入試動向分析

2010年一般入試 合格ライン突破対策!【2010年1月】

2009(平成21)年度

得意科目を生かす実戦的得点プランと「捨てて勝つ」戦法で合格ラインをクリア!

 

 合格するのに満点は不要。合格ラインをクリアすればよい。一般的に、文系で得点率60~70%台、理工系で50~60%台、医学部で80%台以上とされる合格ラインをどうやって上回るか。センター試験、国公立大2次試験、私立大入試それぞれについて、合格ラインを突破するための実戦的プランを紹介する。

 

※この記事は『螢雪時代・2010年1月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

センター試験では得点率7割を確保。難関私立大や国公立2次では総合点で「文系60~70%、理工系50~60%」を確保しよう

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 持てる力をフルに生かすには、得意科目で高得点をかせぎ、不得意科目は無駄な失点を避ける、メリハリある戦略が必要だ。さらに「解ける問題を優先」「部分点狙い」など効率的かつ粘り強い取り組みで、合格ラインを突破しよう。

 
 

総合点の「合格ライン」のクリアを目標にしよう

 

 センター試験、そして一般入試の本番を直前に控え、「どれくらい点を取れば合格できるのか」と不安なことだろう。そこで目安となるのが、各大学が案内パンフレットやホームページで発表している「合格最低点」だ。
 入試の合否は、たいていの場合は「総合得点」で決まる(例外的に、受験科目中の特定科目の成績順位で決まるケースもある)。総合得点とは、受験した全ての科目の合計得点だ。
 国公立大ならば1次のセンター試験(5<6>教科7科目が主)と2次の個別試験(2~3教科・科目が主)の合計得点、私立大ならば2~3教科・科目の合計得点ということになる。
 合格最低点は、合格者のうち順位が最下位の者の得点である。発表方法は、大学・学部によって素点そのもの(選択科目は得点調整後の場合も)だったり、得点率(合格最低点÷満点)だったりする。そのため、合格最低点は「合格ライン」とも呼ばれる。
 入試に合格するためには、とにかく「合格ライン」をクリアすればよい。特待生を狙わない限り、満点でも合格最低点でも合格に変わりはなく、それによって区別されることはない。

 
合格・不合格の状況
 

私立大の難関・上位校は合格ライン付近が激戦

 

 合格ラインについて、まずは私立大一般入試のケースをみてみよう。「易しくなった」といわれる私立大だが、難関・上位校では厳しい競争が続いている。
 図表1は、龍谷大‐経営(A日程:スタンダード方式文系型)の2009(以下、09)年入試で、合格ライン付近の人数分布を示したものだ。同方式・型の科目・配点は「英語」「国語」「世界史・日本史・政治経済・数学から1」の3科目で各100点、計300点。受験者数1,849人に対し合格者数311人で実質倍率は5.9倍。合格最低点は208点(得点率69.3%)だった。その分布の特徴を挙げると、
(1)合格最低点を含め、上10点幅のゾーンに133人と、全合格者の約43%も集中。
(2)不合格者の最高点(207点)を含め、9点差までのゾーンにも146人いる。
(3)合格最低点で合格したのは19人、わずか1点差で不合格になった人が24 人もいる。
 合格ライン付近では、総合的にほぼ同じ学力の受験生がひしめきあい、わずか1点差で合否が決まる。マークミス1つで明暗が分かれるといってもいい。入試では“1点の重み”がいかに大きいかわかるだろう。

 
 

私立大文系は「8・7・6」パターンで60~70%台を確保

 

 では、“1点差”を争う合格ラインを、どうやってクリアするのか? 図表1の右側に、合格最低点とその1点下の受験者から、特徴のある得点パターンをピックアップしたが、ここからわかることは「得意科目」の大切さだ。
 3科目入試では、1科目で得点が伸びなくても他の2科目でカバーできることが多い。特に、BさんやCくんのように得意科目があれば、他の2科目が普通、または1科目だけ苦手であっても突破できるので心強い。
 ただし、Dくんのように苦手科目での失点が大きすぎると、得意科目でもカバーしきれず「1点差」に泣くことになる。得意科目のアドバンテージを最大限生かすためにも、他の科目も6割以上の得点はほしいところだ。
 以上のことから、私立大文系学部ではAくんのような「8・7・6」、つまり得意1科目(8割台)、準得意科目(7割台)を持ち、残り1科目は普通(6割前後)をキープすることが、合格ライン(7割台)をクリアする目標パターンであることがわかる。

 
 

