国立大の改組と「国語ショック」が影響、「国立→公立・私立」へ流れる?!
2017年国公立大入試について、各大学・学部や学部系統などの人気度を示す「志願者動向」を分析する。さらに、これから目指す2018年入試の最新情報も紹介する。
※この記事は「螢雪時代(2017年4月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)
センター試験はやや平均点ダウン、国語の難化が、特に理系に影響。「文縮理拡」大学で志願者減が顕著
「文縮理拡」の影響で「弱めの文低理高」に。一橋大・大阪市立大が増加、大阪大が大幅減。地方国公立大で極端な反動が目立つ
18年入試の変更点を速報!
一橋大など推薦・AOの導入・拡充続く。首都大学東京が全学規模の改組を予定!
センター試験はやや平均点ダウン、国語の難化が、特に理系に影響。
「文縮理拡」大学で志願者減が顕著
国公立大の志願者数はほぼ前年並み、志願倍率は4.7倍で前年と同じだった。国立大1%減に対し公立大2%増、国立大後期で志願者減が目立った。センター試験の国語の難化が、おもに理系にショックを与えたのに加え、国立大の「文縮理拡」の改組が文系に影響、「国立→公立」に流れた模様だ。
志願者数はほぼ前年並みだが、
国立1%減に対し公立2%増
文部科学省の発表によると、2017年(以下、17年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は470,786人で、16年に比べ0.2%減少(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大は集計に含まれない)。そして、全募集人員(100,372人)に対する倍率(志願倍率)は16年・17年ともに4.7倍で同じだった(グラフ1)。
4(6)年制大学の受験生数は微増(1.1%増:本誌推定)、センター試験(以下、セ試)の志願者数も増えた(2.2%増)にもかかわらず、国公立大の志願者数はほぼ前年並み。一方で、私立大一般入試の延べ志願者数は、約7%も増えている(2月中旬現在)。
入試日程別に志願状況(グラフ2)と志願倍率の変化(16年→17年)をみると、前期は「0.3%増:3.2倍→3.2倍」、後期は「1.0%減:9.7倍→9.9倍」、公立大中期は「1.1%増:14.0倍→14.0倍」となった。募集人員の増減(前期0.2%減、後期3.6%減、公立大中期1.0%増)にほぼ比例した結果となっている。
また、国立・公立を日程別に比べると、前期は「国立0.5%減、公立2.7%増」、後期は「国立1.6%減、公立0.8%増」と、国立から公立へ流れた様子が見て取れる。
16年4月から「私立→公立」に移行した福知山公立大・山陽小野田市立山口東京理科大が、公立大として入試を実施する初年度のため、その分が加わったことは確かだが、それにしても、こうした志願状況はなぜ起きたのだろうか?
山形大・茨城大・大阪教育大・鹿児島大など志願者大幅減
17年国公立大入試に影響を与えた大きな要素は3つある。国立大の「文系縮小、理系拡大(文縮理拡)」の大規模改組と、国立の推薦・AO枠拡大、セ試の国語の難化だ。
(1)国立大の大規模改組
17年度は、前年に続き、国立大で大規模な改組が相次いだ。全体として、①教員養成系学部を教員養成機能に特化し、教員免許を卒業要件としない課程を廃止・縮小(6大学で廃止、2大学で縮小)、②人文・社会科学系学部を縮小、③理工・農学系学部を拡大、④おもに上記①②の定員削減分で、文理融合型や理系の学部を増設(5大学で増設)、という特徴が見られる。
「教員養成以外の課程」は、文系志望者の“受け皿”になっていたケースが多く、廃止・縮小の影響は大きい。文系学部の縮小とあいまって、代わりとなる受け皿が不足した。一方で、好調な就職事情を受け、文系人気が高まったにもかかわらず、文系の募集枠が縮小される「ねじれ現象」のため、国立大文系志望者は、公立大へ志望変更、さらに私立大文系学部への併願を増やしたものと見られる。
