入試動向分析

国公立大&私立大 2018年入試結果&2019年入試速報【2018年8月】

2018(平成30)年度

大都市圏の私立大は文系を中心に、厳しい合格者絞り込みで難化!

 

 夏休みを前に、各大学の2018年(以下、18年)入試結果データが出そろった。ここでは、国公立大、私立大それぞれの一般入試結果を最終チェックし、19年の動向を予測。さらに、19年入試の最新情報も紹介する。

 

※この記事は『螢雪時代・2018年8月号』の特集より転載(一部、webでの掲載にあたり、加筆・訂正を施した)

 

 

一般入試の合格状況を総ざらい!大都市圏の難関?中堅私立大が難化、大規模改組の地方国立大が易化か

 

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 18年の一般入試結果を見ると、国公立大は「志願者1%減、合格者1%減」、私立大は「志願者7%増、合格者4%減」。私立大が一般・センター利用ともに倍率アップした。大都市圏の難関~中堅私立大が文系を中心に難化、準難関国公立大がやや易化した模様だ。学部系統別では、国公立は医・薬が倍率ダウン、私立は文系が軒並み倍率アップした。

 
 

国公立大:
公立大後期が倍率ダウン。高倍率でも医・薬が易化か

 

 国公立大の18年一般入試の実施結果を『螢雪時代』で調査したところ、全体の集計では17年に比べ、国立大が「志願者2%減、合格者1%減」で、倍率(志願者÷合格者。以下、特に注記のない場合は同じ)が17年・18年とも4.2倍だった。一方、公立大(別日程実施の3大学を除く)は、新設大学・学部も影響し「志願者1%増、合格者1%増」だったが、倍率は17年4.7倍→18年4.6倍とややダウンした。
 日程別にみると(グラフ2)、公立大後期は志願者減で倍率ダウン。一方、公立化2年目の長野大、18年新設の長野県立大などの参入で志願者大幅増の公立大中期は倍率アップした。
 センター試験(以下、セ試)の英語リスニングと国語の難化による得点伸び悩み(グラフ1)が影響し、安全志向が高まった。さらに、国立大の「文系・教員養成系縮小」の学部改組、推薦・AO入試の募集枠拡大に伴う後期縮小の影響もあり、国立大文系志望者が、新増設の多い公立大への志望変更、さらに私立大文系学部への併願を増やしたものと見られる。
 各大学の倍率(全学の合計)の変動を見てみよう。難関校では、法・社会の2学部で推薦入試の導入に伴い後期を募集停止した一橋大が、志願者8%減に対し合格者3%減に留まったため、倍率ダウン(4.7倍→4.4倍)。一方、東京大の倍率は3.2倍でほぼ前年並み。また、後期を募集停止して2年目の大阪大は倍率アップ(2.3倍→2.5倍)、前年の前期倍率ダウン(2.5倍→2.3倍)の反動とみられる。
 この他、北海道大(3.7倍→3.8倍)・東北大(3.0倍→3.3倍)が倍率アップ、神戸大(4.0倍→3.9倍)がダウンした。
 準難関校では、学部増設(情報科学)を伴う全学的な改組を行った広島大(3.2倍→3.1倍)をはじめ、筑波大(4.1倍→3.7倍)・千葉大(4.9倍→4.5倍)・東京外国語大(4.9倍→4.3倍)・横浜国立大(4.9倍→4.7倍)・熊本大(3.1倍→2.8倍)・大阪市立大(4.6倍→4.0倍)など、全体的に倍率ダウンが目立った。
 広島大の他に、比較的大規模な改組を行った国公立大では、香川大(4.1倍→3.6倍)・都留文科大(5.9倍→5.1倍)が倍率ダウンし、富山大(4.7倍→5.1倍)・島根大(4.4倍→4.6倍)・琉球大(3.6倍→4.0倍)が倍率アップした。
 なお、17年から「私立→公立化」し、18年から分離分割方式(前期・中期)で実施した長野大(17年は私立大として実施)は4.2倍、18年新設で、やはり分離分割方式(前期・中期)で実施した長野県立大は3.6倍と、いずれも比較的高倍率でスタートした。
 学部系統別(グラフ3)にみると、募集人員の増減が志願者増減につながったケースが多いためか、全体に倍率はほぼ前年並みか、わずかな変動で収まっている中で、医・薬の倍率ダウンが目立ち、高倍率を保ってはいるが、やや易化した模様だ。

