入試動向分析

国公立大&私立大 2011年入試結果分析【2011年6月】

2011(平成23)年度

国公立大では“準難関校”と理工系大学が軒並み難化!?
私立大でも理系学部が難化か

 

 東日本大震災で被災した大学も含め、2011年入試結果のデータが各大学から本格的に発表されはじめた。今月は、国公立大・私立大ともに、難化・易化を測る物差しとなる倍率の変化と、クリアすべき目標ライン「合格最低点・平均点」について見ていこう。さらに、2012年入試の変更点など最新情報もお届けする。

 

※この記事は『螢雪時代・2011年6月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

筑波大・神戸大・広島大など“準難関校”がやや難化か。
大学発表の“合格ライン”で具体的な目標をイメージしよう

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 国公立大全体の倍率(志願者÷合格者)は、前期・公立大中期でアップしたが、後期は合格者増でダウン。東日本大震災の影響で、後期を「センター試験のみで合否判定」に切り替える大学が続出した。学部系統別では、医・歯・薬・理工など理系が難化、特に理工系大学の難化が目立った。一方、法・経済は易化した模様だ。

 
 

東日本大震災の影響で、後期の実施を取りやめる大学が続出

 
2011年 国公立大入試日程別志願者・合格者動向

 全国の国公立大学に対し、2011年(以下、11年。他年度も同じ)一般入試の合格状況について本誌で調査したところ、全体の志願者数は前年比で3%増加したのに対し、合格者数も2%増となった。
 3月末現在の集計のため、「東日本大震災」の影響などから受験者数が未発表の大学もあるので、ここでは「志願者数÷合格者数」の倍率(以下、国公立大については同じ)を10・11年で比較した。日程別にみると(グラフ1)、前期は「志願者3%増、合格者1%増」で2.9倍→3.0倍、公立大中期も「志願者2%増、合格者1%増」で5.9倍→6.0倍と倍率がアップしたのに対し、後期は「志願者4%増、合格者6%増」で8.2倍→8.0倍とダウンした。
 後期の合格者数が大幅に増えたのは、やはり「東日本大震災」の影響だ。東北~関東の国公立大では、交通・通信網の混乱、余震が続く中での安全確保、停電への懸念などから、後期日程の実施方法を急遽変更。ホームページ等を確認したところ、国立14大学・公立9大学で個別試験(以下、2次)を取りやめ、センター試験(以下、セ試)の成績のみで合否判定を行った(この他、群馬大・千葉大は医学部医学科を除き後期試験を中止)。また、実施した大学でも、秋田大・東京大・東京工業大・新潟大・大阪大など、追試等を行うケースが多くみられた。セ試のみで合否判定した場合、受験者が絞られない分、入学手続率が読みづらく、合格者を多めに出さざるを得なかったとみられる。
 地区別にみると(グラフ2)、北陸・東海、関西、中国・四国の3地区は倍率アップし、全体的に難化した模様。一方、東日本2地区の後期日程に注目すると、北海道・東北が「志願者:前年並み、合格者6%増」で8.1倍→7.7倍、関東・甲信越も「志願者2%増、合格者19%増」で8.4倍→7.2倍と、倍率はかなり低下した。
 急遽「セ試のみの判定」になった場合は、受験生の「2次学力」が反映されず、さらに被災地区では予備校等の合否調査の実施に困難が予想されるため、難易度の算出が不安定になる可能性もある。このため、東日本の国公立大後期の受験校を決めるにあたっては、進路指導の先生方と慎重に相談する必要があろう。

 
 

医・歯・薬をはじめ理系は難化、法・経済がやや易化

 

 学部系統別(グラフ3)にみると、志願者大幅増の医、歯、薬が激戦化した。医では地域枠の「一般入試→推薦・AO」への移行に伴い、一般入試枠が1%減り、「志願者10%増、合格者2%減」で倍率が大幅アップ(6.9倍→7.8倍)。歯は定員減(8大学で31人減)で一般入試枠が4%減り、「志願者12%増、合格者6%減」で4.1倍→4.9倍に、薬も「志願者17%増、合格者3%増」で5.3倍→6.0倍に大幅アップ、いずれも難化した模様だ。
 また、やはり志願者増の理、工、農・水畜産・獣医、医療・看護の各系統は、合格者はやや増えたものの倍率アップ(理4.0倍→4.1倍、工3.8倍→3.9倍、農・水畜産・獣医3.9倍→4.1倍、医療・看護4.5倍→4.6倍)、やや難化した模様。一方、志願者減の法、経済・経営・商は倍率ダウン(法4.3倍→4.1倍、経済・経営・商4.4倍→4.2倍)、やや易化したものとみられる。

