入試動向分析

国公立大&私立大 2008年入試結果分析【2008年6月】

2008(平成20)年度

国公立大・私立大ともに”準難関校”が激戦に!

 

 各大学から、2008年入試結果のデータが本格的に発表されはじめた。今月の特集では、国公立大・私立大ともに、難化・易化を測る物差しとなる倍率の変化と、受験生がクリアすべき目標ラインの「合格最低点・平均点」について見ていく。さらに、2009年入試の変更点など、最新情報も引き続きお届けする。

 

※この記事は『螢雪時代・2008年6月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

東京大の後期は超高倍率、ハイレベルの激戦に!

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 2008年入試の国公立大全体の倍率(志願者÷合格者)は2007年と変わらず、前期は波乱の少ない合格状況だったが、後期と公立大中期は激戦化。学部系統別では、経済、工、医療・看護などが難化した模様だ。

 
 

前期はほぼ安定、
後期と公立大中期はやや難化

 
2008年国公立大入試地区別志願者・合格者動向などのグラフ

 全国の国公立大学に対し、2008(以下08)年一般入試の合格状況について「螢雪時代」編集部で調査したところ、全体の志願者数はほぼ07年並みであるのに対し、合格者数は前年比2%減となった。
 
 3月末現在の集計のため、この時点では受験者数が未発表の大学もあるので、ここでは「志願者数÷合格者数」の倍率(以下、★印までの文中まで同じ)を比較すると、07年・08年ともに4.0倍で変わらず、全体の難易レベルは07年並みだったといえそうだ。
 
 ただし、日程別にみると(グラフ2)、後期日程は廃止や募集枠縮小が相次ぎ合格者数が6%減ったが、志願者数自体は微減(1%減)に留まったため、倍率はアップ(7.7倍→8.1倍)した。また、後期縮小の中、貴重な併願先として人気を集めた公立大中期は、志願者7%増に対し、合格者は2%減のため、やはり倍率アップ(5.3倍→5.8倍)と、いずれもやや難化した模様だ。一方、募集枠が拡大した前期日程は、志願者・合格者ともにほぼ前年並みのため、倍率は2.8倍と変動がなく、全体的には安定した入試状況だったといえる。
 
 地区別にみると(グラフ1)、関東・甲信越、関西、九州が全体的にやや難化、中国・四国が易化した模様。
 
 学部系統別(グラフ3)に見ると、志願者大幅増の経済・経営・商、工、医療・看護の各系統で、合格者数がほぼ前年並みのため倍率アップ(経済・経営・商3.1倍→3.3倍、工2.5倍→2.8倍、医療・看護3.1倍→3.4倍)、いずれもやや難化したとみられる。

 
 

千葉大・広島大など
準難関校の後期が難化!

 

 08年では、07年に続き「前期集中化」、中でも東京大の後期縮小、名古屋大の「後期全廃」が注目された。
 
 東京大では、後期の募集枠を約3分の1に縮小、理IIIで後期廃止、しかも全科類一括募集(2次で共通問題を課す。入学時に希望により所属決定)に移行した。当初は志願者大幅減も予想されたが、実際には3,485人もの志願者を集め、超高倍率(34.9倍)の激戦となった。
 
 全科類共通問題として、各科類の関連内容を盛り込んだ「総合問題」(I…英語、II…数学、III…論文)が出題された。駿台予備学校の田村明宏課長は「いずれも高レベルでバランスのとれた良問で、国語・数学・英語のオールマイティーな学力が要求されました。また、長時間の試験を乗り切るため、体力面でも厳しい入試でした。文系の場合、数学での高得点は難しい(出題範囲が数III・Cまで含む)ので、論文での上積みが必要ですが、時間内でボリュームのある論述を書き上げるのは至難の業で、論理的思考力と構成能力が必要でした。もちろん、文系・理系とも英語での高得点確保が大前提ですが……」と、その難関ぶりを語る。ちなみに合格者100人中、97人が入学したが、所属科類の内訳は「文I26人、文II5人、文III2人、理I37人、理II27人」と理科類が66%を占め、やや理系優位だったことを物語る。
 
 一方、前期日程は募集枠拡大(2,729人→2,953人:8%増)に対し、実施結果は「志願者6%増・合格者8%増」で、倍率は全体で3.4倍と07年並みだった。出題内容も「例年通り高レベル」(田村課長談)で、難関ぶりは変わらなかったようだ。
 
