入試動向分析

2023年 国公立大一般選抜 志願者動向分析【2023年4月】

2023(令和5)年度

2023年国公立大入試について、人気度を示す「志願者動向」を分析する。
一般選抜の志願者数は前年比1%減。そのうち、公立大後期日程が4%減少した。
共通テストの平均点アップが追い風となり、「初志貫徹」の出願傾向が見られた。

 

※この記事は『螢雪時代・2023年5月号』の特集より転載(一部、webでの掲載にあたり、加筆・訂正を施した)


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共通テストの平均点アップで「初志貫徹」の出願傾向。大都市圏の難関〜準難関校は安定人気、地方で極端な反動

 

国立大2%減、公立大1%減
公立大後期が4%減

 

 文部科学省の発表によると、2023年(以下、23年。他年度も同じ)の国公立大一般選抜の確定志願者数は423,180人で、22年に比べ1.3%減少(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大・叡啓大は集計に含まず)。全募集人員(98,727人)に対する志願倍率は、22年・23年とも4.3倍と変動がなかった(グラフ①)。
 4(6)年制大学の受験生数は前年比2.0%減(『螢雪時代編集部』推定)、大学入学共通テスト(以下、共テ)の志願者数も3.4%減(国公立大志望が多い既卒者は6.7%減)と、基本ベースが縮小しているので、国公立大一般選抜の志願者減は小幅に留まり、底堅い人気を示したといえる。
 入試日程別に志願状況(グラフ②)と志願倍率の変化(22年→23年)を見ると、前期は「1.3%減:2.9倍→2.9倍」、後期は「2.0%減:10.0倍→10.0倍」、公立大中期(以下、中期)は「0.9%増:13.4倍→13.0倍」となった。
 募集人員の増減(前期0.3%増、後期1.6%減、中期3.4%増)と比べると、ほぼ順当な志願状況だが、中期への併願がやや伸びを欠いた感がある。さらに、国立・公立の志願状況を日程別に比べると、国立大が「前期1.6%減、後期1.5%減」とほぼ同程度に減少したのに対し、公立大は「前期0.5%減、後期3.9%減」。学校推薦型選抜(以下、推薦型)や総合型選抜(以下、総合型)の募集枠拡大に伴う募集人員減(2.2%減)にもかかわらず国立大後期の志願者減が小幅に留まったのに対し、公立大後期の減少が際立つ結果になった。
 22年に比べ、共テは平均点が大幅アップ(=易化)した。そこに受験生が自信を得ての結果が、23年の国公立大の志願状況に表れたといえるが、さらに詳しく要因を考えていこう。


共テ数学の易化が追い風に
成績上位層中心に初志貫徹

 共テの平均点アップは、22年の大幅難化を鑑みた、出題レベル調整の結果といえる。
 国公立大受験の共テ科目の標準となる、文系・理系に共通の5教科6科目(地歴・公民合わせて1科目として100点、理科1科目として100点の800点満点)の加重平均点(科目別平均点と受験者数から算出。ただし、理科基礎は2科目受験者の加重平均点で、追試を含む。また、化学、生物は得点調整後)を算出すると453.9点(得点率56.7%)で、22年に比べ29.0点アップ。得点率も3.6ポイントアップした。21年の水準(472.3点:得点率59.0%)には戻らず、センター試験(以下、セ試)時代を通じても低い方だが、それでも受験生の「初志貫徹」の後押しになったことは確かだ。
 科目別に見ると、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・B、日本史B、化学で平均点が大幅にアップ。一方、世界史B、「倫理、政治・経済」、英語リーディング、国語などがダウン。得点調整前に40点を割り込んだ生物は、得点調整後もセ試・共テを通して過去最低を記録した。
 特に、文系・理系ともに受験する基幹科目の数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・Bの大幅アップは、22年の大幅ダウンに苦しんだ先輩たちを知る受験生にとっては追い風となった。そのため国立大・公立大ともに、前期は成績上位層を中心にやや強気な「初志貫徹」の出願傾向になったものと見られる。それは後述のように、理系、特に医療系の出願傾向に表れた。
 また、コロナ禍や国際情勢の混迷に伴う経済不況による家計不安から、「どうしても国立大」という受験生が後期まで粘って合格しようとした意欲も見て取れる。

 

