入試動向分析

国公立大&私立大 2010年入試結果分析【2010年6月】

2010(平成22)年度

国立大教員養成系と地方公立大が軒並み難化!私立大では、明治大・近畿大などが難化か

 

 各大学から、2010年入試結果のデータが本格的に発表されはじめた。今月は、国公立大・私立大ともに、難化・易化を測る物差しとなる「実質倍率」の変化と、受験生にとってクリアすべき目標ラインの「合格最低点・平均点」について見ていこう。さらに、2011年入試の変更点など、最新情報も引き続きお届けする。

 

※この記事は『螢雪時代・2010年6月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

横浜国立大・金沢大・広島大など“準難関校”もやや難化か。
大学発表の“合格ライン”で具体的な目標をイメージしよう

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 国公立大全体の倍率(志願者÷合格者)は、前期・後期・公立大中期のいずれもアップ。学部系統別では、教員養成・医療・家政が難化、社会福祉・医・歯・薬が易化した模様だ。
 地元志向の強まりで、教員養成系の国立大や地方公立大で倍率アップが目立った。

 
 

教員養成・医療・家政が難化、
社会福祉・医・歯・薬が易化

 
2009年国公立大入試 志願者・合格者動向

 全国の国公立大学に対し、2010(以下、10)年一般入試の合格状況について「螢雪時代」編集部で調査したところ、全体の志願者数は前年比で3%減少したのに対し、合格者数は1%減となった。
 3月末現在の集計のため、この時点では受験者数が未発表の大学もあるので、ここでは「志願者数÷合格者数」の倍率(以下、当ページ下=★印までの文中まで同じ)を09・10年で比較した。日程別にみると(グラフ1)、前期は「志願者5%増、合格者:増減なし」で2.8倍→2.9倍、後期は「志願者1%増、合格者1%減」で8.0倍→8.2倍、公立大中期も「志願者3%増、合格者2%減」で5.7倍→5.9倍といずれもアップした。
 地区別にみると(グラフ2)、関西以外は倍率がアップしたが、中でも関東・甲信越、北陸・東海、九州の3地区は全体的に難化した模様。
 学部系統別(グラフ3)にみると、志願者大幅増の教員養成、医療・看護、家政・生活科学の各系統で、合格者もやや絞り込んだため倍率がアップ(教員養成3.8倍→4.2倍、医療・看護4.2倍→4.5倍、家政・生活科学3.2倍→3.7倍)、難化した模様。一方、志願者減の社会・社会福祉、歯、薬は、合格者増もあって倍率ダウン(社会・社会福祉4.4倍→4.1倍、歯4.3倍→4.1倍、薬5.3倍→5.1倍)、易化したとみられる。
 また、定員増を行った医では、一般入試の募集人員が4%増加したが、「志願者1%増、合格者3%増」で倍率ダウン(7.0倍→6.9倍)。09年に続き、やや「広き門」になったようだ。この他、グラフ3以外では、家政・生活科学が難化、社会・社会福祉と歯が易化したものとみられる。

 
 

一橋大‐法・経済、京都大‐文、
大阪大‐理の前期も難化か

 

 次に各大学の合格状況を、大学全体(学部・日程等の合計)の倍率の変動で見ていこう。10年入試で特徴的だったのは、“地元志向・安全志向・資格志向”の強まりで、志願者が大幅に増加した「国立大教員養成系」と「地方の公立大」の倍率アップだ。
 東京学芸大(3.3倍→3.8倍)、愛知教育大(3.3倍→3.7倍)、大阪教育大(3.4倍→4.3倍)、兵庫教育大(4.1倍→5.3倍)、福岡教育大(3.7倍→4.7倍)など、国立大の教員養成系単科大が軒並み倍率アップ、いずれも難化した模様。
 また、大都市圏以外の公立大でも、岩手県立大(7.0倍→8.3倍)、山梨県立大(3.4倍→5.2倍)、北九州市立大(3.0倍→3.8倍)など、資格系学部を中心に、やはり倍率アップが目立つ。安全志向でランクダウンしながらかえって難化……という皮肉な結果につながったようだ。
 また、09年の志願者減の反動で人気復活した“準難関校”では、横浜国立大(4.5倍→4.7倍)、金沢大(2.7倍→3.1倍)、広島大(2.8倍→3.1倍)が倍率アップ、やや難化した模様だ。
 難関校では、東京大の前期が3.3倍→3.1倍と倍率ダウン、特に文Iのダウン(4.1倍→3.2倍)が目立つ。一方、一橋大では経済・法の前期が難化した模様だ。この他、募集人員の多い前期では、東北大‐薬、京都大‐文、大阪大‐理、九州大‐歯が難化する一方で、北海道大‐薬・獣医、東北大‐教育、名古屋大‐教育・医(医)、九州大‐法が易化したとみられる。

