入試動向分析

国公立大&私立大 2013年入試結果分析【2013年6月】

2013(平成25)年度

国公立大・私立大ともに首都圏の難関~準難関校がやや易化!?

 

 2013年入試結果のデータが各大学から本格的に発表されはじめた。今月号では、難化・易化を測る物差しとなる倍率の変化と、クリアすべき目標ライン「合格最低点・平均点」について見ていこう。

 

※この記事は『螢雪時代・2013年6月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

国公立大は後期が易化、公立大中期は難化か。
大学発表の“合格ライン”で具体的な目標をイメージしよう

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 国公立大全体の倍率(志願者÷合格者)は、公立大中期でアップしたが、前期日程はわずかに低下、後期日程は「志願者減・合格者増」でダウンした。学部系統別では、歯・薬が難化、文・法・教員養成・医がやや易化した模様だ。大学別では、東京大・一橋大・大阪大・神戸大など、難関~準難関校の倍率低下が目立つ。

 
 

北海道・東北~関西が倍率ダウン。歯・薬が難化、法・文が易化か

 
グラフ1 国公立大入試 日程別志願者・合格者動向、グラフ2 国公立大入試 地区別志願者・合格者動向、グラフ3 国公立大入試 おもな学部系統の志願者・合格者動向

 全国の国公立大学に対し、2013年(以下、13年。他年度も同様)一般入試の合格状況について本誌で調査したところ、全体の志願者数は前年比で1%減少したのに対し、合格者数は1%増えた。3月末現在の集計のため、受験者数が未発表の大学もある。また、個別試験(以下、2次)を課さず、センター試験(以下、セ試)の成績のみで合否判定したり、2段階選抜を行ったりする学部・日程等もある(この場合、志願者数=受験者数)。そのため、ここでは「志願者数÷合格者数」の倍率(以下、国公立大については同じ)を12・13年で比較した。
 日程別にみると(グラフ1)、公立大中期は「志願者7%増、合格者3%減」で倍率は5.6倍→6.2倍とアップしたが、前期は「志願者:前年並み、合格者1%増」で3.0倍→2.9倍とややダウン。さらに、後期は「志願者3%減、合格者3%増」で8.4倍→7.9倍とダウンした。
 後期の合格者数の増加は、難関大を中心とした募集枠縮小にもかかわらず、12年における合格者絞り込みの揺れ戻しとみられる。
 地区別にみると(グラフ2)、中国・四国、九州の倍率はほぼ前年並みだが、志願者が減少した他の4地区はいずれも倍率ダウン。特に後期では、北海道・東北(8.7倍→7.9倍)、北陸・東海(8.2倍→7.5倍)の大幅ダウンが目立つ。
 学部系統別(グラフ3)にみると、全体的に倍率がややダウンした中で、歯、薬が激戦化。薬は志願者4%増で倍率が6.6倍→6.8倍にアップ、歯も志願者8%増で5.1倍→5.4倍にアップし、いずれも前年に続き難化した模様だ。工も志願者3%増ながら、倍率はほぼ前年並み。一方、志願者6%減と敬遠された医は8.0倍→7.5倍に低下し、引き続き激戦ながら、倍率面ではやや緩和されたといえる。また、志願者5%減の文・教育・教養(4.2倍→3.9倍)をはじめ、法(4.0倍→3.8倍)、教員養成(4.1倍→3.9倍)がやや易化したとみられる。

 
 

東北大・京都大がやや難化、一橋大・大阪大などが易化か

 

