入試動向分析

2012年 国公立大入試 志願者動向分析【2012年4月】

2012(平成24)年度

センター試験の平均点アップでも、文系・理系ともに慎重出願!!

 

大学入試を突破するには、そのしくみを知ることからスタートしよう。東日本大震災の影響を受け、センター試験の実施方法の大幅変更に揺れた、2012年国公立大入試について、各大学や学部系統などの人気度を示す「志願者動向」を分析。さらに、2013年入試の最新情報もお届けする。

 

※この記事は「螢雪時代(2012年4月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

東日本大震災やセンター試験の実施方法変更などが影響。公立大後期・中期で減少目立つ


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国公立大の志願者数は前年比2%減で、志願倍率は5.0倍→4.9倍とダウン。特に公立大は5%減、後期・中期で志願者減が顕著だった。センター試験(以下、セ試)の平均点はアップしたが、東日本大震災やセ試の実施方法の大幅変更が影響。文系・理系ともに「予定通り~やや慎重」な出願傾向が見られた。


志願者数は2%減、志願倍率は5.0倍→4.9倍にダウン

文部科学省の発表によると、2012年(以下、12年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は494,813人で、11年に比べ1.9%減少(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大、4月から「私立→公立」に移行する鳥取環境大は集計に含まれない)。そして、全募集人員(100,753人)に対する倍率(志願倍率)は4.9倍と、11年より0.1ポイント低下(グラフ1)した。
 入試日程別に志願状況(グラフ2)と志願倍率の変化(11年→12年)をみると、前期は「0.2%減:3.4倍→3.4倍」、後期は「3.5%減:10.4倍→10.3倍」、公立大中期は「6.2%減:14.2倍→13.1倍」といずれも志願者が減少し、後期と公立大中期で志願倍率がダウンした。また、国立・公立の別に見ると、国立大が志願者0.9%減、志願倍率は4.6倍のままに対し、公立大は志願者4.5%減、志願倍率も6.7倍→6.4倍に低下、特に後期(13.1倍→12.1倍)と中期の倍率ダウンが注目される。
 当社の推定では、4(6)年制大学の受験生数が2年連続で減った(1.5%減)。また、セ試の志願者数も減った(0.6%減)。こうした基礎数の変化に比例した減少ではあるものの、ここ数年の“国公立大志向”の強まりから志願者増が予想されただけに、意外ともいえる結果となった。

大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移


セ試では国語、数学I・A、物理I、化学Iが易化、理系には“追い風”

12年国公立大入試に大きな影響を与えた要素は、「セ試の実施方法の大幅変更」「セ試の易化」「東日本大震災の影響」の3点だ。

(1)セ試の実施方法の変更
   12年のセ試は、実施方法が大きく変更された。地歴と公民の試験枠が統合され、「地歴・公民から2科目選択可」となり、公民に新科目「倫理、政治・経済(以下、倫政経)」が加わった。理科も試験枠が「3→1」に統合され、「6科目から2科目選択可」となった。また出願時に、受験する全ての教科名、地歴・公民、理科は科目数(科目名は不要)の登録が必要になった(事前登録制)。
   セ試で地歴・公民、理科をそれぞれ2科目受験する場合、最初に解答する科目が「第1解答科目」、次が「第2解答科目」とされた。試験時間は各科目60分で解答し、その間に10分間、答案回収等の時間(休憩時間ではない)が設けられた。2科目受験者が1科目判定の学部等に出願する場合、2つの試験時間を使って実質的に1科目を解答するのを防ぐ措置として、従来の「高得点科目」ではなく、基本的に「第1解答科目を判定に利用」する大学が続出。福島大以外の国立大と、公立大の5割超が「第1解答科目」指定となった。第1解答科目が学部等の指定した科目でないと、第2解答科目が指定科目であっても利用されず、「0点」や「無資格」扱いされるため、志望変更や「前期→後期・中期」の併願にあたり、受験可能大学が限られる危険性もある。「事前登録制」によって、早期に受験教科等が固定されたこともあり、国公立大2次出願時に、より慎重にならざるを得なかった模様だ。
 大規模かつ「第1・第2解答科目」「事前登録制」が実施まで短期間の変更だったこともあり、試験当日は地歴と公民の問題配付などのミスが相次ぎ、7千人以上の受験生に影響、再試験受験者が265人にも及ぶ混乱が生じた。なお、13年の再発防止に向け、文部科学省・大学入試センターで検証が行われている。