 
 

東京工業大・名古屋工業大など、理工系大学が難化か

 

 次に各大学の合格状況を、大学全体(学部・日程等の合計)の倍率の変動で見ていこう。11年入試で特徴的だったのは、セ試の易化による“やや強気”な出願傾向から志願者が増加した「準難関校」と、“資格・技能志向”で人気を集めた理工系大学の倍率アップだ。
 準難関校では、筑波大(3.7倍→4.1倍)、お茶の水女子大(4.3倍→4.8倍)、神戸大(4.3倍→4.9倍)、広島大(3.1倍→3.4倍)、首都大学東京(4.8倍→5.1倍)、大阪市立大(3.9倍→4.1倍)などが倍率アップ、やや難化した模様だ。ただし、募集枠の大きい後期が「セ試のみ判定」となった横浜国立大では、後期の合格者が42%増え、倍率ダウン(4.7倍→4.0倍)した。
 理工系大学は、東京工業大(5.0倍→5.4倍)をはじめ、名古屋工業大(3.5倍→4.0倍)、京都工芸繊維大(3.9倍→4.5倍)、九州工業大(3.0倍→3.4倍)など、難易レベルを問わず倍率アップし、いずれも難化した模様だ。
 難関校では、東京大の前期が3.1倍→3.2倍と倍率アップ、特に最難関の文I・理IIIのアップ(文I3.2倍→3.9倍、理III5.0倍→5.7倍)が目立つ。学部別募集とは別に、学部を超えた募集枠「総合入試」を前期で導入した北海道大も倍率アップ(3.7倍→3.8倍)。一方、一橋大は社会科学系の人気低下で倍率ダウン(5.0倍→4.8倍)、経済の前期がやや易化した模様だ。
 この他、募集人員の多い前期では、東北大‐教育・理・工、名古屋大‐文・医(医)・工、大阪大‐法・経済・医(医)・薬・基礎工、九州大‐教育・法が難化する一方で、東北大‐医(医)、京都大‐総合人間、大阪大‐理・外国語、九州大‐経済が易化したとみられる。
 10年に“安全志向”から志願者が大幅に増加した、大都市圏以外の公立大では、岩手県立大(8.3倍→5.4倍)、都留文科大(5.4倍→5.0倍)、北九州市立大(5.3倍→3.9倍)など、反動による倍率ダウンがみられた。

 
 

「合格最低点」より確実な「合格平均点」を目標に!

 

 志望校選びや目標設定の指針となるのが、合格者の最低点や平均点という「合格者データ」。学部・学科や日程・方式など、募集単位別に公表されることが多い。国公立大ではセ試と2次それぞれを発表するケースと、総合点(セ試+2次)だけを公表するケースがある。合格最高点は文字通り全合格者中の最高得点で、合格最低点は合否の分かれ目になる、いわゆる「ボーダーライン」。そして合格平均点は、総じて最低点より得点率にして5~10%高い。
 ボーダーラインぎりぎりでも合格には違いないので、合格最低点はまさに「最低目標」として重要なデータといえるが、確実に合格を目指すには、「合格者平均点」のレベルまで学力アップしておくことが望まれる。最低目標をクリアするだけでは、問題のレベルや倍率が上がった場合を考えると、リスクが大きいからだ。

 
 

東京大の合格最低ラインは、前期59~71%、後期51%

 