 
センター試験5教科6科目の総合平均点の推移
 

総合点の“合格者平均点”のクリアを最終目標にしよう

 

 「倍率」とともに気になるのが、合格者の最低点や平均点という「合格者データ」だろう。
 合格最低点は合否の分かれ目になる、いわゆる「ボーダーライン」。合格平均点は、総じて最低点より得点率(%)にして5~10p(ポイント)程度高い。合格最低点は「最低目標」として重要なデータなのだが、確実に合格を目指すには「合格者平均点」のレベルまで学力アップしておくことが望まれる。
 18年入試の例として、金沢大の前期日程の合格者データを見てみよう(表1)。総合点を得点率(%)に換算し、各学類を分野別にまとめて平均すると、文系(人間社会学域)で「最低70%・平均73%」、理工系(理工学域)で「最低62%・平均66%」、医療系(医薬保健学域)で「最低69%・平均72%」となる。合格するには、文系・医療系で7割以上(医は8割以上)、理工系で6~7割程度の得点が必要なのだ。また、合格者平均点をセ試・2次(個別試験)ごとに平均すると「文系=セ試75%・2次70%、理工系=セ試74%・2次60%、医療系=セ試76%・2次68%」となる。マーク式のセ試に比べ、記述式の2次の方が得点しにくいことがわかる。
 このうち、配点がセ試重視の「人文学類」と、今年度から始まった2次重視の「理工3学類前期一括入試」(機械工・フロンティア工・電子情報通信の3学類一括募集)を比較してみよう。
 人文学類の配点は「セ試1,000点、2次600点、総計1,600点」。合格者は、セ試では得点率71%~85%(平均76%)に分布し、最高・最低の差は14p。2次では得点率60~87%(平均71%)に分布し、最高・最低の差は27p。配点の少ない2次の方が最高・最低の差が大きく、セ試の得点である程度合否が決まったことがうかがえる。
 一方、「理工3学類前期一括入試」の配点は「セ試900点、2次1,300点、総計2,200点」。合格者は、セ試では得点率60%~82%(平均72%)に分布、最高・最低の差は22p。2次では得点率50~77%(平均60%)に分布し、最高・最低の差は27p。人文学類に比べ、セ試と2次で得点幅にあまり違いがなく、2次の得点力が合否に強く影響したことがうかがえる。

