公募推薦の志願者は、国公立が2%減、私立が3%増。“文系人気”が続く
2017(以下、17)年度の推薦入試とAO入試の実施結果を『螢雪時代』編集部が調査・集計(16年12月現在)したところ、国公立大のセンター試験を課さない推薦が「志願者2%減、合格者2%減」、私立大公募推薦が「志願者3%増、合格者3%増」。AO入試は「志願者8%増、合格者5%増」となった。
※この記事は『螢雪時代・2017年4月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)
【推薦入試】(国公立大:センター試験免除)
セ試を課す方式やAOへの移行が影響
『螢雪時代』編集部では、国公立大のセンター試験(以下、セ試)を課さない推薦(セ試免除推薦)について、17年入試結果の調査を行った。16年12月26日現在(調査締切日)の集計(90校:志願者数=約1万9千人)では、志願者数は前年比で2%減少(国立大3%減、公立大2%減)した(グラフ1)。
実施学部数は「セ試を課す推薦201→214、セ試免除推薦356→335(16年→17年)」とセ試を課す方式へ移行し、推薦をAOに移行するケースも続出したことが、本集計に影響した。また、国立大で相次いだ学部改組(教員養成系における教員養成以外の課程の廃止、文系学部縮小・理系学部拡大)の影響もあった。
大学別では、群馬大(9%増)・山口県立大(9%増)・北九州市立大(22%増)の志願者増、茨城大(13%減)・新潟大(9%減)・香川大(8%減)・大分大(13%減)・県立広島大(12%減)・高知工科大(14%減)の志願者減が目立つ。
一方、合格者数も2%減(国立大1%減、公立大2%減)、倍率(志願者数÷合格者数。以下同じ)は、国立大が2.5倍、公立大は2.3倍で16年とほぼ同様だった。
学部系統別にみると、好調な就職状況から法・国際関係・社会福祉と、文系に志願者増の学部系統が目立つが、国立大「文系縮小」の影響から経済・文は志願者減。一方、「セ試免除→課す」方式への移行が目立ったとはいえ、理工・農が減少し、弱めの“文高理低”状態になった。この他、教員養成以外の課程廃止が相次いだ教員養成系は、大幅減となった。
【推薦入試】(私立大:公募制推薦)
京阪神は合格者を絞らずやや易化か
『螢雪時代』編集部では、私立大の公募制推薦の入試結果についても調査した。16年12月26日現在(調査締切日)の集計(143校:志願者数=約20万4千人)では、志願者数は前年比で3%増加した(グラフ2)。志願者が増えた要因は、①大学受験生数の増加(1.1%増:本誌推定)、②私立大専願者の「より早く確実に」合格を決めたい傾向、③前述の国立大の改組が、受験生の“文系人気”とミスマッチを起こし、私立文系に“追い風”となった、④大規模大学の定員増、の4点があげられる。
地区別にみると、推薦志願者全体の8割近くを占める京阪神地区だけでなく、首都圏もその他の地区(東海地区など)も志願者は増加している。大都市圏ごとにおもな大学の志願状況を見ると、次の志願者増減が目立つ。なお、4月から「私立→公立」に移行する長野大では、志願者数が前年の3倍以上に跳ね上がった。
【首都圏】志願者増=青山学院大22%増・国士舘大9%増・東海大18%増・東京農業大18%増・立教大33%増・早稲田大6%増 志願者減=亜細亜大20%減・明治薬科大10%減
【京阪神】志願者増=京都産業大11%増・近畿大6%増・甲南大14%増・甲南女子大16%増
志願者減=佛教大5%減・龍谷大6%減・桃山学院大21%減・武庫川女子大7%減
【名古屋】志願者増=愛知淑徳大26%増・名城大6%増 志願者減=愛知学院大7%減
一方、合格者数も全体で3%増加し、私立大の公募推薦全体の倍率は16年3.1倍→17年3.0倍とわずかにダウン。地区別にみると、首都圏(1.9倍→2.0倍)に対し、京阪神(3.7倍→3.6倍)の倍率ダウンが注目される。昨年から定員超過率の制限が厳しくなった割に、京阪神では推薦入試の合格者絞り込みが緩め(特に理系)で、倍率面を見る限り、やや易化したといえる。
大学別では、龍谷大 (5.5倍→4.6倍)・桃山学院大(3.8倍→3.0倍)・武庫川女子大(5.9倍→5.4倍)の倍率ダウン、青山学院大(2.1倍→2.8倍)・愛知淑徳大(1.8倍→2.3倍)・大阪経済大(5.2倍→5.9倍)の倍率アップが目立つ。
学部系統別にみると、弱めの「文高理低」状態だ。就職事情の好調さを受け、文系学部は軒並み志願者増。また、農が人気アップ、理工や医療・看護も前年並みだが、医は大幅減。さらに、法・文の合格者絞り込みによる倍率アップ(=難化)が注目される(グラフ3)。
【AO入試】
志願者は国公立16%増、私立7%増
16年12月26日現在の集計(145大学。国公立はセ試を課さないAO。志願者数=約3万1千人)では、AO入試全体で「志願者8%増、合格者5%増」と人気が高まった(グラフ4)。
20年度以降に始まる予定の「入試改革」(論理的思考力・表現力、主体性、多面的・総合的な評価などを重視した選抜)を先取りする形で、AO入試を導入・拡大する動きが活発化(国公立では香川大・熊本大・宮城大などが新規実施)。これが国公立・私立ともにAO入試の志願者大幅増につながった模様だ。
国公立大が「志願者16%増、合格者17%増」で倍率は3.7倍→3.6倍とややダウン、私立大は「志願者7%増、合格者4%増」で倍率は1.8倍→1.9倍とややアップ。公募推薦と異なり、私立大でやや合格者を抑える傾向が見られた。
大学別では、山口大(31%増)・北九州市立大(20%増)・早稲田大(14%増)・愛知淑徳大(28%増)・立命館大(10%増)の志願者増、東北大(9%減)・京都工芸繊維大(8%減)・千葉工業大(13%減)の志願者減が目立った。
(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2017年4月号)」より転載いたしました。