入試動向分析

2019年 国公立大入試 志願者動向分析【2019年4月】

2019(令和1)年度

センターの易化と前年の“私立難化”が影響、後期・公立大中期まで粘る出願に

 

 2019年国公立大入試について、各大学・学部や学部系統などの人気度を示す「志願者動向」を分析する。さらに、これから目指す2020年入試の最新情報も紹介する。

 

※この記事は「螢雪時代(2019年4月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

センター試験の平均点アップで、文理ともに“初志貫徹”の堅実出願。国立・公立ともに中堅校が人気集める


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 国公立大の志願者数は1%増、志願倍率は4.6倍→4.7倍とややアップした。国立大の前年並みに対し公立大3%増、特に中期日程の増加が目立った。センター試験の平均点アップと、前年の「私立大難化」への不安感が影響し、国公立志向がやや強まったが、“超安全志向”からセンターの得点を生かす堅実出願となった。


志願者1%増。国立は前年並み、公立は3%増。中期が人気集める

 

 文部科学省の発表によると、2019年(以下、18年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は469,836人で、18年に比べ0.9%増加(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大は集計に含まれない)。そして、全募集人員(100,426人)に対する倍率(志願倍率)は18年4.6倍→19年4.7倍とややアップした(グラフ1)。4(6)年制大学の受験生数は前年比0.4%増(本誌推定)、センター試験(以下、セ試)の志願者数は1.0%減だが既卒者は増えた(2.6%増)ことも、国公立大の志願者増の素地となった。
 入試日程別に志願状況(グラフ2)と志願倍率の変化(18年→19年)をみると、前期は「0.3%増:3.2倍→3.2倍」、後期は「0.8%増:9.7倍→10.0倍」、公立大中期は「4.8%増:13.5倍→13.7倍」となった。募集人員の増減(前期0.2%増、後期2.1%減、公立大中期5.3%増)と比べ、前期・中期は順当、後期は予想外に集まり、実質的な“人気アップ”といえる。
 また、国立・公立を日程別に比べると、前期は「国立0.4%減、公立2.2%増」、後期は「国立0.5%増、公立1.6%増」と、前期は国立から公立へ流れる一方、後期は国立・公立ともに最後まで粘ろうという姿勢が見て取れる。
 なお、確定志願者数を出願締切日15時現在の公表数と比較してみると、短時間で約2万7千人も増え(18年は約2万1千人増)、受験生がぎりぎりまで熟慮した様子がわかる。これには、インターネット出願の普及(全体の約43%で導入:30大学で新規実施)も影響している。

 

グラフ1.大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移、表1.大学入試センター試験(本試験)科目別平均点

 
 

茨城大・滋賀大・大分大など、国公立とも中堅校が志願者増

 

 19年国公立大入試に影響を与えた要素は、大きくは次の4点だ。
 
(1)「私立大難化」で国公立に活路求める?!
 18年入試では、大都市圏の規模の大きい私立大で、定員超過率の抑制が厳しいまま固定され、合格者絞り込みによる難化が相次いだ。
 このため、受験生マインドは“超安全志向”とも言うべき状態に。前年に難化した私立大を避けるため、国立大志望者が併願先を公立大後期・中期に求めるとともに、もともと私立大志望の受験生も、セ試を受験している場合は、その得点を生かす(以下の(3)を参照)ためにも、受験機会を増やす一環として、中堅国公立大も積極的に狙う戦略に転じた模様だ。
 また、19年入試では、国公立大で文系・教員養成系の縮小がほとんどなかったことも、国公立大志向がやや復活した要因といえよう。
 実際、国立では茨城大(14%増)・静岡大(11%増)・滋賀大(29%増)・大分大(33%増)など、公立では岩手県立大(28%増)・静岡県立大(22%増)・兵庫県立大(11%増)・北九州市立大(11%増)など、中堅クラスで大幅増が目立つ。
 
