入試動向分析

2014年 国公立大入試 志願者動向分析【2014年4月】

2014(平成26)年度

新課程入試を控えた「後がない」意識から、文系・理系とも慎重出願に!!

 

旧課程最後となった、2014年国公立大入試について、各大学や学部系統などの人気度を示す「志願者動向」を分析する。さらに、2015年新課程入試の最新情報も紹介する。

 

※この記事は「螢雪時代(2014年4月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

センター試験の平均点アップは小幅、国語、生物Ⅰなどの難化が影響。志願者数は1%減、前期が2%減


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国公立大の志願者数は前年比1%減、志願倍率は4.8倍で前年とほぼ同じ。国立大2%減に対し公立大2%増、前期日程で志願者減が目立った。センター試験の平均点はややアップしたが、またも国語の難化が影響。文系・理系ともに、前年と同じく慎重な出願傾向が見られた。


志願者数は国立大2%減、公立大2%増と対照的

文部科学省の発表によると、2014年(以下、14年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は484,420人で、13年に比べ1.1%減少(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大・敦賀市立看護大は集計に含まれない)。そして、全募集人員(101,366人)に対する倍率(志願倍率)は4.8倍で13年と同じだった(グラフ1)。
 入試日程別に志願状況(グラフ2)と志願倍率の変化(13年→14年)をみると、前期は「1.9%減:3.4倍→3.3倍」、後期は「0.2%減:10.0倍→10.0倍」、公立大中期は「0.4%増:13.8倍→13.8倍」で、前期の志願者減・倍率ダウンが注目される。
 また、国立・公立の別に見ると、国立大が志願者2.2%減、志願倍率は4.4倍→4.3倍にダウンしたのに対し、公立大は志願者1.9%増、志願倍率は6.4倍→6.5倍にアップした。
4(6)年制大学の受験生数が減り(3.7%減:本誌推定)、センター試験(以下、セ試)の受験者数も減った(2.0%減)ので、国公立大全体の「1.1%減」は当然としても、13年に続き「国立大が志願者減、公立大は志願者増」という対照的な結果となったのはなぜだろうか?

グラフ1.大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移、表1.大学入試センター試験(本試験)科目別平均点


セ試では国語、生物Ⅰなどが難化、特に文系には“逆風”

14年国公立大入試に影響を与えた大きな要素は2つある。
(1)「後がない」意識
 ひとつは、15年から始まる「新課程入試」を翌年に控えた「後がない」意識だ。
 15年新課程入試では、数学・理科の出題科目が大幅に変更され、セ試の選択パターンも複雑化する。また、授業時数の少ない「ゆとり世代」最後の学年として、授業時数の多い「新課程」世代と競うには懸念もある。過年度卒業者(浪人)に対する経過措置(旧課程による選択問題を出題、両課程の共通範囲を出題、など)はあるが、「後がない」意識による「浪人できない」プレッシャーから安全志向が強まり、受験生が“慎重出願”に走ったとみられる。
(2)「源氏物語ショック」
 もうひとつは、セ試の平均点が当初の予想ほど伸びなかったこと。特に、国語の2年連続の難化、いわゆる「源氏物語ショック」だ。
 国公立大がセ試で課すのは、文系が「地歴・公民から2科目」の5~6教科7科目、理系で「理科2科目」の5教科7科目(いずれも数学2科目受験)が標準的。ただし、地歴・公民と理科は各科目に「第1・第2解答」の得点が混在し、平均点の実態が把握しにくい。このため、国公立大の文・理系に共通の“基幹3教科”である「国語、数学(Ⅰ・A、Ⅱ・Bの2科目)、英語(リスニング含む)」の平均点合計を算出すると336.3点(得点率56.1%)で、前年に比べ8.0点アップ。また、文理共通の5教科6科目(地歴・公民合わせて1教科1科目として100点、理科1科目として100点の800点満点)の加重平均点(科目別平均点と受験者数から算出)は461.9点(得点率57.7%)で、前年に比べ11.3点アップした。にもかかわらず、文系は得点が伸びず、理系も意外に得点を稼げなかったというのが受験生の実情であろう。
 科目別に見ると(表1)、数学Ⅰ・Aや地歴B科目、化学Ⅰなどの平均点はアップしたが、国語は2年連続でダウン、生物Ⅰは大幅ダウン。特に受験生にショックを与えたのは、またも国語だった。第3問(古文)で、本試験で初めて「源氏物語」が出題され、本格的な古文を読み慣れていない受験生は苦戦したとみられる。第4問(漢文)も手強く、共通1次(1979年~1989年)、セ試(1990年~)を通して、初めて平均点が50%を割り込み、過去最低を更新した。
 文系志望者は、得点源の国語で稼げず、理系より選択者の多い生物Ⅰの影響もあり、“逆風”を受けた。一方、理系志望者は国語の失点を化学Ⅰなどでカバーし、文系より得点できたとみられるが、「文系=やや弱気~予定通り、理系=予定通り」との違いはあるにせよ、いずれも慎重な出願傾向に変わりはなかったようだ。