 11年入試の合格者データのうち、東京大と金沢大のケースを紹介しよう。
 表1は東京大の合格ラインである。第1段階選抜と、第2段階(つまり最終)選抜に分けて掲載した。まず前期日程について見てみよう。
 第1段階選抜は全科類で実施し、その合格ラインは文I78.3%(前年比+10.2ポイント<以下、p>)、文II82.0%(+4.7p)、文III82.4%(+2.7p)、理I81.0%(+2.7p)、理II78.7%(+6.6p)、理III80.8%(+5.7p)となった。
 セ試の平均点アップと第1段階不合格者数の大幅増(715人→1,056人)により、全科類で得点率がアップ。中でも文Iは、前年の反動による志願者増(10年23%減→11年23%増)から急上昇、09年並みの水準に戻った。各科類とも、最終合格を考えると、セ試で確実に9割前後は取っておきたいところだ。
 第2段階(セ試+2次)選抜のデータを見てみよう。セ試は900点を110点に圧縮、2次440点の計550点満点。最終合格ラインは、文I64.3%(前年比+0.3p)、文II62.8%(+0.3p)、文III63.1%(+1.5p)、理I59.1%(+3.3p)、理II59.3%(+3.4p)、理III71.4%(+5.2p)と全科類でアップしたが、特に理IIIの大幅なレベルアップが目立った。
 次に、全科類一括募集(共通問題で選抜)の後期日程について見よう。セ試は第1段階選抜のみに利用し、合否は2次のみで判定する。倍率は低下(10年31.4倍→11年29.7倍)したが、激戦であることにかわりはなく、第1段階選抜の合格ラインは89.5%(+1.9p)、セ試での9割確保は最低条件といえる。
 2次は予定通り3月13日に、ただし開始を2時間遅らせて実施。300点満点で、最終合格ラインは51.3%(+6.3p)とアップした。その要因を、駿台予備学校の森澤慶一次長は「入試科目(総合科目I~III)のうち、総合科目I(英語)が比較的易しかったようです」と、出題レベルの緩和に求める。

 
2011年入試/東京大の合格ライン
 

金沢大の合格平均は、文系・理工系が7割前後、医療系が8割近く

 

 次に、金沢大の前期日程の合格者データを示した(表2)。総合点を得点率(%)に換算し、各学類を分野別にまとめて平均すると、文系(人間社会学域)で「最低67%・平均71%」、理工系(理工学域)で「最低63%・平均68%」、医療系(医薬保健学域)で「最低72%・平均76%」となった。合格するには、文系・医療系で7割程度(医は8割以上)、理工系でも6~7割程度の得点を要求されるのだ。さらに、合格者平均点をセ試・2次の別に平均すると、「文系=セ試76%・2次64%、理工系=セ試72%・2次65%、医療系=セ試78%・2次70%」となった。マーク式のセ試に比べ、記述式の2次の方がやや得点しにくいことがわかる。
 このうち、配点がセ試重視の「経済学類」と、2次重視の「機械工学類」を比較してみよう。
 経済学類の科目・配点は、セ試が6教科7科目の計900点、2次が「3教科から2教科選択」の計400点で総計1,300点。合格者は、セ試では得点率67%~85%(平均75%)に分布し、最高・最低の差は18p。2次では得点率44~90%(平均61%)に分布し、最高・最低の差は46p。配点の小さい2次の方が最高・最低の得点差が大きく、セ試の得点である程度合否が決まったことがうかがえる。
 一方、機械工学類の科目・配点は、セ試が5教科7科目の計450点、2次が数学250点、物理・英語各200点の計650点で、総計1,100点。合格者は、セ試では得点率63%~82%(平均71%)に分布、最高・最低の差は19p。2次では得点率52~81%(平均66%)に分布し、最高・最低の差は29p。経済学類に比べ、セ試と2次で得点幅にそれほど違いがなく、2次の得点力で合否が決まったことがうかがえる。

 
2011年入試/金沢大前期合格者の最低点・平均点
 

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私立大は、上智大・明治大・京都産業大・龍谷大・関西学院大など全体的に倍率ダウン。
倍率アップは駒澤大・東京理科大など少数派

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 私立大の一般入試結果をみると、「受験者:前年並み、合格者3%増」で、上智大・龍谷大・関西学院大など全体的に倍率ダウンの大学が目立つ。一方、倍率アップは駒澤大・東京理科大など少数派。理系学部は全般に難化した模様だ。

 
 

実質倍率は3.8倍→3.6倍にダウン、特にセ試利用で顕著

 
2011年私立大一般入試 地区別・方式別 受験者・合格者動向(3月末現在)