 
2018年入試/金沢大前期合格者の最低点・平均点
 

私立大:
志願者7%増、合格者4%減。文系が難化、農・薬が易化か

 
私立大 志願者数TOP10 の入試結果

 「秋の模試ではA判定だったのに、本番では不合格だった」…。受験生のこうした悲鳴が、昨年以上によく聞かれたという。それも、難関校から中堅校まで幅広く。今年の私立大入試は、“異次元”ともいえる合格者絞り込みが影響し、予想以上に厳しい戦いを強いられたといえる。
 『螢雪時代』の私立大一般入試結果調査(547大学集計:志願者364.3万人)によると、17年に比べ「志願者7%増、合格者4%減」で、倍率は全体で17年3.7倍→18年4.1倍とアップした。
 入試方式別にみると、各大学の独自入試は「志願者5%増、合格者5%減」で倍率は4.2倍→4.6倍にアップ。また、セ試利用入試(独自・セ試併用型を含む)も「志願者10%増、合格者4%減」で、倍率は3.0倍→3.4倍とアップし、いずれも合格者をかなり抑え目に出し、難化したことがわかる。
 私立大の志願者増は、学内同時併願の受験料割引(以下、併願割)、インターネット出願(以下、ネット出願)の受験料割引などの影響もあるので、バブル的な要素を割り引いて考える必要がある。とはいえ、好調な就職状況、既卒者(いわゆる浪人)の増加、「文系縮小」に伴う国立大文系志望者からの併願増、合格者絞り込みを警戒しての併願増などから、実際に志願者は増えたものとみられる。
 一方、大都市圏の定員規模の大きな大学に対し、16年から「定員管理の厳格化」が始まった。段階的に厳しさを増すため、18年は定員超過率が17年以上に抑制され、補助金が交付されなくなるラインは、大規模校(収容定員8千人以上)で「17年1.14倍→18年1.10倍」、中規模校(同4千人~8千人)で「17年1.24倍→18年1.20倍」となった。
 「定員管理の厳格化」への対応として、私立70大学が定員増(約7千人増)を行った。あらかじめ前年と同程度の合格者を確保することで、定員超過率と倍率急上昇を同時に抑えるのが目的と見られたが、実際には定員の増加率ほど合格者が増えなかったり、逆に合格者を減らしたりするケースも見られた。ましてや、定員増を行わない大学では、さらに合格者絞り込みが顕著で、大都市圏の難関~中堅上位クラスは、軒並み難化した。
 志願者数の上位10大学(表2)の入試結果を見ても、6大学が志願者11万人を超える増加ぶりの一方で、8大学が志願者増にもかかわらず合格者を減らすなど、全体に合格者をかなり抑え目に出し、法政大・明治大・早稲田大・近畿大など10大学中8大学で実質倍率(受験者÷合格者。東洋大は志願者÷合格者)がアップした。この他、主な大学のうち、実質倍率が比較的大きくアップした大学は次の通り(ただし、*=志願者÷合格者)。

 

【首都圏】青山学院大7.0倍→7.9倍、学習院大4.4倍→5.6倍、駒澤大4.3倍→5.1倍、芝浦工業大3.4倍→3.9倍、上智大4.7倍→5.9倍、成城大3.3倍→5.3倍、専修大4.3倍→5.2倍、東京女子大2.5倍→3.1倍、東京都市大2.9倍→3.6倍、武蔵大4.7倍→6.7倍、明治学院大3.5倍→5.4倍、立教大5.6倍→6.9倍*
 
 
【京阪神その他】中京大3.9倍→4.5倍、南山大2.9倍→3.6倍、京都産業大5.0倍→7.8倍、龍谷大4.5倍→5.0倍、関西学院大3.4倍→4.3倍*、甲南大3.7倍→4.3倍
 
 

 

