国公立は東京大・一橋大・大阪大、
私立は早慶・同志社大などが難化か!?
入試本番へ向け、いよいよ受験勉強に熱が入る時期だ。平成20年度は、大学受験生数の減少(5%減:『螢雪時代』編集部推定)を受け、国公私立大の難易や人気度がどう変わるのか。ここでは、高校・予備校の進路指導の先生方へのアンケートを中心に、さまざまな変動要因を総合し、20年一般入試の動向を予測する。
※この記事は『螢雪時代・2008年11月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)
2008年入試の大きな流れを読む!
大学受験生数は約5%の減少、
一般入試の志願者数は国公立2~3%減、私立3~4%減か
4(6)年制大学の受験生数の減少(5%減)を受け、一般入試の志願者数は国公立大で2~3%、私立大で3~4%減少しよう。国立大の後期廃止・縮小の影響で、難関私立大との併願が増えそうだ。学部系統別では、経済・理工・医が人気アップ、文・薬・医療が人気ダウンの見込み。
センター試験の志願者数は
前年比4%減の53万人台か
文部科学省(以下、文科省)発表の『平成19年度学校基本調査速報』によると、19年度の高卒者数は約2%減少したが、大学・短大への現役志願率が年々アップしているため、4(6)年制大学の受験生数(以下、大学受験生数)は69万人でほぼ前年並みだった。20年度は、高卒者数の大幅減(約5%減)が見込まれ、大学受験生数は本誌推定で65万7千人と、前年比で約3万3千人(約5%)減少するものとみられる。
センター試験(以下、セ試)の出願者数はどうなるか。19年度は微増だったが、20年度は受験生数減の影響を受けよう。ただし、私立大のセ試利用は20年も拡大、新規利用大学は18大学(21学部)、既利用大学の実施学部増は26大学26学部で、募集人員は1,116人増加する(19年は1,118人増)。
「螢雪時代」編集部が実施したアンケートにおける高校の先生方の回答では53万人台が多く、平均は53.4万人となる。こうした見通しも考慮し、20年のセ試出願者数は前年比で約4%減の53万人台前半と予測する。
【国公立大】
難関校の「前期集中化」で、
一橋大・大阪大など後期が難化か
20年度のセ試は、19年の平均点大幅ダウンの反動で、国語や数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・Bなどの出題レベルがやや易化する見込み。英語などは難化しそうだが、全体として平均点は多少アップしよう。そのため、受験生がやや「強気出願」に転じ、国公立大へ積極的に出願することが考えられる。
ただし、国公立大の募集人員は前・後期の比率が前期78.8%(19年は78.0%)、後期21.2%(同22.0%)となり、「前期集中化」はますます進んでいる。東京大の後期大幅縮小、名古屋大の後期全廃をはじめ、東北大‐法・教育・薬・医(保健)、九州大‐芸術工、神戸大・徳島大・高知大・札幌医科大・京都府立医科大の各医学科で後期を廃止。これらに伴う志願者減も考えると、国公立大全体の志願者数は2~3%程度減少しよう。
前期は同レベルの大学同士で志願者が分散し、難関校でも多少「広き門」となるケースもあろう。一方、後期実施校には併願先を求めて志願者が集中、特に一橋大・東京工業大・大阪大・神戸大の後期は、東京大・名古屋大から併願者が流入、高倍率の激戦となろう(下の図)。また、北海道大・筑波大・東京医科歯科大・横浜国立大・岡山大・九州工業大などの後期も要注意だ。
20年の国立大全体の入学定員(8月末現在)は322人減少する。大学の統合(大阪大・大阪外国語大→大阪大)、学部増設(和歌山大‐観光、琉球大‐観光産業科学)や金沢大の全学的な改組(学域・学類制へ移行)、地方9大学の医学科の定員増が注目される。
公立大では、大学の統合(長崎県立大・県立長崎シーボルト大→長崎県立大)、京都府立大の学部改組(人間環境・農→生命環境など)と定員増(370人→404人)、青森県立保健大の栄養学科増設と定員増(160人→210人)が注目される。
国公立大の選抜方法の変化(19年→20年:文科省集計)は表1に示した。セ試で5(6)教科7科目を課す大学・学部の募集人員は80,451人→80,388人と微減、全募集人員の約66%を占めるものの「7科目化」はほぼ落ち着いた模様だ。国立大では増加(74,286人→74,547人:東京医科歯科大や大阪大‐外国語などが7科目化)したが、公立大(6,165人→5,841人)では減少した。
国立大の後期縮小の受け皿として、推薦・AO入試の募集枠が拡大。AOは実施学部136→154と大幅増。セ試を課す推薦も実施学部126→135に増加、”プレ前期”として人気を集めそうだ。
【私立大】
大都市圏の難関校に人気集中
2極化がますます進む!?