 
 

「合格最低点」より確実な
「合格平均点」を目標に!

 

 志望校選びや目標設定の指針となるのが、合格者の最低点や平均点という「合格者データ」。学部・学科や日程・方式など、募集単位別に公表されることが多い。国公立大では総合点(セ試+2次)だけを公表するケースと、セ試と2次のそれぞれを発表するケースがある。合格最高点は文字通り全合格者中の最高得点で、合格最低点は合否の分かれ目になる、いわゆる「ボーダーライン」。そして合格平均点は、総じて最低点より得点率にして5~10%高い。
 ボーダーラインぎりぎりでも合格には違いないので、合格最低点はまさに「最低目標」として重要なデータといえるが、確実に合格を目指すには、「合格者平均点」のレベルまで学力アップしておくことが望まれる。最低目標をクリアするだけでは、問題のレベルや倍率が上がった場合を考えると、リスクが大きいからだ。

 
2009年入試/東京大の合格ライン
 

東京大の合格最低ラインは
前期56~66%、後期45%

 

 10年入試の合格者データのうち、東京大と金沢大のケースを紹介しよう。
 表1は東京大の合格ラインである。第1段階選抜と、第2段階(つまり最終)選抜に分けて掲載した。まず前期日程について見てみよう。
 第1段階選抜は全科類で実施し、その合格ラインは文I68.1%(前年比-10.1ポイント<以下、p>)、文II77.3%(-2.9p)、文III79.7%(-1.3p)、理I78.3%(+1.2p)、理II72.1%(-7.5p)、理III75.1%(-3.0p)となった。
 理I以外は得点率がダウン、中でも志願者大幅減(23%減)の文Iで急下降、7割を下回った。とはいえ、最終合格を考えると、セ試で確実に9割前後は取っておきたいところだ。
 第2段階(セ試+2次)選抜のデータを見てみよう。セ試は900点を110点に圧縮、2次440点の計550点満点。最終合格ラインは、文I64.0%(前年比-2.5p)、文II62.5%(-2.5p)、文III61.6%(-2.2p)、理I55.8%(-3.0p)、理II55.9%(-2.7p)、理III66.2%(-2.9p)と全科類でダウンした。
 駿台予備学校の田村明宏広報課長は、理科類のダウン幅がやや大きい要因を「今年の東大前期は理系の数学が難化しました」と出題レベルの変化に求める。地方公立校出身者が躍進した09年と異なり、難問対策に強い首都圏の私立中高一貫校の出身者が巻き返した模様だ。
 次に、全科類一括募集(共通問題で選抜)の後期日程について見よう。セ試は第1段階選抜のみに利用し、合否は2次試験のみで判定する。第1段階選抜の合格ラインは87.6%、セ試での9割確保は最低条件といえる。2次は300点満点で、最終合格ラインは45.0%(-2.7%)と2年連続でダウンしたが、倍率(31.4倍)はほぼ前年と同レベルの激戦だった。合格ラインが低下した要因について、田村課長は「入試科目(総合科目I~III)のうち、総合科目II(数学)が難化し、文科類のみならず理科類志望者にとっても厳しかったようです」と、さしもの東大受験生も苦戦した様子を語る。さらに、総合科目III(論述)の出題テーマがやや文科類志望者に有利だった模様で、08~09年のような合格者の“理系色”は薄まったものとみられる。

 
 

金沢大の合格平均は文系・理工系
・医療系ともに「70%前後」

 