 08年から後期を全廃した名古屋大では、前期で募集人員増(1,656人→1,718人:4%増)の割に志願者が集まらず(0.5%増)、倍率は前期全体で2.7倍→2.5倍とダウンし、特に後期廃止学部(文・理・医・農)はいずれも大幅ダウン。一方、07年に後期廃止で易化した工(前期)は、反動でやや難化した模様。また、やはり後期を縮小した東北大では、後期廃止学部のうち、法(前期)・薬(前期)が比較的入りやすく、後期を残した経済(後期)は難化したようだ。
 
 この他、難関大では北海道大‐工(後期)・獣医(前期)(後期)、一橋大‐商(後期)・法(前期)・社会(前期)、京都大‐総合人間(前期)・医(保健)(前期)・農(前期)、大阪大‐経済(前期)(後期)・人間科学(後期)・理(前期)・医(医)(後期)・工(前期)(後期)・基礎工(前期)(後期)、九州大‐文(前期)(後期)・工(後期)・農(後期)が倍率アップで難化した模様。
 また、「前期集中化」の影響で後期への併願が増えた”準難関校”では、千葉大‐文・法経・理・工、横浜国立大‐経済、名古屋工業大‐工、名古屋市立大‐経済、広島大‐文・法〈昼〉・経済〈昼〉の後期が難化した模様だ。

 
 

「合格最低点」より確実な
「合格平均点」を目標に!

 

 志望校選びや目標設定の指針となるのが、合格者の最高点・最低点・平均点という「合格者データ」。学部・学科や日程・方式など、募集単位別に公表されることが多い。国公立大では「センター試験(以下、セ試)+2次」の総合点だけを公表するケースと、セ試と2次のそれぞれを発表するケースがある。合格最高点は文字通り全合格者中の最高得点で、合格最低点は合否の分かれ目になる、いわゆる「ボーダーライン」。そして合格平均点は、総じて最低点より得点率にして5~10%高い。
 合格するためには満点をとる必要はなく、ボーダーラインぎりぎりでも合格には違いない。合格最低点はまさに「最低目標」として重要なデータといえる。
 ただし、確実に合格を目指すには、「合格者平均点」のレベルまで学力アップしておくことが望まれる。最低点をクリアするだけでは、問題のレベルや倍率が上がった場合を考えると、リスクが大きいからだ。
 一般的に、合格者の平均は、セ試で70%台、2次で60%台の学部・学科が多い。

 
 

東京大の合格最低ラインは
前期56~69%、後期60%

 

 08年入試の合格者データのうち、東京大と金沢大のケースを紹介しよう。

 
2008年入試/東京大学の合格ライン
 

 上の表1は、東京大の合格ラインである。第1段階選抜と、第2段階(つまり最終)選抜に分けて掲載した。まずは、前期日程について見てみよう。第1段階選抜は全科類で実施し、不合格者は1,385人。
 第1段階の合格ラインは、文Ⅰ75.2%(前年比-1.5ポイント<以下、p>)、文II81.2%(+4.0p)、文III83.1%(+3.1p)、理I83.2%(+2.5p)、理II81.7%(+4.9p)、理III72.8%(-10.0p)となった。文I・理III以外は、ほぼセ試の平均点アップに見合った得点率アップとなった。最終合格を考えると、セ試で確実に9割前後は取っておきたいところだ。
 第2段階(セ試+2次)選抜のデータを見てみよう。東京大の前期は、セ試は900点を110点に圧縮、2次440点の計550点満点で、2次の試験教科・配点は、文系が「国語・地歴・外国語各120点、数学80点」、理系が「数学・理科・外国語各120点、国語80点」。最終合格ラインは、文I63.2%(前年比+0.5p)、文II62.0%(+1.8p)、文III60.9%(+2.2p)、理I57.2%(+0.7p)、理II56.3%(+0.9p)、理III68.7%(-1.4p)と、理III以外の科類でアップした。
 次に、後期日程について見てみよう。セ試は第1段階選抜のみに利用し、合否は2次試験のみで判定する。第1段階選抜の合格ラインは90.1%、セ試での9割確保は最低条件といえる。2次は300点満点で、最終合格ラインは60.0%、平均ライン(64.1%)とあまり差がなく、合格ライン際の混戦となったことを物語る。