私立大は19年の志願者増(約4%増:旺文社集計)の反動に加え、国公立大志願者層がやや強気の出願で私立大の併願を減らすことも考えられ、前年比3~4%程度の志願者減が予想される。ただし、難関国立大の前期集中化により、私立大難関校の併願を増やす傾向は強まろう。後期を回避し、セ試利用を活用した「国公立大前期→私立大難関校」の併願パターンも増えそう。就職を考えた大都市圏志向も強まり、2極化はさらに顕著になろう。
私立大の新設予定は10大学。また、新設学部・学科は、認可申請が「学部増設=14大学14学部、学科増設=13大学14学部14学科」、設置届出(4~6月分)が「学部増設=37大学55学部等、学科増設=51大学53学部65学科」にものぼり、全体で約3千人の定員増となる。また、中堅校で合格者を多めに出す傾向が続くと見られ、合格者は3~4%増加し、全体的には易化しよう。
私立大の入試改革では19年と同様、(1)全学部日程入試、(2)一般・セ試併用型、(3)セ試利用の募集回数増加が目立つ。(1)は東北学院大・駒澤大・成蹊大・東京理科大・武蔵大、(2)は青山学院大・東京理科大・星薬科大・愛知大・名城大、(3)は青山学院大・東京女子大・法政大・愛知学院大・西南学院大などで新規実施する。
中でも全学部日程入試は、19年から実施した専修大・法政大・明治大・明治学院大のいずれも多くの志願者を集めた。学内併願のチャンスが増え、他大学との日程重複の心配もなくなるメリットはあるが、募集人員が少なく、従来日程に比べて高倍率となる点に注意したい(表4)。
なお、AO入試は新規実施や募集枠拡大により10%近い志願者増、推薦入試はほぼ前年並みの見込みだが、いずれも合格者増で易化しそうだ。
経済・理工・医が人気アップ、
文・薬・医療が人気ダウンか
学部系統別では、国公立・私立ともに19年に近い志望動向が予想される。就職事情の好転をうけ、経済系は志願者増か。理工系も人気アップが見込まれ、特に生命科学やロボット関連の人気が高いようだ。医は底堅い人気で高嶺安定、国公立大医学科の定員増や私立医学部の学費値下げ(順天堂大‐医、昭和大‐医など)も志願者増の要因となろう。19年で大幅減の教員養成系は、教員採用率の上昇もあり、目的意識の高い女子を中心にやや人気回復か。一方、「文→教員養成」の傾向がみられ、文はやや志願者減の見込み。法は、新司法試験の合格率ダウン(18年48%→19年40%)もあり、志願者増はなさそうだが、各法科大学院の実績(表3)は学部入試にも微妙に影響しよう。
薬は6年制化に伴う敬遠傾向が続き、慶應義塾大‐薬(旧共立薬科大)などを除き、全体的に志願者減で易化しよう。社会福祉、医療・看護もやや志願者減か。医療・看護は新増設ラッシュ(新設予定の私立大10校中8校が医療系学部を有する)による志願者分散もあり、易化しよう。
進路指導の先生方は
20年入試をどう見ているか
進路指導のプロである先生方は、20年入試をどのように捉えているのか。アンケート結果をもとに、基本的な考え方や対応策を示していこう。
A.国公立大志向はどうなりますか?
(1)強まる…16% (2)やや強まる…28% (3)変わらない…52% (4)やや弱まる…4% (4)弱まる…0%
B.私立大志向はどうなりますか?
(1)強まる…4% (2)やや強まる…20% (3)変わらない…52% (4)やや弱まる…20% (4)弱まる…4%
前年の調査と比べ、Aは(1)(2)が減り、(3)に集中。Bは(4)がやや減少、(2)がやや増加。国公立大志向は根強いものの、「前期集中化」や景気回復の影響もあり、大都市圏では私立大志向、特に”ブランド校”志向も強まりを見せている。
C.推薦入試への取り組みについては?
(1)19年とほぼ同様…52% (2)18年よりやや重視…44% (3)18年よりやや軽視…4%
前年と比べ、(1)が56%→52%、(2)が36%→44%となり、推薦もやや重視する方向へ。国公立大で募集人員の後期→推薦・AOへの移行、特に医学科で地域枠推薦の導入が相次いだ影響が大きい。
D.20年入試での併願校数はどうなりますか?