大学入試センター試験(本試験) 科目別平均点
(2)センター試験は平均点アップしたが…
   国公立大の志願動向に大きく影響する要素の一つが、セ試の平均点のアップ(=易化)・ダウン(=難化)だ。12年のセ試は、試験当日の混乱にもかかわらず、2年連続で平均点がアップした。科目別では(表1)、国語、数学I・A、物理I、化学Iがアップ。新登場の倫政経は、難関校志望者の受験が多いこともあり、平均点は比較的高かった(67.1点)。一方、地理B、現代社会などがダウン。現代社会の場合、高学力層が倫政経に流れたのも要因といえる。
   国公立大がセ試で課すのは、文系が「地歴・公民から2科目」の5~6教科7科目、理系で「理科2科目」の5教科7科目(いずれも数学2科目受験)が標準的。ただし、地歴・公民、理科の場合、各科目に「第1・第2解答」の得点が混在するため、平均点の実態が従来に比べ把握しにくい。このため、国公立大の文・理系に共通の“基幹3教科”である「国語、数学(I・A、II・Bの2科目)、英語(リスニング含む)」の平均点合計を算出すると358.0点(得点率59.7%)で、前年に比べ10.0点アップした。
   とはいえ、理系志望者は平均点アップの物理I・化学Iを、文系志望者より多く選択したとみられ、これらの科目の影響を強く受ける。
   駿台予備学校・ベネッセの自己採点集計によると、900点満点での受験者の予想平均点は、文系(5~6教科7科目)が570点で4点アップ、理系(5教科7科目)が589点で15点アップ(文系の理科、理系の地歴・公民について高得点で集計した場合。第1解答科目を集計した場合、文系569点・理系589点)。11年と同様、理系の方がより平均点アップの“追い風”を受けたことがわかる。

(3)東日本大震災の影響
   東日本大震災や原子力発電所(以下、原発)事故は、12年の受験生の志願動向に深く影響を及ぼした。世界的な金融不安もあり、受験生(特に被災地)を取り巻く経済的環境は悪化。
“国公立大志向”に加え、「より確実に現役で」という“安全志向”、入学後の生活費を考慮した“地元志向”が11年以上に強まった。
   このため、受験生の多数は、自己採点結果が思いのほか良好でも“強気出願”に流れず、前期は“予定通り”に実力相応校へ、堅実に出願した模様だ。これは平均点アップの幅が大きい理系でも同様だった(ただし理系の高得点層は「やや強気」で医学科の志願者が増えた)。
また、高倍率の激戦になりがちな後期では、従来から前期より1ランク落として出願することが多いが、12年は新しい要因が加わった。それは「ボーダーラインの高騰」だ。
   11年入試では震災の影響で、東北~関東の国立16大学・公立9大学で後期の2次を取りやめ、セ試の成績のみで合否判定を行った(うち2大学は医学科のみ2次を実施)。10年と比べ、合否調査に受験生の「2次学力」が反映されず、セ試の目標得点が高めに設定された上、セ試の平均点アップでさらに自己採点の判定基準が上がったため、一部の大学の後期敬遠につながった模様だ(図1)。
   また、学費や難易度、科目数などの「お手頃感」から根強い人気の公立大だが、高倍率の後期・中期が志願者減。特に後期は11年まで4年連続の倍率アップで限界点に達した感があり、公立大志望者の一部が“安全志向”で最初から後期をあきらめ、奨学金利用を前提に「公立大前期→私立大セ試利用」の併願パターンに流れたものとみられる。
   特に、セ試の地歴・公民、理科を「第1解答科目で判定」とした公立大は、「高得点科目で判定」とした公立大より、後期における志願者減が目立った。

図1


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医・歯・薬など「理系の資格系」が高人気、法・経済系が大幅減。東京工業大の後期縮小が影響大


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学部系統別では、医・薬など“理系女子”に人気の高い分野で志願者が増加。一方で、法・経済など社会科学系が人気ダウン、「文低理高」が鮮明になった。東日本大震災の影響で「地元志向・安全志向」が強まり、北海道大・九州大が増加、大阪大・神戸大が減少するなど、各難易レベルで明暗が分かれた。