駆け込み出願が増加、国立→公立の切り替えも

経済状況は多少上向きとはいえ、受験生を取り巻く環境はいまだ厳しい。もともと「より確実に現役で」という“安全志向”や、“地元志向”が強い上に、セ試の得点伸び悩みも加わり、「難関国立大→中堅国立大→地元の公立大」と順次、難易ランクを落とす慎重な出願傾向となってあらわれた。
 国公立大の志願者数は、出願締切日15時現在の数字が先に発表される。最終確定までに人数は増えるが、その際伸びた人数は22,166人と13年を1,628人上回った。締切日まで志願倍率の高低を慎重に見極め、駆け込み出願した受験生がいかに多かったかがわかる。
 特に、募集人員が少なく、しかも実施学部・学科が年々減っている後期では、前期以上に慎重な出願となったようだ。このため、国立大にぎりぎり手が届く学力層が、後期の併願先を公立大に切り替えたとみられる。

グラフ2.国立大入試 日程別志願状況、グラフ3.国公立大入試 地区別志願状況、グラフ4.国公立大入試 学部系統別志願状況

「文低理高」が弱まり「文理均衡」へ。東京大と首都圏準難関校が人気アップ。地方公立大が高人気だが極端な反動も


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学部系統別では、教員養成系の減少、経済・国際・薬・生活科学の増加が目立つ。文系全体に堅調で、「文低理高」傾向はやや弱まり、「文理均衡」に近づいた。難関~準難関校は、東京大をはじめ首都圏で増加が目立ち、その他は減少傾向。安全志向で13年に続き“公立大人気”だが、極端な前年の反動がみられた。

地区別志願状況は「東高西低」。北陸・東海、関西、九州が減少

全国6地区ごとの全体的な志願動向(グラフ3)を見ていこう(以下、【前】=前期、【後】=後期)。北海道・東北の1%増、関東・甲信越の2%増に対し、北陸・東海が3%減、関西が2%減、九州が6%減と全国平均を下回り、13年の「西高東低」から、14年は「東高西低」の志願状況となった。
 従来は私立大志向の強かった首都圏で、国公立大志向がやや強まっている模様。また、東北地区では厳しい経済環境が続く中でも、大学進学の意欲が高まっている様子で、地元志向は相変わらず強いものの、首都圏(埼玉大・千葉大など)への進出が活発化した模様だ。
 関西の減少は、セ試で得点が伸びなかった受験生(特に文系)が、慎重な出願傾向から中国・四国の大学へ志望変更した模様。一方、北陸・東海と九州は、他地区からの流入が減ったものとみられる。ただし北陸・東海では、岐阜大‐医(医)の大幅減(後述)が強く影響している。
 各地区のおもな大学に関する分析は、『螢雪時代』4月号掲載の「螢雪ジャーナル」をご覧いただきたい。