 次に各大学の合格状況を、大学全体(学部・日程等の合計)の倍率の変動で見ていこう(以下、【前】=前期、【後】=後期の略)。セ試の平均点ダウン(難化)に伴う「慎重・弱気」な出願傾向から、難関~準難関校で倍率ダウンが目立つとともに、各難易レベルで前年の反動と「文低理高」傾向が如実にあらわれた。
 難関校では、東京大が前期3.3倍→3.1倍、後期32.2倍→29.1倍といずれも倍率ダウン。前期を科類ごとに見ると、志願者の増減に比例し、文Ⅲ(3.0倍→3.4倍)・理Ⅲ(5.0倍→5.5倍)のアップに対し、文Ⅰ(4.0倍→2.9倍)・理Ⅱ(4.1倍→3.7倍)のダウンが目立つ。一方、西日本の難関大志望者が「東大→京大」へ流れ、京都大は全体に倍率アップ(2.8倍→2.9倍)。特に経済【前】・工【前】が難化した模様だ。
 東京工業大では、12年の前期募集枠拡大の認知度が高まり、セ試を配点化せず(基準点は設定)、2次のみで合否判定を行うこともあり、12年に続き前期が志願者増(3%増)、倍率も4.1倍→4.2倍にアップし、特に第4類【前】が難化した模様。しかもセ試難化の影響で東京大‐理Ⅰ・Ⅱからの志望変更者が流入し、数字以上にレベルアップしたとみられる。一方、一橋大は社会科学系の人気低迷で、やはり12年に続き倍率ダウン(4.5倍→4.1倍)。特に志願者21%減の経済【前】が易化した模様だ。
 東北大では、名古屋大などから志望者が戻り、全体的にやや倍率アップ(2.5倍→2.6倍)。経済【前】・農【前】・理【後】が難化した模様。
 大阪大では、理・基礎工で後期を取りやめ、前期の募集枠を拡大(理25%増、基礎工21%増)したが、倍率は理【前】2.7倍→2.2倍、基礎工【前】2.7倍→1.9倍とダウン。特に基礎工はやや易化したとみられる。
 この他、募集人員の多い前期では、北海道大‐総合文系・歯、大阪大‐外国語・歯、九州大‐教育・医(医)・芸術工が難化する一方で、北海道大‐教育・法・経済、名古屋大‐文・情報文化・医(医)・農、大阪大‐人間科学、九州大‐文・歯が易化したとみられる。
 準難関校は、経済で後期を廃止した神戸大(4.5倍→4.0倍)をはじめ、東京外国語大(5.1倍→4.5倍)、首都大学東京(5.3倍→4.8倍)など、倍率ダウンのケースが多い。その中で、広島大(2.9倍→3.1倍)の倍率アップが目立つ。
 この他、北海道教育大(4.4倍→3.6倍)、東京学芸大(3.7倍→3.2倍)、愛知教育大(3.7倍→3.1倍)・大阪教育大(4.2倍→3.8倍)、奈良教育大(6.1倍→4.2倍)など、教員養成系の単科大の倍率ダウンが注目される。
 なお、文部科学省所管外の防衛大学校は、従来から国公立志望者の併願が多い上に、13年は入試改革(一般入試に3月実施の後期を追加、AO方式の「総合選抜」を導入)で注目された。一般入試の志願者は全体で前年比4%増、実質倍率(受験者÷合格者)は前期で10.3倍→12.3倍にアップ、後期も13.8倍の激戦となった。

 
 

東京大の合格最低ラインは、前期55~67%、後期44%

 