北海道・東北が2%増、九州が4%増。福島大は22%増

国公立大入試 地区別志願状況全国6地区ごとの全体的な志願動向(グラフ3)を見ていこう(以下、【前】=前期、【後】=後期)。北海道・東北、九州の増加に対し、関東・甲信越、北陸・東海、関西が各4%減と、大都市圏を擁する地区が全国平均を下回った。
 図1に、東日本大震災の影響を受けた、おもに東北~関東の国公立大志望者がどう動いたかを示した。東北地区では、復興が進まず、厳しさを増す経済環境のもと、国公立大、しかも地元校に絞らざるを得ない実情と、一方で地元への貢献意識の強まりが複合的に作用、他地区からの流入減を上回った模様。特に、福島大は原発事故の影響から志願者大幅減が予想されたが、(1)全受験生対象に全入試の受験料を無料化、(2)国立大で唯一、セ試の地歴・公民、理科を「高得点利用」としたこともあり大幅増(22%増)。やはり大幅減が予想された福島県立医科大も12%増加した。
 また、当初予想された「東北回避」の傾向は「東北大→東京工業大・金沢大」など限定的で、逆に関東地区への進出は弱まり、茨城大・筑波大・宇都宮大・埼玉大などの志願者減に影響した。
 九州大(9%増)をはじめ、九州地区の大幅増も、不況の深刻化から“地元志向”が強まったためであろう。11年は難関大志望者を中心に他地区へ進出したが、その揺れ戻しから地区内に留まった模様だ。一方、理工系志望者を中心に、東海地区から他地区へ積極的に進出した模様。例えば、名古屋会場を新設した信州大‐繊維【前】は76%増、岩手大‐工【後】も33%増と、志願者が大幅に増加している。
 各地区のおもな大学に関する分析は、『螢雪時代』4月号掲載の「螢雪ジャーナル」をご覧いただきたい。

2012年国公立大学入試 学部系統別志願状況

“理系女子”が目指す分野が志願者増、法・経済が減少

次に、学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。農・水畜産・獣医、医、歯、薬など理系学部が志願者増。特に“理系女子”が目指す“理系の資格系”分野が人気アップした。
 セ試の平均点アップが理系により強く作用し、国公立大への出願を後押ししたことは確かだ。しかしそれ以前に、高校の先生方(特に進学校)は「理系受験生自体が増えた」と口をそろえる。セ試の理科受験者の増加(1.9%増)をみても、基礎数が増えていることがわかる。しかも「学力上位層が理系にシフトした」という。“資格志向”と「文系より理系の方が就職の可能性が高い」との認識が強まったうえ、大震災に触発された社会貢献意識の高まりもあり、理系人気が高まったとみられる。ただし「セ試の“事前登録”で、早期の志望校や分野の決定を余儀なくされ、“文転”しにくくなった」との指摘もある。
 医は志願者6%増、医師不足解消へ向けた5年連続の定員増(国公立は08年~12年で計946人増)を背景に、人気は高まるばかりだ。さらにセ試の高得点層が増え、難関校の他学部(理工系など)へ志望変更せず、医学部志望を初志貫徹するケースも増えた模様だ。
 歯は5%増、薬は11%増。医から志望変更する際の流れが、ここ数年の「医→理・工」から、以前の「医→歯」に戻りつつあり、薬はとりわけ“理系女子”の人気を集めた模様だ。
 理は前年並み、工が微減となり、ここ数年続いた「理工系人気」は高止まりで落ち着いた模様。工の場合、東京工業大の後期大幅縮小(後述)、大阪大‐工の後期廃止の影響が大きく、前期は底堅く志願者を集めている。
 一方、就職状況の悪化を背景に、法、経済・経営・商など社会科学系が人気低迷、「文低理高」が鮮明になった。法は法曹・公務員人気の低下も要因と見られる。教員養成系も、大都市圏以外では教員採用率が低調なことから、志願者はやや減少した。なお、国際・国際関係の大幅増は、東京外国語大(1→2学部に分割)の新設学部(国際社会)が加わったことによる。

「前年の反動」や入試科目・募集人員の変更は要注意

大学・学部別の志願状況を見るためには、次の4つのポイントを押さえておこう。

[1]前年度の倍率アップダウンの反動
 受験生が最も気にするのは前年度の倍率。高倍率や倍率アップなら敬遠、低倍率や倍率ダウンなら人気を集めるため、前年度の反動や隔年現象(1年おきに増減を繰返す)が起きやすい。
[2]入試科目の変更、科目数の増減
 入試科目数の増減など、負担の変化が志願者の増減に結びつく傾向がある。また、小論文や面接が敬遠され、学科試験のみの大学・学部が人気アップする傾向がある。
[3]募集人員の変更
 後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の募集人員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。
[4]地区内の「玉突き」
 志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、後期日程の廃止・縮小、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。