 一方、倍率ダウンした主な大学は、首都圏の慶應義塾大(4.6倍→4.5倍)・國學院大(5.7倍→5.5倍)・東邦大(4.9倍→4.5倍)・日本女子大(2.8倍→2.7倍)や、地方国公立大の併願先を担う東北学院大(2.6倍→2.3倍)・広島修道大(3.0倍→2.5倍)があげられる程度で、ごく少数。しかも小幅なダウンに留まっている。倍率アップした大学が圧倒的に多いのだ。
 地区別の集計をみると(グラフ4)、大都市圏を擁する関東・甲信越、関西で志願者大幅増、合格者減による倍率アップが目立つ。一方、北海道・東北は合格者5%増で倍率ダウン、他の3地区も合格者の抑え方は、大都市圏を擁する2地区ほどではない。それだけ、この2地区に“異次元”の合格者絞り込みをせざるをえない大規模大学が集中しているのだ。
 グラフ6で文理別・難易ランク別の志願者動向(5月18日現在:駿台予備学校の集計)を見てみよう。ここでいう難易ランク(第3回駿台・ベネッセマーク模試での合格可能性60%ラインによるグループ分け)は、同じ大学内でも学部によって異なるが、おおむね、Aランクは難関校や難関医科大、Bランクは準難関校、Cランクは中堅上位校、D~Eランクは中堅クラス以降を指す。
 文系は全ランクで満遍なく増加しているが、A~Cランク以上に、D~Eランクの急増ぶりが目立つ。これは、A~Cの合格者絞り込みによる難化を見越して、安全志向から合格確保校の併願を増やしたり、ランクダウンしたりしたものとみられる。一方、理系はAランクが微減、B~Eランクの増え方も、傾向は文系と似ているとはいえ、文系に比べ小幅(特にCランク)で、“文高理低”状態が見て取れる。
 全国の私立大を、大学単位の競争率(実質倍率)グループ別に分類すると(グラフ7)、4.0倍以上の大学が増え、3.9倍以下の大学が減っているのが注目される。2月入試の合格者絞り込みに加え、玉突きで3月入試まで激戦化し、1~3倍台の準難関~中堅校が次々と倍率アップしたことが見て取れる。
 学部系統別にみると(グラフ5)、国公立大と異なり、グラフ6と同様、はっきりと「文高理低」状態を示している。文系は志願者大幅増の経済・経営・商、文、社会・社会福祉、国際関係をはじめ、軒並み「志願者増・合格者減」で倍率アップし、全面的に難化した模様。特に経済系の難化が目立った。
 一方、理系は文系ほど合格者を絞り込んでいない。理、工は「志願者増・合格者減」で、やや倍率アップしたが、医療系(医、歯、薬、看護・医療・栄養)がそろってわずかながら倍率ダウンし、農・獣医畜産・水産はやや易化したものとみられる。

 
グラフ4 2015年度/国公立大一般入試 日程別/志願者・合格者動向、グラフ5 2015年度/私立大一般入試学部系統別/志願者・合格者動向、グラフ6 2015年私立大一般入試 難易ランク別志願者増減率、グラフ7 私立大一般入試/競争率グループ別大学数の分布、
 

合格ライン周辺から私立大の入試の実態を把握しよう

 

 倍率に続き、私立大一般入試の「合格ライン」を見てみよう。国公立大と同様、合格への道標となる大切なデータだ。
 グラフ8に、龍谷大‐経済(A日程:文系型スタンダード方式)の18年入試で、合格ライン付近の人数分布を示した。同方式の科目・配点は「英語」「国語」「世界史、日本史、政治・経済、数学から1」の3科目で各100点、計300点。受験者数2,355人に対し合格者数383人で、実質倍率は6.1倍。合格最低点は223点(得点率74.3%)だった。その分布状況を見ると、
 
①合格最低点を含め、上10点幅のゾーンに166人と、全合格者の約43%が集中している。
②不合格者の最高点(222点)を含め、下10点幅のゾーンに236人もいる。
③合格最低点で合格したのは18人、1点差での不合格者も27 人いる。
 
 合格ライン付近では、総合的にほぼ同じ学力の受験生がひしめき合い、わずか1点差で合否が決まる。では、“1点差”を争う合格ラインを、どうやって突破するのか?
 グラフ8の右側に、合格最低点とその1点下の受験者から、特徴のある得点パターンをピックアップした。ここからわかるのは、「得意科目」の大切さと、「苦手科目」克服の必要性だ。
 3科目入試では、1科目で得点が伸びなくても、他の科目でカバーできることが多い。AさんやBさんのように絶対的な得意科目があれば、他にやや苦手な科目があっても心強い。ただし、CさんやDさんのように苦手科目の失点が大きすぎると、カバーしきれず、1点差に泣くことになる。
 得意科目の優位を生かすには、苦手科目を「やや苦手~普通」までにグレードアップし、6割以上の得点はほしい。私立大一般入試で何とか合格ライン(7割台)をクリアするためには、得意科目(8割台)を持ち、残り2科目で7割台と6割台をキープしよう。

 
グラフ8 龍谷大-経営(A日程)スタンダード方式文系型 合格ライン付近の合否状況
 

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19年入試の変更点をチェック! 佐賀大・横浜市立大などで全学規模の学部改組を予定!

