入試動向分析

2013年一般入試 合格ライン突破対策!【2012年12月】

2012(平成24)年度

得意科目を最大限に生かす得点プランで合格ラインをクリア!

 

 合格するのに満点は必要なく、合格ラインをクリアすればよい。センター試験、国公立大2次試験、難関私立大入試それぞれについて、合格ラインを突破するための効果的なプランを紹介する。

 

※この記事は『螢雪時代・2013年1月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

センター試験では得点率70%を、国公立大2次や難関私立大では文系60~70%、理工系50~60%を確保!

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 文系・医療系で得点率60~70%台、理工系で50~60%台、医学部で80%台以上とされる合格ラインを上回るには、得意科目で高得点をかせぎ、不得意科目はなるべく失点を避ける、自分の強みを最大限に生かしたメリハリある戦略が必要だ。さらに「解ける問題を優先」「部分点狙い」で、粘り強く合格ラインを突破しよう。

 
 

総合点の「合格ライン」のクリアを目標にしよう

 

 センター試験、そして一般入試の本番を直前に控え、「どれくらい点を取れば合格できるのか」と不安なことだろう。そこで目安となるのが、各大学が案内パンフレットやホームページで発表している「合格最低点」だ。
 入試の合否は、たいていの場合は「総合得点」で決まる(例外的に、受験科目中の特定科目の成績順位で決まるケースもある)。総合得点とは、受験した全ての科目の合計得点だ。
 国公立大ならばセンター試験(5または6教科7科目が主)と2次の個別試験(2~3教科・科目が主)の合計得点、私立大ならば2~3教科・科目の合計得点ということになる。
 合格最低点は、合格者のうち順位が最下位の者の得点である。発表方法は、大学・学部によって素点そのもの(選択科目は得点調整後の場合も)だったり、得点率(合格最低点÷満点)だったりする。そのため、合格最低点は「合格ライン」とも呼ばれる。入試に合格するためには、とにかくこの「合格ライン」をクリアすればよい。特待生を狙わない限り、満点でも合格最低点でも合格に変わりはない。
 もちろん、年ごとの入試問題の難易や倍率の変動によって、合格最低点も上下する。それでも、具体的な合格者像をイメージできる、最も現実的な目安であることは確かだ。

 
 

私立大文系は「8・7・6」パターンで60~70%台を確保

 

 合格ラインについて、まずは私立大一般入試のケースをみよう。ここ2年間、難関・上位校で合格者を増やし倍率ダウンするケースが目立つが、それでも厳しい競争が続いている。
 図1に、龍谷大‐経済(A日程:スタンダード方式文系型)の2012年(以下、12年。他年度も同じ)入試で、合格ライン付近の人数分布を示した。同方式の科目・配点は「英語」「国語」「世界史、日本史、政治・経済、数学から1」の3科目で各100点、計300点。受験者数1,516人に対し合格者数429人で、実質倍率は3.5倍。合格最低点は202点(得点率67.3%)だった。その分布の特徴を挙げると、
 
(1)合格最低点を含め、上10点幅のゾーンに135人と、全合格者の約31%も集中している。
(2)不合格者の最高点(201点)を含め、下10点幅のゾーンにも179人いる。
(3)合格最低点で合格したのは17人、1点差での不合格者も13 人いる。
 
 合格ライン付近では、総合的にほぼ同じ学力の受験生がひしめきあい、わずか1点差で合否が決まる。マークミス1つが明暗を分けるといってもいい。では、“1点差”を争う合格ラインを、どうやってクリアするのか? 図1の右側に、合格最低点とその1点下の受験者から、特徴のある得点パターンをピックアップしたが、ここからわかることは「得意科目」の大切さだ。
 3科目入試では、1科目で得点が伸びなくても他の科目でカバーできることが多い。AさんやBくんのように得意科目があれば、他の2科目が普通、または他の2科目のうち1科目だけやや苦手であっても突破できるので心強い。ただし、DくんやEさんのように苦手科目の失点が大きすぎると、得意科目でもカバーしきれず1点差に泣くことになる。得意科目での優位を生かすには、苦手科目も6割程度の得点はほしいところだ。
 以上のことから、私立大文系学部ではCくんのパターンに近い「8・7・6」、つまり得意1科目(8割台)、準得意科目(7割台)を持ち、残り1科目は普通(6割前後)をキープすることが、合格ライン(7割台)をクリアする目標パターンであることがわかる。

