入試動向分析

2013年 私立大入試 志願者動向分析【2013年5月】

2013(平成25)年度

センター試験の難化が私立に“追い風”。中堅理工系など、理系が爆発的に増加!

 

2013年私立大入試について、難関私立大の一般入試を中心に、人気度を示す「志願者動向」と、難易変動の指標となる「実質倍率」について見ていく。また、2014年入試の最新情報も紹介する。

 

※この記事は「螢雪時代(2013年5月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 


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国公立大受験者が併願増やす!? 日本大・東洋大・関西大・近畿大が大幅増、駒澤大・専修大が減少


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2013年私立大一般入試(おもに2月入試)の志願者数は、前年比5%増加した。センター試験の難化で、国公立大受験者が私立大独自入試の併願を増やした模様だ。
 “安全志向・地元志向”から、首都圏への流入が鈍り、各地域の拠点校が人気を集めた。また、文系分野の志願者微増に対し、理系分野が “爆発的”に増加した。


一般入試の志願者は5%増、受験生数の増加率を上回る

当社では、学部募集を行っている全国の私立大学(577大学。通信制を除く)に対して、2013年(以下、13年。他年度も同様)の一般入試の志願者数を調査した。3月中旬現在で集計した確定志願者数のデータは「200大学:約250.3万人」にのぼる。この集計は2月に行われた各大学の独自入試(大学が独自の試験問題等で行う試験)とセンター試験(以下、セ試)利用入試を主な対象とし、2月下旬~3月の「後期募集(セ試利用も含む)」を一部集計に加えた。
その結果、私立大一般入試の志願者数は、12年の同時期に比べ約5%増加したことがわかった。国公立大の志願者減(12年49.5万人→13年49.0万人:約1%減)とは対照的だ。
 ちなみに、13年の4(6)年制大学の受験生数は、本誌の推定では12年より約1万8千人(約2.7%)増加する見込み。もともと基礎数が増えているのだが、さまざまな入試日程・方式等を合計した「延べ志願者数」とはいえ、さらに高い増加率となった。今後発表される大学や「後期募集」の志願者数を集計に加えても、最終的に私立大の一般入試志願者数は「4~5%の増加」に落ち着きそうだ(グラフ1)。ただし、学内併願などの重複を除いた実質的な志願者数は、見かけほど増えていない可能性もある。

グラフ1.私立大一般入試志願者数と大学受験生数の推移


独自入試・セ試利用ともに、2月の2~3教科入試が基本

ここで、私立大入試のしくみを確認しよう。
 一般入試は、大きく「独自入試」と「セ試利用入試」に分かれる。「独自入試」は大半が2月に行われるが、2月下旬~3月に「後期募集」を行う大学も多い。基本は3教科入試だが、2教科以下も数多い。また、複数の入試方式を行う大学が多い。「セ試利用入試」は学部募集する全私立大の約9割で行い、セ試(2~3教科)の得点のみで合否判定するケースがほとんど。1~2月の募集が大部分だが、3月に募集する大学もある。さらに、独自入試の指定科目と、セ試の高得点または指定科目を合計し、合否判定する「独自・セ試併用型」もある。
 他に、一般入試に先立って行われるAO入試や推薦入試(大きくは、指定校・公募制・自己の3種類)があり、私立大の入学者のうち、推薦・AOで入る人が半数を超える。

大学の独自入試が6%増。セ試利用入試を敬遠

私立大一般入試の志願者数が増えた最大の要因は、国公立大の志願者減につながった「セ試の難化」だ。13年のセ試は平均点が大幅ダウン(=難化)。もともと、経済の低迷や近年の受験生気質などから「無理せず、より確実に現役で」という“安全志向”が強かった上に、セ試の難化で自信喪失した国公立大受験者が“慎重・弱気”な出願傾向から、私立大の併願を増やした模様だ。さらに、募集人員が少なく、実施学部・学科も年々減っている国公立大後期日程の出願を最初からあきらめ、その分を私立大の併願に回すケースも多くみられた。
 しかも、セ試利用ではなく、独自入試で併願を増やした模様だ。入試方式別に見ると(グラフ2)、2月試験では大学の独自入試が6%増えたのに対し、セ試利用入試はほぼ前年並みとなった。セ試の難化は事前にある程度予想されており、ボーダーラインの高いセ試利用入試が敬遠されたのに加え、セ試の持ち点に影響されず、倍率面でまだ合格できそうな独自入試が狙われたとみられる。さらに、難易レベルでみると「難関~準難関校」よりも「中堅上位~中堅校」が狙われた模様だ。
なお、セ試利用も含めた3月入試(後期募集)は10%増。関西地区を中心に、2月入試の合格者絞り込みによる競争激化で、再チャレンジ組が増えたものとみられる。