 

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 ここからは、4・5月号に続き、6月下旬までに判明した、主な19年入試の変更点を紹介する。18年より変動要因は少ないが、私立大はさらに厳しい入試となりそうだ。国公立大では、ネット出願の全面導入や、理工系中心に学科の統合やコース制導入が目立つ。私立大では独自・セ試併用型の導入や、英語外部検定利用などの入試改革が注目される。

 
 

ネット出願:
国公立大では、新規導入と全面移行が同時に進む

 

 18年に国公立大の約3割、私立大の6割以上が実施した「ネット出願」は、私立大では全面移行、つまり紙の願書の廃止が進んだ。19年では、国公立大で導入と全面移行が進む。
 国立大では宇都宮大・長岡技術科学大・金沢大・浜松医科大・大阪教育大・鳥取大・琉球大などがネット出願を導入し、紙の願書を廃止。また、公立大でも都留文科大がネット出願を導入する(以上、対象となる入試は各大学で異なる)。さらに、既に推薦・AO等で実施している名古屋工業大・大阪大が、一般入試でも導入し、紙の願書を廃止する。
 私立大では、定員規模の大きい大学はほとんどネット出願を導入済みで、新規に導入するのは、18年に続き中~小規模校だ。19年では、女子栄養大・聖マリアンナ医科大・産業医科大などでネット出願を導入(対象となる入試は各大学で異なる)。既にネット出願を実施している大学では、大妻女子大などが全面移行(一部方式を除く)し、紙の願書を廃止する。

 
 

英語外部試験利用:
広島大・東京電機大などが一般入試で導入

 英語教育は実践的な運用能力向上へ向け、4技能(読む、聞く、書く、話す)を総合的に評価する方向に進んでいる。そして、2021年以降の「入試改革」では、自ら課題を見つけ学ぶ力や論理的思考力・表現力とともに、大学入試の段階で英語4技能全てを判定する必要性が求められている。このため、各大学の独自試験やセ試の英語の代わりに、4技能を測定できる「英語外部検定」を利用する方式の導入が進んでいる。一般入試での主な利用方法は、①出願資格、②得点換算、③加点、の3パターンに分かれる(図1)。以下、一般入試で新規利用する事例の一部を示した(国立の広島大以外は私立)。
 
  *     *     *
 
 
◎広島大 全学の前・後期のセ試で、英語外部検定利用が可能に(見なし満点。英語は受験必須)。
◎北海道科学大 全学部のセ試利用入試で、英語外部検定利用が可能に(加点)。
◎工学院大 全学部で一般A日程と同時期に「英語外部試験利用入試」を新規実施(出願資格)
◎玉川大 全8学部で「英語外部試験スコア利用入試」を新規実施。TOEIC Programのスコアを出願資格に利用し、小論文・口述試験で選抜
◎東海大 文系・理系学部一括入試で英語外部検定利用が可能に(得点換算)
◎東京電機大 工2部以外の全学で「一般入試(英語外部試験利用)」を新規実施
◎日本大 経済の一般A方式1・2期で英語外部検定利用が可能に(得点換算。学部独自の英語と比べ、高得点の方を利用)。
◎法政大 文・デザイン工で、英語外部試験利用入試を導入(出願資格)。
◎明治大 経営・国際日本・農・総合数理の全学部統一入試で英語外部検定利用(4技能)が可能に(得点換算。総合数理は4科目方式)。
◎西南学院大 一般入試で「英語4技能利用型入試」を新規実施。基準スコアを満たせば、英語を免除し、その他の2科目で合否判定。スコアによって加点もある(出願資格・加点)。

 
「英語外部試験」の利用方法のパターン(例)
 

国公立大:
理工・農・教員養成系で、学科の統合とコース制導入が続く

 