(2)21年度「入試改革」も影響?!
 21年度から「入試改革」(論理的思考力・表現力、多面的・総合的な評価、英語4技能などの重視)がスタートする。セ試が廃止され、数学・国語の記述式問題、英語外部検定の併用などの新機軸を盛り込んだ「大学入学共通テスト」が実施される。
 これに対する過度な意識も、確実に合格を決めたい“超安全志向”に結びついた模様。19年の現役生は「入試改革」と直接関係はないが、報道などで不安感はある。また、浪人すると「後がない」入試として激戦化しそうな20年入試に直面する。その事態を避けるためにも、後期・中期まで粘る意識が強まったと見られる。
 
(3)センター試験の易化
 国公立大志向の復活を後押ししたのが、セ試の平均点アップだ。科目別に見ると(表1)、物理、化学、生物基礎、地理B、倫理、「倫理、政治・経済」などで平均点がダウンしたが、国語と英語リスニングが大幅にアップした。
 このため、国公立大受験のセ試科目の標準となる、文系・理系に共通の5教科6科目(地歴・公民合わせて1科目として100点、理科1科目として100点の800点満点)の加重平均点(科目別平均点と受験者数から算出。ただし、理科基礎は2科目受験者の加重平均点で、追試を含む)を算出すると476.3点(得点率59.5%)で、前年に比べ15.2点もアップした。
 国語と英語リスニングという、文系・理系ともに受ける基幹科目が易化したため、受験生に国公立大への意欲が高まり、ボーダー付近の学力層も公立を中心に積極的に出願したものと見られる。ただし、“超安全志向”のため1ランク上を目指さず、セ試の持ち点を生かした、初志貫徹ながら堅実な出願となった模様だ。
 
(4)公立大中期の増加
 推薦・AO入試の募集枠拡大のため、後期は募集人員減。それを補い、併願先として存在感を高めているのが「公立大中期」だ。
 公立大の新設や私立大の「公立化」に伴い、中期日程の実施校は、10年前の12大学から、20大学にまで増えた。19年入試では、18年開設の公立小松大、「私立→公立」に移行した公立諏訪東京理科大、学部改組した兵庫県立大‐社会情報科学、新見公立大‐健康科学で中期を新規実施。いずれも多くの志願者を集めた。

 

2017年国公立大入試日程別志願状況他


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文理ともにほぼ前年並みの「文理均衡」。北海道大・筑波大が増加、東北大が減少。前期で2段階選抜の不合格者が増加!


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 地区別では、中国・四国の減少が顕著。関西、九州からの流入が減少したと見られる。学部系統別では、全般的に「文理均衡」の中、理が減少、生活科学が増加した。難関~準難関校では、北海道大・筑波大・首都大学東京の増加、東北大・金沢大の減少が目立った。文理ともに「超安全志向」が影響し、極端な前年の反動が随所にみられた。

 

中国・四国で志願者減が顕著。関西、九州からの流入減か

 

 全国6地区の志願動向(グラフ3)を見ていこう。関東・甲信越(2%増)、関西(3%増)、九州(3%増)が増加、北海道・東北と北陸・東海は前年並みだったのに対し、中国・四国(5%減)のみ減少したのが目立つ。
 各地区とも地元志向が強いので、基本的に地区内で出願が完結するのだが、周囲の地区へ影響が及ぶケースもある。中国・四国の減少は、まさにその好例といえる。
 最大の要因は、山陽小野田市立山口東京理科大の大幅減(34%減)で、18年新設の薬学部が、初年度から中期のみ実施で、多数の志願者を集めた反動が強く出た。減少した志願者数は、地区全体の減少数の実に4割近くを占める。ただし、他の大学でも志願者減が目立ち、セ試の平均点アップにより、関西、九州の両地区からの流入が鈍った模様(逆にセ試が難化した年は、ランクダウンを図って流入が増える)。
 関東・甲信越では、私立大の志願状況に前年ほどの勢いがない(2月末時点で、18年7%増→19年2%増)。前述の通り、前年に合格者の厳しい絞り込みで難化した私立難関~中堅上位校を敬遠し、中堅国公立大に活路を見出そうとする、首都圏受験生の動向が見て取れる。
 そうした受験生の進出先として、公立諏訪東京理科大‐工の前期・中期の新規実施の影響が大きかった。いずれの日程も私立理系型(3教科)のため、従来からの私大専願者も含め、多数の志願者を集めた。同校の志願者数の合計は、地区全体の志願者増加数の6割近くを占める。
 一方、東北大の志願者6%減、筑波大の志願者9%増が示すとおり、東北地区の受験生が、セ試の平均点アップと堅実出願との兼ね合いで、関東地区の準難関校へ進出したものと見られる。
 北陸・東海地区では、公立小松大‐生産システム科学・保健医療・国際文化交流の前期・中期への新規参入と、新設の富山県立大‐看護が、北陸3県にまたがって影響を与えた(図1)。前・後期では、富山大・金沢大・福井大・石川県立看護大の関連する学部等から志望者が流入し、公立小松大の中期には上記から併願が集中したものと見られる。
 各地区のおもな大学に関する分析は、『螢雪時代』4月号掲載の「螢雪ジャーナル」をご覧いただきたい。