(1)19年とほぼ同数…92% (2)19年よりやや増える…8% (3)19年よりやや減る…0%
前年より(1)が増えた。前出の『学校基本調査速報』に基づき併願率を算出すると、18年→19年で「現役4.4→4.5校、浪人8.3→8.7校」とアップした。20年はセ試の「やや易化」で国公立大志望者は多少強気な出願傾向になりそうだが、後期縮小で私立大難関校との併願は増え、全体として併願校数は前年並みとみられる。
E.AO入試にはどう対応されますか?
(1)積極的にチャンスを生かす…34% (2)徐々にチャンスを生かす…58% (3)ほとんど関心がない…8%
前年より(1)が増え、「国立大のAOは利用したい」との声が目立つ。20年度は国公立大の4割近くがAO入試を実施。後期縮小で「前期と推薦・AO」の2本立て作戦が重要度を増している。
次の記事では、各地区のおもな大学について、20年一般入試の変動要因と難易動向をみていこう。文中、変更点は19年→20年で表記。学部・学科名は略称で「学部(学科)」と記載。国公立大は前期日程=(前)、後期日程=(後) 、中期日程=(中) 、と略記。私立大も入試方式・日程等を略記した。
■地区別に志望動向・難易変動を予測する!■
文中、変更点は19年→20年で表記。学部・学科名は略称で「学部(学科)」と記載。国公立大は前期日程=(前) 、後期日程=(後) 、中期日程=(中) 、と略記。私立大も入試方式・日程等を略記した。
【北海道・東北】東北大で後期縮小、北海道大の後期がやや難化か。
東北学院大で全学部日程を導入、志願者増へ。
<国公立大>
●北海道大 東北大の後期縮小の影響と、19年の志願者減の反動で、教育・法・薬・医(保健)の後期がやや難化しよう。募集人員を後期へシフト((前) 28→20、(後) 12→20)した獣医は前・後期とも難化必至。
●北海道教育大 19年の志願者大幅減の反動で、旭川・釧路・函館の各校はやや志願者増か。学外試験場の新設(仙台:前期のみ)も、影響は小さそうだ。
●旭川医科大 札幌医科大‐医の後期廃止の影響大。また、(1)医(医)で地域枠推薦を導入、(後) 50人→40人に削減、(2)医(医)(前) (後) のセ試で理科2→3科目に、(3)医(看護)(前) の2次で面接追加、(4)医(前) (後) で2段階選抜を新規実施、と志願者減の要因が多い。医・看護とも前期が易化、医の後期がやや難化しよう。
●弘前大 人文・教育・医(保健)・理工の前期で、学科等の第2志望制度を導入、人気アップの要因となろう。ただし、人文(前) (後) は19年の倍率アップの反動でやや易化しそう。医(医)は定員10人増も地域推薦枠を拡大、一般選抜に影響なし。ただし、前期は2段階選抜を廃止、やや志願者増か。
●岩手大 工(前) は2次で理科2→1科目に軽減、志願者増の見込み。教育(前) (後) は19年の倍率低下の反動でやや難化か。札幌に試験場を増設(人文社会科学・工・農の前・後期)するが、弘前大も札幌会場を設置しており、影響は小さいようだ。
●東北大 教育・法・薬・医(保健)で後期を廃止し、前期を増員(法140→160、薬60→65、医〈保健〉110→119)、教育・薬・医(保健)でAO入試を導入。後期が残る文・経済・理に、東京大(前) や学内他学部から併願が集中、難化は必至。また、難関大志向の強まりから、前期は全体に志願者増の見込みで、難易はほぼ前年並みか。ただし、法(前) は2段階選抜の倍率引き締め(約5→4倍)が敬遠材料となろう。
●秋田大 工学資源で学科を分割(環境物質工→環境応用化・生命化)。医(医)で定員10人増、(後) 20人→25人、推薦30人→35人に増員。(前) (後) とも19年の倍率ダウンの反動もあり、やや難化か。
●山形大 医(医)で定員10人増、(前) 60人→70人に増員し、(後) の2次で小論文を除外。19年の倍率ダウンの反動もあり、前・後期とも難化は必至。また、人文(法経政策)が(前) (後) とも2次で小論文→学科試験1科目に変更、対策が立てやすくなる。19年の倍率ダウンの反動もあり、人文(前) 、地域教育文化(後) 、農(前) はやや難化、医(看護)(前) (後) は易化しよう。