大都市圏志向が復活も
公立大で生じた「後期離れ」

 23年入試では、コロナ禍は続いているものの、ワクチン接種など対策が進んだこともあり、受験生に遠隔地受験の心理的なハードルが下がったことも、大都市圏の難関大の志願者増につながったと見られる。
 もちろん、コロナ禍や国際情勢の悪化に伴う経済不況による家計不安はあるが、大都市圏における対面授業の増加、サークル活動など学生同士の交流の復活など、大学生を取り巻く環境が改善され、それが受験生の大都市圏への流動に結びついた模様。ただし、それは私立大についても同じなので、地方公立大の受験者層の一部が、大都市圏の私立大への併願を増やすことにもつながったものと見られる。
 共テの平均点アップで目標ラインが上がったため、公立大にぎりぎり手が届く受験生層が、募集枠が小さく志願倍率が高い後期の出願をあきらめた模様。特に公立大中堅校の後期は、個別試験(以下、2次)の配点比率が低いことが多く、逆転が難しいことも要因といえる。公立大受験者の粘りの弱さは、中期の志願者増が小幅だったことからも見て取れる。

 

一橋大の新設学部、
岡山大の後期募集停止が影響大

 23年入試は、21年の「入試改革」と25年の「新課程入試」のちょうど中間に当たり、大規模な変更の少ない「無風期」で、共テの難易や前年の入試結果の反動が強く作用する。
 そうした状況の下、各大学の変動要因で最大のものは、東日本では一橋大の「ソーシャル・データサイエンス学部」増設、西日本では岡山大の後期募集停止であった。
【東日本】一橋大-ソーシャル・データサイエンスは、後期の募集人員が比較的多く(前期30人に対し後期25人)、2次科目が同-経済の後期と同じ「数学・英語」で学内併願がしやすく、しかも数学Ⅲの選択問題も用意されるなど、東京工業大-情報理工など理系志望者も併願しやすいことから、多くの志願者を集めた。首都圏難関大からの併願が多い東北大の後期(24%減)にも影響したと見られる。
横浜国立大の大幅増も特筆される。21年にコロナ禍対応で2次の実施を取りやめ45%減、22年では2次を復活し32%増も、20年の水準に回復しなかったが、23年はさらに30%増。最寄り駅の鉄道が新路線と直結、新幹線や東京都心、首都圏北部とのアクセスが向上したことが大きい。経済学部(前期172%増、後期74%増)の場合、埼玉大-経済[昼]の前期18%減・後期17%減、千葉大-法政経の後期11%減など、周辺の志願動向に影響した。
【西日本】岡山大は全学部で後期を募集停止したため、志願者大幅減(27%減)。関西の難関~準難関校の併願先だっただけに影響は大きく、和歌山大・山口大・大阪公立大・兵庫県立大の後期の志願者増に結びついた。
岡山大が主に関西に影響を与える一方、より地区内に影響を与えたのは、「私立→公立」化2年目で前期・中期を新規実施した周南公立大だ。共テが3教科と軽量入試のため、私立大専願者も受験しやすく、中・四国の西部から九州北部にかけて、幅広く志願者を集め、中堅国公立大に影響を及ぼした模様だ。

 

【ここポイント!】
共テの易化で基調は「初志貫徹」だが
公立大後期の敬遠にも結びついた
前年の反動による志願者増減が顕著

 

地区・系統ごとに見ると?

 

「東高西低」の志願状況
遠隔地受験が復活か

 全国6地区の志願動向(グラフ③)を見ていこう。関東・甲信越が微増(1%増)、北海道・東北と関西が前年並みだったのに対し、九州が2%減、北陸・東海が3%減、そして中国・四国は6%減となった。
 各地区とも、従来から地元志向が強いので、基本的に地区内で出願が完結する。それでも、関東・甲信越と関西では大都市圏志向の復活が如実に示され、「東北→関東」「中国・四国→関西」の志望変更の流れがうかがえる。関東・甲信越は東京工業大・一橋大・横浜国立大、関西は大阪公立大の人気アップの影響が大きい。
 逆に、共テの平均点アップによる「初志貫徹」のため、大都市圏から地方への進出が鈍ったともいえる。北陸・東海は福井大・岐阜大の大幅減、中国・四国は岡山大の後期募集停止に加え、徳島大・香川大・高知大といった四国勢の大幅減の影響が大きい。
 なお、医学部志望者は全国を視野に入れて受験するのと、後期の募集停止や縮小が続いて併願先が限られるため、流動性が高い。23年は岐阜大-医〈医〉の後期募集停止の影響が大きく、後期を募集する浜松医科大-医〈医〉、名古屋大-医〈医〉が志願者大幅増となった。