首都圏への流入が鈍り、各地域の拠点校が増加

全国6地区ごとの志願動向を見ると(グラフ3)、北陸・東海、九州の13%増をはじめ、北海道・東北、関西、中国・四国で大幅に増加したのに対し、関東・甲信越のみ微増に留まった。
 東日本大震災の復興遅れや、経済の低迷などが相俟って、受験生を取り巻く経済環境は悪化。入学後の生活費を考慮するとともに、生活環境の大きな変化を好まない“地元志向”から、地域ブロックの拠点校(北海学園大・南山大・名城大・西南学院大・福岡大など)が人気を集める一方で、首都圏の“全国型”総合大学へ進出する動きは鈍った模様だ。
 ただし、中国・四国、九州から関西の難関~中堅上位校への流入は、12年入試より増えた模様だ。また、関西地区では私立大専願者の公募制推薦への出願が大幅に増え、合格者の絞り込みもあって激戦化。再チャレンジ組が多数流入したものとみられる。

関西では「ネット割」が影響大。導入大学以外にも波及効果

近年は、受験生に対する経済的な支援策を充実させた大学に人気が集まる。特に注目すべきは、インターネット出願(以下、ネット出願)利用者に対する受験料割引制度(以下、ネット割)の、関西地区における導入の本格化だ。
 インターネット環境さえ整っていれば、自宅(または学校)から、しかも締切日の深夜まで出願でき、なおかつ記入ミスを未然に防げる(画面ごとに受験生本人が確認できる)利便性が長所のネット出願も、利用率が低い状況が続いていた。それが近年、促進策として「ネット割」が登場。13年入試では京都産業大・龍谷大・近畿大が相次いで導入、3大学とも利用率が大幅にアップし、公募推薦・一般入試ともに志願者増(京都産業大=推薦4%増・一般25%増、龍谷大=推薦6%増・一般2%増、近畿大=推薦14%増・一般23%増)に結びついた。
 しかも、関西地区では導入校のみならず、他大学の志願者増にまで波及した可能性があるという。ネット出願への心理的な障壁が低くなり、割引制度のない大学における利用率までアップ。また、ネット割で浮いた受験料で、地区内の中堅校への併願が増えたとみられる。
 この他、愛知学院大・中部大などの独自・セ試併用型の導入や、南山大・福岡大の学部共通入試(複数学部・学科が共通問題・日程で入試を実施。学部・学科間の同時併願が可能)も、受験生の利便性を高め、受験料の節約にもつながる入試改革として人気を集めた。

グラフ2.2013年私立大一般入試 方式別志願状況、グラフ3.2013年私立大一般入試 地区別志願状況、グラフ4.2013年私立大一般入試 学部系統別志願状況

理工・薬など理系は全般的に大幅増、文系の増加は小幅

次に、学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。就職を考慮した“理系・資格志向”から、理系の学部系統が軒並み大幅増の一方で、文系は小幅な増加に留まり、13年も「文低理高」傾向が鮮明にみられた。
 就職状況が低水準ながら若干改善され、法、経済・経営・商、文・教育・教養なども志願者はわずかに増えたが、理系に比べて伸びは鈍い。文系学部主体の主要大学が「微減~微増」に留まった最大の要因といえる。法は、新司法試験の合格率低迷や法科大学院の相次ぐ募集停止、公務員採用数の削減も敬遠材料となった模様だ。
 一方、理系学部は「技術・資格を取得でき、文系より就職の可能性が高い」とみられ、保護者が進学を強く勧めた側面もあろう。高校の先生方からは「高1の文理分けの時点で理系志望者が増えた」「高学力層が文系より理系を選んでいる」という声が目立つ。
 理・工は7年連続で志願者増。特に、千葉工業大(13%増)・工学院大(6%増)・芝浦工業大(8%増)・東京工科大(8%増)・東京電機大(13%増)・東京都市大(13%増)・金沢工業大(36%増)・愛知工業大(20%増)など、いわゆる“中堅理工系”(理工系を中心とし、他系統の学部も有する大学を含む)が軒並み増加した。
 医では6年連続で臨時定員増が行われ(13年は私立大で6大学15人増)、門戸の広がりは確実に浸透した。さらにセ試の難化で国公立大医学部からの併願が増え、高学力層が流入した模様。また、6年制学科の就職が好調な薬をはじめ、農・水畜産・獣医、歯、医療・看護、家政・生活科学といった“理系の資格系”がいずれも志願者大幅増。医療・看護は学部・学科の新設、医・歯は学費を値下げする大学(13年は昭和大‐医・歯、東邦大‐医、関西医科大‐医)が相次いだことも要因といえそうだ。