 

理が減少、経済・文・医は微減。医療は増加、生活科学が大幅増

 

 次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。理系で理の人気ダウン、家政・生活科学の人気アップが目立つものの、他の系統は文系・理系ともに「微減~微増」と安定し、全体に「文理均衡」状態といえる。ただし、経済・経営・商、文・教育・教養の微減に、ここ数年の「文系人気」が落ち着く兆しが見られる。
 医は、私立医学部の“不正入試”(合格者の現浪比や男女比などを操作)発覚の影響も考えられたが、志願者は微減に留まった。臨時定員増の期限が延長された次年度のため、安心して受験できたものと見られる。
 医療・看護系は、富山県立大‐看護の新設、公立小松大‐保健医療の前・中期新規実施、新見公立大‐保健科学の中期新規実施などが志願者2%増の要因となったが、公立単科大が多いこともあり、前年の極端な反動が見られた。

 

大阪大の後期募集停止の影響 併願先をどこに求めたか?

 
 

「前年の反動」や入試科目・募集人員の変更は要注意

 

大学・学部別の19年の志願状況を見るためには、次の4つのポイントを押さえておこう。
 
①前年度の倍率アップダウンの反動
 受験生は前年の倍率を気にする。高倍率や倍率アップなら敬遠、低倍率や倍率ダウンなら人気を集めるため、前年の反動、さらには1年おきに増減を繰り返す“隔年現象”が起きやすい。
 
②入試科目の変更、科目数の増減
 入試科目数の増減、新方式実施、2段階選抜の廃止(導入)や予告倍率緩和(引き締め)など、負担の変化が志願者増減に結びつく傾向がある。
 
③学部・学科の増設・廃止、募集人員の変更
 後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の募集人員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。また、学部・学科の新設や、新たに前・後・中期で入試を実施する場合、周囲の大学・学部に対する影響は大きく、最大級の変動要因となる。
 
④他大学への「玉突き」
 志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、後期日程の廃止・縮小、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。
 具体例として、福島大‐農学群、筑波大‐医学類、大阪市立大‐医(医)のケースを紹介する(以下、【前】=前期日程、【後】=後期日程の略)。

 

志願者の多い国公立大学、志願者の増加率が高い国公立大学

 

例1:福島大‐農学群【前】【後】
 福島大では農学群を新設(募集人員=前期60人・後期20人。→③)。隣県の山形大‐農(【前】25%減・【後】49%減)、茨城大‐農(【前】27%減・【後】42%減)、宇都宮大‐農【後】(30%減)の大幅減に影響を与えた(→④)。山形大‐農は前年の大幅増(【前】23%増・【後】115%増)、茨城大‐農はやはり前年の大幅増(【前】45%増・【後】23%増)の反動(→①)も影響したと見られる。
例2:筑波大‐医学類【前】
 医学類【前】は、2段階選抜の予告倍率を「募集人員の約5倍→約2.5倍」に引き締めた(→②)ため34%減。群馬大‐医(医)【前】の42%増、福島県立医科大‐医【前】の46%増に影響を与えた(→④)。群馬大‐医(医)【前】は前年の37%減、福島県立医科大‐医【前】はやはり前年の33%減の反動(→①)も影響したと見られる。
例3:大阪市立大‐医(医)【前】
 医(医)【前】は、推薦・AO導入に伴う募集人員減(95人→80人。→③)のため、志願者は24%減。岡山大‐医(医)【前】(11%増)、和歌山県立医科大‐医【前】(71%増)の大幅増に結びついた(→④)。岡山大‐医(医)【前】は前年の18%減、和歌山県立医科大‐医【前】は前年の35%減の反動も影響したと見られる(→①)。