 

 

「理系の資格系」人気集中
国際・外国語系は大幅減

 次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ④)。医、歯、薬、医療・看護といった医療系の志願者増が目立つ。理系では農・水畜産・獣医も微増で、「理系の資格志向」が見て取れる。薬、農・水畜産・獣医は、ワクチン開発などメディアの露出度が高く、化学・生物系への関心が高まったことも要因だろう。ただし、国の理工系拡大の方針転換で、工学系・情報科学系の新設や定員増が相次いだにもかかわらず、理、工はやや志願者減となった。
 文系では社会・社会福祉が増加し、ここにも資格志向が見て取れる。法、経済・経営・商はほぼ前年並みと安定。一方で、文・教育・教養、国際・国際関係、外国語は大幅減。特に、国際・国際関係、外国語は、混迷する国際情勢や世界的な物価上昇などの影響で海外留学が困難さを増すなど、逆風が吹いているのに加え、東京外国語大の共テ負担増(数学1→2科目)による大幅減(28%減)の影響が大きかった。
 教員養成系は、教員を取り巻く環境の改善が進まないこともあり、人気低下が続いてきたが、北海道教育大・宮城教育大・奈良教育大といった教員養成系大学が前年の反動で大幅増となった影響から、ほぼ前年並みを保った。

 

 

【ここポイント!】
地方から大都市圏の流れが復活
医・歯・薬・医療・農が志願者増
文・国際・外国語は人気ダウン

 

大学・学部ごとに見ると?

 

「前年の反動」や
入試科目・募集人員の変更は要注意

 大学・学部別の志願状況を見るためには、次の4つのポイントを押さえておこう。24年一般選抜の志望動向の予測にも生かせるポイントだ。

①前年度の倍率アップダウンの反動
 受験生は前年の倍率や、志願者の増減を気にする。高倍率や倍率アップ、志願者増なら敬遠、低倍率や倍率ダウン、志願者減なら人気を集めるため、前年の反動、さらには1年おきに増減を繰り返す“隔年現象”が起きやすい。これが最も起こりやすいパターンだ。

②入試科目の変更、科目数の増減
 入試科目数の増減、新方式実施、2段階選抜の廃止(導入)や予告倍率緩和(引き締め)など、負担の変化が志願者増減に結びつく傾向がある。

③学部・学科の増設・廃止、募集人員の変更
 後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の募集人員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。また、学部・学科の新設や、新たに前・後・中期で入試を実施、あるいは後期(または前期)を募集停止したりする場合、周囲の大学・学部に対する影響は大きく、最大級の変動要因となる。

④他大学への「玉突き」
 志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、後期日程の廃止・縮小、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。

 具体例として、東京外国語大-国際社会、名古屋大-医〈医〉、岡山大-工、佐賀大-教育、長崎大-水産の事例を紹介する(以下、【前】=前期日程、【後】=後期日程)。

例1:東京外国語大-国際社会【前】【後】
 東京外国語大-国際社会【前】は共テの数学を1→2科目に負担増(→②)。これが敬遠材料となり、志願者は29%減。千葉大-国際教養【前】の11%増に影響したものと見られる(→④)。また、国際社会【後】は前年の志願者28%増の反動(→①)から31%減となった。

例2:名古屋大-医〈医〉【前】【後】
 名古屋大-医〈医〉では、後期を「地域枠→一般枠」に変更し、前期に地域枠を移した(→③)。また、2段階選抜の基準を、前期で「共テ900点中700点以上→600点以上」に緩和、後期も「900点中700点以上→予告倍率(約12倍)」に変更(→②)。これらが人気材料となり、前年の志願者大幅減(前期57%減、後期30%減)の反動もあり(→①)、志願者は「前期67%増、後期100%増」。後期の場合、岐阜大-医〈医〉の後期募集停止も影響した(→④)。