 *     *     *

わかりやすい例として、東京工業大のケースを紹介しよう。
東京工業大
 第2~6類で後期を廃止、全学で前期の募集枠を拡大(862人→923人)し、後期を146人→20人(第7類のみ実施)に大幅縮小(→[3])。前期でセ試の配点化を廃止(合否判定に利用しない)し、2段階選抜を廃止(基準点は設定)した(→[2])。前期は志願者11%増、東北大‐工【前】(7%減)、千葉大‐工【前】(15%減)などに影響した(→[4])。東北大‐工【前】は11年(11%増)の反動(→[1])、千葉大‐工【前】は2次負担増(理科1→2科目:→[2])も要因となった。一方、前期の併願先を他大学に求め、千葉大‐工【後】(22%増)、埼玉大‐工【後】(10%増)、首都大学東京‐理工学系【後】(27%増)などの志願者増(→[4])につながった(図1も参照)。

東京大・九州大が志願者増、大阪大・神戸大は大幅減

図3
 表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧表にした。従来から人気が高く、募集人員も多い難関校や“準難関校”が連なる。
 1位は東京大で志願者4%増、前期では理I
(7%増)・理II(10%増)が増加し、文II(10%減)・理III(11%減)が大幅減。また、後期(全科類)は東京工業大の後期大幅縮小の影響で、前期からの学内併願が増加した模様。
 一方で、2位の大阪大は志願者12%減、工の後期廃止に加え、2次の地歴を世界史に限定した外国語【前】の大幅減(19%減)が影響した。工【前】(23%増)も募集枠拡大(25%増)ほど志願者が伸びず、関西の理系高学力層に“医学部志向”が強まったとみられる。
 4位の北海道大は4%増、特に後期が10%増。8位の九州大も後期が14%増えた。いずれも難関大としては、後期実施学部が比較的多いことから、他の難関大からの併願が増えた模様だ。
 この他、「やや慎重」な出願傾向を反映し、前年の倍率等に敏感に反応、各難易レベルで明暗が分かれた。難関~準難関校では、社会科学系の一橋大(5%減)、やはり社会科学系が看板の神戸大(10%減)や、筑波大(7%減)・広島大(14%減)・大阪府立大(8%減)が志願者減。一方、岡山大(9%増)・首都大学東京(5%増)・大阪市立大(7%増)で志願者増。大阪府立大の場合、理系主導の全学的な改組が、おもに文系志望者から敬遠される要因となったようだ。
 表3では、志願者の増加率が高い順に上位10大学を示した。表2と異なり、1学部のみの単科大が8大学を占める。1位の高知県立大は、「隔年現象」に加え、共学化2年目で認知度が高まり、志願者はほぼ倍増。この他、4大学で前年の志願者減の反動が出ている。一方、昨年1位(116%増)だった三重県立看護大は12年で半減(52%減)。こうした小規模大学は振幅が大きいのが特徴だ。なお、12年4月から「私立→公立」に移行する鳥取環境大は、私立大として別日程入試を行ったが、2月中旬の時点で志願者が激増。セ試利用I期と一般A・B方式の合計で、11年の6倍以上に膨れ上がった。

少数科目の学部は高倍率になりやすく、要注意!

次は、各入試日程で特に志願倍率(志願者数÷募集人員)が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4~6。同倍率が多数の場合は20を超えて掲載。医学部医学科や看護学科は1学部として扱う)。なお、「受験者数÷合格者数」で割り出す実際の倍率を「実質倍率」という。
 まず、表4・5の「高倍率の学部」から見ていこう。前期では、最高倍率の岐阜大‐医(医)【前】など医学科が連なり、その難関ぶりを物語る。また、セ試の科目数が少ない場合、例えば北九州市立大‐地域創生学群(2科目)や、12年新設の島根県立大‐看護(4科目:13年から5科目)などは高倍率になりやすい。
 後期では、募集人員が少ないうえ、実施学部・学科が減ったこともあり、最高倍率(59.9倍)の岐阜大‐医(医)【後】をはじめ、前期以上の「超高倍率」になるが、欠席率の高さ(前期の入学手続者が欠席するので、志願者のほぼ50%が欠席する)を割り引いて考える必要がある。
 岐阜大‐医(医)【後】は2段階選抜を新たに予告(倍率=募集人員の40倍)したため、急激に倍率ダウンした。また、共学化2年目の高知県立大‐看護・社会福祉や、セ試の科目数を軽減した旭川医科大‐医(医)、新見公立大‐看護の急激な倍率アップが目立つ。
 一方で、表6のように志願倍率が1倍台のケースもある。例年、医療系や理工系の学部が連なる中で、人気低落の経済系(金沢大‐経済学類、山口大‐経済、長崎大‐経済、福山市立大‐都市経営)の低倍率が目を引く。ただし、福山市立大‐都市経営【前】のように開設2年目で志願者大幅減(76%減)の場合は、13年ではある程度揺れ戻す可能性が高い。