 以下の変更点のうち、推薦入試・一般入試ともに、原則として国公立大は4月号、私立大は5月号に掲載したものを除いた。
 
●国公立大の改組と新増設
 16~18年度ほどの規模ではないが、19年度も学部改組や新増設が予定される。
 全体に、教員養成系や理・工・農学系を中心に、学部内で複数の学科・課程を、より少数に再編成したり、1つの学科・課程に統合してコース制を導入し、入学後に専門分野を決めるシステムを導入したりするケースが目立つ。
 その中で、愛媛大・佐賀大(図2)・横浜市立大(図3)・兵庫県立大の大規模改組や、東京外国語大の学部増設が、志望動向に影響を与えそうだ。以下、国立・公立ごとに、主な学部改組や新増設の予定をまとめてみた(新設学部等の名称は仮称)。
【国立大】福島大で「農学群食農学類」を、東京外国語大で「国際日本学部」を新設。一方、大阪大‐薬で薬科学科(4年制)を募集停止する。
 愛媛大‐理を「5学科→1学科(5コース)」に、同‐工を「6学科→1学科(9コース)」に統合。佐賀大‐理工を「7学科→1学科(12コース)」に、同‐農を「3学科→1学科(4コース)」に統合する。この他にも、北海道教育大‐釧路校を「3→1専攻」、室蘭工業大‐工(理工に改組)を「4学科12コース→2学科7コース」、宇都宮大‐工を「4学科→1学科(3コース)」、千葉大‐教育を「5課程→1課程(7コース)」、東京農工大‐工を「8→6学科」、三重大‐工を「6学科→1学科(5コース)」に再編・統合する。三重大‐工では、別に「総合工学コース」(入学後、2年次に所属コースを決定)も新設する。
【公立大】横浜市立大‐国際総合科学を、国際教養・国際商・理の3学部に分割。兵庫県立大‐経済・経営の2学部を「社会情報科学・国際商経」の2学部に改組する。富山県立大で「看護学部」を新設。京都府立大‐文で「和食文化学科」、大阪市立大‐文に「文化構想学科」、新見公立大‐健康科学に「健康保育学科、地域福祉学科」を増設。また、熊本県立大‐環境共生を「3→1学科」に統合する。

 
図2 岩手大学の全額規模の学部改組(予定)、図3 福井大学工学部の学部増設・改組(予定)
 

●推薦・AO入試
 山形大‐人文社会科学でセ試課す推薦を、同(グローバルスタディーズ)でセ試免除AOを新規実施。また、同‐理でセ試課すAOを、同(化学・生物学・地球科学)でセ試免除推薦を新規実施し、セ試課す推薦を廃止する。
 
●一般入試
 三重大‐工の後期で、改組に伴い全コースでセ試を5教科7科目に統一/京都教育大では、前・後期ともセ試の外国語を英語必須とし「200点→250点」に配点アップ。一方で、前期の2次では、専攻によって「教育学=英語→小論文/幼児教育・発達障害教育・国語=英語→面接/英語=国語を除外/技術=面接を追加、国語・数学・理科から2選択→1選択に/音楽=面接を追加」といった、主に小論文・面接重視の変更を行う/長崎大‐歯の前期の2次で、英語を「選択→必須」とし、学科試験を1→2科目に負担増/18年開設の公立小松大が「別日程実施→前期・中期日程」に移行する。

 

私立大:
青山学院大・中央大が学部増設。医学部で後期募集の導入目立つ

 

●新増設・改組等
 19年度の私立大学の新設予定、および学部・学科等の増設予定が文部科学省から発表されている(大学は前年10月末認可申請。学部・学科等は3月末認可申請分。表3を参照)。大学の新設予定は4大学。また、21大学で学部・学科の増設を認可申請中だ。
 その他に設置届出として、①青山学院大‐コミュニティ人間科学、中央大‐国際経営・国際情報、京都産業大‐国際関係、立命館大‐グローバル教養、武庫川女子大‐教育などの学部増設、②専修大‐経営(ビジネスデザイン)、津田塾大‐学芸(多文化・国際協力)、京都女子大‐発達教育(心理)などの学科増設、③聖心女子大(文→現代教養)、広島経済大(経済→経済・経営・メディアビジネス:1→3学部体制に)などの学部改組が予定されている。また、千歳科学技術大が「私立→公立」に移行する予定だ。
 全体としては、近年の傾向と同じく、看護・医療、栄養、心理、教育・保育、国際関係といった分野の増設予定が多い。
 