 志望校選びや目標設定の指針となるのが、合格者の最低点や平均点という「合格者データ」。国公立大ではセ試と2次それぞれを発表するケースと、総合点(セ試+2次)だけを公表するケースがある。合格最高点は文字通り全合格者中の最高得点で、合格最低点は合否の分かれ目になる、いわゆる「ボーダーライン」。そして合格平均点は、総じて最低点より得点率(%)にして5~10ポイント程度高い。
 ボーダーラインぎりぎりでも合格には違いないので、合格最低点はまさに「最低目標」として重要なデータといえる。ただし、確実に合格を目指すには、「合格者平均点」のレベルまで学力アップしておくことが望まれる。
 13年入試の合格者データのうち、東京大と金沢大のケースを紹介しよう。
 表1は東京大の合格ラインである。第1段階選抜と、第2段階(つまり最終)選抜に分けて掲載した。まず前期日程について見てみよう。
 第1段階選抜は、志願者大幅減(前年比27%減)の文Ⅰで志願倍率が予告倍率に達せず、13年ぶりに実施しなかったこともあり、不合格者数は前年に比べほぼ半減(48%減)。実施した5科類の合格ラインは、セ試の平均点ダウンと、志願状況(文Ⅱ5%増、文Ⅲ14%増、理Ⅰ10%減、理Ⅱ11%減、理Ⅲ10%増)を反映し、文Ⅱ74.8%(前年比+0.4ポイント<以下、p>)、文Ⅲ78.6%(+8.4p)、理Ⅰ63.8%(-21.8p)、理Ⅱ76.7%(-5.9p)、理Ⅲ78.0%(-0.4p)となった。とはいえ、各科類とも最終合格を考えると、セ試で確実に9割前後は取っておきたいところだ。
 第2段階(セ試+2次)選抜のデータを見てみよう。セ試は900点を110点に圧縮、2次440点の計550点満点。最終合格ラインは、文Ⅰ63.4%(前年比-4.2p)、文Ⅱ62.3%(-4.4p)、文Ⅲ63.1%(-1.1p)、理Ⅰ57.4%(-3.3p)、理Ⅱ55.0%(-2.7p)、理Ⅲ67.3%(-2.2p)と全科類でダウンしたが、特に文Ⅰ・文Ⅱのダウンが目立つ。
 この結果について、駿台予備学校の森澤慶一部長は「文科類の受験生にとって、数学が昨年より厳しい出題内容だったようです。特に現役生の場合、英語が比較的取り組みやすかった分、数学の実力が合否を分けた模様です」と見る。文科類受験者にとって、13年の前期は数学が「キー科目」だったといえそうだ。
 次に、全科類一括募集(共通問題で選抜)の後期日程について見よう。セ試は第1段階選抜のみに利用し、合否は2次のみで判定する。前年に東京工業大などの後期縮小の影響による学内併願の増加などで難化した反動で、倍率はダウンしたが、超高倍率の激戦にかわりはない。第1段階選抜の合格ラインは88.4%(-1.9p)とややダウンしたが、それでも「セ試の9割確保」は最低条件といえる。2次は300点満点で、最終合格ラインは44.0%(-0.7p)とダウンしたが、前年ほどの大幅ダウン(-6.6p)ではない。前出の森澤部長は「総合科目Ⅰ~Ⅲのうち、Ⅰ(英語)が標準レベルに戻り、対処しやすくなったことが要因と思われます」と語る。

 
表1 東京大の合格ライン
 

金沢大の合格平均は文系・理工系が7割近く、医療系が7割超

 

 次に、金沢大の前期日程の合格者データを見てみよう(表2)。
 総合点を得点率(%)に換算し、各学類を分野別にまとめて平均すると、文系(人間社会学域)で「最低65%・平均69%」、理工系(理工学域)で「最低64%・平均69%」、医療系(医薬保健学域)で「最低70%・平均73%」となった。合格するには、医療系で7割以上(医は8割以上)、文系・理工系で6~7割程度の得点を要求されるのだ。さらに、合格者平均点をセ試・2次の別に平均すると、「文系=セ試72%・2次64%、理工系=セ試72%・2次66%、医療系=セ試76%・2次69%」となった。マーク式のセ試に比べ、記述式の2次の方が得点しにくいことがわかる。
 このうち、配点がセ試重視の「国際学類」と、2次重視の「機械工学類」を比較してみよう。
 国際学類の科目・配点は、セ試が5または6教科7科目の計900点、2次が国語・数学・外国語(各200点)の計600点で総計1,500点。合格者は、セ試では得点率67%~80%(平均73%)に分布し、最高・最低の差は13p。2次では得点率53~78%(平均62%)に分布し、最高・最低の差は25p。配点の小さい2次の方が最高・最低の差が大きく、セ試の得点である程度合否が決まったことがうかがえる。
 一方、機械工学類の科目・配点は、セ試が5教科7科目の計450点、2次が数学250点、物理・英語各200点の計650点で、総計1,100点。合格者は、セ試では得点率61%~83%(平均71%)に分布、最高・最低の差は22p。2次では得点率58~80%(平均66%)に分布し、最高・最低の差はやはり22p。国際学類に比べ、セ試と2次で得点幅にほぼ違いがなく、2次の得点力で合否が決まったことがうかがえる。