経済・国際・薬・生活科学が増加、教員養成系が減少

次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。全体に、志願者がほぼ前年並みの系統が並ぶ中で、教員養成系の人気ダウンが目立つ。(1)セ試の平均点伸び悩み(特に国語の難化)の影響に加え、(2)ここ数年で私立大に同系統の新設が相次いでいる、(3)先行き不透明なマイナスイメージの報道が多い、(4)大都市圏以外の教員採用率の低さ、などの要因が複合的に作用したとみられる。そして、岩手大‐教育(40%減)、山梨大‐教育人間科学(30%減)、岐阜大‐教育(22%減)、高知大‐教育(31%減)、熊本大‐教育(21%減)など、教員養成系の単科大よりも地方総合大学の教員養成系学部で大幅減が目立った(いずれも前・後期合計)。
 また、工、農・水畜産・獣医が微減、医、医療・看護が前年並みなど、国公立大では理系人気がやや落ち着いた模様。医は7年連続の定員増(国公立は7年間で計999人増)で門戸は広がったが、14年の定員増は小幅(4大学18人増)だったので、志願動向には影響しなかった模様。
 一方、就職事情がやや改善されたためか、経済系が微増、国際系が増加と、やや文系が人気復活した。とはいえ、「理系の資格志向」も根強く、薬、家政・生活科学といった、理系女子が狙う“技術・資格系”は人気アップした。

「前年の反動」や入試科目・募集人員の変更は要注意

大学・学部別の14年の志願状況を見るためには、次の5つのポイントを押さえておこう。
[1]前年度の倍率アップダウンの反動
 受験生は前年度の倍率を気にする。高倍率や倍率アップなら敬遠、低倍率や倍率ダウンなら人気を集めるため、前年度の反動や、1年おきに増減を繰り返す“隔年現象”が起きやすい。
[2]入試科目の変更、科目数の増減
 入試科目数の増減、2段階選抜の廃止(導入)や予告倍率緩和(引き締め)など、負担の変化が志願者の増減に結びつく傾向がある。また、小論文や面接が敬遠され、学科試験のみの大学・学部が人気アップする傾向がある。
[3]セ試の国語の有無
 セ試の国語が2年連続で難化したため、国語を課さない、または選択しなくてすむ学部・学科・日程に志望変更するケースがみられた。
[4]募集人員の変更
 後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の募集人員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。
[5]地区内の「玉突き」 志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、後期日程の廃止・縮小、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。

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わかりやすい例として、岐阜大‐医(医)と長崎大‐経済[昼]のケースを紹介する。岐阜大‐医(医)については、図1も参照してほしい。
例1:岐阜大‐医(医)
 前・後期とも、2次に集団面接を追加(→[2])。また、前期で2段階選抜を新規実施(予告倍率=募集人員の約15倍)し、後期では予告倍率を「40倍→約15倍」に引き締めた(→[2])。このため、志願者は前期56%減、後期42%減と大幅に減少した。前期は、前年の志願者58%増の反動もあった模様(→[1])。
 前期からは福井大‐医(医)【前】(109%増)、信州大‐医(医)【前】(144%増)、浜松医科大‐医(医)【前】(12%増)などへ流出したものとみられる。また、後期からは福井大‐医(医)【後】(71%増)、信州大‐医(医)【後】(60%増)などへ流出したものとみられる(→[5])。
 福井大‐医(医)は、前年の志願者大幅減(前期64%減、後期38%減)の反動(→[1])や、前期で2次の面接が「集団→個人」に変更され、対策が立てやすくなった(→[2])ことも要因とみられる。また、信州大‐医(医)【前】は、2次の配点比率を「14%→47%」に高め、2次逆転が可能になったことも要因とみられる。
例2:長崎大‐経済[昼]
 学内の「多文化社会学部」増設に伴い、定員を移行したため、募集人員が大幅に削減(前期230人→190人、後期70人→40人)された(→[4])。このため、志願者は前期35%減、後期44%減と大幅に減少した。前期は、前年の志願者8%増の反動もあった模様(→[1])。前期からは佐賀大‐経済【前】(9%増)、後期からは北九州市立大‐経済【後】(70%増)、山口大‐経済【後】(7%増)などへ流出したとみられる(→[5])。北九州市立大‐経済【後】の場合は、セ試で国語を課さないため、国語の不本意得点者が志望変更して流れ込んだ模様だ(→[3])。