 
合格・不合格の状況
 

私立大理系は「5・5・8」パターンで50~60%台を確保

 
合格・不合格の状況

 総合点でどれくらい取れば合格できるのか、難関私立大の12年一般入試(センター試験利用を除く)の合格ライン(得点率)をもう少しみてみよう。
 表1の青山学院大(個別学部日程)では、文系はほぼ60%~70%、理工系はほぼ50%~60%が合格ラインだ。また、表2の早稲田大(一般入試)でも、文系はほぼ60%~70%、理系はほぼ50%~60%が合格ラインだ。他大学の「合格ライン」をみても、総じて「文系は60~70%台、理系は50~60%」と、ほぼ共通した傾向を示す。ただし、“理系・資格志向”で学力上位層が理系にシフトしていることから、文系・理系の差は縮まりつつある。 私立大理系学部では、どんな得点パターンで合格ラインをクリアすればいいのか。例えば、同志社大‐理工(機械システム工)の学部個別日程(配点=英語100点・理科150点・数学200点)では、物理で127点(得点率85%)取れれば、英語50点(同50%)・数学100点(同50%)であっても、総合点の合格ライン(277点:61.6%)に到達できる。
 このように、理系学部の場合は6割台確保のため、得意1科目(8割台)を持ち、残り2科目は5~6割台をキープする、「5・5・8」のパターンを目標にしよう。

 
 

特定科目に“基準点”を設ける大学に注意

 

 6割台をとるなら「“4・6・8”や“3・7・8”でもよいのでは?」と考える人もいるだろう。ところが、特定科目の得点が一定点に達しない場合、他の科目も含め選考の対象にしない“基準点”を設ける大学・学部もある。
 慶應義塾大‐法では、外国語と地歴(日本史B・世界史Bから1)の合計点が一定の点数に達した受験生だけ「論述力試験」を採点し、その結果を加えて合否を決定する。早稲田大‐教育では、国語国文学科が「国語」、英語英文学科が「英語」、数学科は「数学」について、それぞれの全受験者の平均点を合格基準点としている。また、同志社大‐法・経済で英語(200点満点)に「80点」、関西大‐法も各科目に「配点(素点)の20%」の基準点を設けている。
 基準点は、「特定科目の全受験者の平均点」「配点の4割」とするのが一般的だ。募集要項で必ず確認しておくとともに、苦手科目でもこの程度は得点できるようにしておこう。

 
 

得点調整で選択科目間の有利・不利を解消

 

 受験生にとって不安なのは「選択科目」の扱いだ。文系は「地歴・公民・数学から1科目」、理系は理科で「物理・化学・生物から1科目」選択することが多いため、科目の難易で有利・不利が生じ、得点に較差が出てくるからだ。
 ただし、多くの大学・学部では、偏差値(得点を「平均が50、標準偏差10の正規分布での値」に換算したもの)や中央値補正法(成績順で中央に位置する人の得点を、その科目の満点の5割となるように全体を補正)などを用いて調整する。偏差値を用いれば満点が異なっても、ほぼ「30~70の値」に換算できる。
 12年入試の例を見ると、関西学院大では選択科目(学部によっては全科目)で中央値補正法によって得点調整を行い、青山学院大や同志社大も全学部の選択科目の間で得点調整を実施した。慶應義塾大‐文・法・商は「地理歴史」間で、看護医療は選択科目(数学・化学・生物)の間で得点を補正。早稲田大でも理工系3学部以外の10学部で選択科目間の標準化を行い、表2の合格最低点は調整後のものだ。

 

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「6・6・6・8・9」パターンでセンター試験は70%台を確保

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 次は国公立大について説明する。まず、センター試験でどの程度得点すればいいのか?
 センター試験の受験者全体の平均点は、例年ほぼ60%前後である。これは、問題レベルが「学習の達成度を見る」ため、教科書(章の練習問題など)の範囲で、受験者平均が60%程度となるように作られるためだ。ちなみに、12年センター試験の受験者平均点(各科目の平均点と受験者数から全体の平均点を算出)は、5教科6科目(地歴・公民あわせて1教科1科目として100点、理科1科目として100点)の800点満点で484.5点(得点率60.6%)である。次に、国公立大の12年入試データで、センター試験の合格最低点の得点率をみてみよう。表3の金沢大(前期)では、文系は6割台後半~7割、理工系は6割台前半~後半、医学科を含む医療系は6割台後半~8割。表4の岡山大(前期)では、文系が6割台後半~7割、理工農系は6割台前半~後半、医療系は7割台が多く、中でも医(医)の84.2%、薬(薬)の81.3%が飛びぬけて高い。他大学の事例を見ても、センターの合格ラインは、医・薬や超難関校の8割台を除くと、全体的には6~7割台が多い。
 センター試験の得点目標を7割とすると、5(6)教科とも均一に70%台を取れればいいが、科目数が多い上に、得意・不得意があるから、そうはいかないのが普通だ。そこで、5教科(ここでは地歴・公民をあわせて1教科)の得点割合を「6・6・6・8・9」と設定し、「3教科は受験者平均並みの60%台、残りの2教科は準得意教科80%台、得意教科90%台」で平均70%台を確保しよう。志望校が傾斜配点(特定教科の比率を高める)で、得意教科の配点が他教科より高ければ、さらに有効だ。

