センター試験はもう目の前!
得意科目を最大限に生かし、合格ラインをクリア!
大学入試に必要以上の高得点はいらない。合格ラインを突破すればよい。学部系統によって異なるが、一般的には得点率60%台以上、最難関の医学部で80%台以上といわれる合格ラインを、どうやって少しでも上回るか。ここでは、センター試験、国公立大2次試験、私立大入試の合格ラインを分析し、それを突破するための対策を紹介する。
※この記事は『螢雪時代・2008年1月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)
直前期は得意・不得意科目ごとにメリハリある学習を。
本番では”捨てて勝つ”戦法で波に乗る!
入試直前の最終段階では、得意科目と不得意科目それぞれに応じた合理的な学習で能率アップ。入試本番では「解ける問題を優先」「部分点狙い」など、冷静かつ粘り強い取り組みで、志望校の合格ラインを突破したい。
まずは「合格ライン」の
クリアを目標に
センター試験、そして入試本番を直前に控え、今の受験生たちが不安なのは、「どれくらい点を取れば合格できるのか」ということだろう。そこで目安となるのが、各大学が案内パンフレットやホームページで発表している「合格最低点」だ。
入試の合否は、たいてい総合得点で決まる(例外的に、受験科目中の特定科目の成績順位で決まるケースも)。総合得点とは、受験した全ての科目の合計得点だ。
国公立大ならば1次のセンター試験と2次の個別試験の合計得点、私立大ならば2~3教科・科目の合計得点ということになる。
合格最低点は、合格者のうち順位が最下位の者の得点である。発表方法は、大学・学部によって異なり、素点そのもの(選択科目は得点調整後の場合も)だったり、得点率(合格最低点÷満点×100)だったりする。そのため、合格最低点は「合格ライン」「ボーダーライン」とも呼ばれる。
受験生が入試に合格するためには、とにかく「合格ライン」をクリアすればよい。一番であろうと合格最低点であろうと、いずれも合格であり、それによって区別されることは全くない。
難関・上位の私立大は
合格ライン付近が激戦
合格ラインについて、まずは私立大一般入試のケースをみてみよう。「易しくなった」といわれる私立大だが、難関・上位校では、いまだに厳しい競争が続いている。
グラフ1は、龍谷大‐経済(A日程:スタンダード方式)の19年入試で、ボーダーライン付近の人数分布を示したものである。同方式の科目・配点は「国語、英語、世界史B・日本史B・数学から1」の3科目で各100点、計300点の均等配点。受験者数1,890人に対し、合格者434人で実質倍率は4.4倍。合格最低点は215点(得点率71.7%)だった。その分布の特徴を挙げると、
(1)合格最低点を含め、上10点幅のゾーンに179人と、全合格者の約41%も集中している。
(2)不合格者の最高点(214点)を含め、下10点幅のゾーンにも206人いる。
(3)最低点で合格したのは14人、わずか1点差で不合格になった人は29人もいる。
合格ライン付近では、総合的にはほぼ同じ学力の、多くの受験生がひしめき合い、わずか1点の差で非情にも合否が決まる。入試では、1点の重みがいかに大きいかわかるだろう。
私立大文系は70%台を確保
パターンは「8・7・6」
では、”1点の差”を争う合格ラインを、どうやってクリアするか? グラフ1の右側に、合格最低点とその1点下の受験者から、特徴のある得点パターンをピックアップしてみた。ここからわかることは、「得意科目」の重要性だ。
3科目入試の場合、1科目で得点が伸びなくても他の2科目でカバーできることが多い。特に、BくんやCさんのように突出した得意科目を持っていると、他の2科目が普通、または1科目だけやや苦手であっても突破できるので心強い。
ただし、Dくんのように苦手科目での失点が大きいと、得意科目でもカバーしきれず、「1点の差」に泣くことになる。得意科目のアドバンテージを最大限生かすためにも、他の科目も6割台以上の得点はほしいところだ。
以上のことから、私立大文系学部では「8・7・6」、つまり得意1科目(8割台)、準得意科目(7割台)を持ち、残り1科目は普通(6割台)をキープすることが、合格ライン(7割台)をクリアする目標パターンであることがわかるだろう。
