入試動向分析

国公立大&私立大 2012年入試結果&2013年入試速報【2012年8月】

2012(平成24)年度

2013年は国公私立ともに志願者増、“文低理高”が続く!?

 

 夏休みを前に、各大学の2012年(以下、12年)入試結果データが出そろった。ここでは、国公立大、私立大それぞれの一般入試結果を最終チェックし、13年の動向を予測。さらに、13年の最新入試情報も紹介する。

 

※この記事は『螢雪時代・2012年8月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

一般入試の合格状況を総ざらい! 東京大・九州大などが難化、早稲田大・関西大などが易化か

 

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 12年の一般入試結果を見ると、国公立大は「志願者・合格者とも2%減」、私立大は「志願者:前年並み、合格者6%増」。特に私立大のセ試利用入試で倍率ダウンが目立った。東京大・九州大などがやや難化、早稲田大・関西大などがやや易化した模様だ。学部系統別では、国公立大・私立大ともに医・薬が難化、経済が易化したとみられる。

 
 

国公立大:
志願者・合格者ともに2%減。医・薬が難化、経済系が易化

 
国公私立大学 推薦入試結果の推移

 国公立大の12年一般入試の実施結果を本誌で調査したところ、全体では11年に比べ、志願者・合格者ともに2%減で、倍率(志願者÷合格者。以下、特に注記のない場合は同じ)も11・12年ともに4.1倍で変わらなかった。
 センター試験(以下、セ試)の平均点は2年連続でアップ(グラフ1)。理系の成績上位層に“やや強気”な出願傾向がみられたが、東日本大震災の影響などによる経済状況の悪化や、2年連続の平均点アップによる自己採点時のボーダーラインの高騰などから、全体に“安全志向”が強まり、“慎重出願”につながった。
 日程別にみると、前期は志願者・合格者ともほぼ前年並みで、倍率は3.0倍→2.9倍とわずかにダウン、公立大中期も「志願者6%減、合格者:前年並み」で6.0倍→5.6倍とダウンしたが、後期は「志願者3%減、合格者9%減」で8.0倍→8.3倍とアップした。後期の合格者大幅減は、東京工業大などの後期縮小に加え、11年は震災の影響で、25大学が後期の個別試験(以下、2次)を急遽取りやめ(2大学は一部学科で実施)、セ試のみの合否判定に変更したため、合格者を多めに出したのに対し、12年は2次を行い、ほぼ例年並みの合格者数に戻したためとみられる。
 各大学の倍率(全学の合計)の変動を見てみよう。“慎重出願”から前年の反動が強くあらわれ、各難易レベルで明暗が分かれた。
 難関校では、北海道大(3.8倍→4.0倍)、東京大(4.1倍→4.3倍)、九州大(3.1倍→3.4倍)が倍率アップ、やや難化した模様。一方、一橋大(4.8倍→4.5倍)、大阪大(4.0倍→3.6倍)は倍率ダウンした。なお、京都大・名古屋大では関東方面からの入学者が増加(例:京都大では東京都が94人→163人に)、難関大志望者に“西日本志向”が見られた。
 準難関校では、神戸大(4.9倍→4.4倍)、広島大(3.4倍→2.9倍)、大阪府立大(5.8倍→5.5倍)が倍率ダウン。一方、横浜国立大(3.9倍→4.7倍)、岡山大(2.9倍→3.2倍)、首都大学東京(5.1倍→5.3倍)、大阪市立大(4.1倍→4.4倍)が倍率アップ、やや難化した模様だ。この他、震災の影響が懸念された岩手大(2.8倍→3.3倍)、福島大(3.4倍→4.4倍)の倍率アップが注目される。
 学部系統別(グラフ2)にみると、医、薬が激戦化し、いずれも難化した模様だ。家政・生活科学もやや難化、工は志願者減ながら合格者も絞り込まれ、難易はほぼ前年並みだったとみられる。一方、志願者大幅減の経済・経営・商が倍率ダウン、易化したとみられる。

 

私立大:
志願者は前年並み、合格者6%増。セ試利用で合格者大幅増

 