 次に、金沢大の前期日程の合格者データを示した(表2)。総合点を得点率(%)に換算し、各学類を分野別にまとめて平均すると、文系(人間社会学域)で「最低67%・平均71%」、理工系(理工学域)で「最低64%・平均69%」、医療系(医薬保健学域)で「最低66%・平均72%」となった。合格するには、文系・医療系で7割程度、理工系でも6~7割程度の得点が要求されるのだ。さらに、合格者平均点をセ試・2次の別に平均すると、「文系=セ試73%・2次67%、理工系=セ試70%・2次69%、医療系=セ試74%・2次68%」となった。マーク式のセ試に比べ、記述式の2次の方がやや得点しにくかったことがわかる。
 このうち、配点がセ試重視の「経済学類」と、2次重視の「物質化学類」を比較してみよう。
 経済学類ゼの科目・配点は、セ試が6教科7科目の計900点、2次が「3教科から2教科選択」の計400点で総計1,300点。合格者は、セ試では得点率64%~81%(平均73%)に分布し、最高・最低の差は17p。2次では得点率47~93%(平均69%)に分布し、最高・最低の差は46p。配点の小さい2次の方が最高・最低の得点差が大きく、セ試の得点である程度合否が決まったことがうかがえる。
 一方、物質化学類ゼの科目・配点は、セ試が5教科7科目の計450点、2次が数学・化学・英語各200点の計600点で、総計1,050点。合格者は、セ試では得点率63%~83%(平均71%)に分布、最高・最低の差は20p。2次では得点率61~84%(平均72%)に分布し、最高・最低の差は23p。経済学類に比べ、セ試と2次で得点幅にそれほど違いがなく、2次の得点力で合否が決まったことがうかがえる。

 
2009年入試/金沢大前期合格者の最低点・平均点
 

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東洋大・明治大・近畿大・関西学院大などが難化、青山学院大・立命館大・関西大などがやや易化か。後期募集が激戦化

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 私立大入試の合格状況をみると、09年ほど合格者の絞り込みはみられず、志願状況がそのまま難易変動につながった模様。
東洋大・明治大・近畿大・関西学院大などが難化、青山学院大・立命館大などが易化したものとみられる。

 
 

実質倍率は3.9倍で変動なし
センター利用はやや難化か

 
2009年私立大一般入試 地区別・方式 受験者・合格者動向

 『螢雪時代』編集部が私立大一般入試の受験者数・合格者数について調査したところ、123大学の集計(3月末現在)によると、受験者数は前年比で3%増加したのに対し、合格者数も2%増加し(グラフ4)、実質倍率(受験者÷合格者。以下、倍率)は、全体で09年と同じ3.9倍となった。
 私立大が集中する大都市圏の大学を集計すると、首都圏は09年と同じ4.4倍で、京阪神は09年4.0倍→10年3.9倍とダウンした。
 入試方式別にみると、一般入試(各大学の個別試験)は「受験者1%増、合格者1%増」で、09年と同じ4.1倍だったが、セ試利用入試は「受験者6%増、合格者3%増」と合格者を抑え目に出し、倍率は3.4倍→3.5倍とアップ。さらに、新規実施が相次いだ一般・セ試併用型は「受験者16%増、合格者12%増」で倍率は3.5倍→3.7倍にアップした。
 以下、おもな大学の倍率の変動を紹介する(おもに2月入試の集計)。

 

(1)倍率アップ
【首都圏】
獨協大3.3倍→3.9倍、駒澤大3.7倍→3.8倍、成蹊大5.9倍→6.2倍、専修大3.5倍→3.9倍、東洋大4.2倍→5.1倍、日本女子大3.1倍→3.5倍、法政大5.5倍→5.7倍、明治大4.9倍→5.3倍
【京阪神】京都女子大3.1倍→3.8倍、近畿大4.6倍→4.9倍、関西学院大3.9倍→4.2倍、甲南大3.8倍→4.0倍
【その他】東北学院大2.3倍→2.4倍、愛知学院大2.3倍→3.0倍、南山大2.7倍→2.9倍
 
