2014年は国公立大が志願者増、私立は志願者減、“安全志向”が強まる!?
夏休みを前に、各大学の2013年(以下、13年)入試結果データが出そろった。ここでは、国公立大、私立大それぞれの一般入試結果を最終チェックし、14年の動向を予測。さらに、14年の最新入試情報も紹介する。
※この記事は『螢雪時代・2013年8月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)
一般入試の合格状況を総ざらい! 国立大は教員養成系が易化、私立大は中堅理工系が難化か
13年の一般入試結果を見ると、国公立大は「志願者1%減、合格者1%増」、私立大は「志願者7%増、合格者3%増」。京阪神の私立大の倍率アップが目立った。国立の教員養成系大学がやや易化、私立の“中堅理工系”大学がやや難化した模様だ。この他、学部系統別では、国公立大・私立大ともに薬が難化、経済がやや易化したとみられる。
国公立大:
志願者1%減、合格者1%増。歯・薬が難化、法・文・医が易化
国公立大の13年一般入試の実施結果を『螢雪時代』で調査したところ、全体では12年に比べ「志願者1%減、合格者1%増」で、倍率(志願者÷合格者。以下、特に注記のない場合は同じ)は12年4.2倍→13年4.1倍とダウンした。
日程別にみると、公立大中期は「志願者7%増、合格者3%減」で倍率は5.6倍→6.2倍とアップしたが、前期は「志願者:前年並み、合格者1%増」で3.0倍→2.9倍、後期が「志願者3%減、合格者3%増」で8.4倍→7.9倍とダウン。特に、国立大の後期が9.1倍→8.4倍と、大幅に倍率ダウンした。
センター試験(以下、セ試)の平均点大幅ダウン(グラフ1)の影響は大きく、もともと“安全志向”が強かった受験生が自信喪失、“慎重・弱気”な出願傾向から、「国立大→地元の公立大」へ志望変更したり、後期の出願をあきらめ私立大の併願を増やしたりした模様だ。
各大学の倍率(全学の合計)の変動を見てみよう。難関~準難関校で倍率低下が目立ち、前年の反動と「文低理高」傾向も顕著に見られた。
難関校では、東京大(4.3倍→3.9倍)をはじめ、一橋大(4.5倍→4.1倍)、名古屋大(2.9倍→2.7倍)、大阪大(3.6倍→3.1倍)が倍率ダウン。特に、13年ぶりに2段階選抜を実施しなかった東京大‐文Ⅰ(前期)の倍率急下降(4.0倍→2.9倍)が目立つ。一方、西日本の難関大志望者が「東大→京大」へ流れた模様で、京都大は倍率アップ(2.8倍→2.9倍)。東北大(3.0倍→3.1倍)、東京工業大(4.6倍→4.7倍)も倍率アップし、やや難化した模様だ。
準難関校では、筑波大(4.0倍→3.8倍)、東京外国語大(5.1倍→4.5倍)、神戸大(4.5倍→4.0倍)、首都大学東京(5.3倍→4.8倍)など、倍率ダウンのケースが多い。その中で、広島大(2.9倍→3.1倍)の倍率アップが目立つ。この他、北海道教育大(4.4倍→3.6倍)、東京学芸大(3.7倍→3.2倍)、愛知教育大(3.7倍→3.1倍)、大阪教育大(4.2倍→3.8倍)、奈良教育大(6.1倍→4.2倍)など、教員養成系の単科大が軒並み倍率ダウンし、やや易化した模様だ。
学部系統別(グラフ2)にみると、全体的に倍率がややダウンする中で、歯、薬が激戦化し、いずれも難化した模様だ。工も人気アップしたが、倍率は前年並み。一方、医は高レベルの激戦ながら、倍率面でやや緩和されたといえる。また、志願者減の法、経済・経営・商、文・教育・教養、教員養成がやや易化したとみられる。
私立大:
志願者7%増、合格者3%増。京阪神で合格者絞り込み
『螢雪時代』の私立大一般入試結果調査(534大学集計:志願者295.5万人)によると、12年に比べ「志願者7%増、合格者3%増」で、倍率は全体で12年3.4倍→13年3.5倍にアップした。
入試方式別にみると、各大学の独自試験は「志願者8%増、合格者6%増」で、倍率は3.7倍→3.8倍にアップ。また、セ試利用入試(独自・セ試併用型を含む)は「志願者4%増、合格者1%減」と、より合格者を絞り込み、倍率は2.9倍→3.0倍にアップした。入学手続率が比較的良好なことから、定員超過を避けるため、合格者を絞り込んだものとみられる。
志願者数の上位10大学(表1)の入試結果を見ると、日本大・関西大・近畿大が志願者大幅増ながら合格者を抑え目に出し、実質倍率(受験者÷合格者)がアップし、やや難化した模様だ。この他、おもな大学で実質倍率が変動したケースを紹介する(*=志願者÷合格者)。