 

志願者数最多は4年連続で千葉大。中堅国公立大で大幅増が目立つ

 

表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧にした。国公立の難関~準難関校が連なるが、“超安全志向”から、成績上位の固定層を除き、志願者はやや減少気味だ。
【難関校】志願者数で第2位の北海道大は前年比5%増だが、前期の「前年並み」に対し、後期は大幅増(12%増)。難関校の中で最も後期の募集枠が大きい(募集人員の約2割)ため、東日本の難関校の貴重な併願先となった。
 その他の難関校は、全体にやや減少傾向。東京大では文科一類の6%増と、2段階選抜の予告倍率を引き締めた理科三類の10%減とで対照的な結果となった。京都大では前期が4%減の一方、法【後】が前年の反動から大幅増(38%増)となった。この他、表2以外の大学も含めると、難関校では東京医科歯科大(4%増)が増加、東京工業大・名古屋大・神戸大がほぼ増減なし、東北大(6%減)・一橋大(8%減)・大阪大(4%減)・九州大(2%減)が減少した。
 東北大は文【前】・法【前】の募集人員減に加え、前年の9%増の反動と見られる。一橋大はセ試で理科の配点が180点中100点と高い、社会【前】の大幅減(22%減)が影響した。一方、東京工業大は「類別募集→学院別募集」の移行と、学費値上げ(535,800円→635,400円)を行ったが、いずれも影響は小さかった模様。
【準難関校】志願者数が最も多い国公立大は、4年連続で千葉大だが、教育【前】の募集人員減などが影響し、全体では微減となった。
 一方、首都大学東京は前年比4%増、前年の全学的な改組(都市教養を4学部に分割)の認知度が高まったことが要因と見られる。また、“公立大人気”を象徴する志願者増ともいえる。
 その他の準難関校では、筑波大(9%増)・熊本大(5%増)の志願者増、東京農工大(13%減)・金沢大(12%減)の大幅減が目立つ。いずれも前年の反動であり、特に筑波大は隔年現象(17年9%増→18年13%減)だ。また、東京外国語大は学部増設(国際日本)にもかかわらず、志願者3%減。同学部が2次で課した「英語スピーキング」が敬遠されたと見られる。
【国公立中堅校】前述の通り、志願者が増えたのは各地区の国公立大中堅校だった。難関~準難関校に比べて大幅増の大学が目立つが、前年の極端な反動が随所に見られた。国立大の場合、理工農系学部の改組(複数学科を1学科か、より少数の学科に統合)の影響もあった模様。特に変動が大きかった主な大学は次の通り。
[1] 国立大
【志願者増】弘前大12%増、福島大11%増、茨城大14%増、群馬大10%増、山梨大16%増、静岡大11%増、愛知教育大11%増、滋賀大29%増、山口大10%増、高知大18%増、大分大33%増、宮崎大16%増
【志願者減】室蘭工業大21%減、秋田大23%減、宇都宮大10%増、島根大25%減
[2] 公立大
【志願者増】岩手県立大28%増、秋田県立大15%増、富山県立大21%増、山梨県立大16%増、長野大10%増、長野県立大69%増、静岡県立大22%増、愛知県立大14%増、京都府立大10%増、神戸市外国語大27%増、兵庫県立大11%増、北九州市立大11%増、福岡県立大32%増、福岡女子大10%増、長崎県立大14%増、名桜大15%増
【志願者減】高崎経済大16%減、福知山公立大17%減、島根県立大22%減、下関市立大12%減、山口県立大12%減、山陽小野田市立山口東京理科大34%減
 表3では、志願者の増加率が高い順に上位10大学を示した。表2と異なり、公立が7大学を、医療系が5大学を占める。
 1位の長野県立大は志願者が約7割増。学部(グローバルマネジメント・健康発達)が周囲と重複しない分野で、中期を実施するため、北関東~信越(北陸新幹線の沿線)の志望者の貴重な併願先として人気を集めた模様だ。
 この他、7大学で前年の志願者大幅減の反動が出ている(ちなみに、昨年は志願者2倍増で1位だった山陽小野田市立山口東京理科大は、前述の通り34%減)。滋賀大では私立文系型(3科目)でも受験できる経済が人気を集め、茨城県立医療大では筑波大‐医療科学類の後期募集停止も影響したものと見られる。