(2)倍率ダウン
【首都圏】
青山学院大6.0倍→5.7倍、国際基督教大3.5倍→3.2倍、上智大5.3倍→5.2倍、成城大5.5倍→5.0倍、東京女子大3.7倍→3.3倍、東京理科大3.2倍→3.1倍、武蔵大7.3倍→6.9倍、早稲田大6.4倍→6.1倍
【京阪神】京都産業大4.8倍→4.3倍、同志社大3.1倍→2.9倍、立命館大3.4倍→3.0倍、龍谷大4.2倍→4.1倍、同志社女子大4.4倍→3.4倍、関西大5.6倍→5.1倍

 

 高校の先生方への取材結果も総合すると、獨協大・成蹊大・東洋大・明治大・近畿大などが難化、専修大・法政大・関西学院大・甲南大などがやや難化した模様。早稲田大はセ試利用入試が敬遠されたが、記念受験組が抜け落ちただけで一般入試の難易レベルは高嶺安定。一方、青山学院大・京都産業大・立命館大・関西大などがやや易化したものとみられる。

 
 

“安全志向”で中堅校の競争激化
合格者絞り込みで後期募集も難化

 
2009年私立大一般入試 地区別・方式 受験者・合格者動向

 10年入試で特徴的だったのは、「中堅校以降の難化」と、それに伴う「後期募集(3月試験)の激戦化」だ。
 グラフ5で文理別・難易ランク別の志願者動向(4月中旬現在:駿台予備学校の集計)を見てみよう。ここでいう難易ランクは、同じ大学内でも学部によって異なるが、おおむね、Aランクは難関校や難関医科大、Bランクは準難関校、Cランクは中堅上位校、D~Eランクは中堅クラス以降を指す。
 文系はA~Bランク、理系はBランクで志願者が減少。一方、文系ではD~Eランク、理系ではC~Eランクの志願者が増え、中でも文系・理系ともにD・Eランクの志願者増が際立つ。これは、不況とセ試の難化の影響が色濃い。
 “安全志向”が過度に強まり、「難関校・準難関校→中堅上位校→中堅校」と、それぞれの学力層で順次ランクダウンしたのに加え、高校生の就職状況の急激な悪化で、本来の就職希望者が大学進学へ方針転換せざるをえず、現実的に目標となるD・Eランクに流入したものと見られる。このため、“合格確保校”として受けたものの、かえって苦戦するケースが多く見られたという。
 私立大では国公立大と異なり、合格者が併願先の他大学にある程度流出することを想定し、正規合格者をかなり多めに出す(一般入試=募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試=5~10倍程度)のが普通だ。ただし10年入試では、不況の影響から確実な合格を目指して受験校を絞る傾向が強まり、2月入試の合格者の入学手続率が“例年以上に”良好だったといわれる。このため、各大学で後期募集(3月試験)の合格者を絞り込む傾向が強まった。
 前述のように、2月入試でランクダウンして苦杯をなめた結果、浪人回避の“再チャレンジ組”も09年より増えた(後期募集は志願者5%増)とみられる。さらに「合格者絞り込み」も重なって、後期募集はかなり難化した模様だ。

 
 

関西学院大の文系学部の
合格最低点は6割台

 
関西学院大(A日程:文系学部のみ)の合格最低点

 次に、私立大から発表された「合格ライン」を見ていこう。合格ラインは、志願者の増減や倍率のアップダウン、受験生のレベルの変化、さらに入試問題の難易によって上下するが、大学によっては選択科目間の有利・不利をなくす得点調整を行う場合もある。いずれにせよ、志望校の「過去問題」にチャレンジする時に、目標となる数字だ。
 京阪神地区のデータは他地区に先がけて発表されるため、ここでは関西学院大・同志社大・龍谷大の事例を紹介する。
 まず、表4に関西学院大(文系学部)の一般入試A方式の合格最低点を示した。得点率にして54%~73%(09年は48%~73%)の間に分布しているが、全学部を平均すると、例年60%台が合格最低ラインの目安となる。
 その中で、倍率が大幅ダウンした人間福祉学部社会起業学科の合格ラインの急下降と、倍率アップした神学部・総合政策学部の合格ラインの上昇が注目される。入試問題の難易もあり、一概には言えないが、倍率の変動が合格ラインに影響した好例といえる。

 
 

合格者の科目別データが
示す「多様な合格者像」

 