(1)倍率アップ 首都圏=青山学院大5.2倍→5.8倍、工学院大4.9倍→5.5倍、芝浦工業大4.0倍→4.8倍、成城大3.8倍→4.0倍、東海大2.8倍→3.5倍、東京電機大4.4倍→5.1倍、東京都市大3.1倍→3.3倍、日本女子大2.8倍→3.2倍 京阪神・その他=東北学院大1.8倍→2.0倍、南山大2.2倍→2.6倍、名城大2.4倍→2.8倍、京都産業大3.3倍→4.0倍、佛教大3.6倍→4.0倍、龍谷大3.3倍→3.8倍、関西学院大3.5倍→3.9倍、甲南大3.6倍→3.8倍、武庫川女子大3.2倍→3.8倍、西南学院大3.2倍→3.4倍、福岡大3.3倍→3.7倍 (2)倍率ダウン 首都圏=國學院大5.2倍→4.8倍、国際基督教大3.1倍→2.7倍*、駒澤大3.8倍→3.4倍、上智大4.0倍→3.8倍、成蹊大4.8倍→4.5倍、専修大3.5倍→3.0倍、東京女子大3.0倍→2.6倍、武蔵大6.6倍→4.9倍、明治学院大3.1倍→2.9倍 その他=広島修道大2.4倍→2.1倍 |
地区別の集計をみると(グラフ4)、関東・甲信越、中国・四国は倍率が前年並みに留まったが、他の4地区はアップし、特に関西地区の難化ぶりが顕著だ。地元志向の強まりで、首都圏への流入が鈍ったものとみられる。上記のおもな大学の倍率変動をみても、首都圏の難関~中堅校の倍率ダウンと、京阪神や各地域ブロックの拠点校の倍率アップが対照的だ。ただし首都圏でも、ここ数年人気を集める“中堅理工系”では、実質倍率がアップした大学が多い。
全国の私立大を、大学単位の競争率(実質倍率)グループ別に分類すると(グラフ3)、12年とは逆に、4.0倍以上の大学が増え「3.9~3.0倍」の大学が減少。また、「2.9~2.0倍」の大学が増え「1.9倍以下」の大学が減ったのが目につく。おもに中堅上位校のうち、12年に「4倍台→3倍台」に低下した大学が再び4倍台へ、中堅クラスのうち「2倍台→1倍台」に低下した大学が再び2倍台へ戻ったとみられ、「前年の反動」が如実に示されている。
学部系統別にみると(グラフ5)、ここ数年と同じく「文低理高」傾向が強い。理系学部は軒並み倍率アップしたが、特に医、薬の難化が著しい。また、“爆発的”に志願者を増やした理・工や、農・水畜産・獣医も倍率アップが顕著で、全体にやや難化した模様だ。対照的に、文系の倍率は全体にほぼ前年並みで、中でも経済・経営・商はやや易化したものとみられる。
14年一般入試の志願者数は、国公立が2%増、私立が4%減か
次に、14年の一般入試がどう動くのか予測してみよう。ポイントは3つある。
(1)再び受験生数が減る!?
4(6)年制大学の受験生数は、13年の約3%増に対し、18歳人口の減少に伴い、再び減少に転じる見込み。65万7千人と、13年に比べ約4%減少するものとみられる(本誌推定)。
(2)センター試験の平均点がやや上がる!?
14年度のセ試は、13年の平均点大幅ダウンの反動で、国語、数学Ⅰ・A、物理などがやや易化するとみられる。そのため平均点は上がる見込みだが、15年の“新課程セ試”スタート(後述)という制度の変わり目を控え、小幅なアップに留まりそう。それでも、国公立大への出願を促す要因となりそうだ。
(3)“後がない”意識で安全志向強まる!?
15年から新課程入試(数学・理科で先行実施)が始まる。特にセ試では理科の出題科目が大幅に変更され、選択パターンも複雑化する。過年度卒業者(浪人)に対する経過措置(旧課程による選択問題を出題、など)が行われる見込みながら、現行課程最後の14年入試では、「後がない」意識による「浪人できない」プレッシャーから“安全志向”が強まり、受験生が“慎重出願”に走るものとみられる。
以上のことから、一般入試の志願者数は、国公立大で前年比2%程度の増加、私立大で4%程度の減少が見込まれる。学部系統別では、理系志望者の層が質量ともに厚みを増しているため、理工・農・医・薬など、引き続き理系全般に志願者増の見込みながら、13年の反動もあり、小幅な増加に留まりそう。医療・看護系は、増設ラッシュ(表2を参照)で志願者が分散しそうだ。一方、文系(特に法・経済)や教員養成系は志願者減が見込まれ、「文低理高」傾向に変化はなさそう。また、強い“地元志向”から、首都圏では引き続き、国公立・私立ともに他地区からの流入減が見込まれる。
14年入試の変更点をチェック! 受験生の経済面の負担軽減を目指した入試改革が目白押し!