 

前期日程で高倍率の学部など、後期日程・公立大子中期日程で高倍率の学部等

 
 

志願倍率トップの学部は愛知県立大‐看護の後期

 

 次は、各入試日程で特に志願倍率(志願者数÷募集人員)が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4~6。同倍率が多数の場合は20を超えて掲載。医学部医学科や看護学科などは1学部として扱う)。なお、「受験者数÷合格者数」で割り出す、実際の倍率を「実質倍率(または競争率)」という。
 まず、表4・5の「高倍率の学部等」から見ていこう。前期では、医学部医学科が連なり、「医学部人気」が落ち着いたとはいえ、難関ぶりは変わらない。その中で、前年の改組で誕生した首都大学東京‐法【前】が、2年目で認知度が高まり、高倍率になったことが注目される。
 後期・中期は募集人員が少なく、実施学部・学科も減っているので、最高倍率(45.8倍)の愛知県立大‐看護【後】など、前期以上の「超高倍率」になるが、欠席率の高さ(例えば後期の場合、前期の入学手続者が欠席するので、志願者の約50%が欠席)を割り引いて考える必要がある。公立大は中期の実施校が増えたことに加え、後期が国立大に比べ多く残っていることから、併願先たり得る私立大が限られる大都市圏以外の地域では、志願者が集中しがちだ。
 一方で、表6のように前期で志願倍率が1倍台のケースもある。理、工、農、医療・看護、教員養成系の学部・学科が多いことが特徴だ。また、広島大‐文【前】の場合は、前年の大幅増(37%増)の反動によるもので、20年は再び揺れ戻す可能性がある。

 

前期日程で高倍率の学部など、後期日程・公立大子中期日程で高倍率の学部等

 
 

前期の第1段階選抜の不合格者は3,660人、前年より約2割増!

 

 最後に、前期日程の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。予告した学部(62大学155学部等)に対し、実際に行ったのは28大学48学部等と、前年より7大学8学部等も増え、第1段階選抜の不合格者も「18年3,070人→19年3,660人」と前年比19%も増加した。不合格者の内訳は、国立が10%減(240人減)に対し、公立が147%増(830人増)。“公立大人気”の反映といえそうだ。中でも増加分の過半数を占めたのが、最も不合格者が多かった首都大学東京で、昨年より倍増(428人→981人:129%増)した。難関校志望者の堅実出願が、かえって裏目に出たといえそうだ。
 東京大では全6科類で第1段階選抜を行い、不合格者が増加(826人→962人:16%増)。一方、一橋大では不合格者が約6割も減少した(410人→172人)。この他、第1段階での不合格者が多かった大学は、新潟大(168人)、和歌山県立医科大(124人)、信州大(123人)など。
 また予告大学のうち、18年に第1段階選抜を実施(または予告)しなかった弘前大・筑波大・群馬大・新潟大・信州大・浜松医科大・熊本大・福島県立医科大・富山県立大・名古屋市立大・和歌山県立医科大が不合格者を出し、18年は不合格者を出した秋田大・金沢大・三重大・高知大は実施しなかった。


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20年入試の変更点を速報! 宇都宮大・群馬大が「共同教育学部」を設置。医学部医学科で募集枠縮小が目立つ


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 20年入試は、“入試改革”初年度の21年入試を直前に控え、「絶対に現役合格」という意識が強く働き、“超安全志向”の激戦が予想される。一方で、新増設や募集人員、入試科目等の変更は例年になく少ない。その中で、公立の新増設・改組、医学部の募集枠縮小、面接重視の科目変更が注目される。

 

国立大2次で面接重視の変更。県立広島大が全学規模で改組

 