●東京23区内の定員増や増設が不可に
 大都市圏の大学に対する、補助金の不交付措置がとられる入学定員超過率のラインは、大規模校(収容定員8千人以上)で「15年1.20倍→18年1.10倍」、中規模校(同4千人~8千人)で「15年1.30倍→18年1.20倍」まで引き下げられた。19年は厳しい水準のまま固定されるので、引き続き合格者を抑え目に出さざるを得ない。
 さらに19年度から、東京23区内に立地する大学については、定員増や学部増設の申請が、今後10年間不可とされた。難関~中堅上位の人気校が集中しているだけに、該当する大学は軒並み難化が見込まれ、東京近郊や名古屋・京阪神の大学へ志願者がどの程度流出するか、志望動向を左右する変動要因となりそうだ。

 
表3 2016年度新設予定の大学・学部・学科
 

●推薦・AO入試
 「入試改革」の先取りで、推薦入試やAO入試の導入・拡大が目立つ。また、英語外部検定利用に関わる変更も多く見られる。
【AO入試】玉川大‐文・教育・芸術・工・農で、首都圏の1都3県出身の教員志望者を対象に「首都圏教員養成AO型入学審査」を新規実施/東海大‐医(医)で、セ試を利用する現役生対象の「AO入試(希望の星育成)」を新規実施/東京薬科大‐生命科学でAO入試を新規実施/西南学院大‐神・文・経済・法・人間科学で「総合型選抜」を新規実施し、文・経済・法・人間科学で公募推薦を廃止する。
【推薦入試】大妻女子大‐文(英語英文)・社会情報・人間関係・比較文化の公募推薦で、指定する成績基準に満たなくても、英語外部検定の基準を満たせば出願可となった/北里大‐薬(薬)で公募推薦を新規実施/法政大‐現代福祉でグローバル体験公募推薦を新規実施/藤田医科大‐医で公募推薦を廃止/関西医科大‐医の公募推薦で、特色入試(英語型・国際型・科学型)を新規実施(英語型は英語外部検定利用)。また、同‐看護で公募推薦を新規実施/近畿大‐法・経済・経営・文芸・総合社会・国際の公募推薦で、英語外部検定利用を導入(得点換算)。
 
●独自入試(一般入試)
 やはり「入試改革」の先取りで、小論文・面接の導入が目に付く。また、医学部の一般入試で後期募集を新たに実施する動きも注目される。
【医・歯・薬学系の変更】岩手医科大‐薬の一般前・後期で面接を追加/杏林大‐医で一般後期を新規実施/昭和大‐医の一般Ⅰ期で、歯・薬を第2・3志望として同時併願可能に/久留米大‐医(医)で一般後期を新規実施する。
【その他の変更】青山学院大‐経済の個別学部日程B方式で、英語外部検定利用と国語を廃止、「大学独自の英語と数学の2科目」に変更/聖路加国際大‐看護で一般A方式を「3→2科目」に軽減/東京都市大の全学部で、全学統一入試を廃止し、一般中期(英語外部検定が利用可能)を新規実施/日本大‐生物資源科学では、学外試験場を「A方式1期=6→16、同2期=1→16」に増設/名城大‐経済・経営で、一般A方式とF方式(独自・セ試併用)が新たに同時実施となり、同時併願可能に/京都産業大‐文化で一般英語1科目型を廃止/関西大‐文の一般後期でセ試併用型小論文方式を新規実施(セ試3科目と小論文を課す)/関西医科大‐看護で一般入試に小論文を追加/武庫川女子大の一般Aの3科目型で、同一配点方式と傾斜配点方式の2タイプを新たに設定する。
 