ここからは「前回に続き、6月中旬現在で判明した、14年入試のおもな大学の変更点を、学部等の新増設と、一般入試を中心に紹介する。国公立大では奈良女子大の全学規模の改組、私立大ではインターネット出願の本格化や、受験料を割り引く大学の増加、看護系と保育・教育系の“増設ラッシュ”が注目される。
首都圏私立大入試では、2月1日が“ホットデー”に!?
日本大が全学規模の統一入試「N方式第1期」を導入する。同方式の試験日は2月1日だが、その日は専修大の「スカラシップ・全国入試」、大東文化大の「全学部統一入試」、明治学院大の「全学部日程」と、いずれも“全学共通日程”の性格を持つ試験が集中し、日程重複が生ずるので、新たな“ホットデー”となりそうだ。ちなみに、大東文化大では全学部統一入試に後期(2/26実施)を追加し、明治学院大では全学部日程で学外試験場を新設(仙台・静岡)する。
また、2月5日に実施される法政大の統一日程入試「T日程」では、14年から複数同時併願(選択科目や学部・学科による)が可能になる(2併願目以降の受験料割引も導入)。07年の導入以来、明治大の「全学部統一入試」と同日に実施されてきたが、今回の変更(明治大は従来から複数同時併願可、受験料割引を実施)により、両大学間で志願者が分散しそうだ。
私立大でインターネット出願や「ネット割」の導入が本格化
私立大で、受験生の経済面の負担軽減や利便性向上を目的とした変更が目立つ。
13年に京都産業大・龍谷大・近畿大が導入し、関西地区全体に影響を及ぼしたインターネット出願の受験料割引(ネット割)だが、14年入試でも導入校が続出している。愛知学院大・大阪工業大・神戸学院大・福岡大などがインターネット出願を新たに実施(対象となる入試は各大学で異なる)、受験料割引(6月現在、大阪工業大は検討中)も行う。既に実施している大学では、工学院大・東京電機大が一般入試(セ試利用含む)で「ネット割」を導入する。割引額は各大学や入試方式で異なるが、だいたい「3千円~5千円」を減額している。
さらに、東洋大・中京大・近畿大などが紙の願書を廃止し、全面的にインターネット出願に移行する(一部、対象外の入試がある。中京大は一般入試のみ実施)。ネット環境に慣れた現代の受験生のニーズを取り込み、今後もインターネット出願の導入は加速していくとみられる。
「ネット割」以外でも、受験料を減額する大学は増える一方だ。國學院大では、セ試利用V方式で受験料減額(1万8千円→1万3千円)と複数併願時の割引制度(2学科目以降は1万3千円→8千円)を導入。また、共立女子大がセ試利用入試で「1万9千円→1万5千円」に、広島修道大もセ試利用入試で「1万7千円→1万5千円」に受験料を減額する。
奈良女子大が全学規模で改組。看護系の増設ラッシュが続く
●国公立大:新増設・改組
奈良女子大で全学的な改組を予定している。理学部を「5→2学科(6コース)」に統合する一方、文・理2学部の一部コース・定員を移行し、生活環境学部を「4→5学科(心身健康学科を増設)」に再編する予定。また、長崎大で「多文化社会学部」、静岡県立大‐食品栄養科学で「環境生命科学科」の増設を予定している。一方、4月にお伝えした、東京学芸大の全学的な改組(教員養成課程を定員増、教養系5課程を「総合教育課程」に統合し定員減)は15年以降に延期された。
●国公立大:募集人員
高知工科大で「システム工学群=前期85人→100人・後期15人→20人・推薦70人→50人、環境理工学群=前期50人→55人・後期10人→15人・推薦30人→20人」と、推薦から一般へ募集人員を移行。静岡文化芸術大‐文化政策では「前期121人→132人、後期30人→26人、推薦49人→42人」と前期の比率を高める。
●私立大:新増設・改組
6月17日に、14年度の学部・学科の増設予定が文部科学省から発表された(5月末認可申請分。表2を参照)。私立21大学で学部・学科の増設を認可申請したが、ここ数年以上に、医療・看護(10大学で申請)と保育・教育(9大学で申請)の2分野に集中している。