 
 

金沢大の合格平均は文系71%、
理工系67%、医療系78%

 
2008年入試/金沢大前期合格者の最低点・平均点
 

 次に、金沢大の前期日程の合格者データ(セ試・2次・総合点の最低点・平均点)を示した(上の表2)。同大学では08年に全学的な改編を行い、従来の学部・学科を廃止し「学域・学類」制に移行、その初年度の入試結果が注目された。
 
 総合点を得点率(%)に換算し、各学部を分野別にまとめて平均すると、文系(人間社会学域)で「最低67%・平均71%」、理工系(理工学域)で「最低62%・平均67%」、医療系(医薬保健学域)で「最低75%・平均78%」となった。セ試の平均点アップに伴い得点は上昇しているものの、合格に必要なレベルは改編前に比べそれほど変わっていない。つまり、合格するには、医療系で8割程度、文系で7割程度、理工系でも6割を超える得点が要求されるのだ。
 また、合格者平均点をセ試・2次の別に、分野別で平均すると「文系=セ試77%・2次61%、理工系=セ試75%・2次60%、医療系=セ試81%・2次73%」となった。マーク式のセ試に比べ、記述式の2次の方が得点しにくいことがわかる。
 このうち、配点がセ試重視の「人間社会学域人文学類」と、2次重視の「理工学域機械工学類」についてみていこう(グラフ4・5)。
 人文学類(前期)の科目・配点は、セ試が6教科7科目の計900点、2次が国語・外国語各300点の計600点で総計1,500点。セ試では、合格者は644.8点~780.6点(得点率72%~87%)に分布し、平均は77%で、最高・最低の差は15p。2次では255.0点~471.0点(同43~79%)に分布し、平均は62%で、最高・最低の差は36p。配点の小さい2次の方が、セ試に比べて最高・最低の得点差が大きく、セ試の得点である程度合否が決まった模様だ。
 一方、機械工学類(後期)の科目・配点は、セ試が5教科7科目の計450点、2次が数学250点、物理・英語各200点の計650点で、総計1,100点。人文学類に比べ2次重視の配点だ。セ試では、合格者は280.4点~379.6点(同62%~84%)に分布、平均は74%で、最高・最低の差は22p。2次では305.0点~503.0点(同47~77%)に分布し、平均は58%で、最高・最低の差は30p。人文学類に比べ、セ試と2次で得点幅にそれほど違いがなく、2次の得点力(特に数学・理科)で合否が決まったことがうかがえる。

 
2008年入試/金沢大-人間社会(人文)(前期)合格者の得点ゾーンなどのグラフ
 

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中央大・明治大・同志社大などが難化か!?

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 私立大入試の合格状況をみると、中央大・明治大・同志社大・関西学院大など”準難関校”の、とくに一般入試(各大学の個別試験)が志願者増と合格者絞り込みで倍率アップし、難化した様子が見て取れる。

 

実質倍率は3.6→3.8にアップ
京阪神地区で倍率アップ目立つ

2008年私立大一般入試 地区別・方式別受験者・合格者動向
 

 私立大一般入試の受験者数・合格者数について、「螢雪時代」では5月号に続き調査した。123大学の集計(4月上旬現在)によると、受験者数は前年比で3%増加したのに対し、合格者数は3%減少し(グラフ6)、実質倍率(受験者÷合格者。以下、倍率)は、全体で07年3.6倍→08年3.8倍にアップした。
 
 私立大が集中する大都市圏を集計すると、首都圏(4.0倍→4.2倍)、京阪神(3.7倍→4.0倍)ともにアップしているが、特に京阪神地区の難関~中堅上位校における倍率アップが目立った。
 
 入試方式別にみると、一般入試(各大学の個別試験。一般・セ試併用型を含む)が「受験者1%増・合格者6%減」で、倍率は3.7倍→4.0倍にアップ。一方、セ試利用入試は実施学部の増加や募集枠拡大により、受験者・合格者の増加がほぼ同程度(受験者7%増、合格者5%増)で、3.2倍→3.3倍と倍率アップは緩やか。これを見る限り、一般入試の方がより難化し、セ試利用入試の方がやや合格しやすかったといえそうだ。
 