私立大理系は60%台を確保。
パターンは「5・5・8」
総合点でどれくらい取れば合格できるか、難関私立大の19年入試の合格ライン(得点率)をもう少しみてみよう。
表1の慶應義塾大では、文系は商B方式が70%台だが、他はほぼ60%台。理系は看護医療が60%台だが、他は50%台が合格ラインだ。また、表2の早稲田大では、文系は政治経済のみ80%近いが、他は平均して60%台。理系は一部学科に60%台後半がみられるが、他はほぼ50~60%台が合格ラインだ。
表3の同志社大(全学部日程)では、合格ラインは文系がほぼ70%台、理系はほぼ60%台だ。ここでは、科目別の最高・最低点をみてみよう。
入試の配点パターンとして、全教科とも同じ配点の「平等配点」と、特定の教科にウエートをつける傾斜配点があるが、同志社大をはじめ、後者を採用する大学・学部が多い。
商で日本史を選択した場合、英語が合格最低点(114点:57%)であっても、国語で最高点(131点:87%)を取れば、日本史は103点(69%)で総合点の合格ライン(348点:70%)に到達。工(電気工)では、物理が120点(80%)取れれば、英語95点(48%)、数学90点(45%)でも合格ライン(305点:56%)に到達できる。
このように、各大学の「合格ライン」をみると、医・薬や一部の文系学部に70%台の高得点率がみられるが、総じて「文系は60~70%台、理系は50~60%台」であることがわかる。文系学部は、前述のように「8・7・6」で7割台確保を、理系学部は6割台確保のために、得意1科目(8割台)を持ち、残り2科目は5割台をキープする、「5・5・8」のパターンを目標にしたい。
しかし”6割台をとる”ためなら、「5・5・8」でなくとも、「4・6・8」や「3・7・8」でもよいはずなのだが…
“基準点”を設ける
大学・学部は要注意
ところが、大学側は教育上、極端な不得意科目を嫌うケースがある。そして、大学(学部・学科)によっては、ある特定の科目の得点が一定点に達していない場合は、他の科目も含め選考の対象にしない”基準点”を設けることがある。
例えば、慶應義塾大‐総合政策・環境情報では、選択した「数学」「外国語」または「数学および外国語」の得点が一定水準に達した受験生だけの小論文を採点。さらに、その得点が一定水準に達した受験生に対し、学科試験の得点と小論文の採点結果を組み合わせ、最終判定を行っている。
早稲田大‐教育では、国語国文学科は「国語」の、英語英文学科は「英語」の、数学科は「数学」について、全受験者の平均点を合格基準点としている。また、同志社大‐法・経済は英語(200点満点)に80点(4割)の基準点を設けている。
基準点は、「特定科目の全受験生の平均点」か「配点の4割」とするのが一般的のようだ。苦手科目だからといっても、この程度は得点できるように基礎力をつけておこう。
得点調整で選択科目間の
較差を解消
受験生にとって不安なのは「選択科目」だ。文系は「地歴・公民・数学から1科目」、理系は理科で「物理・化学・生物などから1科目」選択のため、科目の難易で有利・不利が生じ、得点に較差が出てくるからだ。
だが、多くの大学・学部では、偏差値(得点を「平均が50、標準偏差10の正規分布での値」に換算したもの)や中央値補正法(中央値と満点の半分を用いて得点を補正)などを用いて調整している。偏差値を用いれば、例えば500点満点や350点満点の得点でも、ほぼ「30~70の値」に換算できる。
19年入試の例を見ると、関西学院大では選択科目(学部によっては全ての科目)で中央値補正法によって得点調整している。また、同志社大‐神・文・社会・経済・商・政策・文化情報・理工(インテリジェント情報工・環境システム)は選択科目の間で、慶應義塾大‐文・法(B方式)・商は「地理歴史」間で、看護医療は選択科目(数学・化学・生物)の間で得点を補正。早稲田大でも理工系3学部以外の10学部で、選択科目間の標準化を行い、表2の合格最低点は調整後のものだ。受験生は志望校のこうした情報も見落とさないでほしい。
センターは「6・6・6・8・9」で
70%台を確保
今度は国公立大だ。まず、1次のセンター試験でどれくらい得点すればいいのか?