 「螢雪時代」編集部が、私立大一般入試の実施結果を調査したところ、103大学の集計(3月末現在)で、受験者数はほぼ前年並みだったが、合格者数は3%増加し(グラフ4)、実質倍率(受験者÷合格者。以下、倍率)は10年3.8倍→11年3.6倍にダウンした。私立大が集中する大都市圏では、首都圏4.7倍→4.6倍、京阪神3.9倍→3.7倍といずれもダウン。一方、東海などその他の地区では、10年とほぼ同様の2.7倍だった。
 入試方式別では、独自入試(各大学の個別試験)は「受験者1%減、合格者2%増」で4.0倍→3.9倍にダウン。セ試利用入試は「受験者1%減、合格者6%増」とさらに合格者増が顕著で3.2倍→3.0倍とダウンした。一方、独自・セ試併用型は「受験者14%増、合格者13%増」、倍率は3.3倍で変動なし。以下、おもな大学の状況を紹介する(おもに2月入試の集計)。

 

(1)倍率アップ

【首都圏】駒澤大3.8倍→4.1倍、東海大2.6倍→2.7倍、東京理科大3.0倍→3.2倍
【京阪神】同志社女子大3.2倍→3.5倍、大阪経済大4.8倍→4.9倍、摂南大3.9倍→4.4倍

(2)倍率ダウン

【首都圏】青山学院大5.4倍→5.3倍、慶應義塾大4.3倍→4.2倍、上智大4.7倍→4.1倍、成蹊大6.2倍→5.7倍、中央大5.3倍→5.0倍、東京女子大3.4倍→2.9倍、日本女子大3.5倍→3.2倍、武蔵大6.6倍→5.5倍、明治大5.3倍→5.0倍
【京阪神】京都産業大4.2倍→3.8倍、京都女子大3.7倍→2.9倍、同志社大2.9倍→2.8倍、佛教大4.9倍→4.1倍、龍谷大4.0倍→3.4倍、近畿大4.5倍→4.4倍、関西学院大4.1倍→3.6倍
【その他】北海学園大2.3倍→2.1倍、東北学院大2.4倍→1.9倍、南山大2.9倍→2.7倍、名城大3.2倍→3.0倍、福岡大3.5倍→3.3倍
 
もともと、私立大では合格者が併願先の他大学にある程度流出することを想定し、正規合格者をかなり多めに出す(独自入試=募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試=5~10倍程度)。11年入試では、経済事情の悪化やセ試の易化から“国公立大人気”が高まり、現役生から「浪人回避」の傾向がやや薄れたという。国公立との併願が多い大学で、入学手続率の読みにくさから合格者を増やし、上智大・明治大・龍谷大・関西学院大など、全体的に倍率ダウンするケースが目立った。一方、駒澤大・東京理科大など倍率アップする大学も少数ながらみられた。

 
 

理系学部は、難関から中堅校に至るまで幅広く志願者増

 
2011年私立大一般入試 難易ランク別 志願者増増減率

 11年入試で特徴的だったのは、理系学部の難易ランクを超えた幅広い志願者増だ。
 グラフ5で文理別・難易ランク別の志願者動向(4月中旬現在:駿台予備学校の集計)を見てみよう。ここでいう難易ランクは、同じ大学内でも学部によって異なるが、おおむね、Aランクは難関校や難関医科大、Bランクは準難関校、Cランクは中堅上位校、D~Eランクは中堅クラス以降を指す。文系はA~Cランクで志願者減、D~Eランクもほぼ前年並み。一方、理系は全ランクで満遍なく志願者が増え、中でもD~Eランクの志願者増が際立つ。
 文系の場合、法・経済の人気ダウンが影響し、さらに安全志向から「難関・準難関→中堅上位・中堅」へランクダウンした模様。一方、理系の場合、(1)“資格・技能志向”の強まりで人気が高まり、(2)理系受験生自体の厚みも増し、(3)セ試の平均点アップが特に理系で顕著だったことが要因とみられ、理工系・医療系などで全体的に難化した模様だ。D~Eランクの増加は、景気低迷や厳しい就職難から、従来は大学進学を考えなかった層が進路変更したケースもあり、このランクの増加に拍車をかけたとみられる。

 
 