例3:岡山大-工【前】【後】
 岡山大-工では後期を募集停止し、前期を募集人員増(400人→415人。→③)。前期は前年の志願者13%減の反動もあり(→①)、志願者は13%増。大阪公立大-工【前】(16%減)に影響した(→④)。一方、後期の募集停止により、他大学への併願が増え、山口大-工【後】(100%増)、兵庫県立大-工【後】(29%増)に影響した(→④)。なお、いずれも前年の反動(22年に山口大-工【後】は57%減、兵庫県立大-工【後】は30%減)も影響したと見られる(→①)。

例4:佐賀大-教育【前】【後】
 佐賀大-教育【前】【後】は、隔年現象(前期=20年35%増→21年32%減→22年25%増、後期=20年108%増→21年46%減→22年38%増)の揺れ戻しで、志願者が「前期15%減、後期27%減」(→①)。福岡教育大-教育【前】(14%増)・同【後】(17%増)、熊本大-教育【前】(11%増)の増加に影響したものと見られる(→④)。

例5:長崎大-水産【前】【後】
 長崎大-水産【前】【後】は、募集人員の配分を「前期45人→60人、後期45人→30人」と、均等配分から前期重視に変更(→③)。また、前期で2段階選抜(共テ900点中450点以上)を廃止(→②)。前年(前期12%減、後期53%増)の反動もあり(→①)、志願者は前期が40%増、後期が21%減と対照的な結果となった。

 

志願者最多は大阪公立大
東京工業大・一橋大が大幅増

 表1では志願者数の多い順に、上位10大学を一覧にした。国公立の難関~準難関校が連なる中で、特に注目すべきは横浜国立大・大阪公立大といった準難関校の増加だ。
【難関校】志願者数で第6位の東京大(2%減)は、文科三類(5%減)のみ2段階選抜を行わなかった。第4位の北海道大(3%増)は後期が10%増。難関大の貴重な併願先として、他地区からの流入が増えたものと見られる。
 表1以外の大学も含めると、「初志貫徹」と大都市圏志向の復活を反映し、前述の一橋大(14%増)をはじめ、東京医科歯科大(17%増)・東京工業大(10%増)が大幅増。この2大学は、早ければ24年に「東京科学大」として統合が予定され、東京工業大では推薦型・総合型で「女子枠」を24年に新設予定など、注目度が高まったことも要因といえる。また、京都大(3%増)が増加、名古屋大(1%減)・大阪大(1%減)も安定。一方で、東北大(8%減)・神戸大(2%減)・九州大(5%減)が減少。東北大・九州大ともに大都市圏からの流入減と見られる。
【準難関校】志願者数が最も多い国公立大は大阪公立大で、志願者は7%増加した。市立大・府立大が統合して開学した2年目で認知度が高まった模様で、文・法・経済・商・農・看護は、前・後期とも大幅増となった。岡山大の後期募集停止も影響し、京都大・大阪大など難関大からの併願が増えたものと見られる。
 その他の準難関校は、東京農工大(16%増)・横浜国立大(30%増)が大幅増、埼玉大(7%増)も増加。また、筑波大は前年並み、千葉大(1%減)・東京都立大(1%減)・熊本大(1%減)も安定。一方で、東京外国語大(28%減)・岡山大(27%減)は大幅減となった。東京外国語大は、例1のように共テ負担増(数学1→2科目)で敬遠されたものと見られる。
【中堅校】各地区の国公立大中堅校では、大きな変動要因が少ない中、前年の志願者増の極端な反動が随所に見られた。また、推薦型・総合型への募集人員の移行も影響した模様だ。特に、京都工芸繊維大は推薦型・総合型の拡大に伴う後期大幅縮小(53%減)が要因となった。その中で、表1にランクインした静岡大は、大規模な学部改組(地域創造学環→グローバル共創科学部)が人気材料になった模様だ。特に変動が大きかった主な大学は次の通り。