 【螢雪時代】の私立大一般入試結果調査(532大学集計:志願者278.5万人)によると、11年に比べ「志願者:前年並み、合格者6%増」で、倍率は全体で11年3.6倍→12年3.4倍にダウンした。入試方式別にみると、各大学の独自試験は「志願者1%減、合格者3%増」で、倍率は3.8倍→3.7倍にダウン。また、セ試利用入試(独自・セ試併用型を含む)は「志願者3%増、合格者11%増」で倍率は3.1倍→2.9倍と、より合格者増と倍率ダウンが顕著だった。
 震災や金融不安などに伴う経済面の制約から、確実な合格を目指して学内併願は減らさず(受験料割引を活用)、併願校数を絞る傾向が強まった。加えて“地元志向・国公立大志向”も根強く、国公立との併願が多い大学では、入学手続率の低下を見越し、セ試利用入試を中心に合格者を増やすケースが目立った。また、上智大・関西大などの定員増も合格者増につながった。
 志願者数の上位10大学(表1)の入試結果を見ると、軒並み実質倍率(受験者÷合格者)が低下。東洋大・日本大・早稲田大・関西大などでは、志願者減ながら合格者を多めに出し、やや易化した模様だ。一方、立命館大の倍率アップが目立つ。この他、おもな大学で実質倍率が変動したケースを紹介する。

 

(1)倍率アップ
 慶應義塾大4.2倍→4.3倍、東海大2.7倍→2.8倍、武蔵大5.6倍→6.6倍、愛知大2.8倍→2.9倍、同志社大2.8倍→3.0倍、など
(2)倍率ダウン
 北海学園大2.1倍→1.6倍、東北学院大1.9倍→1.8倍、青山学院大5.6倍→5.2倍、國學院大5.4倍→5.2倍、国際基督教大3.1倍→3.0倍、国士舘大3.3倍→2.8倍、駒澤大4.1倍→3.8倍、上智大4.1倍→4.0倍、成蹊大5.5倍→4.8倍、成城大4.4倍→3.8倍、専修大3.7倍→3.5倍、明治学院大3.2倍→3.1倍、南山大2.7倍→2.2倍、名城大3.0倍→2.4倍、京都産業大3.9倍→3.3倍、龍谷大3.4倍→3.3倍、関西学院大3.6倍→3.4倍、甲南大3.8倍→3.6倍、西南学院大3.4倍→3.2倍、福岡大3.4倍→3.3倍、など
 

 

 難関校から中堅校に至るまで、全体的に倍率ダウンが目立つ。さらに、ここ数年人気を集める“中堅理工系”でさえ、やはり合格者増で実質倍率は前年並みか、低下した大学が多い。
 全国の私立大を、大学単位の競争率(実質倍率)グループ別に分類すると(グラフ3)、4.0倍以上の大学が減り、「3.9~3.0倍」の大学が増加。また、「2.9~2.0倍」の大学が減り、「1.9倍以下」の大学が増えたのが目につく。難関大~中堅上位校は3倍台へ、中堅校以降は1倍台へ集約される“二極化”が見てとれる。 地区別の集計では(グラフ4)、全地区で倍率がダウンした。特に、大都市圏の総合大学の合格者増が影響し、関東・甲信越、北陸・東海、関西の3地区で、より倍率ダウンしている。
 学部系統別にみると(グラフ5)、11年に続き「文低理高」傾向が強い。特に医、薬の倍率アップが目立ち、やや難化した模様。歯も倍率アップしたが、中には定員割れのケースも見られる。理・工、医療・看護は、志願者・合格者ともに増え、倍率はほぼ前年並み。一方、文系は全体に倍率ダウンし、特に法、経済・経営・商、社会・社会福祉は易化したとみられる。

 
私立大志願者数TOP10の入試結果/私立大一般入試・競争率グループ別大学数の分布
 

13年一般入試の志願者数は、国公立・私立ともに2%増か

 

 次に、13年の一般入試がどう動くのか予測してみよう。ポイントは4つある。
 
(1)受験生数が増える!?
 4(6)年制大学の受験生数は68万9千人と、12年に比べ約3%増加する見込み。ただし、経済悪化等の影響で大学進学率が低下し、受験生の増加はもう少し小幅になる可能性もある。
(2)センター試験の平均点が下がる!?
 13年度のセ試は、2年連続の平均点アップの反動で、国語、数学Ⅰ・A、物理、化学などが難化するものとみられ、平均点はややダウンしそう。また、地歴・公民、理科について「高得点科目を利用」から「第1解答科目を利用」に切り替える公私立大が続出している(p.196)。こうしたことから、受験生が12年以上に“慎重出願”に走るものとみられる。
(3)“地元・資格・安全・国公立”志向が続く!?
 震災後の復興の遅れ、経済状況の悪化、就職率の低迷などから、強い“地元・資格・安全・国公立”志向が続くものとみられる。大都市圏では国公立・私立ともに、他地区からの流入減が予想される。ただし、被災者対象の奨学金や学費免除を継続する大学が多く、東北地区から首都圏の私立難関~中堅上位校への流入は続きそう。一方で、関東地区から他地区の国公立大(特に医学部)への進出が加速しそうだ。
(4)セ試の本試験日が繰り下がる
 セ試の本試験日が「1/14・15→1/19・20」に繰り下がる。独自入試やセ試利用の出願締切日を本試験日の前に設定する私立大は、結果として12年より出願期間が延びるため、駆け込み出願による志願者増が見込まれる。
 