関西学院大の学部個別日程の合格最低点は6割台

 
関西学院大(学部個別日程)の合格最低点

 次に、私立大から発表された「合格ライン」を見ていこう。毎年、倍率のアップダウンや、入試問題の難易などによって上下し、大学によっては選択科目間の有利・不利をなくす得点調整を行う場合もある。
 まず、表3に関西学院大の「学部個別日程」(A方式から名称変更)の合格最低点を示した。同日程では文系型(人間福祉学部を除く)の試験時間割を大幅に変更、選択科目を「数学・地歴から1→国語・数学・地歴から2(国語が必須→選択に)」として注目された。
 得点率にして51%~74%の間に分布しているが、全学部(学科)を平均すると、例年60%台が合格最低ラインの目安となる。その中で、倍率ダウンした神・文(西洋史学)・経済の急下降と、倍率アップした法(政治)・人間福祉(社会起業)の上昇が注目される。入試問題の難易もあり、一概には言えないが、倍率の変動が合格ラインに影響した好例といえる。

 
2011年入試/同志社大<学部個別日程>の科目別・総合点の合格ライン
 

合格者の科目別データが示す「多様な合格者像」

 

 同志社大では、総合点の合格ラインに加え、合格者の科目別の最高・最低点も公表している。表4に「学部個別日程」のデータを示した。
 文系学部では、総合点の合格最低ラインは平均して70%近く。科目別に見ると(以下、得点率で表示。極端に低い学部・学科を除く)、英語の最高点は85%~97%で全体的に満点に近く、最低点は42%~74%。全学的に英語の得点力を重視するため、ある程度ハイレベルな学力が要求される。不得意でも60%台は得点したい。国語の最高点は83~100%、最低点は41~56%と幅広く分布し、選択科目(日本史・世界史・政治経済・数学)では、最高点は80%~100%、最低点は60%前後のケースが多い。

龍谷大―経済(A日程)スタンダード方式文系型/ボーダーライン付近の合否状況

 一方、理系学部(文化情報の理系型を含む)では、総合点の合格最低ラインは平均して60%超。科目別に見ると、英語の最高点は得点率90%前後だが、最低点は40%前後が多い。数学は最高点がほぼ満点で、最低点は50%台が多い。物理・化学・生物は、最高点は70%~満点で、最低点は物理が30%~50%、化学が40~50%、生物は50~60%に分布する。理系学部では、文系より合格者の得点ゾーンが広いのが特徴だ。
 私立大入試の3科目型では、1科目が得意で、もう1科目がまずまずなら、残りの1科目はやや不得意でも合格は十分可能なことがわかる。合否はあくまで、3科目の合計点次第なのだ。

 
 

ボーダーライン付近に合格者の半数近くが集中

 最後に、合格ライン付近がいかに激戦となるかを紹介する。グラフ6に龍谷大‐経済学部(A日程:スタンダード方式文系型)の、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。同方式は、国語・英語・「世界史B・日本史B・政治経済・数学から1」の3科目で各100点、計300点の均等配点。11年では、受験者数1,678人に対し、合格者346人で倍率は約4.8倍。合格最低点は207点、得点率は約69%だった。
 注目すべきは、最低点を含め上10点幅の部分に、合格者全体の実に45%も集中していることだ。1点違いで不合格になった受験生も24人いるなど、合格ライン付近には多くの受験生がひしめきあっている。ふだんの勉強から「1点の重み」をしっかり認識し、解答の見直しを習慣づけよう。

 

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私立7大学が新設される予定。金沢大の7学類で推薦・AOを削減、
一般入試の募集枠を拡大。南山大でセ試5教科型を導入!

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 ここからは4~5月号に続き、文部科学省や各大学から発表された2012(以下、12)年入試の変更点をお知らせする。医療・看護系大学の相次ぐ新設、金沢大の推薦・AO枠縮小、南山大の多科目型入試の導入などが注目される。

 
 

新設大学:私立7大学が新設予定。医療・看護系が目立つ

 
2012年度新設予定の私立大学

 文部科学省の発表(4月中旬)によると、私立7大学の新設が予定されている(表5)。このうち、5大学が医療・看護系の学部を有する。この大学新設により、定員は私立大全体で615人増える予定だ(通信教育課程を除く)。

 
 