難関~準難関校の多くが「3%増~3%減」に収まる

ここから、大学ごとの志願状況を見ていこう。表1では、志願者数(大学合計:3月中旬現在)の多い順に、上位20大学を示した。その顔ぶれは前年とほぼ変わらず、ほとんどを大都市圏の総合大学が占める。また、20位までの志願者の合計は、全体(200大学:約250.3万人)の約53%と過半数を占める。
 志願者数トップは4年連続で明治大だが、「中野キャンパス」新設や学部増設(総合数理)などで注目されたものの前年比3%減。2位の早稲田大も2%減だが、セ試利用入試の増加(8%増)が全体の傾向と異なる。この他、青山学院大(2%増)・慶應義塾大(1%減)・中央大(3%減)・東京理科大(2%増)・立教大(2%増)・同志社大(1%増)・立命館大(3%減)と、難関~準難関校の多くは「3%増~3%減」の範囲に収まり、平均(5%増)を下回っている。
 特筆される変化は、京阪神における関西大・近畿大の大幅増だ。関西大(8%増)は12年の定員増(全学で9%増)の認知度が高まった模様。また、近畿大は「8位→3位」に躍進、前述の「ネット割」効果に加え、理系の多い学部構成が大幅増の要因となったといえる。
 首都圏では、法政大が定員増(全学で6%増)に比例して志願者5%増。また、いわゆる「日東駒専」では、東洋大(10%増)・日本大(9%増)が大幅増、駒澤大(13%減:昨年19位)・専修大(9%減)が大幅減と明暗が分かれた。東洋大は学部増設(食環境科学)、日本大は前年(8%減)の反動や理工学部の受験料割引制度導入(複数学科併願時)なども要因となった。
 表2では、志願者1,000人以上の大学について、増加率が高い順に上位20大学を示した。“資格志向”と“理系志向”を反映し、薬、医療・看護、教員養成など、資格取得を目的とする学部・学科を有する大学が目立つ。
 愛知学院大(46%増)は経済学部の増設や独自・セ試併用型の導入に加え、都心回帰(14年に名古屋市中心部にキャンパスを新設予定)の期待感も大幅増に結びついた模様。その他、独自・セ試併用型の導入(金沢工業大・大阪商業大)、地元や近隣地区へのきめ細かい試験場増設(東北薬科大・追手門学院大・大阪商業大)なども志願者増の要因となった。