 
合格・不合格の状況
 
合格・不合格の状況
 

国公立大の2次は文系60%台、理工系50%台を確保しよう

 
2011年入試 東北大(前期)センター試験 合格者平均得点率の比較

 国公立大2次試験は記述式の2~3教科が主流なので、基本的には私立大と同様に考えよう。
 まず、総合点(センター・2次合計)の合格ラインを見ていこう。表3の金沢大(前期)をみると、文系は6割台後半~7割、理系は6割台前半~7割の範囲に分布し、医学科のみ8割に達している。さらに、表4の岡山大(前期)や、名古屋大・神戸大・熊本大などの前期の合格ラインをみると、「文系7割程度、理工系・医療系6~7割程度、医は8割程度」と、ほぼ共通した傾向を示す。ただし、理系受験生のレベルアップに加え、ここ2年のセ試の平均点アップが理系有利に作用したこともあり、難関私立大と同じく文系・理系の差は縮まっている。
 金沢大・岡山大とも、2次の合格最低点が意外と低い学部・学科もあるが、センター試験で高得点を取らないと、総合点の合格ラインに届かない。例えば、金沢大‐電子情報学類の2次の合格最低点は203.4点(46.2%)だが、総合では551.2点(61.9%)なので、センターで347.8点(77.3%)も必要。また、岡山大‐経済[昼]の2次の合格最低点は330点(55.0%)だが、総合では1,044.8点(69.7%)なので、やはりセンターで714.8点(79.4%)が必要だ。受験生、とりわけ現役生の学力は入試直前で大きく伸びる。なるべく、文系や医療系では「センター8割+2次6割」で総合点7割台を、理工系では「センター7割+2次5割」で総合点6割台を、そして医学部志望者は「センター9割+2次7割」で総合点8割台を確実に得点し、無理なく合格ラインをクリアしたいところだ。
 東北大の前期における各学部(学科・専攻)の、センター・2次それぞれの合格者平均得点率を見ると(図2)、医(医)のみ「センター87.8%、2次70.9%」と突出しているが、その他はセンター試験がほぼ80%前後に対し、2次はだいたい45%~55%の範囲に留まる。
 ただし、センター試験の8割はともかく、2次で「文系6割台、理工系5割台」を得点するのはけっして容易ではない。センター試験より難度が高いことが多く、特に数学・理科は、記述式で計算量も多いので得点しにくい。しかも、2次は各大学の個別試験だから、それぞれの個性が強く出る。そのため、過去問を徹底研究し、出題傾向を把握しておくことが、合格ライン突破につながるといっても過言ではない。

 
 

解けそうな問題優先。難問は思い切って「捨てて勝つ」!

 

 合格ラインを突破する得点パターンが決まったら、入試本番ではその戦略に沿って問題を解いていこう。問題用紙が配られたら、まず全問を見渡す。第1問から順番に解くのではなく、解けそうな問題から着手し、リズムに乗ろう。この方法は全教科に共通するが、特に数学や、物理・化学など理科系科目では重要だ。その際、次の手順を忘れないこと。
 
(1)全問に目を通す(読むのではない)。
(2)問題ごとに、「解けそうだ」=○、「いけるかな」=△、「無理かも」=×、と印をつける。
(3)○から先に解く(問題番号順とは限らない)。
 
 ×には手を付けず、まず○から始め、次は△へ……という順に、集中的に解く。1題解けると落ち着き、次の○や△もふだん通りに解けることが多い。何より大切なのは「時間配分」。難問にてこずり貴重な解答時間を浪費するより、○や△を優先して時間をかけよう。
 数学で、○や△が完全に解けない場合は、とにかく小問(1)だけを解こう。例えば、大問が小問2つで構成されていれば、(1)は教科書にある基本的な問題解法で解けるように作成してあり、(2)は(1)の結果を利用すれば解けるようになっているケースが多い。また、×の問題にも比較的易しい小問が用意されていることがあり、各大問のうち小問(1)だけを解くだけで、全体の得点の3~4割近くを取れる。粘り強く部分点をかせぐことが、合格ライン際の「1点差」を制することにつながるのだ。
 以上の「捨てて勝つ」戦術は、ふだんの過去問演習の時に、指定時間内に解くことを強く意識して、手順をしっかり身に付けよう。
*    *    *
 入試直前は少しの時間も無駄にできない。これからの時期は、得意科目は過去問や参考書・問題集を中心とした学習に徹し、不得意科目は教科書や模試の問題などの反復練習に切り換え「復習に力を入れることが受験勉強」と割り切ることで、効率よく“合格力”をつけよう。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2013年1月号)」より転載いたしました。

 

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