センター試験の受験者全体の平均点は、例年ほぼ60%前後である。これは、問題レベルが「学習の達成度を見る」ため、教科書(章の練習問題など)の範囲で、受験者平均が60%程度となるように作られるためだ。
ちなみに、19年センター試験の受験者平均点は、旺文社集計によると、900点満点の標準型に換算して文系525.1点(6教科7科目:得点率58.3%)、理系529.7点(5教科7科目:同58.9%)である。
次に、国公立大の19年入試データで、センター試験の合格最低点率をみてみよう。表4の東京大(前期:第1段階)の最低点は、全科類ともほぼ8割とハイレベル。表5の大阪大(前期)では、文系は7~8割台、理工系は6~7割台、医を含む医療系は7~8割台。表6の大阪市立大(前期)では、文系は6割台後半から7割、医(医)を除く理系は一部学科を除き、やはり6割台後半から7割で、医(医)のみ8割近くと高い。他大学の事例を見ても、センターの合格ラインは、医・歯・薬や難関大の8割台を除くと、全体的には7割台が多い。
センター試験の得点目標を7割とすると、5(6)教科とも均一に70%台をクリアできれば理想的だが、科目数が多い上に、得意・不得意があるのだから、そうはいかないのが普通だ。
そこで、5教科(ここでは地歴・公民をあわせて1教科とみる)の得点割合を「6・6・6・8・9」と設定し、「3教科は受験者平均並みの60%台、残りの2教科は準得意1教科80%台、得意1教科90%台」で平均70%台を確保する。得意教科を最大限に生かすのだ。傾斜配点で、得意教科の配点が他教科より高ければ、さらに有効だ。
目標得点が8割台以上であれば、6割台の教科を全て7割台まで引き上げるような対策が必要だ。これは、センター・2次の配点で「センターの比率が極端に高い」「2次がない」といった、センター試験の結果が直接影響する場合にも、やはり同じことが言える。
2段階選抜の有無と
予告倍率に注意
さらに注意すべきは、国公立大のおもに難関校や医学科などで行われる「2段階選抜」だ。
2段階選抜の実施を予告している大学・学部では、センター試験が指定の得点に達しなかったり、2次試験の志願倍率(志願者数÷募集人員)が予告倍率を超えていたりする場合、第1段階選抜(センター試験による選抜)で不合格になる。
例えば、19年入試での東京大(前期)の2段階選抜予告倍率は、募集人員に対し「文Ⅰ~Ⅲ3.0倍、理Ⅰ2.5倍、理Ⅱ3.5倍、理Ⅲ4.0倍」で、各科類の第1段階選抜結果(志願者数→合格者数)は「文Ⅰ1,502人→1,122人、文Ⅱ1,065人→982人、文Ⅲ1,597人→1,309人、理Ⅰ3,012人→2,566人、理Ⅱ1,946人→1,728人、理Ⅲ410人→320人」。全体では、募集人員2,729人に対し、志願者数は9,532人で、第1段階選抜の結果、1,505人が2次を受験できなかったことになる。
せっかく2次の対策をしていても、受験すらできなくなってしまう。そんな残念な結果に終わらないためにも、志望校が2段階選抜を行うかどうか、行う場合は予告倍率(または基準点)を募集要項でしっかり確認しておきたい。
難関私立大や国公立大2次では……
文系は「8・7・6」で7割台を、理系は「5・5・8」で6割台を確保!
国公立大の総合点は、
文系70%台、理系60%台を確保
次に、国公立大2次試験の突破策だ。記述式の2~3教科が主流で、文系は「国語、数学(地歴・公民)、外国語」、理系は「数学・理科・外国語」が多いので、基本的に私立大と同様に考えるとよい。
センター・2次合計の合格ラインを見ていこう。表4の東京大の前期日程では、理Ⅲのみ70.1%と突出しているが、他の科類は55%~65%の範囲に収まっている。表5の大阪大(前期)、表6の大阪市立大をみても、文系は6~7割台、理系は5~6割台の学部・学科がほとんどで、医学科のみ8割近い。この他、北海道大(前期)、千葉大(前期)、名古屋大(前期)などの合格ラインをみても、ほぼ同じ傾向が見て取れる。
大阪大・大阪市立大とも、2次の合格最低点が意外と低いが、センター試験で相当高得点を取らないと、総合の合格ラインに到達しない。例えば、大阪大‐理(物理)の2次の合格最低点は268.75点(38.4%)だが、総合では478.3点(50.3%)のため、センターで209.55点(83.8%)も必要だ。2次は記述式で難度も高いので、センター試験と比べ得点しにくいが、やはり5~6割程度は得点したい。
文系学部では「センター8割+2次6割」で総合点7割台を、理工系学部や医療・看護では「センター7割+2次5割」で総合点6割台を、そして医学部志望者は「センター9割+2次7割」で総合点8割台を、確実に得点したいところだ。
最終的に「合格者平均点」確保で
余裕の勝利を!