表1 志願者の多い大学 TOP20
  大学名 2013年
志願者数
2012年
志願者数
志願指数 増減 前年順位 おもな変更点とTOPICS
1 明治大 109,934 113,320 97   1 4年連続で志願者数1位/中野キャンパスを新設、総合数理学部を増設、国際日本を和泉キャンパスから移転/情報コミュニケーションで定員増(400人→450人)、B方式(数学・情報総合・英語)・セ試6科目方式を新規実施/国際日本で定員増(300人→350人)、法で定員減(900人→800人)
2 早稲田大 106,768 108,527 98   2 安全志向で難関校敬遠か/法でセ試・一般入試合算枠(150人)を廃止、独自入試300人→350人、セ試のみ判定枠50人→100人に増加
3 近畿大 98,428 79,744 123 8 インターネット出願割引制度を導入/前期A日程で出願締切をセ試本試験日の「後→前」に繰り上げた/文芸でPC方式(独自・セ試併用)を新規実施/セ試利用C方式で、経営(前期)・農(中期)を3→2科目に軽減、産業理工(中期)を2→3科目に増加
4 日本大 92,508 84,514 109 6 学科増設(文理‒社会福祉、理工‒まちづくり工・応用情報工)/法2部の一般入試をA方式→N方式(3月実施)に移行/理工の一般A方式で複数学科併願時の受験料割引制度を導入/前年の志願者8%減の反動も
5 法政大 89,047 85,129 105 4 定員増(全学で6,040人→6,374 人:6%増)/理工・生命科学でC方式(セ試利用5教科型)を新規実施/前年の志願者8%減の反動も
6 関西大 86,753 79,980 108 7 12年の定員増(全学で5,935人→6,452人:9%増)の認知度高まる/前年の志願者7%減の反動も/学科増設(政策創造‒国際アジア法政策)/法・社会安全のセ試利用前期で6科目型を追加
7 立命館大 82,637 85,138 97   3 一般W方式(英・国2教科型。4学部で実施)を廃止/情報理工の「英国数3教科型」を独自・セ試併用型に変更/15年にキャンパス新設予定(京都・大阪間)
8 中央大 82,220 84,940 97   5 学科増設(理工‒人間総合理工)/統一入試(文系5学部の共通入試)と理工の独自・セ試併用型で、学外試験場を増設(水戸・長野・静岡・高松・那覇)/統一入試(16%減)で前年の志願者23%増の反動も
9 東洋大 71,266 64,829 110 10 学部増設(食環境科学)/B方式前期(セ試利用)で、食環境科学が新規実施、総合情報・理工(生体医工・都市環境デザイン・建築)・国際地域・生命科学(応用生物科学)が4科目型を追加
10 立教大 71,096 69,452 102   9 「渋谷貫通」効果(13年3月から東急東横線と地下鉄副都心線が直通。横浜方面から池袋へ流入増か)?
11 青山学院大 56,563 55,692 102   11 理工・社会情報を除く7学部の1年次の履修キャンパスを、郊外(神奈川県相模原市)→都心(東京都渋谷区)に移転/法で個別学部日程のB方式(全マーク式)を25人→40人に増員、A方式を190人→170人に削減/セ試利用(11%減)で前年の志願者11%増の反動か
12 東京理科大 52,823 51,772 102   12 東京都葛飾区にキャンパス新設、理1部(応用物理)・工1部(建築・電気工・機械工)、工2部(建築・電気工)を新宿区から、基礎工を千葉県野田市から移転/6年制の薬(薬)で定員増(80人→100人)
13 同志社大 51,346 51,077 101   13 学部増設(グローバル地域文化)/文・法・経済・商の1・2年次の履修キャンパスを「京都府南部→京都市中心部」に移転、全学年を集約
14 福岡大 46,266 39,837 116 16 系統別日程(全学部・学科を5つの学問系統に分類した共通入試)を新規実施。各系統の中で同時複数併願が可能(受験料割引制度もあり)/学外試験場を増設(名古屋:系統別日程)/理で一般・セ試併用型を新規実施/工のセ試利用で3教科4科目型を追加
15 関西学院大 45,513 44,281 103   15 全学日程で宮崎会場を増設/神で英語併用型(独自・セ試併用)を導入、セ試利用(1月出願)に5科目型を追加
16 東海大 43,975 39,713 111 17 学内併願の受験料減額制度(12年から新制度に)の認知度高まる/医でセ試利用を新規実施(地域枠入試)/九州の2学部を改組(総合経営→経営、産業工→基盤工)
17 慶應義塾大 42,785 43,265 99   14 安全志向で難関校敬遠か/薬で理科(化学)の配点アップ(100点→150点)
18 芝浦工業大 36,647 33,881 108 21 中堅理工系人気
19 龍谷大 35,901 35,171 102   20 インターネット出願割引制度を導入/一般A日程の合格者が、同一学部・学科等のB日程・セ試中期に出願し受験しなかった場合、受験料を返還する制度を導入/セ試中期(21%減)で前年の志願者24%増の反動も
20 専修大 34,185 37,438 91 18 セ試利用前期が大幅減(14%減)

(注1)「増減」欄の記号は、△=10%以上の増加、↑=5%以上の増加、↓=5%以上の減少、▼=10%以上の減少を示す。
(注2)3月中旬現在のデータによる。一部、大学によっては未集計の方式・日程がある。

表2 志願者の増加率が高い大学 TOP20
  大学名 2013年
志願者数
2012年
志願者数
志願者指数 おもな変更点とTOPICS
1 大阪商業大 1,157 625 185 前年の志願者53%減の反動/B日程にセ試併用型を追加し、学外試験場(和歌山・岡山)を新設
2 名古屋学院大 5,425 3,510 155 学部増設(法)/インターネット出願割引制度を導入
3 北海道医療大 5,553 3,636 153 「理系の資格系」人気/学部増設(リハビリテーション科学)
3 恵泉女学園大 2,037 1,328 153 学科増設(人間社会‒社会園芸)/一般B方式を2→1科目に軽減
3 産業能率大 4,122 2,690 153 学科増設(経営‒マーケティング)/一般前期で試験日自由選択制を導入、試験日を2→3日間に延長
6 藤女子大 1,807 1,205 150 一般A日程に2科目方式(学科特化入試)を追加/一般A日程(3科目方式)で複数学科出願時の受験料割引制度を導入
7 追手門学院大 3,642 2,437 149 一般A日程に高得点2科目方式を追加(3科目方式の同時併願が必要)/試験日を「A日程2/5・6→1/29・30、S日程2/7・8→1/31・2/1」に繰り上げた/一般A・S日程で学外試験場を増設(大阪・神戸)/前年の志願者24%減の反動も
8 愛知学院大 12,088 8,304 146 学部増設(経済)/経済でセ試利用を新規実施/全9学部で独自・セ試併用型のセンタープラス方式を導入/14年に名古屋市中心部にキャンパス新設予定/前年の志願者14%減の反動も
9 東京造形大 2,267 1,564 145 セ試利用入試を新規実施
10 関西外国語大 6,641 4,736 140 外国語(英米語)に「小学校教員コース」を新設/一般前期の学外試験場を増設(東京・金沢)
11 昭和女子大 9,392 6,741 139 学部増設(グローバルビジネス)/一般A・B日程、セ試1期の入学手続時の学費納入方法が「一括」と「2段階」の選択可に(従来は一括)
12 金沢工業大 8,677 6,363 136 中堅理工系人気/一般中期で独自・セ試併用型の判定を追加/一般中期・後期を2→3教科に増加
12 東海学園大 3,039 2,233 136 資格系(健康栄養、教育)が人気を集める
14 京都橘大 8,141 6,123 133 健康科学でセ試利用を新規実施
15 大阪大谷大 2,342 1,772 132 資格系(薬、教育)が人気を集める
16 東北薬科大 1,303 992 131 「理系の資格系」人気/セ試利用で中期を新規実施(募集が2→3回に)/一般入試の学外試験場を増設(山形・郡山・新潟)/前年の志願者8%減の反動も
17 札幌大 1,414 1,087 130 全5学部を地域共創学群(13専攻)に統合・改編
17 松山大 7,949 6,126 130 経営で一般I期を20人→30人に、経済でセ試利用前期を20人→30人に募集枠拡大(AOを廃止)/前年の志願者20%減の反動も
19 畿央大 8,494 6,637 128 資格系(健康科学、教育)のため、人気を集める
20 神戸薬科大 2,288 1,796 127 「理系の資格系」人気/一般前期の募集枠を拡大(85人→100人)/一般中期・後期で調査書の点数化を廃止