●福島大 理工学群(前) の2次で「数学・理科から1→数学・理科必須」に科目増。19年の倍率アップの反動もあり志願者減は必至。経済経営(前) ・行政政策(後) の易化、人間発達文化(前) の難化も予想される。
●札幌医科大 医で後期を廃止し、(前) 60人→75人に増員、地域医療希望者対象の推薦を新設。また、保健医療(前) (後) でセ試を8→7科目に軽減。旭川医科大(前) から志望者が流入、前期はやや難化しよう。
●青森県立保健大 管理栄養士養成の栄養学科を増設、高倍率の激戦となろう。一方、2学科で前期のセ試を負担増(看護4→6科目、理学療法5→6科目)、志願者減の要因となろう。
北見工業大は募集単位を学科別から系別(6学科→3系統)に変更し、(前) 180人→173人・(後) 151人→134人に減員、やや難化か。宮城教育大は前年志願者減の反動で人気アップしよう。釧路公立大は推薦枠拡大で(前) 70人→65人、(中) 135人→125人に削減、やや難化か。福島県立医科大は医で定員10人増も推薦枠を拡大、一般入試に影響なし。
<私立大>
19年は、地区全体で志願者4%減、合格者2%減(旺文社集計。以下同じ)で、倍率は2.0倍と変わらず。20年も志願者減が続き、易化傾向が強まろう。ただし、東北学院大では一般前期で全学部同一試験日の全学部型日程を導入、募集枠が463人(従来日程は673人)と大きく、同地区の国公立大の併願先だけに志願者増は必至。北星学園大・北海学園大も安定。札幌大は経営・法で2月のA日程を減員、3月のB日程とセ試前・後期を増員。北海道医療大はセ試前期で2科目型を、酪農学園大はセ試利用で後期を導入。岩手医科大‐医は定員10人増も地域枠推薦を導入、一般入試に影響なし。東北薬科大は試験場を青森・盛岡・水戸に増設する。
【関東・甲信越】東京医科歯科大・東京工業大・一橋大の後期が激戦化!
青山学院大・東京理科大が台風の目に。
<国公立大>
●茨城大 19年の志願者大幅減の反動で、人文(前) ・理(前) (後) ・工(前) (後) ・農(前) (後) は志願者増の見込み。特に農(前) は65人→56人に減員のため、難化しよう。教育(前) (後) も、セ試を7→6または5科目(選修等による)に軽減、志願者増の要因となろう。
●筑波大 学群・学類の構成を変更して2年目を迎え安定、東京大・東北大の後期縮小の影響を受け、後期はやや難化が見込まれる。特に、医学群で後期を復活(各学類で医5人・看護10人・医療科学3人)、東京大‐理Ⅲ、千葉大‐医の貴重な併願先となろう。
●宇都宮大 19年の倍率アップダウンの反動で、教育(前) (後) ・農(後) の難化、国際(前) の易化が見込まれる。
●群馬大 工〈昼〉は(前) 280人→269人、(後) 80人→70人に減員、やや難化か。前年の反動で、教育(前) (後) ・医(医)(前) (後) の志願者増、社会情報(前) の志願者減が予想される。
●埼玉大 工(前) は2次の科目変更(建設工など4学科で、小論文または総合問題→数学)、教育(前) (後) も19年の反動で志願者増か。また、経済(前) が複線化し、センター入試枠20人(セ試3教科3科目と調査書で選抜。2次なし)を新規実施。私立文系型の受験生が集中し、高倍率の激戦となろう。
●千葉大 東京大・東北大の後期縮小で両校からの併願が増え、文・法経・工など後期は全般的に難化しよう。法科大学院が新司法試験で高合格率(64.5%)をマーク、法経の人気アップにつながろう。
●東京大 後期全体の募集枠を324人→100人に縮小、理Ⅲを除く全科類を共通問題で一括募集(理Ⅲは後期廃止)。セ試=5教科6科目(4→6科目に増加、英語にリスニング追加)、2次=総合科目Ⅰ~Ⅲ(Ⅰ=英語の読解力・記述力をみる、Ⅱ=事象解析への数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・Cの応用力をみる、Ⅲ=文化・社会・科学等の問題を論述)。また、理Ⅲ(前) の2次で面接を廃止。前期は募集人員増(2,729人→2,953人:8%増)を上回る志願者増と、出題内容のレベルアップが予想され、質量ともに難化しよう。ただし、後期は総合科目Ⅱの「数Ⅲ・C」が文科類志望者から敬遠され、一橋大(後) など へ流出しよう。