上記のような改組を行った国立大のうち、学部増設を伴わない大学では、山形大(17%減)・茨城大(24%減)・愛知教育大(7%減)・大阪教育大(13%減)・鹿児島大(20%減)・琉球大(14%減)と、志願者大幅減が目立った。
(2)センターを課す推薦・AOの拡大
東北大・大阪大など、一般入試の募集枠を縮小し、推薦・AO入試の導入や募集枠拡大を行う大学が目立った。大阪大の「世界適塾推薦・AO入試」導入に伴う後期募集停止をはじめ、特に後期の志願者減に影響した。
(3)センター試験の国語の難化
17年セ試の結果を科目別に見ると(表1)、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・B、生物基礎、英語(筆記)などで平均点がアップしたが、国語が大幅ダウンした影響が大きく、全体としては得点が伸び悩んだ。なお、ここでは、セ試の理科の基礎を付さない科目を「理科発展」とする。
国公立大受験のセ試科目の標準となる、文系・理系に共通の5教科6科目(地歴・公民合わせて1科目として100点、理科1科目として100点の800点満点)の加重平均点(科目別平均点と受験者数から算出。ただし、理科基礎は2科目受験者の加重平均点で、追試を含む)を算出すると463.1点(得点率57.9%)で、前年に比べ3.1点ダウンとなった。
国語の難化は、文系・理系ともに影響したが、特に理系に強くダメージを与えた。理系志望者は得点源の科目(化学発展)で稼げず、さらに“国語ショック”を受けた。一方、文系志望者は国語が理系ほど失点せず、易化した生物基礎や英語でカバーし、理系よりは得点を伸ばした模様だ。このため、文系は“初志貫徹”の出願、理系は“安全志向”からやや弱気な出願となったようだ。中でも、募集人員が少なく、実施学部・学科も減っている後期では、ボーダー付近の学力層が「国立→公立」へ出願先を変更するか、出願自体をあきらめ、私立大一般入試の併願を増やしたものと見られる。国立に比べ、軽量科目型(理系の場合、国語が必要ない、理科発展が1科目選択、など)が多いことも、公立大の人気アップの要因といえよう。
ちなみに、セ試で国語を課さない(または選択しなくて済む)理系学部では、山口大‐工の前期が31%増、大阪市立大‐理の後期が63%増、北九州市立大‐国際環境工の後期が97%増など、志願者が集中するケースがみられた。
「文縮理拡」の影響で「弱めの文低理高」に。
一橋大・大阪市立大が増加、大阪大が大幅減。
地方国公立大で極端な反動が目立つ
学部系統別では、工・薬の増加に対し、法・経済・理・看護・教員養成が減少。国立大の定員の「文縮理拡」が志願者の増減に反映され、弱めの「文低理高」となった。難関~準難関校では、一橋大・大阪市立大の増加、大阪大の減少が目立った。文系は定員減、理系は安全志向が影響し、極端な前年の反動がみられた。
大阪大の後期募集停止が影響大。関西から中国・四国への流出も
全国6地区の志願動向(グラフ3)を見ていこう。北陸・東海と関西は前年並みだったが、中国・四国(4%増)、関東・甲信越(2%増)の増加に対し、九州(3%減)、北海道・東北(7%減)が減少。地区により増減の幅が大きかった。
各地区とも地元志向が強いので、基本的に地区内で出願が完結するのだが、周囲の地区へ影響が及ぶケースもある。
関西地区では、大阪大の後期募集停止の影響が大きい。大阪大(前期)からは、神戸大・大阪市立大をはじめ、岡山大・九州大など、西日本の難関~準難関校の後期に、広く併願先を求めたものと見られる。さらに、後期の選択肢が限られる中、同志社大・関西学院大など、私立難関校の併願も増やしたと見られる。
中国・四国地区は、「私立→公立」化した山陽小野田市立山口東京理科大が、公立として前・中期の実施に参入した影響が大きい。同校の志願者だけで、地区全体の志願者増加数の約67%を占める。さらに、山口大・徳島大・高知大などの大幅増は、セ試「国語ショック」による“安全志向”で、関西地区からの志望変更者が増加したものと見られる。