 以上のことから、一般入試の志願者数は、国公立大・私立大ともに前年比2%程度の増加が見込まれる。学部系統別では、理工・農・医・薬・医療看護など、理系全般に志願者増の見込み。一方、文系、特に法・経済は志願者減が見込まれ、12年と同じく「文低理高」が続きそうだ。

 

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13年入試の変更点をチェック! 私立大のセ試利用入試で「第1解答科目」利用への転換相次ぐ!

 
 

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 ここからは「前回に続き、13年入試の変更点を紹介する。公立大と、私立大のセ試利用入試で、セ試の地歴・公民、理科の成績利用について「高得点科目」から「第1解答科目」への転換が相次いでいる。この他、南山大・福岡大の学部共通入試の導入などが注目される。

 
 

国公立大は福島大・埼玉県立大などが「高得点→第1解答科目」利用に!

 
セ試「地歴・公民」「理科」実施の流れ(イメージ)

 12年からセ試の地歴・公民、理科は、試験枠が統合され、実施方法も大きく変更された。教科名・科目数などの「事前登録」、1科目受験者と2科目受験者の別室化……そして「第1・第2解答科目」もそのひとつだ。
 2科目受験の場合、最初に解答する科目を「第1解答科目」、次を「第2解答科目」とした。試験時間は各科目60分、2科目受験の場合は第1・第2の間に10分間、答案回収・配付等の時間が設けられた(休憩時間ではない)。その際、1科目判定の大学・学部等へ出願する2科目受験者が、2つの試験時間を使って実質的に1科目を解答するのを防ぐ「公平性確保」の措置として、従来の「高得点科目」でなく「第1解答科目」を判定に利用するよう、大学入試センターなどが各大学に要請した。この結果、12年は国立大のほぼ全部、公立大の半数以上、私立大の約2割が「第1解答科目」を利用した。
 13年では、「第1解答科目」を利用する大学がさらに増えている。国立の福島大、公立の札幌市立大・青森県立保健大・埼玉県立大・沖縄県立芸術大や愛知県立大‐看護などが「高得点科目を利用」から転換。そして私立大では、法政大を皮切りに、駒澤大・東海大・東洋大・日本大・愛知大・南山大・関西学院大・西南学院大・福岡大などが、雪崩を打って「第1解答科目を利用」に切り替えた(表2)。中央大・明治大も一部の学部で「第1解答科目」に転換するが、特に明治大は方式ごとに利用科目が「高得点」か「第1解答」に分かれる学部もあるので要注意だ。一方、愛知工業大のように「第1解答科目→高得点科目」に戻す大学も少数ながらみられる。
 「第1解答科目」による公平性の確保か、「高得点科目」による受験生への配慮か、大学側は悩ましい選択を迫られた模様で、それが各大学の対応の違いにあらわれたといえる。
 なお、セ試の平均点がダウンした場合、目標得点をとれず、志望変更せざるをえないケースも出てくるが、「第1解答科目」の得点次第では、出願可能な大学が限られてしまう可能性もある。こうした時は「高得点科目を利用」する大学に志願者が集中しそうだ。
 今後も「高得点科目→第1解答科目」に転換(その逆も)する大学が出てくる可能性があるので、選抜要項(国公立大)や募集要項(私立大)、ホームページなどで必ず確認してほしい。

 
私立大志願者数TOP10の入試結果/私立大一般入試・競争率グループ別大学数の分布
 

岐阜大‐工で「9→4学科」に統合。私立大で看護系の増設が目立つ

 
福岡女子大の学部統合・改組

【国立大:学部改組】岐阜大では工学部を「9学科→4学科9コース」に統合・改組する。また、岐阜大と鳥取大で「共同獣医学科」を設置する予定(両大学の獣医学科・課程は募集停止)。一方、4月号で既報の、北海道教育大の学部改組(5キャンパスのうち、教員養成以外の課程に特化した2キャンパスをそれぞれ学部化し、1→3学部に再編成)は14年以降に延期された。
【国公立大:募集人員】岐阜大‐工で募集人員の配分を「前期297人→225人、後期126人→233人」と「前期重視→前・後期ほぼ均等」に変更、推薦枠を縮小(87人→52人)。また、京都府立医科大‐医(看護)で後期を廃止する。
 