図1.近隣の大学への「玉突き」-岐阜大-医(医)のケース

難関校は東京工業大・九州大、準難関は岡山大・熊本大などが志願者減

表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧表にした。難関~準難関校が連なる中、6位の信州大(23%増)が注目される。医(医)【前】で2次逆転の可能性が高まったこと、教育【前】におけるセ試科目数の軽減なども要因だが、首都圏受験生に国公立大志向が強まり、周辺地域へ進出するようになった証左ともいえる。
 1位は東京大で志願者2%増。前年の反動(7%減)が強く、難関校志望者にやや「東大回帰」がみられた。前期では、前年に志願者が激減し、13年ぶりに第1段階選抜が実施されなかった文Ⅰが5%増で、やはり前年に大幅減の理Ⅰ・理Ⅱも増加。一方で、文Ⅲ・理Ⅲが大幅減、文Ⅱもやや減少と、いずれも前年の反動が出た。理Ⅲを除く全科類共通入試の後期も5%増だが、やはり前年の反動とみられる。
 また、2位の千葉大(4%増)、8位の首都大学東京(7%増)、9位の横浜国立大(1%増)と、首都圏の準難関校がそろって人気アップ。特に首都大学東京は、3学部の前期で2段階選抜の予告倍率を引き締めたにもかかわらず志願者が大幅増、これも「公立大人気」のあらわれといえる。表2以外の難関~準難関校でも、慎重かつ「東高西低」の出願傾向を反映し、筑波大(4%増)・埼玉大(8%増)・東京外国語大(1%増)と、首都圏の準難関校が志願者を集めた。
 これに対し、3位の大阪大(3%減)、5位の神戸大(1%減)、10位の京都大(1%減)と、関西の難関大は「微減~やや減」。この他にも、北海道大(3%減)・東北大(3%減)・東京工業大(5%減)・名古屋大(3%減)・九州大(8%減)といった難関校が軒並み減少した。
 準難関校でも、金沢大(5%減)・大阪市立大(4%減)・岡山大(8%減)・熊本大(11%減)で志願者が減少した。岡山大は医(医)の後期廃止、熊本大は薬の後期廃止、医(医)【前】の面接追加と2段階選抜の予告倍率引き締め(約10倍→約5倍)も大幅減の要因となった。
 各地区の国公立大中堅校では、どちらかというと公立大で志願者増が目立つ。セ試の得点が当初の予想より伸びなかったため、「国立大中堅校→地方公立大」という、1ランク落とした志望変更が行われた模様。ただし、例年と同じく、極端な「前年の反動」が見られた。
 表3では、志願者の増加率が高い順に上位10大学を示した。表2と異なり、単科大が8大学を、公立が9大学を占める。1位の鳥取環境大は、志願者が約2.6倍にも膨れ上がったが、12年に「私立→公立」に移行し、13年からセ試を課す前・後期で実施した時、比較的低倍率だったため、セ試の不本意得点者から狙われた模様。また、前期は募集人員増(環境・経営の2学部とも65人→75人)も要因となった。また、2位の神戸市看護大をはじめ、7大学で前年の志願者大幅減の反動が出ている。ちなみに、昨年1位(13年97%増)だった奈良県立医科大は11%減、やはり反動が出た結果といえる。