一方、東北地区は全学的改組の山形大・宮城大や、弘前大・秋田大など大幅減の大学が目立つ。就職事情の良好な関東地区へ、国公立大志望者が流出した模様だ。
各地区のおもな大学に関する分析は、『螢雪時代』4月号掲載の「螢雪ジャーナル」をご覧いただきたい。
工・薬が増加、法・経済・理・看護が減少、教員養成が大幅減
次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。文系では国際・国際関係、理系では工、薬が人気アップしたが、他の系統は文系・理系ともに「微減~減少」と低調。国立大の「文縮理拡」の定員増減が、そのまま志願状況に反映され、「弱めの文低理高」状態となったが、理、医療・看護、家政では、セ試の「国語ショック」も影響した模様だ。また、教員養成系も昨年と同様、教員養成以外の課程を廃止・縮小した影響で大幅減となった。
薬は、薬剤師国家試験の合格率アップ(14年60.8%→15年63.2%→16年76.9%)も、人気回復の要因と見られる。医療・看護系では、公立単科大が多いこともあり、前年の極端な反動が見られた。
「前年の反動」や入試科目・募集人員の変更は要注意
大学・学部別の17年の志願状況を見るためには、次の5つのポイントを押さえておこう。
①前年度の倍率アップダウンの反動
受験生は前年の倍率を気にする。高倍率や倍率アップなら敬遠、低倍率や倍率ダウンなら人気を集めるため、前年の反動、さらには1年おきに増減を繰り返す“隔年現象”が起きやすい。
②入試科目の変更、科目数の増減
入試科目数の増減、2段階選抜の廃止(導入)や予告倍率緩和(引き締め)など、負担の変化が志願者の増減に結びつく傾向がある。
③セ試の科目ごとの難化・易化
セ試の平均点がダウン(=難化)した科目の配点が極端に高いと敬遠され、その科目を課さないか選択しなくて済む場合は志願者増に結びつく。アップ(=易化)した科目の配点が極端に高い場合も人気材料となる。
④学部・学科の増設・廃止、募集人員の変更
後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の募集人員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。特に17年は国立大で学部・学科等の増設・廃止、定員の増減が多く、最大級の変動要因といえる。
⑤他大学への「玉突き」
志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、後期日程の廃止・縮小、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。
* * *
わかりやすい例として、前述の大阪大‐法と、宮崎大‐工のケースを紹介する(以下、【前】=前期日程、【後】=後期日程の略)。なお、大阪大‐法は図1も参照してほしい。
例1:大阪大‐法
「世界適塾AO入試」導入に伴い後期を募集停止(→④)、京都大‐法【後】(50%増)、神戸大‐法【後】(35%増)、大阪市立大‐法【後】(17%増)などの大幅増に結びついた(→⑤)。
また、前期は募集人員増(213人→225人)のため(→④)、志願者34%増。京都大‐法【前】(5%減)の減少に結びついた(→⑤)。
なお、京都大‐法【後】は2段階選抜の予告倍率(募集人員の約10倍→約15倍)の緩和(→②)、神戸大‐法【後】は前年の10%減の反動(→①)も影響したと見られる
例2:宮崎大‐工
工【前】は、個別試験(以下、2次)に英語を追加したため(→②)、志願者は19%減。2次で英語を課さない大分大‐理工【前】(10%増)、山口大‐工【前】(31%増)、北九州市立大‐国際環境工【前】(31%増)の増加に結びついた(→⑤)。大分大‐理工【前】は募集人員増(238人→248人。→④)、山口大‐工【前】はセ試で国語を課さないこと(→③)も志願者増の要因と見られる。