前期日程の第1段階選抜では3,633人が不合格に

最後に、前期日程の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。予告した学部(50大学142学部)に対し、実際に行ったのは23大学35学部と25%程度だが、第1段階選抜の不合格者は11年3,428人→12年3,633人と増加した。不合格者の多かった大学は、東京大(1,233人)、一橋大(366人)、福島県立医科大(194人)、秋田大(177人)、大分大(169人)など。
 東京大からは、前期の第1段階選抜合格者の最高・最低・平均点が発表された。得点率に直すと、平均点が87.4%(文I)~90.4%(理I)の範囲、最低点が70.2%(文III)~85.6(理I)の範囲であった。第1段階不合格者数の増加(1,056人→1,233人)もあって、全科類で平均点がアップしたが、最低点は志願者増の文I・理I・理IIでアップ、志願者減の文II・文III・理IIIでダウン。中でも理Iの大幅アップ(81.0%→85.6%)と、文IIIの大幅ダウン(82.4%→70.2%)が注目される。

表4・表5・表6


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セ試を課さない推薦の志願者は国立大5%減、公立大1%減に。茨城大・大分大などが志願者減


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一般入試に先立って行われた「セ試を課さない」推薦・AO入試。『螢雪時代』編集部の集計では、推薦は「志願者3%減、合格者2%減」、国立大で志願者減が目立った。また、AO入試は「志願者13%減、合格者2%減」との結果が出た。

推薦入試は経済が志願者減、教員養成・看護が志願者増

図3当社では、国公立大のセ試を課さない推薦について、12年入試結果の調査を行った。11年12月26日現在の集計データ(96校:志願者数=約2万3千人)では、志願者数は前年度に比べ2%減少。内訳は「国立大5%減、公立大1%減」となった(グラフ5)。
 国立大の場合、推薦の実施学部数が「セ試を課す121→128、課さない211→209(11年→12年。以下同じ)」と前者へ移行しているのに加え、「安全志向」でより難易度の低い公立大へ志望者が流出したとみられる。また、公立大が微減に留まったのは、(1)資格志向から高人気の医療・看護系単科大が多い、(2)地元出身者以外の募集枠の拡大、なども要因にあげられる。
 大学別では、北海道教育大(7%増)・富山大(7%増)・兵庫県立大(5%増)の志願者増、岩手大(6%減)・茨城大(19%減)・群馬大(12%減)・岡山大(7%減)・佐賀大(7%減)・大分大(14%減)・長崎県立大(8%減)の志願者減が目立つ。
 合格者数は「国立大3%減、公立大1%減」、倍率(志願者数÷合格者数。以下同じ)は、公立大が2.3倍で11年と同様だったが、国立大は2.6倍→2.5倍とダウン、やや易化した模様。
 学部系統別にみると、経済、理、農が志願者減の一方で、医療・看護、教員養成が志願者増。医療・看護はやや難化した。

セ試を課さないAO入試は志願者13%減、合格者2%減

AO入試は国公立大の43%(69大学)で実施。ここ数年と同様、12年度も実施学部・学科の削減(例:岩手県立大‐看護、京都府立大‐文・生命環境で廃止)など“AO離れ”が進んだ。
 セ試を課さないAO入試は、11年12月26日現在の集計(39大学:志願者数=約4千人)によると「志願者13%減、合格者2%減」で、倍率は4.0倍→3.5倍にダウン。ただし、東京工業大(セ試を課さないAO<11年=志願者649人>を廃止し、セ試を課すAOを導入)を除いて集計すると、「志願者・合格者・倍率(3.5倍)とも前年並み」と安定した入試だった。
 大学別では、東北大(4%増)・静岡大(9%増)・山口大(4%増)の志願者増が目立った。


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2013年入試の変更点を速報! 大阪大‐理で大規模な入試改革、北海道教育大が複数学部化!