 
表2 金沢大前期合格者の最低点・平均点
 

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私立大では、関西や地域の拠点校が倍率アップ、首都圏が倍率ダウン。関西大・南山大などがやや難化か

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 私立大の一般入試の受験・合格状況をみると、受験者9%増に対し合格者は3%増で、実質倍率は12年3.2倍→13年3.4倍とややアップした。関西大・近畿大・南山大など、京阪神や各地域の拠点校で倍率アップの大学が目立つ。一方、首都圏では中央大・法政大・明治大など倍率ダウンの大学が多数派だ。

 
 

合格者絞り込みで、実質倍率は3.2倍→3.4倍にアップ

 
グラフ4 私立大一般入試 地区別・方式別 受験者・合格者動向(3月末現在)

 本誌では私立大一般入試(主に2月入試)の受験・合格状況も調査した。103大学の集計(3月中旬現在)では、受験者数(未公表の場合は志願者で代替)は9%増えたが、合格者数は3%増に留まり(グラフ4)、実質倍率(以下、倍率)は12年3.2倍→13年3.4倍とアップした。
 私立大では合格者が併願先の他大学にある程度流出することを想定し、正規合格者をかなり多めに出す(独自入試=募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試=5~10倍程度)。ただし、13年は確実な合格を目指しつつ併願校を絞って出願し、その合格決定を大切にする傾向が受験生にみられたため、入学手続率が全体的に良好で、定員の大幅超過を避けるため合格者を抑え目に出す大学が目立った。実際、入試担当者からは「推薦入試の段階から、例年より入学手続率が上がった」との声が聞かれる。
 私立大が集中する大都市圏(首都圏、京阪神)とその他の地区に分けて集計すると、首都圏は4.0倍→3.9倍とやや低下する一方、京阪神地区は3.4倍→3.7倍、東海地区を中心としたその他の地区も2.4倍→2.7倍とアップした。
 入試方式別では、独自入試(各大学の個別試験)が「受験者9%増、合格者5%増」で3.5倍→3.6倍にややアップ。セ試利用入試(独自・セ試併用型を含む)は「受験者9%増、合格者1%減」とさらに絞り込みが顕著で、倍率は2.6倍→2.8倍とアップした。
 以下、おもな大学の倍率の変動を紹介する(*は「志願者÷合格者」、その他は実質倍率。おもに2月入試の集計)。関西大・近畿大・南山大・西南学院大など、京阪神地区や各地域の拠点校で倍率アップするケースが目立つ。それと対照的に、中央大・法政大(全学で定員6%増)・明治大など、首都圏の難関~中堅上位校では、倍率ダウンの大学が多数を占める。

 

(1)倍率アップ

【首都圏】青山学院大5.2倍→5.8倍、日本女子大2.8倍→3.2倍、早稲田大5.5倍→5.6倍
【京阪神】京都産業大3.2倍→3.9倍、同志社女子大3.2倍→3.5倍、佛教大3.7倍→4.1倍、龍谷大3.3倍→3.7倍、関西大4.3倍→4.8倍、近畿大4.1倍→4.7倍、関西学院大3.5倍→3.8倍、武庫川女子大3.2倍→3.8倍
【その他】東北学院大1.8倍→2.0倍、南山大2.2倍→2.6倍、名城大2.5倍→3.0倍、西南学院大3.2倍→3.4倍、福岡大3.3倍→3.7倍