ただし、合格ラインはあくまでも当落線上、受験生、とりわけ現役生の学力は入試直前で急速に伸びる。より安全なライン「合格者平均点」まで学力レベルを上げ、余裕ある勝利を得たいものだ。
グラフ2では、東北大の前期日程における各学部(学科・専攻)の合格者平均得点率を、センター・2次それぞれに示した。これを見ると、合格者平均点は文系(文・教育・法・経済)、理工系(理・工・農)ともに、センター試験がほぼ80%に達しているのに対し、2次は文の52.1%から法の58.6%まで幅はあるが、全て50%台に留まっている。医(医)だけは「センター87%、2次72%」と突出し、ハイレベルの激戦であることがわかる。医学科以外の学部・学科では「センター80%、2次60%」を確保したいところだ。
とはいえ、センター試験の80%はともかく、2次で60%得点するのは容易ではない。特に数学・理科の場合は、問題数が少なく得点しにくい。2次は各大学の個別試験だから、それぞれの個性が強く出る。そのため、過去問をしっかり学習・検討することが「60%」クリアのカギを握る。
本番では「捨てて勝つ」戦法で
リズムに乗る
合格ライン突破のための得点パターンが決まったら、入試本番ではその方針に沿って問題を解いていこう。問題用紙が配られたら、まず全問を見渡す。第1問から順番に解くのではなく、解けそうな問題から解き進み、リズムに乗ることだ。この方法は全教科・科目に共通することだが、特に数学や、物理・化学など理科系科目では重要だ。その際、次の手順を忘れないこと。
(1)全問に目を通す(読むのではない)。
(2)「解けそうだ」に○、「いけるかな」に△、「無理かもしれない」というのに×をつける。
(3)○から先に解く(問題番号順とは限らない)。
×には手を付けず、○から始め、次は△へ……という順に、集中的に解く。1題解けると不思議に落ち着き、次の○や△も解けることが多い。
数学の場合、○や△が完全に解けない場合は、とにかく小問(1)だけを解こう。例えば、大問が(1)(2)で構成されていれば、(1)は教科書によくある基本的な問題解法で解けるように作成してあり、(2)は(1)の結果を利用すれば解けるようになっているケースが多い。各大問のうち、小問(1)だけを解くだけで、全体の得点の3~4割近くを取れる。あきらめず、粘り強く部分点を稼ぐ。この小さな前進が、最終的にはビッグゲインにつながるのだ。
以上の「捨てて勝つ」戦法は、ふだんの過去問演習の時に、指定時間内に解くことを強く意識して、手順をしっかり身に付けよう。
得意科目は”攻め”、不得意科目は”守り”の学習を!
入試直前は少しの時間も無駄にできない。これからの学習の進め方としては、
(1)入試直前は少しの時間も無駄にできない。これからの学習の進め方としては、
(1)不得意科目は、基本を重視し、テキストや模試などの問題を何度も解く。
(2)出題傾向をよく調べ、よく出るジャンルの基本問題を中心に、毎日3題は解く。
(3)国公立大志望者は、当面のセンター試験に全力投球。ただし、私立大や国公立大2次と重複する教科・科目は、2次対策の学習(過去問の演習)に重点を置く。
(4)過去問を解くときは、必ず制限時間内で解く。
(5)1教科につき、最低2日に1回は解答練習を。
(6)夜型の人は、少しずつ昼型に切り換える。
思い切って、得意科目は過去問や受験参考書・問題集を中心とした学習に徹し、不得意科目は教科書や模試の問題などの反復練習に切り換え、「復習に力を入れる」ことが受験勉強だと割り切ることだ。得意科目の”攻め”の学習に対し、不得意科目は基礎力充実の”守り”の学習に徹し、効率的に”合格力”をつけよう。
(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2008年1月号)」より転載いたしました。