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センター試験の実施方法の大幅変更に揺れた12年入試に比べ、13年入試は大規模な変更(改組や実施方法等)が少なく、比較的波静かだ。その中で、大阪大の理系学部の入試改革、北海道教育大の複数学部化、センター試験を課さないAO入試の相次ぐ廃止などが注目される。

大阪大‐理・基礎工、神戸大‐経済などで後期を廃止

ここからは、13年国公立大入試の特徴と、志願動向に影響しそうな変更点を見ていこう。

図2
(1)選抜方法の変更
 大阪大‐理で後期を廃止し、前期に「挑戦枠」を新設、「研究奨励AO入試」を導入。また、理・工・基礎工3学部合同で「国際オリンピックAO入試」も導入する(図2)。「挑戦枠」の2次は2日間、うち「専門数学(または理科)」は試験時間が3時間におよぶ。世界と競争できる「理系エリート」選抜の性格を強めた改革といえる。
 京都大‐理【前】では、セ試を第1段階選抜のみに利用し、最終的な合否は2次のみで決定する方式から、一般的な「セ試・2次の合計点で決定」する方式に変更。また、同‐工【前】では第2志望学科の登録が可能になる。

(2)入試科目の増減
 ここ数年と同様、全体に2次で負担増(特に学科試験)を行う傾向がみられる。
【センター試験】静岡大‐工【前】で5→7科目、島根県立大‐看護【前】で4→5科目に負担増。九州工業大‐情報工【後】で国語を追加する。
【2次試験】横浜国立大‐理工は、前期で理科・外国語(化学生命系は外国語のみ)を追加する一方、後期で外国語を除外。愛知教育大の前期では多数の課程・専攻等で科目増。名古屋大‐医(医)【前】で面接を追加し、2段階選抜を復活。京都大‐総合人間、琉球大‐法文・観光産業・教育、宮崎公立大の前期で英語リスニングを廃止。奈良県立医科大‐医(医)【後】で小論文を学科試験(数学・理科・英語)に変更する。

(3)日程の変更
 大阪大‐理・基礎工、神戸大‐経済をはじめ、筑波大‐医学類、群馬大‐医(医)、名古屋市立大‐医などで後期を廃止。また、横浜国立大‐理工では募集人員の配分を「後期重視→前期重視」に切り替える。一方、岡山大‐理、九州大‐薬で後期を復活。奈良県立医科大‐医(医)では、募集人員の配分を「前期重視→後期重視」に切り替え、地域枠推薦も拡大する。

(4)推薦・AO入試の導入・廃止
 全体的に「セ試を課さない方式」の廃止、「課す方式」の導入例が多い。また、AO入試そのものを廃止するケースも目立つ。
【推薦入試】九州工業大‐工・情報工、横浜市立大‐国際総合科学、静岡県立大‐国際関係でセ試を課す推薦を導入。一方、長崎大‐工ではセ試を課さない推薦を廃止、佐賀大‐医(医)でも「セ試を課さない→課す」に転換する。
【AO入試】大阪大でAO入試を拡充(前述)する一方で、山口県立大が全3学部でAOを廃止。また、筑波大‐教育学類・応用理工学類、九州大‐薬、兵庫県立大‐経済・経営でも「セ試を課さないAO」を廃止する。

図3
(5)大学・学部の新設・改編など
 北海道教育大で、現在の1学部5キャンパス体制から、教員養成以外の課程の学部化を予定している(図3)。また、公立では「秋田公立美術大」(仮称)が新設予定だ。

 *  *  *

以下、2月下旬までに判明した「2013年国公立大入試のおもな変更点」を掲載した。今後、各大学が6~7月に発表する「選抜要項」(入試の概略を紹介した冊子)、10~12月に発表する「募集要項(出願書類を備えた正式な入試要項)」などで必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)

この記事は「螢雪時代(2012年4月号)」より転載いたしました。

●お詫びと訂正
『螢雪時代・2012年4月号』97ページに掲載した『2013年
国公立大入試の主な変更点』の中で、沖縄県立芸術大学について「[セ試]美術工芸(美術=絵画)【前】【前】=2→3科目」となっていますが、正しくは「【前】【後】」となります(【前】=前期日程、【後】=後期日程の略)。読者ならびに大学関係各位にお詫びして訂正いたします。


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