私立大理系は「5・5・8」パターンで50~60%台を確保

 
合格・不合格の状況

 総合点でどれくらい取れば合格できるのか、難関私立大の09年入試の合格ライン(得点率)をもう少しみてみよう。
 図表2の慶應義塾大では、文系はほぼ60%台、理系は50%台後半~60%台前半が合格ラインだ。また、図表3の早稲田大では、文系は政治経済(75%)を除き、50%台後半から60%台前半が、理系は50%台前半から60%前後が合格ラインだ。この他、各大学の「合格ライン」をみると、総じて「文系は60~70%台、理系は50~60%台」と、ほぼ共通した傾向を示す。
 私立大理系学部では、どんな得点パターンで合格ラインをクリアすればいいのか。例えば、同志社大‐理工(機械システム工)の全学部日程(配点=英語100点・理科150点・数学200点)では、物理で113点(得点率75%)取れれば、英語50点(同50%)・数学100点(同50%)であっても、総合点の合格ライン(263点:58.4%)に到達できる。このように、理系学部の場合は6割台確保のために、得意1科目(8割台)を持ち、残り2科目は5~6割台をキープする、「5・5・8」のパターンを目標にしよう。

 
 

特定科目に“基準点”を設ける大学・学部には要注意

 
合格・不合格の状況

 ここで「6割台をとるなら“4・6・8”や“3・7・8”のパターンでもよいのでは?」と考える人もいるだろう。ところが、特定科目の得点が一定点に達しない場合、他の科目も含め選考の対象にしない“基準点”を設ける大学・学部もあるのだ。
 慶應義塾大‐総合政策・環境情報では、選択した「数学」「外国語」「数学および外国語」の得点が一定水準に達した受験生だけ小論文を採点する。さらに、その得点が一定水準に達した受験生に対し、学科試験の得点と小論文の採点結果を組み合わせ、最終判定を行っている。
 また、早稲田大‐教育では、国語国文学科は「国語」の、英語英文学科は「英語」の、数学科は「数学」について、それぞれの全受験者の平均点を合格基準点としている。同志社大‐法・経済でも、英語(200点満点)に80点(4割)の基準点を設けている。
 基準点は、「特定科目の全受験者の平均点」か「配点の4割」とするのが一般的だ。募集要項で必ず確認しておくとともに、苦手科目でもこの程度は得点できるようにしておこう。

 
 

得点調整で選択科目間の有利・不利を解消

 

 受験生にとって不安なのは「選択科目」の扱いだ。文系は「地歴・公民・数学から1科目」、理系は理科で「物理・化学・生物などから1科目」選択することが多いため、科目の難易で有利・不利が生じ、得点に較差が出てくるからだ。
 ただし、多くの大学・学部では、偏差値(得点を「平均が50、標準偏差10の正規分布での値」に換算したもの)や中央値補正法(成績順で中央に位置する人の得点を、その科目の満点の5割となるように全体を補正)などを用いて調整する。偏差値を用いれば満点が異なっても、ほぼ「30~70の値」に換算できる。
 09年入試の例を見ると、関西学院大では選択科目(学部によっては全科目)で中央値補正法によって得点調整を行い、同志社大も全学部の選択科目の間で得点調整を実施した。慶應義塾大‐法B方式・商は「地理歴史」間で、看護医療は選択科目(数学・化学・生物)の間で得点を補正。早稲田大でも理工系3学部以外の10学部で、選択科目間の標準化を行い、図表3の合格最低点は調整後のものだ。

 

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「6・6・6・8・9」パターンでセンター試験は得点率7割を確保

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 今度は国公立大について説明する。まず、センター試験でどの程度得点すればいいのか?
 センター試験の受験者全体の平均点は、例年ほぼ60%前後である。これは、問題レベルが「学習の達成度を見る」ため、教科書(章の練習問題など)の範囲で、受験者平均が60%程度となるように作られるためだ。ちなみに、09年センター試験の受験者平均点(各科目の平均点と受験者数から全体の平均点を算出)は、900点満点の標準型に換算して文系527.9点(6教科7科目:得点率58.7%)、理系531.2点(5教科7科目:同59.0%)である。
 次に、国公立大の09年入試データで、センター試験の合格最低点の得点率をみてみよう。図表4の大阪大(前期)では、文系(外国語を除く)は7割台前半~8割、理工系はほぼ6割台後半~7割台前半、医を含む医療系は7割台~8割台前半。外国語のみほぼ6割だが、これは2次の配点比率が約77%と際立って高いためでもある。図表5の大阪市立大(前期)では、文系・理系(医学科を除く)ともに6割台後半から7割台前半が多く、医(医)のみ80.1%と飛びぬけて高い。他大学の事例を見ても、センターの合格ラインは、医・薬や超難関校の8割台を除くと、全体的には7割台が多い。
 センター試験の得点目標を7割とすると、5(6)教科とも均一に70%台をクリアできればいいが、科目数が多い上に、得意・不得意があるから、そうはいかないのが普通だ。そこで、5教科(ここでは地歴・公民をあわせて1教科)の得点割合を「6・6・6・8・9」と設定し、「3教科は受験者平均並みの60%台、残りの2教科は準得意教科80%台、得意教科90%台」で平均70%台を確保しよう。傾斜配点(特定教科の比率を高める)で、得意教科の配点が他教科より高ければ、さらに有効だ。
 もちろん、目標得点が80%台以上であれば、60%台の教科を全て70%台まで引き上げるような対策が必要となってくる。