 同志社大では、総合点の合格ラインに加え、合格者の科目別の最高・最低点も公表している。表3に「学部個別日程」のデータを示した。
 文系学部の学部個別日程では、総合点の合格最低ラインは平均して70%前後。心理学部(72.8%)が最も高く、社会学部社会福祉学科(65.0%)が最も低かった。
 科目別に見ると(極端に低い学部・学科を除く)、英語の最高点は175~197点で全体的に満点に近く、最低点は103~138点。全学的に英語の得点力を重視し、例年長文を出題するため、ある程度ハイレベルな学力が要求される。不得意でも、60~70%は得点したい。
 国語の最高点は83~100%、最低点は41~56%と幅広く分布し、選択科目(日本史・世界史・数学など)では、最高点は80%~100%、最低点は60%前後のケースが多い。
 一方、理系学部(文化情報の理系型を含む)の学部個別日程では、総合点の合格最低ラインは平均して60%近く。生命医科学部医生命システム学科(63.4%)が最も高く、文化情報学部の理系型(53.6%)が最も低かった。
 科目別に見ると、英語の最高点は得点率90%前後だが、最低点は40%前後が多い。数学は、最高点がほぼ満点で、最低点はやはり40%前後が多い。物理・化学・生物は、最高点は70%~満点で、最低点は物理がほぼ30%~40%、化学が40~50%と比較的低いが、生物は50~60%とやや高い。
 理系学部の場合、文系学部に比べ実質倍率が低いこともあり、文系学部より合格者の得点ゾーンが広いのが特徴といえる。
 こうして見ると、私立大入試の3科目型では、1科目が得意で、もう1科目がまずまずならば、残りの1科目はやや不得意でも、合格は十分可能であることがわかる。合否はあくまで、3科目の合計点次第なのだ。

 
2009年入試/同志社大<全学部日程>の科目別・総合点の合格ライン
 

ボーダーライン付近に
合格者の4割超が集中

 
龍谷大-経済(A日程)スタンダード方式文系型/ボーダーライン付近の合否状況

 最後に、合格ライン付近がいかに激戦となるかを紹介する。
 グラフ6に龍谷大-経済学部(A日程:スタンダード方式文系型)の、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。同方式は、国語・英語・「世界史B・日本史B・政治経済・数学から1」の3科目で各100点、計300点の均等配点。10年では、受験者数1,738人に対し、合格者324人で倍率は約5.4倍。合格最低点は209点、得点率は約70%だった。
 注目すべきは、最低点を含め上10点幅の部分に、合格者全体の実に45%も集中していることだ。1点違いで不合格になった受験生も23人(高校ならクラスの約半分!)いるなど、合格ライン付近には多くの受験生がひしめきあっている。
 ふだんの勉強から「1点の重み」をしっかり認識し、解答の見直しを習慣づけよう。

 

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福山市立大・日本映画大など公私立7大学が新設予定。新見公立大が新規にセ試参加、法政大でセ試6科目型を導入!

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新設大学:
公立1大学、私立6大学が新設予定。
医療・看護系が目立つ

 
2010年度新設予定の公私立大学

 文部科学省の発表(4月中旬)によると、公立1大学と私立6大学の新設が予定されている(表5)。7大学中、4大学が医療・看護系の専門大学だ。これで、定員は公立大全体で250人、私立大全体で855人増える。

 
 

国公立大:
北海道大・東京医科歯科大で
歯学部の定員を削減

 

(1)募集人員の変更

●北海道大 歯学部で定員を「60人→53人」に削減。これに伴い、募集人員を「後期10人→8人、AO入試10人→5人」に削減する。
●東京医科歯科大 歯学部歯学科の定員減を予定している。具体的な人数や、募集枠を削減する日程等については7月頃に公表の予定。
●広島大 医学部医学科で後期を20人→27人に増加し、AO入試を10人→3人に削減する。
●山口大 医学部医学科で、10年の定員増(85人→95人)に伴い導入した地域医療枠(山口県枠7人、鳥取県枠1人)を、一般入試(前期)から推薦入試(セ試を課す)に移行する。

 
 