●東京医科歯科大 東京大‐理Ⅲの後期廃止により、医(医)(後) は志願者急増で難化しよう。一方、医(前) ・歯(前) でセ試6→7科目に増加、医(医)(前) ・歯(歯)(前) で2段階選抜の倍率を5.5倍→4.0倍に引き締めたため、前期はやや志願者減か。
●東京工業大 後期を増員(126人→146人)、第7類(後) でセ試7→5科目に軽減した。東京大の後期縮小の影響もあり、後期は東京大‐理Ⅰ・Ⅱからの併願者が集中、高レベルの激戦となろう。
●一橋大 東京工業大と同じく、東京大の後期縮小の影響で、後期に併願者が集中し、激戦となろう。また、同校の法科大学院が新司法試験で高合格率(63.5%)をマーク、法の人気アップに結びつこう。
●横浜国立大 経済・経営〈昼〉・工の後期は、募集人員に占める比率が高く(経済39%、経営〈昼〉47%、工63%)、東京大・一橋大からの併願対象として狙われよう。
●新潟大 医(医)で定員増、(前) 75人→80人に増員し、若干易化しよう。教育人間科学を「教育学部」に改組し、教員養成課程を定員増(180人→220人)。教育(後) は一部の課程・専修を除き、2次で小論文または面接を除外、志願者増が見込まれる。農は推薦枠拡大で(後) 34人→26人に削減、難化しよう。
●山梨大 医(医)で定員10人増、地域枠推薦を導入し、(後) 70人→60人に減員。それでも後期比率が高い(86%)ため志願者が集中、難化しよう。工(前) で名古屋に試験場を新設、志願者増に結びつこう。
●信州大 繊維で学部改組(7学科→9課程)し、系別募集(9課程を3系列に分類)に変更。入学後に所属課程を選ぶことになる。医(医)で定員10人増、(前) 40人→50人に増員。前期は2段階選抜を廃止、後期も予告倍率を緩和(10倍→20倍)、ともに志願者増で難化しよう。農(前) は食料生産科学・応用生命科学でセ試7→6科目に軽減、志願者増の見込み。
●首都大学東京 都市教養(法学系)、健康福祉(理学療法・作業療法)で後期を廃止。都市教養(人文・社会系)で(前) 135人→145人・(後) 30人→20人、同(経営系)で(前) 154人→179人・(後) 55人→30人。全体的に前期は易化、後期は難化が予想される。ただし、健康福祉(前) はセ試7→6科目に軽減、志願者増の見込み。
東京大の後期縮小の影響は、東京工業大・一橋大などから、電気通信大・東京農工大の後期にも連鎖しよう。この他、前年の反動で、横浜市立大・都留文科大は人気回復しよう。
<私立大>
19年は、地区全体で志願者4%増、合格者5%増で、倍率は3.8→3.7倍にダウンしたが、全学部日程入試を導入した法政大・明治大をはじめ、難関・上位校は軒並み志願者増。慶應義塾大・明治大・立教大・早稲田大などが難化した。
20年は、東京大・東北大の後期縮小、名古屋大の後期全廃で、慶應義塾大・上智大・早稲田大への併願が増加しよう。特に「慶應は難化する」との声が多く、中でも薬学部は高倍率の激戦となろう。また、MARCH(青山学院大・中央大・法政大・明治大・立教大)クラスも引き続き高人気をキープしよう。法政大・明治大の全学部日程入試は、導入2年目で志願者減が予想されるが、一般・セ試併用型やセ試後期など多彩な入試改革を行う青山学院大、一般・セ試併用型と全学部日程入試を兼ねたC方式を導入する東京理科大が台風の目となろう。
一方で、セ試の平均点アップが予想されるため、中堅国公立大志望者が「強気出願」から「日東駒専」クラスの併願を減らすことも想定される。さらに、中堅クラス以下は志願者減に歯止めがかからず「全入」大学・学部も増加、2極化が顕著になろう。
以下、志望動向に影響を与えそうな、各大学のおもな変動要因を紹介する。
●青山学院大 総合文化政策・社会情報の2学部を新設し、経済・経営で2部を廃止。文でセ試利用を新規実施。法・理工でセンタープラス方式(セ試〈法1科目、理工2科目〉+個別2科目)を導入。法・経営・国際政治経済・理工でセ試後期を導入。国際政治経済で、2科目型の「学科同時エントリー方式」を導入。出願時に希望学科を第1~第3志望まで申請、得点上位者から合格学科を決定する。