(2)倍率ダウン

【首都圏】慶應義塾大5.0倍→4.9倍*、国際基督教大3.1倍→2.7倍*、駒澤大3.8倍→3.4倍、上智大4.0倍→3.8倍、専修大3.5倍→3.0倍、中央大5.0倍→4.7倍、津田塾大2.6倍→2.5倍、東京女子大3.0倍→2.6倍、法政大5.1倍→4.9倍、明治大5.0倍→4.5倍、明治学院大3.1倍→2.8倍、立教大5.1倍→5.0倍
【京阪神・その他】京都女子大2.9倍→2.8倍、広島修道大2.4倍→2.1倍

 
 

文・理系いずれも、中堅校が“爆発的”に志願者増

 
グラフ5 私立大一般入試 難易ランク別志願者増減率

 グラフ5で文理別・難易ランク別の志願者動向(4月中旬現在:駿台予備学校の集計)を見てみよう。ここでいう難易ランクは、同じ大学内でも学部によって異なるが、おおむね、Aランクは難関校や難関医科大、Bランクは準難関校、Cランクは中堅上位校、D~Eランクは中堅クラス以降を指す。文系はA・Bランクの志願者減に対し、C~Eランクが増加、特にEの大幅増が目立つ。一方、理系は全ランクで志願者が増えたが、文系以上に、いわゆる“中堅理工系”などC~Eランクの“爆発的”な志願者増が際立つ。難関~準難関校における「文低理高」傾向と、志願者増のボリュームゾーンが文理ともに中堅校であることから、国公立大からの併願増も含め、“安全志向”の「身の丈」出願が多かったことが見て取れる。
 文系の場合、首都圏の難関~準難関校で、強い“地元志向”により地方からの流入が鈍っている影響もあろう。理系の場合、就職を強く意識した“資格・技術志向”から、文・理系いずれか進路を決めかねている層が、まずは理系を選択する傾向が強まっていることも、“中堅理工系”の志願者層の増加につながった模様だ。

 
 

合格ラインから、私立大の入試の実態を把握しよう

 

 次に、私立大の「合格ライン」を見ていこう。毎年、倍率の変動や入試問題の難易などによって上下し、大学によっては選択科目間の有利・不利をなくす得点調整を行う場合もある。
 まず、表4関西学院大の「学部個別日程」の合格最低点を示した。得点率にして54%~71%の間に分布しているが、全学部(学科)を平均すると、例年60%台が合格最低ラインの目安となる。その中で、倍率アップした文(哲学倫理学・日本史学・ドイツ語ドイツ語学)・社会・経済・人間福祉・国際・教育<理系>・総合政策<文系>・理工(数理科学・生命科学・人間システム工)で合格ラインが上昇し、逆に倍率ダウンした文(美学芸術学)・商で下降。入試問題の難易もあり、一概には言えないが、倍率の変動が合格ラインに影響した好例といえる。
 同志社大では、総合点の合格ラインに加え、合格者の科目別の平均点も公表している。表3に「学部個別日程」のデータを示した。
 文系学部では、総合点の合格者平均ラインはだいたい80%前後。科目別に見ると(以下、得点率で表示)、英語は73~89%に分布し、最高は「やはり」というべきか、グローバル・コミュニケーション学部英語コースだった。全学的に英語の学力を重視する同校らしく、平均で約82%とハイレベルな得点が要求される。国語は71~86%に分布し、平均は約78%と英語に近い水準だが、選択科目(日本史・世界史・政治経済・文系数学)では70%台が多く、英語・国語に比べ平均点はやや低い。
 一方、理系学部では、総合点の合格者平均ラインはだいたい60~70%。科目別に見ると、英語は69~78%に分布し、平均は約74%と、文系学部に比べやや低い。理系数学は61~73%に分布し、平均で約65%。最高は生命医科学部医生命システム学科、次いで理工学部数理システム学科と、これも首肯できる結果となった。理科(物理・化学・生物)は50~60%台が多く、平均すると60%程度となる。
 最後に、合格ライン付近がいかに激戦となるかを紹介する。グラフ6龍谷大‐経営学部(A日程:スタンダード方式文系型)の、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。同方式は、文系型3科目で各100点、計300点の均等配点。13年では、受験者数1,607人に対し、合格者364人で倍率は約4.4倍。合格最低点は207点、得点率は69%だった。
 注目すべきは、最低点を含め上10点幅の部分に、合格者全体の4割近くも集中していることだ。1点違いの不合格者も17人いるなど、合格ライン付近には多くの受験生がひしめきあっている。ふだんの勉強から「1点の重み」を意識し、解答の見直しを習慣づけよう。