表2.志願者数の多い国公立大学TOP10、表3.志願者の増加率が高い国公立大学TOP10

岐阜大‐医(医)は、前・後期とも志願倍 率が大幅ダウン

次は、各入試日程で特に志願倍率(志願者数÷募集人員)が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4~6。同倍率が多数の場合は20を超えて掲載。医学部医学科や看護学科などは1学部として扱う)。なお、「受験者数÷合格者数」で割り出す、実際の倍率を「実質倍率(または競争率)」という。
 まず、表4・5の「高倍率の学部等」から見ていこう。前述の通り、13年は前・後期とも最高倍率だった岐阜大‐医(医)が志願者激減、志願倍率も大幅ダウンする異変が起きた。
前期では、最高倍率の信州大‐医(医)【前】など医学科が連なり、その難関ぶりを物語る。また、セ試の科目数が少ない場合、例えば北九州市立大‐地域創生学群【前】(2科目)、釧路公立大‐経済【前】(3科目)などは高倍率になりやすい。セ試を課さない岩手県立大‐ソフトウェア情報【前】Aも9.3倍となったが、15年から同方式は廃止され、セ試を課す方式に統一される。
 後期では、募集人員が少ないうえ、実施学部・学科も減っているので、最高倍率(40.2倍)の愛媛県立医療技術大‐保健科学【後】をはじめ、前期以上の「超高倍率」になるが、欠席率の高さ(前期の入学手続者が欠席するので、志願者の約50%が欠席する)を割り引いて考える必要がある。表5を見ると、半数以上を公立大学・学部が占め、「公立大人気」を如実に物語る。募集人員減(各25人→10人)の鳥取環境大‐経営【後】・環境【後】や、前年の反動による旭川医科大‐医(医)【後】、信州大‐医(医)【後】、佐賀大‐医(医)【後】、愛媛県立医療技術大‐保健科学【後】、高知工科大‐環境理工学群【後】などの倍率アップが目立つ。信州大‐医(医)【後】は、医学科の中では募集人員が多い(前期55人・後期45人)こともあり、群馬大・新潟大・岐阜大など、周辺の医学科から幅広く併願が増えた模様だ。
 一方で、表6のように前期で志願倍率が1倍台のケースもある。例年、医療・看護系の学部・学科が比較的多い中で、法・経済など文系学部の低倍率、特に金沢大の文系学類(法、経済、学校教育、国際)の低倍率や、山形大‐農【前】の急激な倍率ダウンが目を引く。ただし、山形大‐農【前】の場合は、前年(15%増)の反動によるもので、15年は揺れ戻す可能性がある。
 なお、4月開学予定の敦賀市立看護大では、初年度の入試を、セ試を課さない別日程で実施した。学外試験場(名古屋)を設けたこともあり、募集人員35人に対し志願者数は1,005人を集め、志願倍率は28.7倍にも達した。

表4.前期日程で高倍率の学部等、表5.後期日程・公立大中期日程で高倍率の学部等、表6.
前期日程で低倍率の学部等

前期日程の第1段階選抜の不合格者は3,268人と増加

最後に、前期日程の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。予告した学部(52大学144学部)に対し、実際に行ったのは29大学42学部(前年比9大学10学部増)で、第1段階選抜の不合格者は13年2,411人→14年3,268人と大幅増(36%増)。全体に「慎重出願」の中、セ試で比較的高得点できた難関大志望者の一部が、やや強気の出願に走った結果とみられる。
 不合格者の多かった大学は、東京大(696人)、首都大学東京(534人)、千葉県立保健医療大(282人)、一橋大(173人)、大分大(140人)、福島県立医科大(136人)、京都大(116人)など。3学部で予告倍率を「8倍→6倍」に引き締めた首都大学東京で、不合格者が7倍近くに膨れ上がったのが目立つ。
 東京大からは、前期の第1段階選抜合格者の最低点・平均点が発表された。得点率に直すと、平均点が79.7%(文Ⅰ)~87.6%(理Ⅲ)の範囲、最低点が41.7%(文Ⅰ)~79.3(理Ⅱ)の範囲であった。文Ⅰが2年ぶりに第1段階選抜を実施したのをはじめ、やはり志願者増の理Ⅰ・理Ⅱで最低点・平均点ともにアップする一方、志願者減の文Ⅱ・文Ⅲ・理Ⅲではいずれもダウンした。中でも、理Ⅰの最低点アップ(63.8%→75.7%)と、文Ⅱの最低点ダウン(74.8%→68.6%)が注目される。