●セ試利用入試
 大学の独自入試とセ試利用入試の成績を組み合わせて合否判定する「独自・セ試併用型」を導入するケースが目立つ。
【独自・セ試併用型の導入】獨協大‐外国語・国際教養・法で、C方式セ試併用型を新規実施/東京都市大で「セ試後期3教科グループディスカッション型」を新規実施/日本獣医生命科学大‐獣医(獣医保健看護)・応用生命科学の一般入試でセ試併用方式を新規実施/関西医科大‐医でセンター・一般併用入試を導入。セ試7科目と一般前期(4科目+小論文)で判定。
【その他の変更】昭和大‐歯でセ試利用A方式Ⅱ期を廃止/聖路加国際大‐看護でセ試利用入試を新規実施/大東文化大の全学部で、出願締切日がセ試本試験の前か後かによって、セ試利用前期を「前出願型・後出願型」に分割(後出願型は3・4教科型の2タイプで実施)/東海大‐医(医)で神奈川県地域枠入試(セ試利用)を復活し、セ試利用後期を廃止/東京薬科大‐生命科学でセ試A方式2期を新規実施/愛知医科大‐医でセ試利用後期を新規実施/中京大はセ試利用前・後期で2科目型(工は2教科3科目型)を新規実施/関西大‐システム理工のセ試前期で5科目型、セ試中期で4科目型を新規実施/関西医科大‐看護でセ試利用入試を新規実施/福岡大‐人文でセ試利用Ⅱ期の実施学科を増やす(3→8学科)。
 
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 以上、詳細は国公立大の選抜要項、私立大の入試ガイドなどで必ず確認してほしい。

 
 

 「入試改革」を2年後に控え、19年は“超安全志向”に!?

 

 最後に、19年入試がどう動くのか予測してみよう。ポイントは3つある。
 
(1)「入試改革」を控え“超安全志向”に!?
 19年入試を受ける今年の受験生は、2年後に21年「入試改革」を控える。センター試験が廃止され、その代わりに記述式問題を含む「大学入学共通テスト」が導入され、その他の入試のあり方も、「思考力・判断力・表現力」や主体性の評価など、大きく変わる。そのため、「2浪」しない限り影響はないにも関わらず、現行の入試での確実な合格を目指し、18年入試以上の“超安全志向”となりそうだ。
 
(2)私立大の難化で既卒生が増加!?
 私立大難関~中堅上位校の“異次元”の合格者絞り込みで、19年入試では既卒の受験生(浪人)が、18年と同じか、やや増えているものと見られる。前述の“超安全志向”を加速させる要因となり、併願増に結びつきそうだ。
 
(3)私立大で合格者絞り込みが続く
 好調な就職状況から「私立文系人気」は続くものと見られる。さらに、(1)(2)の要因から、「早く確実に合格を決めたい」意識が強く働き、まず推薦・AO入試の志願者が増えそうだ。しかし18年と同じく、この段階から合格者が絞り込まれ、不合格者が一般入試に再チャレンジし、志願者が膨れ上がり、さらに合格者が絞り込まれ、倍率アップで難化…というパターンが再現されるものと見られる。前述のように大都市圏の大規模私立大は、定員超過率の制限が厳しいまま固定され、東京23区内の大学は定員増や新増設が認められないからだ。
 
 以上から、19年入試では、私立大が推薦・AO入試も一般入試も「志願者増、合格者絞り込み」で難化が予想され、難関~中堅上位校では厳しい入試が続くものと見られる。
学部系統別では、全体として経済・社会系を中心に文系が激戦化、「文高理低」傾向が続く見込み。一方、医・薬など“理系の資格系”はやや人気ダウンか。また、看護・医療・栄養系は増設が多いものの、「文系人気」から志願者は18年並みで、既設の学部・学科は易化しそうだ。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2018年8月号)」より転載いたしました。

 

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