志願者数最多は2年連続で千葉大。
準難関校の後期が人気集める
表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧にした。例年、国立の難関~準難関校が連なる中、安全志向を反映し、東海地区の工学系志望者の人気を集めた富山大(5%増)のランクインが注目される。
【難関校】16年は「推薦入試」の導入で後期を募集停止し、志願者大幅減(25%減)だった東京大は、前期の志願者がやや増加。16年は文Ⅰ・文Ⅱ・理Ⅱの3科類で2段階選抜が実施されなかったが、17年は全科類で実施。特に、文Ⅰが9%増、文Ⅱが7%増、理Ⅱが12%増の一方、文Ⅲは5%減と、前年の反動が強く出た。
一方、16年は2位だった大阪大は、推薦・AO入試の導入で後期を募集停止したため、志願者3割減で13位に。前期のみでは1%増で、募集人員増の6学部(文・人間科学・外国語・法・経済・医)は医学部医学科を除いて志願者増、募集人員減の3学部(理・工・基礎工)はいずれも志願者減と、ほぼ想定内の結果となった。
京都大はほぼ前年並みだが、大阪大の後期募集停止の影響で、法【後】(特色入試)が志願者5割増のため、前期のみでは2%減。農【前】の募集人員減(セ試を課すAO入試の実施学科を1→6学科に増加)の影響もあった。
表2以外の大学も含めると、難関校では東京工業大(7%増)・一橋大(7%増)・九州大(3%増)が増加、東北大(1%減)・名古屋大(増減なし)・神戸大(1%増)は堅調、北海道大(3%減)が減少した。一橋大は、東京大の併願先として、法・社会の後期が志願者大幅増。18年から後期を募集停止するため、最後のチャンスとして人気を集めたと見られる。東京工業大では、前期のセ試は基準点(950点中600点以上で2次出願可)のみに利用し、2次で合否が決まるため、「国語ショック」で2次逆転狙いの高学力層の人気を集めたものと見られる。
【準難関校】志願者数が最も多い国公立大は、2年連続で千葉大(3%増)。2次で面接や総合問題を「数学・理科」に変更し、対策を立てやすくなった工【後】をはじめ、文・法政経など後期で増加が目立つ。また、6位の横浜国立大は、学部増設(都市科学)を含む全学的な改組を行ったが、やはり経済・経営の後期が志願者増。いずれも難関大の併願先として人気を集めた。
その他の準難関校も、お茶の水女子大(10%増)・筑波大(9%増)・大阪市立大(21%増)が大幅に増加するなど、全体的に「増加~堅調」。一方、志願者が減少したケースは、東京外国語大(7%減)・大阪府立大(3%減)など少数派だ。
【国公立中堅校】各地区の国公立大中堅校では、前述の通り、学部増設を伴わない大規模改組(教員養成以外の課程廃止、文系縮小・理系拡大)を行った国立大で志願者減(山形大・茨城大・鹿児島大・琉球大など)が目立った。一方、学部増設した大学(東京海洋大・新潟大・滋賀大・島根大)はいずれも志願者増。また、安全志向から前年の極端な反動も見られた。特に変動が大きかったおもな大学は次の通り。
[1]国立大
【志願者増】東京海洋大18%増、東京学芸大11%増、静岡大19%増、三重大18%増、京都工芸繊維大12%増、奈良教育大15%増、島根大10%増、山口大18%増、徳島大30%増、高知大22%増、宮崎大10%増
【志願者減】弘前大20%減、秋田大14%減、山形大17%増、茨城大24%減、岐阜大12%減、大阪教育大13%減、奈良女子大14%減、鳥取大22%減、愛媛大15%減、鹿児島大20%減、琉球大14%減
[2]公立大
【志願者増】岩手県立大12%増、横浜市立大13%増、都留文科大34%増、静岡県立大14%増、神戸市外国語大30%増、山口県立大17%増、高知県立大19%増、北九州市立大17%増