国公立大:金沢大で推薦・AO枠を縮小、一般入試の募集枠を拡大
 
[1]募集人員の変更

●金沢大 募集人員を次のように変更する。(1)経済学類では、セ試を課さない推薦を「20人→10人」に削減し、一般入試を「前期145人→150人、後期20人→25人」に増員。(2)薬学類・創薬科学類では、2学類の合計でAO入試を「15人→5人」に削減、前期を「60人→70人」に増員する。(3)理工学域では、次の4学類でセ試を課さない推薦を廃止、一般入試の募集人員を増加する。数物科学=前期67人→69人、後期13人→15人/物質化学=前期59人→61人、後期17人→20人/電子情報=前期80人→84人、後期15人→20人/環境デザイン=前期63人→64人、後期7人→10人。
●広島大 経済学部夜間主コースで、セ試を課すAOを25人→15人に削減し、一般入試を「前期20人→27人、後期5人→8人」に増員する。
●山口大 医学部医学科で、11年の定員増(114人→117人)で一般前期に設けた地域医療再生枠(山口県枠2人)を、12年から推薦入試(山口県枠7人→9人)に移行する。また、工学部では7学科合計で、セ試を課す推薦を縮小(65人→55人)し、一般入試を「前期323人→324人、後期96人→105人」に増員する。

大阪府立大 学域・学類制導入後の募集人員

●大阪府立大 12年4月から、現在の7学部28学科を「4学域13学類」に改編する予定。学域・学類ごとの募集人員は、表6の通り予告されている(社会人等の特別選抜を除く)。
●神戸市看護大 看護学部で、一般前期を「50人→60人」、セ試を課さない推薦を「15人→20人」に増員し、3年次編入学定員を「40人→10人」に削減する予定(認可申請中)。
●奈良県立医科大 医学部看護学科で、セ試を課さない推薦を「25人→30人」に増員し、3年次編入学定員を「15人→5人」に削減する予定(認可申請中)。

[2]入試方式の変更など

●鳥取大 農学部獣医学科で、セ試を課す推薦を新規実施する。
●鹿屋体育大 SS入試(AO入試)の出願資格に成績条件(評定平均値3.0以上)を追加。

 

私立大:立命館大‐文が大規模な改組、中央大‐文が統一入試に参加

[1]学部・学科の増設・改組

●神奈川大 理学部に数理・物理学科(定員40人)を、工学部に経営工学科(同80人)と総合工学プログラム(同90人)を増設する予定。「総合工学プログラム」は学科横断型の教育組織で、「環境・エネルギー工学、生体機能・医用工学、コンピュータ応用工学」の3コースで構成される。
●立命館大 文学部で、14専攻・プログラムを「8学域18専攻」に改編する予定。学域単位で募集し、2年次に専攻へ所属する。
●龍谷大 文学部に臨床心理学科を増設する予定。定員は92人。
●西南学院大 人間科学部に心理学科を増設する予定。定員は100人。

[2]一般入試の変更

●駒澤大 全学部統一日程の学外試験場を岡山に増設する(5→6会場)。
●中央大 (1)学部共通入試の統一入試(11年は法・経済・商・総合政策で実施)に、文学部が新規参加する。募集人員は、国文学・英語文学文化の2専攻が各4人、その他の11専攻が各2人の計30人。入試科目は3教科型で、英語・国語(漢文を除く)が必須、選択科目が「日本史B、世界史B、政治・経済、数学I・II・A・Bから1科目選択」。配点は「英語150点(日本史学・社会学・社会情報学・心理学の4専攻は100点)、国語100点(国文学専攻は150点)、選択科目100点」。(2)統一入試・一般入試・セ試併用方式の学外試験場を新潟に増設する。
●法政大 情報科学部のセ試利用B方式を4教科5科目→3教科4科目に軽減(国語を除外)。また、キャリアデザイン学部のA方式で、英語の配点を「100点→150点」に上げる。
●南山大 セ試利用前期で5教科型(前期B)を導入、従来の方式(3教科型。法のみ4教科型)を「前期A」に改称する。前期Bの学部ごとの指定科目数は、人文・外国語・経済・経営・法・総合政策が5科目、情報理工のみ6科目。
●同志社大 スポーツ健康科学部のセ試利用入試に「スポーツ競技力加点方式」と「5科目方式」を追加する。募集人員は各2人。スポーツ競技力加点方式は「1次審査=セ試3教科3科目、2次審査=書類審査(スポーツ競技成績書および資料)」を課す。また、5科目方式はセ試5教科5科目を課す(個別試験なし)。
 
 *     *     *
 
 詳細は、国公立大の入学者選抜要項(7月頃に発表)、私立大の入試ガイド(5月以降に発表)などで必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2011年6月号)」より転載いたしました。

 

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