この他、(1)上智大‐総合グローバル、創価大‐国際教養、武蔵野大‐法・経済(政治経済学部を分割)、鈴鹿医療科学大‐看護などの学部増設、(2)北海道工業大(空間創造・創生工→工)などの学部統合、(3)法政大‐生命科学(応用植物科学)、早稲田大‐基幹理工(情報通信)、中部大‐工(ロボット理工)などの学科増設が予定されている(いずれも設置届出)。
浜松医科大‐医(医)の後期で2段階選抜を新規実施
●国公立大:一般入試
秋田大で新設予定の「国際資源学部」の14年入試科目(予定)が発表された。コース別の概要は、セ試(前・後期共通)が「資源政策=5または6教科7科目(地歴・公民から2)、資源地球科学・資源開発環境=5教科7科目(理科2科目)」。2次は、前期が「資源政策=国語・英語、資源地球科学・資源開発環境=数学・理科・英語」を課し、後期は3コースとも面接のみ。
浜松医科大‐医(医)の後期で2段階選抜を新規実施(予告倍率=募集人員の15倍)。やはり2段階選抜で、横浜市立大‐医(医)の前期は予告倍率を「約3.3倍→約3倍」に引き締め、大阪市立大‐医(医)では基準を「倍率(5倍)→セ試得点(900点中650点)」に転換。この他、下関市立大‐経済の前期で福岡会場を増設する。
●私立大:独自入試
青山学院大‐経済でB方式(2科目型)を廃止。/成蹊大のE方式(全学部統一)・P方式(法のセ試併用)で学外試験場を増設(静岡・福岡)。/創価大で「全学統一入試」を新規実施。/東海大‐医でA方式を「60人→70人」に増員(編入学定員を削減)し、1次選考から適性試験を除外。/日本歯科大‐生命歯で「一般前期68人→53人、セ試前期25人→20人」に募集枠を削減(公募制推薦を導入)。/名城大‐法でA方式後期を廃止。/京都産業大で中期日程、英語1科目型(外国語学部)を新規実施。/大阪薬科大で一般A(旧F方式)から調査書の点数化を除外。/甲南大でE日程・A日程3教科型を「一般前期3教科型」に統合する。
●私立大:セ試利用入試
セ試の地歴・公民、理科を2科目受験し、1科目判定の大学・学部等へ出願する場合、13年は判定に利用する科目を「高得点科目→第1解答科目」に転換する私立大が続出したが、14年はほとんど変更が見られない。おもな私立大では、北里大‐海洋生命科学・薬で「出願時に申告→高得点科目を利用」に変更、津田塾大‐学芸で4学科中2学科(数学・情報科学)を「高得点→第1解答科目」利用に切り替える程度だ。その他のセ試利用に関する変更は次の通り。
北海学園大‐人文1部でセ試Ⅱ期を新規実施。/千葉工業大でセ試中期を新規実施。/青山学院大‐法で4教科型を廃止し3教科型に統一。/国士舘大でセ試の国語から古文・漢文を除外。/成城大‐経済のセ試B方式前期で4科目型を追加。/創価大のセ試利用で4科目方式を追加。/武蔵大のセ試後期で7科目型を廃止。/佛教大のB日程セ試併用型で、セ試の利用科目を「2→1科目」に軽減(独自入試は2科目のまま)/大阪医科大‐医でセ試後期を新規実施(セ試=5教科7科目、2次=小論文・面接:3/19実施)。/桃山学院大でセ試C方式に中期を追加。/関西学院大‐法で「関学数学併用型」を新規実施(セ試2科目<英語必須>と独自入試の数学で判定)。/甲南大でC日程前期・中期を「セ試利用前期」に、E日程C方式・A日程C方式・S日程を「セ試併用前期」に統合。/武庫川女子大で、セ試の英語にリスニングを追加(文‐英語文化は既に実施)。/産業医科大‐医で2次の小論文を配点化(50点)。/熊本学園大‐経済・外国語・社会福祉の一般前期で「センタープラス型」を導入する。
●セ試利用入試:新規利用
6月中旬現在で判明した、14年からセ試を新規利用する(または取りやめる)私立大学・学部等の一覧を掲載した(各大学の入試概要、および『螢雪時代』調査による)。既に利用している大学の実施学部・学科増では、福岡大‐医(医)の新規利用が注目される。一方、国際基督教大・梅花女子大・甲子園大がセ試の利用を取りやめる。
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以上、詳細は国公立大の選抜要項、私立大の入試ガイドなどで必ず確認してほしい。
(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2013年8月号)」より転載いたしました。