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セ試を課さない推薦の志願者は、国立大が6%減、公立大が2%減。北海道教育大・岡山大などが志願者減


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一般入試に先立って行われた「セ試を課さない」推薦・AO入試。本誌集計では、推薦は「志願者4%減、合格者:前年並み」で、国立大がやや易化。また、AO入試は「志願者3%減、合格者3%増」との結果が出た。

セ試を課さない推薦入試は、農・教員養成が志願者減、経済系が微増

グラフ5.国公立大「セ試を課さない推薦入試」志願者・合格者動向螢雪時代編集部では、国公立大のセ試を課さない推薦について、14年入試結果の調査を行った。13年12月25日現在の集計データ(97校:志願者数=約2万2千人)では、志願者数は前年度に比べ4%減。「国立大6%減、公立大2%減」と、一般入試と似た現象がみられた(グラフ5)。
 実施学部数が「セ試を課す166→174、課さない357→354(13年→14年。以下同じ)」と前者へ移行しつつあるのに加え、国公立大志望者の意識が「推薦も視野に入れ」から「一般入試に専念」に変化した模様。また“安全志向”から、より難易度の高い国立大を敬遠したとみられ、前年の反動も顕著に見られる。
 大学別では、静岡県立大(14%増:看護学部で推薦枠を15人→45人に拡大)や高知工科大(30%増)・名桜大(13%増)の志願者増、北海道教育大(7%減)・岩手大(8%減)・茨城大(9%減)・岡山大(8%減)・熊本大(14%減:理で廃止し一般入試に移行)・都留文科大(8%減)・兵庫県立大(10%減)の志願者減が目立つ。
 合格者数は「国立大2%減、公立大1%増」、倍率(志願者数÷合格者数。以下同じ)は、国立大が2.6倍→2.5倍とわずかにダウンし、公立大は2.2倍で13年と同様だった。
学部系統別にみると、農、教員養成が志願者減、理工、医療・看護も微減。一方、就職事情の若干の好転を受け、経済系が微増だった。

セ試を課さないAO入試は、志願者3%減、合格者3%増

AO入試は国公立大の42%(69大学)で実施したが、ここ数年と同様、実施学部・学科の削減(例:群馬大‐理工、金沢大‐理工学域、鳥取大‐農<共同獣医>などで廃止)など、“AO離れ”が進んだ。
 このため、セ試を課さないAO入試は、13年12月25日現在の集計(33大学:志願者数=約4千人)によると、「志願者3%減、合格者3%増」で、倍率は3.6倍→3.4倍とダウンした。大学別では、京都工芸繊維大(23%増)の志願者増、東北大(10%減)・静岡大(12%減)・熊本県立大(15%減)の減少が目立った。


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15年新課程入試の変更点を速報! セ試・2次とも科目増が目立つ。東京学芸大が全学規模で改編


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いよいよ15年「新課程入試」がスタート。他教科に先がけ、数学・理科は大きく変わる。各大学とも切り替えに注力する中、セ試・2次とも科目数の増加が目立つ。この他、東京学芸大の教員養成課程の拡大、高知県立大・高知工科大の改編、推薦・AO入試の「セ試を課さない→課す」への移行が注目される。

広島大‐薬で後期日程を廃止、九州大‐法でAO入試を導入

ここからは15年国公立大入試の、新課程入試に移行したことによる変更(数学・理科の科目指定、それに伴う科目数の変更)以外の、志願動向に影響しそうな変更点を見ていこう。