 
表3 同志社<大学部個別日程>の科目別・総合点の合格者平均点
 
表4 関西学院大(学部個別日程)の合格最低点、グラフ6 龍谷大-経営(A日程)スタンダード方式文系型/ボーダーライン付近の合否状況
 

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日本大で全学規模の統一入試を導入。法政大のT日程が複数同時併願可に。愛知県立大で全国枠推薦を新規実施

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 ここからは4~5月号に続き、2014(以下、14)年入試の変更点をお知らせする。新設予定大学は公立2大学・私立3大学で、いずれも「資格系」が占める。また、入試改革では、日本大の9学部にわたる統一入試の導入、近畿大のほぼ全面的なインターネット出願への移行などが注目される。

 
 

新設大学:「資格系」の公立2大学、私立3大学が新設予定

 文部科学省の発表(4月中旬)によると、公立2大学、私立3大学の新設が予定されている。各大学を構成する学部と定員(カッコ内。編入学を除く)は次の通り。
 
【公立】山形県立米沢栄養大‐健康栄養(40)、敦賀市立看護大‐看護(50)
【私立】日本福祉医療大‐医療(80)、京都看護大‐看護(95)、大和大‐教育(215)・保健医療(200)

 
 

国公立大 : 名古屋工業大で、前・後期とも2次の配点比率をアップ

[1]募集人員の変更

●山梨大 工学部機械工学科で、推薦を17人→10人に削減し、前期を30人→35人、後期を8人→10人に増員。また、先端材料理工学科でも、推薦を8人→4人に削減し、前期を22人→25人、後期を5人→6人に増やす。
●福井大 工学部機械工学科でセ試を課さないAOを12人→若干名に削減し、後期を20人→34人に増員。生物応用化学科でも、セ試を課さないAOを10人→5人に削減し、前期を40人→42人、後期を15人→18人に増やす。
●名古屋大 理学部でセ試を課す推薦を60人→50人に削減、前期を210人→220人に増加。
●広島大 医学部医学科で後期を25人→20人に削減し、セ試を課す推薦(ふるさと枠)を17人→20人、セ試を課すAOを3人→5人に増員する(地域枠を推薦に移行)。
●徳島大 総合科学部人間文化学科で、セ試を課す推薦を10人→15人に増員し、前期を60人→55人に削減する。

 

[2]一般入試の変更

●福井大 医学部医学科の前期で、2次の面接を「集団面接→個人面接」に変更する。
●静岡大 人文社会科学部言語文化学科の後期で、セ試を「5または6教科7科目→4教科 4科目」に軽減する。
●名古屋工業大 セ試・2次の配点を、工学部1・2部の前期で「600:900→450:1,000」に、同1部の後期で「450:900→300:1,000」に変更。2次の配点比率を高めた。
●鹿児島大 工・農の2学部の前期で、学外試験場(東京)における実施を取りやめる。

 

[3]推薦入試の変更

●室蘭工業大 工学部昼間コースでセ試を課す推薦を新規実施。現役のみ出願可で、セ試(数学・理科各2科目。4学科中、応用理化学系を除き物理必須)と出願書類(調査書・推薦書・志望理由書)で合否判定する。
●愛知県立大 外国語学部でセ試を課す「全国枠推薦(グローバル人材)」を新規実施。1浪まで出願可で、セ試(3教科3科目)と出願書類で合否判定する。募集人員は各学科で「英米12人、フランス・スペイン・ドイツ・中国各6人、国際関係7人」、計43人の予定。一方、前期の募集人員を299人→254人に削減する。

 
 