 
 

2段階選抜の実施の有無と予告倍率に注意しよう

 

 ここで注意すべきは、国公立大の難関校や医学部医学科などで行われる「2段階選抜」だ。2段階選抜の実施を予告している大学・学部では、センター試験が指定の得点に達しなかったり、2次試験の志願倍率(志願者数÷募集人員)が予告倍率を超えていたりすると、第1段階選抜(センター試験による選抜)で不合格になる。
 09年入試の例では、東京大の前期日程(募集人員2,961人)において第1段階選抜が行われた結果、志願者9,877人のうち、1,168人が2次を受験できなかった。
 せっかく2次対策をしても、受験すらできなくなってしまう。そんな残念な結果に終わらないためにも、志望校が2段階選抜を行うかどうか、行う場合は予告倍率(または基準点)を募集要項でしっかり確認しておこう。

 
合格・不合格の状況
 

国公立大の2次は文系60%台、理工系50%台を確保しよう

 

 国公立大の2次試験については、記述式の2~3教科が主流なので、基本的には私立大と同様に考えるとよい。
 総合点(センター・2次合計)の合格ラインを見ていこう。図表5の大阪市立大(前期:第1部のみ)をみると、文系・理系ともに6割台なかばの学部・学科が多く、医学科のみ8割を超えている。さらに、図表4の大阪大(前期)をはじめ、金沢大・名古屋大・神戸大・岡山大・九州大などの各前期日程の合格ラインをみると、「文系7割程度、理工系6割程度、医療系6~7割程度、医が8割程度」で、ほぼ共通した傾向を示す。
 大阪大・大阪市立大とも、2次の合格最低点が意外と低いが、センター試験で相当高得点を取らないと、総合点の合格ラインに届かない。例えば、大阪大‐工(応用自然科学)の2次の合格最低点は277.75点(42.7%)だが、総合では581.75点(58.2%)のため、センターで304点(86.9%)も必要だ。また、大阪市立大‐法の2次の合格最低点は212点(53.0%)だが、総合では699点(69.9%)なので、センターで487点(81.2%)取っていなければならない。
 なるべく、文系や医療系では「センター8割+2次6割」で総合点7割台を、理工系では「センター7割+2次5割」で総合点6割台を、そして医学部志望者は「センター9割+2次7割」で総合点8割台を確実に得点し、無理なく合格ラインをクリアしたいところだ。
 とはいえ、2次で「文系6割台、理工系5割台」を得点するのはけっして容易ではない。記述式でセンター試験より難度が高いことが多く、特に数学・理科は計算量も多いので得点しにくい。しかも、2次は各大学の個別試験だから、それぞれの個性が強く出る。そのため、過去問を徹底研究し、出題傾向を把握しておくことが、合格のカギを握るといっても過言ではない。

 
合格・不合格の状況
 

本番では「捨てて勝つ」戦法でリズムに乗ろう

 

 合格ラインを突破するための得点パターンが決まったら、入試本番ではその戦略に沿って問題を解いていこう。問題用紙が配られたら、まず全問を見渡す。第1問から順番に解くのではなく、解けそうな問題から着手し、リズムに乗ろう。この方法は全教科に共通するが、特に数学や、物理・化学など理科系科目では重要だ。その際、次の手順を忘れないこと。

 

(1)全問に目を通す(読むのではない)。
(2)問題ごとに、「解けそうだ」=○、「いけるかな」=△、「無理かも」=×、と印をつける。
(3)○から先に解く(問題番号順とは限らない)。

 

 ×には手を付けず、まず○から始め、次は△へ……という順に、集中的に解く。1題解けると落ち着き、次の○や△もふだん通りに解けることが多い。数学で、○や△が完全に解けない場合は、とにかく小問(1)だけを解こう。例えば、大問が小問2つで構成されていれば、(1)は教科書にある基本的な問題解法で解けるように作成してあり、(2)は(1)の結果を利用すれば解けるようになっているケースが多い。また、×の問題にも比較的易しい小問が用意されていることがあり、各大問のうち小問(1)だけを解くだけで、全体の得点の3~4割近くを取れる。あきらめずに部分点をコツコツかせぐことが、実は大きな突破力につながるのだ。
 以上の「捨てて勝つ」戦法は、ふだんの過去問演習の時に、指定時間内に解くことを強く意識して、手順をしっかり身に付けよう。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2010年1月号)」より転載いたしました。

 

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