(注)3月中旬現在のデータによる。志願者数1,000人以上。一部、大学によっては未集計の方式・日程がある。

東京女子大・南山大・京都産業大が増加、成蹊大・武蔵大が減少

ここまで紹介した以外の大学を中心に、各地区の志願状況(おもに2月入試)を見てみよう。

(1)首都圏地区
   難関~中堅上位校では、上智大(2%増)をはじめ、学習院大(3%増)・東京女子大(16%増)・日本女子大(7%増)などが増加。学習院大は新設学科(文‐教育)が人気を集め、東京女子大はセ試利用入試の募集枠拡大(101人→144人:AOを廃止)、日本女子大は定員増(全学で10%増)なども要因となった。一方、国際基督教大(4%減)をはじめ、國學院大(3%減)・成蹊大(7%減)・津田塾大(8%減)・武蔵大(21%減)・明治学院大(6%減)などが減少した。
 中堅グループでは、前述の理工系大学に加え、亜細亜大(3%増)・国士舘大(8%増)・玉川大(12%増)・東海大(11%増)など、全般的に増えたが、東京経済大(14%減)は減少した。

(2)京阪神地区
   いわゆる「関関同立・産近甲龍」では、京都産業大・関西大・近畿大が大幅増、同志社大・龍谷大・関西学院大・甲南大(1%増)が「微増~やや増加」したのに対し、立命館大のみ前年(12%増)の反動から、やや減少した。
 中堅グループや女子大では、同志社女子大(5%増)・佛教大(6%増)・大阪経済大(17%増)・関西外国語大(40%増)・神戸学院大(8%増)・武庫川女子大(10%増)などで志願者増。一方、志願者減は摂南大(4%減)・桃山学院大(7%減)・神戸女学院大(16%減)など少数派に留まる。“安全志向”に加え、前述のような「ネット割」の波及効果も要因とみられる。

(3)その他の地区
   国公立大との併願が多い各地域の拠点大学は、北海学園大(8%増)・愛知大(5%増)・中京大(3%増)・中部大(23%増)・南山大(21%増)・名城大(17%増)・松山大(30%増)・九州産業大(23%増)・西南学院大(6%増)・福岡大(16%増)など、軒並み志願者増。このうち、中部大は独自・セ試併用型の導入、南山大は全学統一試験の個別学力試験型の導入、名城大は理工学部のM・B・F方式を「系別募集(2年次進級時に学科決定)→学科別募集」に移行したこと、福岡大は系統別日程(表1を参照)の導入なども大きな要因となった。


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京阪神地区で実質倍率がアップ。南山大・京都産業大・関西大・関西学院大などがやや難化か!?