【志願者減】釧路公立大18%減、宮城大22%減、秋田県立大12%減、高崎経済大13%増、山梨県立大10%減、福井県立大16%減、公立鳥取環境大27%減、県立広島大13%減、福岡県立大13%減、長崎県立大20%減
表3では、志願者の増加率が高い順に上位10大学を示した。表2と異なり、単科大が9大学を、公立が7大学を占める。1位の神戸市看護大は志願者が2倍超に急増した。前年に志願者が3分の1に激減した反動に加え、神戸大‐医(保健=看護学)の後期縮小も要因となった模様。この他、6大学で前年の志願者大幅減の反動が出ている(ちなみに、昨年は志願者が7倍超に増え、1位だった敦賀市立看護大は62%減)。また、徳島大・神戸市外国語大・奈良県立医科大では大阪大の、香川県立保健医療大は香川大‐医(看護)の、三重県立看護大は岐阜県立看護大の後期募集停止も、志願者大幅増に影響したものと見られる。
前期の志願倍率トップは奈良県立医科大‐医(医)
次は、各入試日程で特に志願倍率(志願者数÷募集人員)が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4~6。同倍率が多数の場合は20に満たず掲載。医学部医学科や看護学科などは1学部として扱う)。なお、「受験者数÷合格者数」で割り出す、実際の倍率を「実質倍率(または競争率)」という。
まず、表4・5の「高倍率の学部等」から見ていこう。前期では、最高倍率の奈良県立医科大‐医(医)【前】など医学科が連なり、医学部人気が落ち着いたとはいえ、難関ぶりは変わらない。公立化した福知山公立大‐地域経営【前】も高倍率となり、文系縮小の受け皿となった模様だ。
後期では募集人員が少なく、実施学部・学科も減っているので、最高倍率(86.2倍)の島根大‐人間科学【後】(新設)など、前期以上の「超高倍率」になるが、欠席率の高さ(前期の入学手続者が欠席するので、志願者の約50%が欠席する)を割り引いて考える必要がある。
ここでも、公立化した福知山公立大‐地域経営【後】、山陽小野田市立山口東京理科大‐工【中】(公立大中期で最高倍率)が超高倍率となり、安全志向で狙われた様子が見て取れる。また、大阪大の後期募集停止の影響などから、京都大‐法【後】、一橋大‐法【後】・社会【後】と、難関大が並ぶのも今年の特徴だ。
一方で、表6のように前期で志願倍率が1倍台のケースもある。例年、医療・看護系の学部・学科が比較的多いのだが、17年入試ではむしろ、秋田大‐理工【前】をはじめ、理・工・農学系統がずらりと並ぶ。また、三重大‐医(看護)【前】の急激な倍率ダウンも目立つが、前年の大幅増(90%増)の反動によるもので、18年は再び揺れ戻す可能性がある。
前期日程の第1段階選抜の
不合格者は3,073人と増加
最後に、前期日程の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。予告した学部(57大学145学部等)に対し、実際に行ったのは25大学40学部等で前年とほぼ同じだったが、第1段階選抜の不合格者は「16年2,745人→17年3,073人」と増加(12%増)した。おもに文系の成績上位層が難関大へ“初志貫徹”出願し、志願者が集中した結果と見られる。
東京大では全6科類で第1段階選抜を行う(16年は6科類中3科類で実施せず)など、不合格者が大幅増(560人→826人:48%増)。また、一橋大でも不合格者が倍近くに増加(189人→357人:89%増)した。
この他、予告大学のうち、16年に第1段階選抜を実施しなかった福井大・信州大・三重大・熊本大が不合格者を出し、16年は不合格者を出した金沢大・島根大・愛媛大・高知大は実施しなかった。
なお、第1段階での不合格者が多かった大学は、東京大・一橋大のほかに、首都大学東京 (387人)、京都大(201人)、一橋大(189人)、熊本大(143人)など。
18年入試の変更点を速報!
一橋大など推薦・AOの導入・拡充続く。
首都大学東京が全学規模の改組を予定!