●亜細亜大 C方式が1回の受験で複数学部の併願可となり、受験料割引制度も導入。B方式(セ試前期)で、配点を外国語重視→均等配点に変更。
●慶應義塾大 難関国立大の後期縮小の影響で、併願者増(特に経済・法・理工)が見込まれる。共立薬科大を統合して薬学部を新設、公募推薦と一般後期を廃止し、一般入試の募集人員を「薬〈6年制〉110人→140人、薬科学〈4年制〉20人→15人」に変更。
●駒澤大 医療健康を除く6学部で全学部統一日程を導入。入試科目は共通だが、同一日の複数出願不可がネックになり、志願者増は小幅に留まりそう。
●成蹊大 全学部日程入試のE方式を導入する。経済・法・文は「国語・英語」、理工は「数学・英語」の2科目型で、文系3学部の間では同時併願が可能。
●専修大 スカラシップ・地区入試を導入。合格者に対し4年間の授業料等を免除、自宅外通学者には奨学金60万円も支給する。
●中央大 理工で生命科学科を増設。学外試験場を首都圏(さいたま・横浜)に増設。総合政策の一般・セ試併用型、法・商の一般入試で学外試験場(8会場)を新設。経済・商のセ試単独方式で3教科型を導入する一方、文で一般・セ試併用型を廃止。
●東海大 北海道東海大・九州東海大を統合し、計7学部を新設。学部数(20学部)では日本最多となる。B方式(2月末実施)を、従来から実施の5学部に加え、7学部で新規実施。3教科受験の高得点2科目判定で、受験科目が同一グループ内(文系または理系)であれば、同一日に3併願まで可能。
●東京女子大 セ試利用で3月募集のB方式後期を新規実施。また、セ試併用型のC方式を、文理(哲学・日本文)・現代文化(地域文化・言語文化)の計4学科で新規実施。B方式後期と同時出願できる。
●東京理科大 全学の昼間学部で、一般・セ試併用のC方式を導入。セ試2科目(国語・外国語)+独自試験2科目(数学・理科。経営は数学のみ)で、独自試験は全学部・学科同一日の共通試験。数・理の選択科目にもよるが、2学科まで併願できる。また、学外試験場を首都圏(さいたま・横浜)に増設。
●東洋大 文(教育)で初等教育専攻を増設。セ試利用のB方式で、工・国際地域・生命科学が前期ベスト2型を、経済が中期を、国際地域・経済2部・法2部が後期を新規実施。C方式(3科目受験の高得点2科目判定)を社会・工・ライフデザインで導入。
●日本大 生物資源科学でセ試利用のC方式を新規実施。法で3月募集のA方式3期、文理の理系6学科でA方式2期を新規実施。
●法政大 グローバル教養学部を新設、工学部を理工・生命理工の2学部に分割。さらに、理工(機械工)に航空機パイロット養成の「航空操縦学専修」を新設、人気を集めよう。社会・国際文化以外の11学部で、セ試利用後期を新規実施する。
●武蔵大 一般・セ試併用方式を廃止、2教科型の全学部入試を導入。試験日が成蹊大E日程と重複、狙い目か。
●明治大 全学部統一入試は、試験場を大阪・広島に増設するが、導入2年目で志願者減か。商のセ試前期で4科目・6科目方式を追加。また、国際日本学部を新設、多数の志願者を集めよう。
●立教大 学部増設(異文化コミュニケーション)と学科増設(コミュニティ福祉‐スポーツウエルネス)を予定。また、理が全学部日程に新規参加する。
●早稲田大 教育に小学校教員養成の初等教育学専攻を新設。難関国立大の後期縮小の影響で併願が増え、政治経済・法や理工系3学部が難化しよう。
【北陸・東海】
後期全廃の名古屋大は易化、全学改組の金沢大は難化の見込み。
南山大・名城大が志願者増か。
<国公立大>
●富山大 前年の反動で、人間発達科学(前) (後)・経済〈昼〉(前) ・医(看護)(前) (後)・芸術文化(前) (後) が志願者増、理(前) (後) が志願者減の見込み。理(前)・工(前) で名古屋に試験場新設、志願者増の要因に。医(医)で2段階選抜を新規予告((前) 5倍・(後) 15倍)、敬遠材料となろう。
●金沢大 従来の学部・学科を「学域・学類」という、学生にとってより柔軟な進路選択が可能になるシステムに改組し、全8学部を3学域に統合。志願者増でやや難化の見込み。学校教育学類で後期廃止、富山大・福井大の教員養成系の後期に影響を及ぼそう。