 私立大では国公立大(公立大中期を除く)と異なり、合格者が併願先の他大学にある程度流出することを想定し、正規合格者をかなり多めに出す。一般入試では募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試では5~10倍程度の合格者を出すのが普通だ。さらに、入学手続の状況によっては、追加合格者が発表される場合もある。
 
 ただしここ数年、大都市圏の難関~中堅上位の総合大学では、入学手続率が良好といわれる。定員の大幅超過の回避や、入学者の学力レベル維持などのため、合格者を抑え目に出したようだ。以下、おもな大学で倍率がアップしたケースの一部を紹介する。

 

【首都圏】青山学院大4.7倍→4.8倍、慶應義塾大5.2倍→5.3倍、駒澤大3.2倍→3.6倍、中央大4.0倍→4.8倍、東京女子大2.1倍→2.8倍、明治大5.2倍→5.3倍
【京阪神】京都産業大3.9倍→5.0倍、同志社大3.3倍→3.5倍、関西大5.4倍→5.5倍、近畿大3.4倍→4.7倍、関西学院大3.6倍→3.8倍、甲南大4.4倍→5.4倍*
【その他の地区】名城大2.2倍→2.9倍、西南学院大3.1倍→3.2倍、福岡大3.0倍→3.2倍(注)*は「志願者数÷合格者数」

 
 

“準難関校”が文系・理系
ともに倍率アップで難化か

 

 下に掲載したグラフ7・8で文理別・難易ランク別の志願者・合格者動向(4月中旬現在:駿台予備学校の集計)を見てみよう。
 
 ここでいう難易ランクは大学・学部によって異なるが、例えば首都圏に限って大ざっぱに言えば、Aランクは慶應義塾大・上智大・早稲田大や難関医科大など、Bランクはいわゆる”MARCH”(明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大)や東京理科大など、Cランクは”日東駒専”(日本大・東洋大・駒澤大・専修大)などを指す。
 志願者増が合格者増を上回ったり、志願者がほぼ同じでも合格者が減ったりすれば倍率は上がる。逆なら倍率は下がり、それが難易レベルの変動につながる。また、志願者・合格者が同程度に増減すれば倍率の変動は小さく、難易レベルはほぼ前年並みとなる。文系では、Aランクは合格者増も難易レベルは変わらず、B~Dランクが「志願者増・合格者減」で倍率アップ、特にBランクはやや難化した模様だ。
 また、理系をみると、Aランクは志願者・合格者ともに微増で安定。B~Dランクは文系と同じく「志願者増・合格者減」の傾向だが、やはりBランクが「志願者大幅増、合格者大幅減」で難化した模様だ。なお、Eランクは志願者・合格者ともに大幅減、定員割れが続出している状況が見て取れる。
 高校の先生方への取材結果も総合すると、早慶など難関校は高嶺安定で、準難関校、特に中央大・東京理科大・明治大・立教大・同志社大は、国公立難関大の受験者にとっても「意外に厳しい」入試だったようだ。

 
グラフ7・8
 

関西学院大の文系学部の
合格最低点は6割台

 
関西学院大(A日程:文系学部のみ)の合格最低点

 次に、私立大から発表された「合格ライン」を見ていこう。例年、京阪神地区のデータは他地区に先がけて発表されるため、ここでは関西学院大・同志社大・龍谷大の事例を紹介する。
 
 合格ラインは、一般には志願者の増減や倍率のアップダウン、受験生のレベルの変化、さらに入試問題の難易によって上下するが、大学によっては選択科目間の有利・不利をなくす得点調整を行う場合もある。いずれにせよ、キミたちが志望校の「過去問題」にチャレンジする時に、目標となる数字だ。
 