(2)入試方式の変更など

●群馬大 医学部医学科の前期で、2次の配点を「数学100点→150点、小論文200点→150点」に変更する。
●東京医科歯科大 医学部医学科の後期で、2段階選抜の予告倍率を「約10倍→約6倍」に引き締める。
●熊本大 工学部の全7学科で「理数大好き入試」を導入する。セ試を課さず、機械システム工学科は「数学I・II・III、物理I・II、面接」で、他6学科は面接で合否判定する。さらに、機械システム工学科では、女子を対象とする推薦(セ試を課さない)も導入する。
●札幌市立大 看護学部の前期で、セ試の国語の配点を100点→200点(満点は600点→700点)に引き上げる。
●首都大学東京 都市教養学部の理工学系では、数理科学・物理学・化学の3コースで実施していたAO入試を廃止する。
●兵庫県立大 経済学部の前期で採点方式を変更。まず、①セ試・2次とも外国語の英語選択者を対象に、セ試800点と2次の外国語300点の配点(計1,100点)で上位45人を合格させ、次に②セ試800点と2次(外国語・数学各300点)の計1,400点で残りを合否判定する。ただし、2次は数学・外国語の両方受験が必要。
●新見公立大 10年開設の同校(看護学部のみ)では、11年からセ試を新たに利用し、一般入試を前期および後期日程で実施する(10年はセ試を課さない別日程で実施)。地区内の医療・看護系の志望動向に影響しそうだ。
 募集人員は「前期35人・後期5人・セ試を課す推薦20人」で、選考方法は次のとおり。
[セ試]前期・後期・推薦のいずれも、理科2科目の5教科6科目を課す(カッコ内は配点)。
国=国語(200点)
地歴・公民=世界史A・日本史A・地理A・世界史B・日本史B・地理B・現代社会・倫理・政治経済から1科目選択(100点)
数=数学I・A(100点)
理=生物I(100点)、化学I(100点)
外=英語<リスニング除く>(200点)
[個別試験]推薦=1次選考(小論文・面接:11月下旬)→2次選考(セ試の成績、書類審査)
前期=小論文・面接 後期=面接
●県立広島大 保健福祉学部看護学科の前期で、2次を「小論文→面接」に変更する。

 
 

私立大:
青山学院大で夜間部を全廃。
中央大‐法で4教科型を導入

 

(1)学部・学科の増設

●東北学院大 文学部に「総合人文学科」を増設する予定(定員30人)。一方で、キリスト教学科を募集停止する予定。
●青山学院大 文学部第2部(英米文学科のみ。定員100人)を募集停止する予定。これで、全学部で夜間部が廃止されることになる。
●明治学院大 国際学部に「国際キャリア学科」を増設する予定。定員は100人。
●摂南大 看護学部(定員100人)を新設する予定。

 

(2)一般入試の変更

●中央大 法学部の一般入試で、従来の3教科型に加え「4教科型」を導入する。
 各学科の募集人員の内訳は「法律=3教科270人・4教科60人、国際企業関係法=3教科60人・4教科10人、政治=3教科130人・4教科20人」で、各学科とも両タイプを同時併願できる。
 4教科型は、英語・国語・数学(I・II・A・B)が必須、選択科目が「日本史B・世界史B・政治経済から1科目選択」で、配点は英語150点(国際企業関係法は200点)、他は100点。
●法政大 セ試利用入試のうち、3月募集のセ試後期を廃止し、セ試前期を「セ試B方式」に改称、さらに5教科6科目型のC方式(セ試のみで合否判定)を8学部19学科で導入する。セ試後期の募集枠(12学部149人)は他方式・日程に振り向ける(一般T日程へ10人、A方式へ5人。セ試B方式へ40人、C方式へ94人)予定。C方式の概要は次のとおり。
【実施学部と募集人員】法15人、文16人、経済15人、経営18人、人間環境5人、キャリアデザイン5人、デザイン工10人、情報科学10人
【教科・科目・配点】
国=国語(200点)
地歴・公民=世界史B・日本史B・地理B・現代社会・倫理・政治経済から1科目選択(100点)
数=数学I・A(100点)、数学II・B(100点)
理=物理I・化学I・生物I・地学Iから1科目選択(100点)
外=英語<リスニング含む>・ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語から1科目選択(200点)
 
 詳細は、国公立大の入学者選抜要項(7月頃に発表)、私立大の入試ガイド(5月以降に発表)などで、必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2010年6月号)」より転載いたしました。

 

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