●福井大 医(医)は前年の志願者減の反動で前・後期とも難化しよう。また、金沢大‐学校教育学類の後期廃止で、教育地域科学(後) に併願者が流入しよう。
●岐阜大 医(医) は定員10人増も地域枠推薦を導入、一般入試に影響なし。19年に志願者が12倍以上に膨れ上がった後期は、名古屋大‐医(医)の後期廃止で併願者が流入、前年並みの激戦となろう。
●静岡大 前年の反動で、人文〈昼〉 (後) ・情報 (後) ・農(前) (後) が志願者減、教育(前) (後) が志願者増か。ただし、人文(経済) (後) は35人→27人に減員、セ試7→6科目への軽減もあり難化は必至。
●浜松医科大 医(看護)で後期廃止、前期は30人→35人に増員、やや易化しよう。医(医)で推薦枠拡大、(前) 60人→55人に削減、難化しよう。
●名古屋大 文・理・医・農で後期を廃止(後期を全廃)、前期で募集人員増(文100→110、理195→220、医〈医〉75→85、医〈保健〉116→131、農134→136)、文で推薦を新規実施。2次科目増(文(前) で地歴・数学から1→各必須、理(前) ・医〈医〉(前) で国語を追加、農(前) で理科1→2科目)もあり、後期廃止学部は倍率低下が見込まれ、やや広き門となろう。一方、19年に後期廃止した法・経済・情報文化・工の前期は、倍率ダウンの反動でやや難化しよう。
●愛知教育大 前年の反動で、前・後期ともに志願者増が予想される。全体の募集人員を後期へシフト(前期621人→554人、後期188人→212人)しており、特に前期は難化が予想される。
●名古屋工業大 名古屋大の後期全廃の影響で、工1部(後) への併願者が増えそう。工2部は(前) 100人→20人に減員、大幅に難化しよう。
●三重大 医(医)は定員10人増も地域枠推薦を拡大。前年の倍率急下降の反動と、名古屋大‐医(医)の後期廃止により、(前) (後) とも難化しよう。工(後) で2次負担増(課さない→物理〈機械工・電気電子工・物理工〉、数学〈情報工〉)、志願者減となろう。
●名古屋市立大 募集人員を経済(前) 115→120・(後) 80→70、芸術工(前) 64→50・(後) 16→22に変更。経済(後) のMコースで2次の数学から数Ⅲ・Cを除外、名古屋大‐経済(前) からの併願が増加し、難化しよう。看護(前) (後) で2段階選抜を廃止、志願者増が見込まれる。
豊橋技術科学大(前) は2次で理科除外も、前年の倍率アップの反動もあり、難化はなさそう。愛知県立看護大は浜松医科大‐医(看護)の後期廃止で併願者増、後期が難化か。三重県立看護大(前) (後) の2次で総合問題を除外も、前年の反動で志願者減の見込み。
<私立大>
19年は、地区全体で志願者3%減、合格者1%増で、倍率は2.4→2.3倍にダウン。愛知大・南山大・名城大などを除き、全体的に易化した。20年は名古屋大の後期全廃が直接、または間接に影響し、南山大‐人文・外国語、名城大‐理工・農などへの併願が増えそうだが、全体的には志願者減が予想される。以下、志望動向に影響しそうな、おもな変動要因を紹介する。
金沢工業大ではバイオ・化学部を新設、一般入試を3→5方式に細分化する一方、セ試利用中期を廃止。愛知大ではセンタープラス方式(セ試2科目+個別1科目)を導入。愛知学院大はセ試利用Ⅱ期を新規実施。中京大では学部増設(国際教養)、文系7学部の一般後期で3教科型を廃止。セ試利用後期で3教科型・5教科型を廃止し、9学部で2教科型を新規実施。中部大は現代教育学部を新設、全マークシートの入試で2科目のB方式を導入(従来は3科目)。名古屋外国語大でプラスセンター方式(セ試2科目+個別:英語)を導入、セ試後期を3→2科目に軽減。日本福祉大では学部増設(健康科学)と改組(情報社会科学→子ども発達・国際福祉開発)。藤田保健衛生大では学部改組(衛生:4学科→医療科学:6学科)、一般後期を新規実施。名城大は農・薬以外の6学部でF方式(セ試3科目+個別1科目)を、理工で全マークシートのM方式を導入する。
【関西】
大阪大・神戸大・大阪市立大の後期が激戦化。
同志社大・立命館大の新設学部に人気集中!?