①国立大
【志願者増】北海道教育大22%増、福島大11%増、信州大12%増、静岡大11%増、名古屋工業大21%増、奈良教育大10%増、山口大27%増、宮崎大27%増
【志願者減】弘前大15%減、岩手大18%減、茨城大19%減、電気通信大14%減、新潟大12%減、山梨大18%減、福井大39%減、岐阜大25%減、京都工芸繊維大25%減、鳥取大22%減、島根大16%減、徳島大27%減、香川大21%減、高知大24%減、佐賀大10%減、長崎大12%減
②公立大
【志願者増】高崎経済大17%増、静岡県立大16%増、兵庫県立大11%増、名桜大23%増
【志願者減】岩手県立大27%減、都留文科大12%減、福井県立大22%減、愛知県立大11%減、京都府立大12%減、島根県立大26%減、高知工科大21%減、長崎県立大10%減、熊本県立大27%減

 下の表2では、志願者の増加率が高い順に上位10大学を示した。表1と異なり全て単科大学(1学部のみ)、そのうち公立が5大学を占め、医、医療・看護、工学に関する大学が目立つ。1位の旭川医科大・浜松医科大で志願者が2倍近くに膨張するなど、8大学で前年の志願者大幅減の反動が出ている。ちなみに、昨年は171%増で1位だった新潟県立看護大は、やはり前年の反動から、58%減と激減した。
 なお、「私立→公立」に移行した旭川市立大(旧:旭川大)は、23年は私立大として一般選抜を実施したが、志願者は前年に比べ倍増(108%増)した。24年は、経済が前・後期、保健福祉が前・中期に参入する。

 

 

志願倍率トップは
旭川医科大の医学部医学科の後期

 次は、各入試日程で特に志願倍率(志願者数÷募集人員)が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表3~5。同倍率が多数の場合は20を超えて掲載。医学部医学科や看護学科などは1学部として扱う)。なお、「受験者数÷合格者数」で割り出す、実際の倍率を「実質倍率(または競争率)」という。
 まず、表3・4の「高倍率の学部等」から見ていこう。前期では医学部医学科が目立ち、変わらない難関ぶりを物語る。その中で、前述の通り22年に「私立→公立」化し、23年から前期・中期に新規参入した周南公立大-福祉情報が1位、同-経済が3位の高倍率を記録したことが注目される。
 後期・中期は募集人員が少なく、実施学部・学科も減っているので、最高倍率(66.6倍)の旭川医科大-医〈医〉【後】など、前期以上の「超高倍率」になるが、欠席率の高さ(例えば後期の場合、前期の入学手続者が欠席するので、志願者の約60%が欠席)を割り引いて考える必要がある。公立大は中期の実施校が増え、後期も国立大に比べ多く残っていることから、併願先の私立大が限られる大都市圏以外の地域では、志願者が集中しがちだ。
 一方で、表5のように前期で志願倍率が1倍台のケースもある。こちらは、学部・学科が多様であることが特徴だ。なお、長崎大-多文化社会【前】は隔年現象(21年18%減→22年16%増→23年39%減)によるもので、24年は再び揺れ戻す可能性があるので要注意だ。




 

第1段階選抜の不合格者は
前・中・後期合計で8,294人

 最後に、前期、および後期・中期の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。
 前期では、予告した学部(65大学175学部等)に対し、実際に行ったのは34大学56学部等で、前年より5大学3学部等増え、第1段階選抜の不合格者も「22年3,029人→23年3,623人」と前年比20%増加した。大学別に見ると、不合格者が最も多い東京大では、6科類中5科類で第1段階選抜を行い、22年より減少(837人→691人:17%減)。次に多いのが東京工業大で、共テ平均点アップの影響から22年の6倍近くに増えた(78人→438人:462%増)。
 一方、後期・中期では、予告した学部(46大学96学部等)に対し、実際に行ったのは25大学33学部等で前年とほぼ同じ(1学部等の増)だが、第1段階選抜の不合格者は「22年5,107人→23年4,671人」とやや減少(9%減)した。公立大で後期までの粘りが弱まったのに加え、共テの平均点アップも相俟って、不合格者の減少に結びついたものと見られる。大学別に見ると、最も多かったのが宮崎大(529人)で、次いで大阪公立大(513人)、一橋大(471人)、山梨大(429人)、旭川医科大(412人)…と続く。一橋大では、新設のソーシャル・データサイエンス学部が後期を実施したため、不合格者は前年比9%増加した。

 

【ここポイント!】
国公立大の志願状況を見るには
「4 つのポイント」を押さえよう
他大学からの影響にも注意!

  

この記事は「螢雪時代(2023年5月号)」より転載いたしました。


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