 右の表4に、関西学院大(文系学部)の一般入試A日程の合格最低点と、その得点率を示した。学部によって異なるが、新設の人間福祉以外は得点率にして55%~70%(07年は55%~65%)の間に分布している。08年入試では、新方式「関学独自方式」の導入に伴い募集枠が縮小し、A日程は全体的に倍率アップしたため、合格ラインも全般的にアップしているが、平均すると例年60%台が合格最低ラインの目安となる。
 その中で注目されるのは、社会(社会福祉)を母体に新設された「人間福祉学部」のハイレベルぶり(同学部のみ合格ラインが70%台)と、神・社会の急上昇、法(政治)・総合政策(メディア情報)の低下だ。合格ラインは、各年度の入試問題の難易に影響されるので一概には言えないが、倍率の急激な変動が合格ラインに影響を与えたケースといえる(人間福祉学部は合格者を絞り込み超高倍率の激戦化、神・社会は前年の反動で倍率急上昇、法‐政治と総合政策‐メディア情報はやはり前年の反動で倍率急下降)。

 
 

同志社大の科目別データで、
多様な合格者像をイメージ

 

 同志社大では、総合点の合格ラインに加え、合格者の科目別の最高・最低点も公表している。表3に、文系・理系の各学部・学科等に共通の「全学部日程」(理系=2月4日、文系=2月5日)のデータを示した。
 
 全学部日程(文系)では、総合点の合格最低ラインは平均して70%前後。社会‐メディア(73.8%)が最も高く、理工-情報システムデザイン<文系型>(61.3%)が最も低かった。科目別に見ると(極端に低い学部・学科を除く)、英語の最高点は160~192点で全体的に満点に近く、最低点は104~133点。同志社大では全学的に英語の得点力を重視し、例年長文を出題するため、ある程度ハイレベルな学力が要求される。どんなに不得意でも、得点率にして50~70%は必要になる。国語の最高点は91~97%、最低点は43~63%と幅広く分布し、選択科目(日本史・世界史・数学など)では、最高点80%~100%、最低点50~70%前後のケースが多い。
 一方、全学部日程(理系)では、総合点の合格最低ラインは平均して60%台後半となる。08年新設の生命医科学‐医生命システム(72.2%)が最も高く、文化情報<理系型>(61.6%)が最も低かった。
 科目別に見ると、英語の最高点は得点率90%近くだが、最低点は40~50%が多い。数学は、最高点がほぼ満点で、最低点はやはり40~50%台に分布している。物理・化学・生物は、最高点は81%~満点で、最低点は物理53~69%、化学63~72%と比較的低いが、生物は67~89%とやや高い。理工・生命医科学は文系学部に比べ実質倍率がやや低いこともあり、文系学部より合格者の得点ゾーンが広いのが特徴といえる。
 
 こうして見ると、私立大入試の3科目型では、1科目が得意で、もう1科目がまずまずならば、残りの1科目はやや不得意でも、合格は十分可能であることがわかる。合否はあくまで、3科目の合計点次第なのだ。

 
2008年入試/同志社「全学部日程」の科目別・総合点の合格ライン
 

ボーダーライン付近に
合格者の4割が集中!?

 
龍谷大-経済(A日程)スタンダード方式文系型/ボーダーライン付近の合否状況

 最後に、合格ライン付近がいかに激戦となるかを紹介しよう。グラフ9に龍谷大-経済(A日程:スタンダード方式)の、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。同方式の科目・配点は、国語・英語・「世界史B・日本史B・政治経済・数学から1」の3科目で各100点、計300点の均等配点。08年入試では、受験者数2,045人に対し、合格者481人で実質倍率は4.3倍。合格最低点は208点、得点率は約69%だった。
 
 注目すべきは、最低点を含め上10点幅の部分で、ここに合格者全体の実に約38%も集中している。さらに、1点違いで不合格になった受験生が24人もいるなど、合格ライン付近には多くの受験生がひしめきあっている。ふだんの勉強から「1点の重み」をしっかり認識し、解答の見直しを習慣づけよう。
 
 ここまでに紹介した大学も含め、国公立大・私立大の合格ラインについて、4月中旬までに判明したものの一部を、「螢雪時代・6月号」の『螢雪ジャーナル』に掲載したので、ご参照いただきたい。

 

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国立12大学の医学科で
臨時定員増を予定!