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受験生が注目すべきは、見かけの「志願倍率」よりも「実質倍率」だ。
 2月入試を中心に、一般入試の受験・合格状況を集計したところ、受験者9%増に対し、合格者は3%増に留まり、実質倍率は12年3.2倍→13年3.4倍とアップ。関西大・関西学院大などが「受験者増、合格者減」で倍率アップした。

グラフ5.志願倍率と実質倍率の違い、グラフ6.私立大一般入試 地区別/受験者・合格者動向(3月中旬現在)


「志願倍率」に惑わされず、「実質倍率」に注目しよう

次に、私立大一般入試の合格状況を見よう。中でも倍率の変化は、「難化・易化」を計る物差しとなる重要データだが、一般的に使われる「倍率」には次の2通りあることに注意したい。
*志願倍率=志願者数÷募集人員=見かけの倍率
*実質倍率=受験者数÷合格者数=実際の倍率

私立大では合格者の入学手続率を考え、一般入試で募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試では5~10倍程度の合格者を出すのが普通だ。
 グラフ5で関西学院大‐理工の例を見てみよう。一般入試(学部個別日程)の志願倍率は15.4倍だが、合格者を募集人員の5.1倍出しているので、実質倍率は2.9倍となる。
 また、セ試利用入試(1月出願)の志願倍率は62.3倍もの超高倍率だが、合格者を募集人員の23.4倍も出しているので、実質倍率は2.7倍におさまった。これなら「とても手が出ない」という倍率ではないだろう。
見かけの倍率に惑わされることなく、実際の倍率を志望校選びのデータとして活用しよう。


受験者9%増に対し合格者2%増。倍率は全体で3.2→3.4にアップ

当社が私立大一般入試(主に2月入試)の受験・合格状況について調査したところ、正規合格者まで発表した103大学の集計(3月中旬現在)では、受験者数(未公表の場合は志願者で代替)は9%増えたが合格者数は3%増に留まり(グラフ6)、実質倍率(以下、倍率)は12年3.2倍→13年3.4倍とアップした。
 経済的な制約から、確実な合格を目指しつつ併願校を絞って出願し、その合格決定を大切にする傾向がみられた。このため、入学手続率が全体的に良好で、定員の大幅超過を懸念して合格者を抑え目に出す大学が目立った。実際、入試担当者からは「推薦入試の段階から、例年より入学手続率が上がった」との声が聞かれる。
 大都市圏(首都圏、京阪神)とその他の地区に分けて集計すると、首都圏は4.0倍→3.9倍にダウンする一方、京阪神地区は3.4倍→3.7倍、東海地区を中心としたその他の地区も2.4倍→2.7倍とアップした。以下、おもな大学で、倍率が比較的大きく変動したケースを紹介する(*は「志願者÷合格者」、その他は実質倍率。おもに2月入試の集計)。

[1]倍率アップ 北里大3.6倍→4.3倍、日本女子大2.8倍→3.2倍、南山大2.2倍→2.6倍、名城大2.5倍→3.0倍、京都産業大3.2倍→3.9倍、佛教大3.7倍→4.1倍、龍谷大3.3倍→3.7倍、関西大4.3倍→4.9倍、近畿大4.1倍→4.7倍、関西学院大3.5倍→3.8倍、福岡大3.3倍→3.7倍
 [2]倍率ダウン 亜細亜大3.9倍→3.6倍*、国際基督教大3.1倍→2.7倍*、東京女子大3.0倍→2.6倍、明治学院大3.1倍→2.8倍

このうち、関西大は「受験者8%増、合格者3%減」、関西学院大は「受験者4%増、合格者6%減」と、受験者増に対し昨年より少なめに合格者を出し、京都産業大も「受験者25%増、合格者1%増」と合格者を抑え目に出した。こうした大学では、学部・日程・方式によってはやや難化した模様だ。

ボーダーライン付近は激戦。明暗を分ける1点の重み

受験生の中には、ふだん「1点の差」を気にも留めない人がいるだろう。しかし、入試本番では、その「1点」が大切なのだ。
 グラフ7に、関西大学商学部の2月一般入試(学部個別日程と全学部日程の合計)の13年入試結果から、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。受験者7,044人、合格者1,318人で倍率は5.3倍。合格最低点は450点満点で281点だった。
 注目すべきは、最低点を含めた「上10点幅」の部分で、ここに合格者全体の約26%が集中する。最低点ぴったりのボーダーライン上にいるのは45人。高校のほぼ1クラス分に相当する数だ。わずか1点差での不合格者も35人、10点差以内の不合格者は386人もいる。合格ライン付近は、同じ得点帯の中に、多くの受験生がひしめき合っているのだ。
 たった1つのケアレスミスが命取りになり、合否が入れ替わるのが「入試本番」。ふだんの勉強から解答の見直しを習慣づけよう。

グラフ7.ボーダーライン付近の人数分布


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京阪神の推薦入試が志願者大幅増、京都産業大・近畿大などが難化か。“AO離れ”進むも根強い人気


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一般入試に先立って行われた「公募制推薦」とAO入試。本誌の集計では、公募制推薦は「志願者7%増、合格者4%増」、AO入試は「志願者3%増、合格者3%増」との結果が出た。