18年入試は、ここ数年と同じく、一橋大や東京医科歯科大など、難関校を中心に推薦・AO入試を導入・拡充する動きが目立つ。首都大学東京・香川大の全学規模の改組、金沢大(後期)の入学段階で専門を決めない入試方式の導入、「英語・面接重視」の入試科目変更なども注目される。
2次で英語・面接の追加が目立つ。
公立大で学部・学科増設が相次ぐ
ここからは18年国公立大入試の特徴と、志願動向に影響しそうな変更点を見ていこう。
17年入試と同様、20年度以降に始まる予定の「入試改革」(論理的思考力・表現力の重視、多面的・総合的な評価の重視、英語外部検定利用の促進、など)を先取りする変更が多い。
一方、国立大の学部改組は16~17年度ほどではなく、むしろ公立大の学部増設・改組の多さが目立つ(新設学部・学科等の名称は仮称)。
(1)推薦・AO入試の導入・廃止
16年の東京大・京都大、17年の大阪大の推薦・AO入試等の導入に続き、18年は一橋大・東京医科歯科大で推薦入試を拡充する。
一橋大では法・経済・社会の3学部でセ試を課す推薦入試を新規実施(商は従来から実施)。東京医科歯科大では、医(医)でセ試を課す推薦、歯でセ試を課さない推薦を新規実施する。
【推薦入試】埼玉大‐教養・経済[昼]でセ試を課さない推薦を、京都大‐工(建築・物理工)でセ試を課す推薦を導入。一方、千葉大‐園芸、金沢大‐人文学類でセ試を課さない推薦を、信州大‐工、徳島大‐薬でセ試を課す推薦を廃止する。また、金沢大‐学校教育学類・地域創造学類で「セ試を課さない→課す」に移行する。
【AO入試】千葉大‐園芸、京都大‐薬(薬)、徳島大‐薬でセ試を課すAOを、東北大‐医(医、保健=看護学)・歯でセ試を課さないAOを導入。弘前大‐人文社会科学・教育・理工・農学生命科学でAOの募集枠を拡大する。
(2)新設・改組、日程・募集人員の変更
首都大学東京の全学的な改組が注目される(図2)。18年から、文理融合の大きな括りの都市教養学部を4学部(人文社会・法・経済経営・理)に分割し、それぞれ学科を設置。あわせて、都市環境学部は「1学科5コース→6学科」、システムデザイン学部も「1学科5コース→5学科」に改編する。また、香川大でも教育で人間発達環境課程を廃止し、医で学科増設(臨床心理)、学部改組(工→創造工:4→1学科)や学科の統合(経済:3→1学科)も行う。
大学の新設は、公立小松大・長野県立大が予定されている。また、諏訪東京理科大が「私立→公立」へ移行し、「公立諏訪東京理科大(仮称)」へ名称変更する予定。
学部増設は、国立で九州大‐共創、公立では都留文科大‐教養、名古屋市立大‐総合生命理学、島根県立大‐人間文化が予定されている。
一般入試の日程変更では、一橋大‐法・社会、九州大‐歯の後期募集停止、長野大の中期新規実施などが注目される。
(3)入試科目の増減など
学部・学科等に分けず大括りで募集し、入学後に所属を決定する方式の導入が見られる。
金沢大の後期では、学類別の募集とは別に、「後期一括入試(文系・理系)」を導入(図3)。2次は文・理系それぞれの共通問題を受け、同入試による入学者は、2年次から各学域・学類へ配属される。また、九州工業大では、工・情報工の2学部とも、入試時は「学科別→類別募集」に移行。募集単位として、工に5つ、情報工に3つの類を設け「類別入試」を実施。入学後、やはり2年進級時に所属学科を決定する。
入試科目の変更では、2次に英語や小論文、面接などを追加するケースが目立つ。
東京大‐理Ⅲ【前】で面接を追加。埼玉大‐工【前】も、学科により小論文・面接・総合問題を追加。茨城大‐工[昼・夜]【前】【後】で英語を追加、同‐教育【前】でも課程・選修により面接や集団行動を追加する。一方、埼玉大‐理【後】・工【後】で英語を除外、富山大‐芸術文化【前】【後】で面接を除外する。
(4)英語外部検定利用の拡大
推薦・AOでも一般入試でも、英語外部検定の等級・スコアを利用する傾向が強まっている(出願資格、セ試・2次の英語の「見なし得点・満点」、など)。例えば、筑波大は全学群・学類のセ試免除推薦で、金沢大も8学類の一般入試および「後期一括入試」のセ試で、英語外部検定を利用できるようになる。さらに、茨城大‐工[昼・夜]で追加する2次の英語も、外部検定が利用可能だ。
* * *
以上、2月下旬までに判明した、2018年国公立大入試の主な変更点の一部を紹介した。詳細は次号(螢雪時代5月号)の特別付録『国公立大入試科目・配点速報』を見てほしい。さらに今後、各大学が6~7月に発表する「選抜要項」(入試の概略を紹介した冊子)、10~12月に発表する「募集要項(出願書類を備えた正式な入試要項)」などで必ず確認してほしい。
(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2017年4月号)」より転載いたしました。