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 ここからは前回までの特集に続き、文部科学省や各大学から発表された2009年入試の変更点をお知らせする。公立3大学、私立9大学が新設予定。また、筑波大・広島大など国立12大学で医学科の臨時定員増が予定されている。

 
 

新設大学:
公立3大学、私立9大学が新設予定。
医療・看護系が目立つ

 

 文部科学省の発表(4月中旬)によると、公立3大学の新設(うち1大学は既存の2大学の統合・再編)と、私立9大学の新設が予定されている(下の表6を参照)。これにより、定員は公立大全体で440人、私立大全体で970人増える。私立大の場合、9大学中7大学が医療・看護系、残り2大学が教員養成系の専門大学で、両系統の増設ラッシュがここ数年続いている。

 
2009年度新設予定の公私立大学
 

国公立大:
大阪市立大‐理・工で学科を統合・改編

 
2009年度 国立大の医学科の臨時定員増(3月申請分)

(1)国立大医学科の定員増

08年から深刻な医師不足を解消するために行われた、医学科の臨時定員増を、09年も国立12大学が文部科学省に申請した(右の表5を参照。期間は最長9年間)。増えた定員は、出願資格を地元出身者に限定したり、卒業後の地元勤務を条件に奨学金を支給したりする「地域枠」の新設や拡大に充てられるケースが多くなろう。

 

(2)学部等の増設など

●群馬県立女子大 文学部に「総合教養学科」を増設する予定。定員は20人。
●大阪市立大 理・工の2学部で学科を統合・再編する。理学部では物質科学科を廃止し、6→5学科に再編、化学科の定員を大幅に増やす(25人→42人)。また、工学部では10→6学科に統合する予定。

 

(3)一般選抜の変更

●浜松医科大 医学部看護学科の前期で、セ試の数学を2→1科目に軽減する。
●熊本大 医学部医学科で、前・後期ともに2段階選抜を新たに実施(予告倍率は募集人員の10倍)する。

 

(4)特別選抜の導入

●千葉大 (1)「理数大好き学生選抜」を新規実施。実施学部・学科と募集人員は、園芸‐園芸6人・応用生命化学6人・緑地環境6人・食料資源経済2人、理‐生物5人、工‐メディカルシステム工・ナノサイエンス各若干名で、関連分野の自由研究で優れた成果を収めた高校生が対象(1浪まで可)。選考方法は、園芸(園芸・緑地環境)が「書類選考→総テスト・面接・研究発表」、その他が「書類選考→面接・研究発表→セ試」。同選抜での入学者には特別カリキュラムが用意される。(2)園芸学部では従来の推薦入試を縮小。普通科・理数科対象(16人)を廃止し、専門学科対象(応用生命化学科で廃止し、14人→10人に削減)のみ存続する。(3)理学部地球科学科で、推薦入試(5人)を新規実施する。

 
 

私立大:
國學院大・芝浦工業大・
東洋大で学部増設を予定

 

(1)学部等の増設など

●東北学院大 経済学部経営学科を母体に「経営学部」を、さらに経済学部に「共生社会経済学科」を増設する予定。一方で、経済学部夜間主コース(経済・経営の2学科)を募集停止する予定。
●國學院大 教員養成系の「人間開発学部」を増設する予定。初等教育・健康教育の2学科で構成され、定員は各100人、計200人。
●芝浦工業大 「デザイン工学部」を増設する予定。また、システム工学部に「数理科学科」を増設予定。
●東洋大 (1)「総合情報学部」を増設予定(定員260人:川越キャンパス)。(2)工学部を「理工学部」に改組し、8→6学科に統合・再編する。

 

(2)一般入試の変更

●武蔵大 (1)経済(金融)を除く全学で、セ試利用入試の後期を新規実施。(2)全学部日程を「1学部のみ出願可→同日で複数学部間の併願可能」に変更する。
●早稲田大 (1)人間科学部のセ試利用入試で2次試験(小論文)を廃止、セ試(5教科6科目)のみで判定に変更。(2)文学部および文化構想学部の試験日を繰り上げる(文化構想2/17→2/12、文2/23→2/17)。
●関西学院大 一般F・A日程とは別日程の「関学独自方式」の実施学部が増える。社会・総合政策・理工(数理科学・情報科学・人間システム工)で「英数型」(英語・数学2科目)、新設予定の教育(聖和大を統合)で「英語併用型」(一般<英語>+セ試)、経済・社会で「数学併用型」(一般<数学>+セ試)を導入する。

 

 詳細は今後発表される、国公立大の選抜要項(7月頃に発表)、私立大の入試ガイド(5月以降に発表)や大学案内などで、必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2008年6月号)」より転載いたしました。

 

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