図2.東京学芸大学の改組予定(定員増減と課程の統合)
(1)新設・改編、日程・募集人員の変更
 東京学芸大では、教員養成課程の定員を増やす一方、教養系の5課程を「教育支援課程」に統合し、定員を大幅に削減する(図2)。また、高知大‐教育も教員養成課程の定員を増やし、「生涯教育課程」を廃止する。
 公立大では、高知県立大で文化学部の定員増と「夜間主コース」新設を、高知工科大でマネジメント学部の改編(経済・マネジメント学群に改称)と定員増を予定している。
 その他は、広島大‐薬の後期廃止、岡山大‐法[夜]の一般入試新規実施、14年開設の敦賀市立看護大の前・後期への新規参入などが目立つところ。
(2)入試科目の増減など
 数学・理科の“新課程”科目への移行にあわせ、入試科目の変更が比較的多い。セ試・2次ともに、負担増を行う傾向がみられる。特に、2次で学科試験、中でも英語を追加するケースが目立つ。
【入試方式】茨城大‐工[昼]【前】で、「セ試のみ」「セ試+2次」の2パターンで採点、高得点の方を利用して合否判定する方式を導入。また、島根県立大‐総合政策【前】ではセ試5教科のB方式を新規実施。一方、岩手県立大‐ソフトウェア情報【前】では、セ試を課さない方式(A)を廃止する。
【センター試験】筑波大(5学類の前期、3学類の後期)をはじめ、茨城大‐理【後】、信州大‐経済【前】【後】、静岡大‐人文社会科学[昼]【前】・情報【前】、京都大‐総合人間(文系)【前】・文【前】・法【前】、山口大‐人文【後】、石川県立大【前】、神戸市外国語大【後】、兵庫県立大‐看護【後】などでセ試の科目数を増やす。
【2次試験】群馬大‐理工【前】、岡山大‐理【前】・農【前】、熊本大‐理【前】などで英語を追加。また、信州大‐医(医)【前】【後】で理科、九州大‐文【前】で地歴、高知県立大‐文化【後】で面接、熊本県立大‐総合管理【前】で小論文を追加する。一方、北九州市立大‐国際環境工【前】で英語を除外する。
【配点比率】東京農工大‐工【前】では、配点比率を「2次重視→セ試重視」に変更する。
【その他の変更】広島大では、国立大の一般入試で初のインターネット出願を導入する。
(3)推薦・AO入試の導入・廃止
 ここ数年と同様、「セ試を課さない方式」の廃止、「課す方式」の導入例が目立つ。
【推薦入試】岡山大‐環境理工、三重県立看護大でセ試を課す推薦を導入。名古屋大‐経済、島根県立大‐総合政策で「セ試を課さない→課す」に移行する。一方、千葉大‐工、岡山大‐法[夜]でセ試を課さない推薦を廃止し、熊本大‐工も「理数大好き入試」を廃止する。
【AO入試】長崎大‐環境科学、島根県立大‐総合政策、高知県立大‐文化、長崎県立大‐経済でセ試を課さないAOを、岡山大‐環境理工でセ試を課すAOを廃止。一方、東北大‐農でセ試を課さないAOを、東京工業大‐第7類、九州大‐法でセ試を課すAOを導入する。

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以上、2月下旬までに判明した、数学・理科の科目指定と、それに伴う科目数の増減以外の、15年国公立大入試の主な変更点の一部を紹介した。新課程入試科目の詳細は、次号(螢雪時代5月号)の特別付録『国公立大新課程入試科目・配点一覧』を見てほしい。さらに今後、各大学が6~7月に発表する「選抜要項」(入試の概略を紹介した冊子)、10~12月に発表する「募集要項(出願書類を備えた正式な入試要項)」などで必ず確認してほしい。

●お詫びと訂正(1)
小社刊『螢雪時代・2014年4月号』中の「2014年 国公立大入試 志願者動向分析」で、142ページの右段下から10行目が「福井大‐医(医)
【前】」となっていますが、正しくは「【後】」となります(【前】=前期日程、【後】=後期日程の略)。読者ならびに大学関係各位にお詫びして訂正いたします。なお、当サイトに転載した同記事については修正済みです。

 

(文責/小林)

この記事は「螢雪時代(2014年4月号)」より転載いたしました。


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