 ここからは20年国公立大入試の特徴と、志願動向に影響しそうな変更点を見ていこう。
 21年度「入試改革」を直前に控えた20年入試では、「絶対に現役合格」という意識が強く働き、19年以上の“超安全志向”が予想される。受験機会を増やすため、推薦・AOや後期・中期に殺到し、志望校のランクダウンや、前年の入試結果を極度に意識した出願が予想される。この場合、思わぬ競争激化で苦戦を強いられる可能性が高い。受験生には“超安全志向”のワナに陥らない、冷静な判断が求められる。
 一方、各大学は21年入試の対応に追われているため、新増設・改組や科目の変更、推薦・AOの導入などは例年より少ない。その点は、落ち着いて対策に取り組める環境といえる。
 
(1)推薦・AO入試の導入・廃止
【推薦入試】鹿児島大では、教育を除く8学部でセ試を課す「自己推薦型入試」を新規実施。信州大‐経法でもセ試を課す推薦を導入する。
【AO入試】新潟大‐工、神戸市外国語大‐外国語1・2部、高知工科大‐情報学群でセ試を課さないAOを導入。千葉大‐教育ではセ試を課す推薦をAOに移行する。一方、筑波大‐物理学類ではセ試を課さないAOを廃止する。
 
(2)新増設・改組
 新増設や改組で注目すべき事例は、公立大に目立つ(以下、新設大学・学部の名称は仮称)。
最も規模が大きいのは、県立広島大が予定する全学的な再編だ(図2)。人間文化・経営情報の2学部を「地域創生学部」に統合し、定員を削減(220人→200人)。生命環境学部も「生物資源科学部」に改組し、やはり定員減(165人→140人)。保健福祉学部は「5学科→1学科」に統合し、コース制(5コース)を採用する。
 公立大の学部増設は、新潟県立大‐国際経済、福知山公立大‐情報が予定されている。また、首都大学東京が20年4月の名称変更を手続中で、旧称の「東京都立大学」が復活する予定だ。
 国立大では、宇都宮大と群馬大の両教育学部が協力し、カリキュラム等を共同設計・実施する「共同教育学部」を設置する。入学者は、各学部で学びつつ、「双方向遠隔メディアシステム」などで相互の授業を受けることになる。

 

前期日程で高倍率の学部など、後期日程・公立大子中期日程で高倍率の学部等

 

(3)日程・募集人員の変更
 一般入試の日程変更では、鳥取大‐医(医)、広島大‐医(医)、福島県立医科大‐医の後期募集停止、「私立→公立」に移行した公立千歳科学技術大(19年入試は私立大として別日程実施)の前期・中期の新規実施が注目される。
 募集人員の変更では、上記の後期募集停止もあわせ、北海道大・千葉大・熊本大など、医学部(医学科)で定員減や募集人員減の予告が続出している。深刻な医師不足の対策として実施された「臨時定員増」が期限を迎えたためで、最終的には再申請すると見られるが、人数を減らして申請する可能性もあるので要注意だ。
 
(4)入試科目の増減など
 宇都宮大・群馬大の共同教育学部では、入試についても、募集単位と2次の選抜方法の共通化を図る。募集単位は「教育人間科学系、人文社会系、自然科学系、芸術表現・生活・健康系」の4系統に集約し、大括り募集を実施。また、2次では募集単位ごとに異なっていた選抜方法を、前期では「小論文・面接」、後期(群馬大のみ実施)では「面接」にそろえる。
 この他、東北大‐経済【前】【後】で「理系入試」を導入、静岡大‐工【前】【後】の2次で英語を追加、九州大‐医(医)【前】・歯【前】の2次で面接を追加する。
 英語外部検定利用では、鹿児島大が全学の前・後期で基準を変更。英検準1級などの取得者はセ試の外国語を満点と見なしていたが、「セ試の英語筆記200点中160点以上、同リスニング50点中40点以上の場合」との条件が加えられた。条件に満たなくても各得点の25%が加点されるものの、ややメリットが薄れたといえる。
 
 以上、2月下旬までに判明した、2020年国公立大入試の主な変更点の一部を紹介した。詳細は次号(螢雪時代5月号)の特別付録『速報!国公立大学入試科目・配点一覧』を見てほしい。さらに今後、各大学が6~7月に発表する「選抜要項」(入試の概略を紹介した冊子)、10~12月に発表する「募集要項(出願書類を備えた正式な入試要項)」などで必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)

この記事は「螢雪時代(2019年4月号)」より転載いたしました。


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