい。
3月~5月の臨時休校措置で、①高校は「学業の遅れ」対策に注力せざるを得ず、進路指導に遅れが生じた。また、②スポーツ・文化活動の諸大会・行事の中止、各種資格・検定の中止・延期など、出願資格・要件を満たせない不安が生じた。さらに、③選考方法の急な変更(集団面接→個人面接、面接等のオンライン化など)、④京阪神の「学科試験中心、併願可」のタイプは家計不安から併願減、⑤総合型は出願開始の繰り下げ(9月1日以降→同15日以降)で出足が遅れた、などの諸要因が影響したと見られる。
一方で、学校推薦型(公募制)・総合型ともに、合格者を多めに出す大学が目立ち、学校推薦型では珍しい追加合格を出す大学さえあった。一般選抜の志願者減をあらかじめ想定し、一定の入学者を確保する意図と見られる。
地区別に見ると、志願者全体の約8割を占める京阪神(4.1倍→3.2倍)の大幅な倍率ダウンが注目される。京都産業大(5.0倍→3.9倍)、佛教大(4.7倍→3.1倍)、龍谷大(5.4倍→4.5倍)、大阪工業大(3.9倍→ 2.5 倍)、近畿大(5.1倍→ 4.0 倍)、摂南大(3.5倍→ 2.4 倍)、神戸学院大(4.2倍→3.0倍)など軒並み倍率ダウンし、易化したものと見られる。
主な学部系統ごとに見ると(グラフ3)、文理を問わず志願者減・合格者増で「文低理低」状態となった。特に法、経済・経営・商、教員養成、社会・社会福祉の大幅ダウンが注目される。
【ここポイント!】
国公立大は総合型の拡大が影響
私立大はコロナ禍の影響で志願者減、
京阪神は合格者大幅増で倍率ダウン
(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2021年5月号)」より転載いたしました。