 公募制推薦では、京阪神地区で志願者大幅増と倍率アップが目立った。


推薦では文系がやや人気回復、“理系人気”も継続

グラフ8.私立大公募制推薦入試 地区別/志願者・合格者動向、グラフ9.私立大公募制推薦入試 おもな学部系統の志願者・合格者動向
私立大の公募制推薦について、13年入試結果の調査を行ったところ、昨年12月末現在の集計データ(158校:志願者数=約16万4千人)では、前年度に比べ「志願者7%増、合格者4%増」といずれも増え(グラフ8)、全体の倍率(ここでは志願者数÷合格者数。AO入試も同じ)は12年・13年とも2.6倍と安定していた。
 前述の大学受験生数の増加に加え、京阪神や東海地区では低迷する経済状況から「より早く、確実に、低コストで」入学を決めてほしい保護者の意向が強まり、公募制推薦の志願者大幅増につながった模様だ。また、京阪神・東海は首都圏などと異なり、学科試験主体で対策が立てやすいこともあろう。ちなみに、私立大の指定校推薦(集計数:約1万2千人)も前年比6%増。“早期合格”への傾斜ぶりがあらわれている。
 特に、志願者全体の7割超を占める京阪神では、志願者大幅増(9%増)の一方で、合格者は5%増とやや絞り込んだ。このため、インターネット出願割引制度を導入した京都産業大(3.4倍→3.6倍)・龍谷大(3.6倍→3.7倍)・近畿大(4.8倍→5.5倍)がそろって倍率アップしたのをはじめ、京都女子大(3.1倍→3.8倍)・大阪経済大(4.1倍→4.9倍)・桃山学院大(1.5倍→1.8倍)・武庫川女子大(4.6倍→4.9倍)などが倍率アップし、全体的にやや難化したといえる。一方、前年度の反動が出た同志社女子大(5.4倍→4.5倍)・佛教大(5.4倍→4.8倍)など、倍率ダウンしたケースは少数に留まる。
 この他、京阪神以外のおもな実施大学(志願者400人以上)では、北里大(2.2倍→2.6倍)・福岡大(2.3倍→2.7倍)などの倍率アップ、早稲田大(4.3倍→3.9倍)・愛知大(2.7倍→1.9倍)などの倍率ダウンが目立つところ。
 学部系統別(グラフ9)にみると、就職事情が若干改善されたことから、推薦入試の段階では、経済・経営・商、国際関係・外国語が大幅増、法、文・教育・教養も増加と、文系学部の復調が目立つ。一方で、一般入試と同じく、強い“理系・資格志向”を反映し、農・水畜産・獣医、薬、医療・看護、家政・生活科学が大幅増、理・工、医も増加した。


AO入試は志願者・合格者ともに3%増、倍率も安定

AO入試は学部募集を行った全私立大の約8割で実施した。
 一方、実施大学・学部等の減少や募集枠縮小などの“AO離れ”(東京女子大・松山大で全廃/芝浦工業大‐工・デザイン工、佛教大‐社会福祉、甲南大‐理工・知能情報・フロンティアサイエンスで廃止/立命館大で国際方式を廃止)も進み、入試結果にやや影響を及ぼした。
 ただし、昨年12月末現在の集計(112大学:志願者数=約2万1千人)によると、前年度に比べ、志願者・合格者いずれも3%増加し、倍率は12年・13年とも1.8倍となり、全体としては前年並みを保った。
 おもな実施大学(志願者300人以上)の倍率の変動を見ると、成蹊大(3.6倍→4.2倍)、早稲田大(2.6倍→2.9倍)、関西大(3.6倍→4.2倍)、福岡大(3.6倍→4.4倍)の倍率アップが目立った。また、学部別に見ると、金沢医科大‐医(12.5倍)、成蹊大‐法(5.8倍)・文(5.2倍)、関西大‐文(7.3倍)・人間健康(9.9倍)、福岡大‐スポーツ科学(5.6倍)などで高倍率の激戦となった。


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14年入試はここが変わる!
国際基督教大がセンター利用を廃止。早稲田大‐基幹理工が「学系別募集」に


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こここまで、13年入試結果について、どんな要素が入試に影響したかを見てきた。
 3月中旬現在、14年入試では方式・科目等の変更や新増設は比較的少ない。ここ数年続く大都市中心部へのキャンパス新設や、国際基督教大のセンター利用の廃止、早稲田大の入試改革などが、私立大の志願動向に影響を与えそうだ。

 