私立大ほか : 東京電機大で一般・セ試利用の方式・日程を整理・統合

[1]学部の増設・改組など

 4月中旬現在で判明している学部増設の予定(設置構想中を含む)は、新設大学と同じく医療・看護、教員養成の2分野が目立つ。
 
医療・看護=青森中央学院大‐看護、足利工業大‐看護、千葉科学大‐看護、朝日大‐保健医療、鈴鹿医療科学大‐看護、奈良学園大(仮称)‐保健医療、広島国際大‐医療栄養、安田女子大‐看護など
教員養成=大阪成蹊大‐教育、プール学院大‐教育、関西福祉大‐発達教育など
 
 さらに、文部科学省所管外の防衛医科大学校でも「看護学科」の増設を予定している。この他、次の学部増設が予定されている。
●上智大 総合グローバル学部(定員220人)を増設する予定。
●神戸学院大 現代社会学部(定員200人。現代社会、防災・社会貢献の2学科)を増設予定。

 

[2]一般入試の変更

●国際基督教大 セ試利用入試の廃止(5月号で既報)に伴い、一般入試(独自入試)の募集人員を「250人→290人」に増加する。
●国士舘大 政経学部のセ試利用Ⅰ・Ⅱ期で、3教科型に加え、2教科型を新規実施(英語必須)。
●東京電機大 セ試利用入試を、総合(4教科5科目)・理系(3教科4科目)・文理(2または3教科3科目)の3タイプから、「4教科」「3教科」の2方式に整理・統合。また、一般入試も、募集回数を3回(A~C日程)から2回(前期:2月上旬、後期:2月末)に整理する。
●日本大 全学規模の統一入試「N方式第1期」を新規実施。従来のN方式(法・経済・商の3学部共通入試。3月実施)は第2期となる。
 N方式第1期は9学部(法<1・2部>・商・国際関係・理工・生産工・工・歯・松戸歯・薬)と短大部5学科の計48学科が、同一試験日(2月1日)・問題で実施。同時に複数学部・学科間の併願、同一学部内の複数学科の併願が可能で、受験料割引制度も適用される。また、札幌・名古屋・大阪などに地方試験会場を設置し、全16会場で受験が可能。9学部のうち、松戸歯が2教科2科目、国際関係は2または3教科3科目、それ以外は3教科3科目を課す。学部ごと(短大部を除く)の募集人員は「法1部115人・2部15人、商95人、国際関係25人、理工156人、生産工92人、工60人、歯5人、松戸歯50人(A方式1期との合計)、薬10人」。
●法政大 T日程(統一日程入試)で、複数学部・学科の同時併願を可能にし(文‐日本文・地理を除く)、受験料割引制度も導入(2併願目以降を3万5千円→1万5千円)する。
●南山大 全学統一入試の学外試験場を、札幌・仙台に増設する。
●関西医科大 医学部の一般入試で後期試験を新規実施する(3月上旬実施)。また、一般前期の1次試験で、名古屋・福岡の2会場を増設する(2次の面接は大阪で実施)。
●神戸女学院大 文・人間科学の2学部で、3月募集のセ試利用後期を新規実施する。
●日本赤十字広島看護大 看護学部で一般後期(英語・小論文)を廃止し、セ試利用後期(3教科3科目)を新規実施する。また、セ試利用前期で理科を「2→1科目」に軽減する。

 

[3]推薦・AO入試の変更

●駒澤大 経済学部の一般推薦B方式で、評定平均値を「3.2→3.8」に高めた。
●立命館大 経済学部でAO入試を廃止。文学部も、コミュニケーション・心理の2学域でAO入試のうち「課題論文方式」を廃止する。

 

[4]その他の変更

●近畿大 ほぼ全面的に「紙の願書を廃止、インターネット出願へ移行」することを決定(一部、対象外の入試がある)。
 
 *     *     *
 
 以上、詳細は国公立大の入学者選抜要項(7月頃に発表)、私立大の入試ガイド(5月以降に発表)などで必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2013年6月号)」より転載いたしました。

 

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