【私立大:新増設など】6月15日に、13年度の学部・学科の増設予定が文部科学省から発表された(5月末認可申請分。表3を参照)。私立13大学で学部・学科の増設を認可申請したが、ここ数年と同様、医療・看護や保育・教育など、資格取得に強い分野が目立つ。また、既報の通り、常葉学園大・浜松大・富士常葉大の3大学(いずれも静岡県)が統合されて「常葉大」として再スタートする。
 一方、やはり既報の新設予定大学のうち、大阪総合漫画芸術工科大が申請を取り下げた。また、東京女学館大が募集を停止する予定。
 この他、札幌大では全5学部を「地域共創学群」(13専攻で構成)に統合・改組する予定。また、玉川大‐観光、愛知学院大‐経済などの学部増設、学習院大‐文(教育)、中央大‐理工(人間総合理工)、日本大‐文理(社会福祉)・理工(まちづくり工・応用情報工)などの学科増設(いずれも設置届出)が予定されている。
 定員の変更では、東京理科大‐薬(80人→100人)、明治大‐情報コミュニケーション(400人→450人)の定員増、同‐法(900人→800人)の定員減が注目される。

 

福岡大で系統別日程を導入。東邦大‐医、昭和大‐医・歯で学費を軽減

 

【国公立大:一般入試】山梨大‐工の前期で学外試験場を東京に増設、同‐医(看護)の前期で面接を「集団→個人」に変更。名桜大‐国際学群の前期B方式で、セ試を3→2科目に軽減。
【私立大:独自入試】杏林大‐医では独自入試・セ試利用とも、2次の小論文の点数化を廃止。金沢工業大で中・後期を2→3教科に増加。藤田保健衛生大‐医で一般後期を新規実施。南山大で「全学統一入試」を導入、個別学力試験型(3教科)とセンター併用型(従来の「センター併用マルチ方式」を改変)の2方式で実施し、同時複数併願(受験料割引あり)が可能となる。神戸薬科大の中・後期で調査書の点数化を廃止。福岡大では前・後期とは別に、全学部・学科を5つの学問系統に分類し、各系統の中で同時複数併願(受験科目が一致する場合。受験料割引あり)を可能とした「系統別日程」を導入する。
【私立大:セ試利用入試】全体に募集回数を増やす大学が目立つ。北海学園大では、経済1部、経営1・2部、法1・2部でセ試利用Ⅱ期を新規実施。北里大‐獣医で5教科方式を追加。成城大‐法のセ試前期で4教科方式を追加。東京女子大ではセ試利用の募集枠を「101人→144人」に拡大(AOを廃止)。近畿大のセ試C方式で、経営の前期、農の中・後期を3→2科目に軽減する一方、産業理工の中・後期を2→3科目に増加。福岡大‐工でセ試利用に3教科4科目型を追加する。
「独自・セ試併用型」の導入も目立つ。愛知学院大で「セ試プラス方式」(セ試2科目と一般前期Aの1科目で判定)、成蹊大‐法で「P方式」(セ試5科目とE方式の英語で判定)、中部大で「センタープラスA・B方式」を導入。また、近畿大‐文芸でPC方式、福岡大‐理でセンタープラス型を新規実施する。
【私立大:学費】東邦大‐医では学費(6年間合計)を3,180万円→2,580万円に減額。昭和大でも、一般合格者(特待生以外)の学費(6年間合計)を、医で2,650万円→2,200万円、歯で2,850万円→2,450万円に減額する。

 

東海大‐医や女子美術大などでセ試利用入試を新規実施

 
福岡女子大の学部統合・改組
 

 6月中旬現在で判明した、13年からセ試を新たに利用する大学・学部の一覧を掲載した(各大学の入試概要、および本誌調査による)。これまで、他系統に比べセ試利用が少なかった医学部や芸術系学部における新規参加が目立ち、東海大‐医では「神奈川県地域枠入試」として導入する。また、12年4月に開設された亀田医療大・天理医療大では、一般入試を全て「独自試験→セ試利用」に転換する(2次に小論文・面接等を課す)。一方、名古屋産業大がセ試の利用を取りやめる。
 
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 以上、詳細は国公立大の選抜要項、私立大の入試ガイドなどで必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2012年8月号)」より転載いたしました。

 

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