医療・看護系、教員養成系の新設と“都心”キャンパス開設が目立つ

ここからは2014年(以下、14年)入試について、現時点(3月中旬現在)で公表されている大学・学部等の新設・改編や、キャンパスの新設・移転、入試方式の変更といった注目すべきポイントを紹介する。詳細は、5月以降に各大学から発表される「入試ガイド」や案内パンフレットを取り寄せ、必ず確認してほしい。
(1)大学・学部等の新設・改編
 教育・保健医療の2学部からなる「大和大学(仮称)」が、大阪府に新設される予定。また、奈良産業大が「奈良学園大学(仮称)」に名称変更し、全学的なリニューアル(ビジネス・情報の2学部を廃止、人間教育・現代社会・保健医療の3学部を新設)を行う予定。一方、長岡造形大が「私立→公立」へ移行する予定だ。
 学部等の新設予定は、上記2大学を含め、医療・看護系(千葉科学大‐看護、安田女子大‐看護など)や教員養成系(大阪成蹊大‐教育、プール学院大‐教育など)が目立つ。ただし難関~準難関大では、早稲田大‐基幹理工の学科増設(情報通信)が目立つ程度。この他、京都産業大‐外国語の学部改組(6→4学科に統合し、4専攻を新設)、京都光華女子大の全学的改組(人文学部を廃止し、健康科学部に医療福祉・心理の2学科を増設)なども注目される。
(2)キャンパスの新設・移転
 実践女子大が東京都渋谷区にキャンパスを新設、文・人間社会の2学部を郊外キャンパス(同日野市)から移転する。また、愛知学院大でも名古屋市中心部にキャンパスを新設、商・経済・経営の3学部を、やはり郊外キャンパス(愛知県日進市)から移転する。

 

成蹊大でAOの選考方法を変更。慶應義塾大‐経済で一般枠縮小
(3)推薦・AO入試の変更
 成蹊大でAO入試の選考方法を変更する。経済・法・文で1次審査を書類審査のみとし(文は英語基礎力、文章読解力・表現力を除外し、提出書類にレポートを追加)、経済・法で2次審査を「経済=資料理解力、英語基礎力を1次から移行し、総合分析力審査に統合/法=資料読解力・文章表現力審査を1次から移行」し、両学部とも個人面接を廃止。また、法・文では出願要件に英語検定等の成績(法では受験)を追加する。この他、日本歯科大‐生命歯で公募推薦を新規実施する。
(4)一般入試の変更
 15年の新課程入試(数学・理科で先行実施。特にセ試の理科の出題科目が大幅に変更され、選択パターンが複雑化する)スタートを直前に控え、3月中旬現在で判明した14年の入試科目・方式の変更は比較的少ない。
【セ試利用入試】国際基督教大でセ試利用入試を取りやめる(13年は40人募集)。難関大では12年の慶應義塾大に続く“センター離れ”となる。北里大‐医療衛生でも廃止する一方、13年開設の同志社大‐グローバル地域文化で新規実施する。また、早稲田大‐人間科学ではセ試(5教科6科目)のみで判定する方式に加え、さらに数学の記述式問題を課す「数学選抜方式」を導入。募集人員は両方式とも45人(各学科15人)で併願可。「数学選抜方式」の配点は「セ試140点:記述560点」で、数学(出題範囲=I・II・III・A・B・C。III・Cは選択問題)は一般入試と異なる試験日(2月上旬)に行う。
【独自入試】早稲田大‐基幹理工で募集形態を学部一括募集から「学系別募集」に変更する。7学科を3つの「学系(I~III)」にグループ分けし、学系単位で募集し、入学後の2年次進級時に、原則として学系内から所属学科を決定する(複数の学系から進める学科もある)。
 この他、自治医科大‐医で出題範囲を拡大し、数学にIII・B・C、理科にIIを追加。慶應義塾大‐経済では一般入試の募集人員を「A方式500人→480人、B方式250人→240人」に削減する(帰国生入試・外国人留学生入試を拡大)。

 *     *     *

経済不安に加え、15年の「新課程入試」開始を控え、「浪人できない」プレッシャーが例年以上に強まるため、“安全志向”はある程度やむをえない。それでも、前年のデータ(倍率や難易度)を気にしすぎず、できる限り本来の志望校や志望分野へ向かって“初志貫徹”しよう。

 

(文責/小林)

この記事は「螢雪時代(2013年5月号)」より転載いたしました。

●お詫びと訂正(1)
小社刊『螢雪時代・2013年5月号』135ページの左段7行目で、2014年の学部等の新設予定について「日本福祉大‐看護」を例示しましたが、同学部は「2015年度開設予定(設置構想中)」でした。読者ならびに大学関係各位にお詫びして訂正(削除)いたします。なお、当サイトに転載した同記事については修正済みです。
●お詫びと訂正(2)
小社刊『螢雪時代・2013年5月号』135ページの左段10行目で、2014年の学部等の新設予定について「明治大の学部増設(スポーツ科学)」を紹介しましたが、同学部の増設は大学が公式に発表したものではございません。読者ならびに大学関係各位にお詫びして訂正(削除)いたします。なお、当サイトに転載した同記事については修正済みです。


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