<国公立大>
19年はほぼ全学で後期を廃止し、前期は倍率ダウンしたが、20年はその反動で教育・法・経済・理・農など、志願者増で若干難化しよう。文系学部の2次の数学で、数Cの出題範囲から「行列とその応用」を除外したのも人気要因となろう。ただし、東京大の前期の募集人員増により、志望者が分散する可能性も。また、薬(前) は前年の反動で志願者減の見込み。
●大阪大 東京大の後期縮小、名古屋大の後期全廃などの影響を受け、後期に併願者が集中、全般的に難化しよう。特に文・理・医(医)の後期は要注意だ。法は学科増設(国際公共政策)と募集人員増((前) 145人→213人・(後) 25人→37人)が志願者増の要因となろう。また、理もコースの新設(生命科学‐生命理学:(前) 10人・(後)20人)が人気を集めよう。
大阪外国語大を統合し、外国語学部を開設。夜間主コースを廃止し、募集人員を(前) 564人→421人、(後) 203人→149人に縮小。入試科目を学内他学部にあわせて大幅に変更(前期=セ試5→7科目、2次で小論文→「国語、地歴または数学」、配点の2次比率を50%→77%にアップ。後期=セ試3→7科目、2次で面接除外)し、2段階選抜を新規予告((前) 約4倍・(後) 約7倍)した。志願者は減少するものの、受験層がレベルアップし、少数激戦化しよう。
●神戸大 大阪大と同様、名古屋大の後期全廃の影響で併願者流入が予想される。前年の志願者減の反動もあり、経営以外の文系学部は前・後期とも志願者増で難化しよう。経営(前) (後) は志願者減の見込み。
医(医)は後期廃止、AO枠を拡大し、(前) 65人→70人に増員、倍率ダウンの見込み。岡山大‐医(医)(後) 、鳥取大‐医(医)(後) への併願が増加しよう。改組(5学科→3学科6コース)の農は、前期がやや志願者増か。海事科学で2段階選抜を新規予告((前) 5倍・(後) 10倍)したが、影響は小さい模様。
●和歌山大 経済(観光)を母体に「観光学部」を新設予定(観光経営・地域再生の2学科。定員110人)。人気分野だけに多くの志願者を集めよう。
一方、他学部は定員減(教育200人→185人、経済410人→330人、システム工300人→285人)。前年の反動で、経済(前) (後)・システム工(後) は易化、教育(前) (後) はやや難化しよう。
●京都府立医科大 医(医)で後期廃止、(前) 80人→100人に増員。セ試が理科3科目で、2段階選抜の倍率を引き締める(約5→4倍)こともあり、少数激戦化しよう。医(看護)(前) (後) はセ試5→6科目(理科1→2科目)に増加、志願者減は必至。
●大阪市立大 名古屋大の後期全廃に伴う大阪大・神戸大の後期人気アップの連鎖で、経済(後)・法(後)・文(後)(各1部)などで志願者増、やや難化しよう。ただし、商1部(前) (後) は前年の反動で志願者大幅減か。医(看護)で後期廃止、大阪府立大‐看護 (後) 、奈良県立医科大‐医(看護)(後) などへの併願が多くなりそうだ。
●大阪府立大 経済 (前) (後)・生命環境科学 (前) (後) は、前年の反動で志願者増の見込み。経済は、和歌山大‐経済(前) (後) からの志望者流入もあろう。一方、看護 (前) の2次で外国語を追加、志願者減の要因となろう。
●奈良県立医科大 医(医)は、(前) (後) でセ試7→8科目(理科2→3科目)に増加、(前) 75人→65人に削減し、(後) 20人→30人に拡大(内、地域枠10人を新設)。神戸大‐医(医)、京都府立医科大‐医(医)の後期廃止も影響し、前期が易化、後期が難化しよう。医(看護)(前) (後) は、前年の反動で志願者大幅増の見込み。
滋賀大は教育が前年の反動で志願者増か。滋賀医科大は医・看護とも前年の反動で志願者大幅減の見込み。京都教育大・奈良教育大は前期が安定、後期は志願者減の見込み。京都工芸繊維大は、19年に募集人員を前期重視型とした影響が続き、前期はやや易化しよう。大阪教育大は安定。奈良女子大は、理(数学・物理科学・情報科学)(前) が2次負担増(理科1→2科目)で志願者減か。兵庫教育大は鳴門教育大への志望者流出で、特に後期が大幅減の見込み。
滋賀県立大は工で電子システム工学科を増設し、(前) 60人→75人、(後) 36人→45人に増員。前期は志願者増の見込み。京都府立大は4学部(文・福祉社会・人間環境・農)→3学部(文・公共政策・生命環境)に改組。大阪大‐外国語の科目負担増や定員減の影響で、セ試が前期4科目・後期3科目の神戸市外国語大は、私立文系型の受験層の人気を集めそう。兵庫県立大は前年の入試結果から、経済(前) →経営(前) に志願者が移行しよう。神戸大・京都府立医科大・徳島大の各医学科の後期廃止を受け、和歌山県立医科大-医(医)は前期が易化、後期が難化しよう。
<私立大>
19年は、地区全体で志願者8%増、合格者1%減で、倍率は3.3→3.6倍にアップ。「関関同立・産近甲龍」の上位校グループがそろって倍率アップ、3月の後期募集まで満遍なく志願者を集めた。
20年は、国公立大の「前期集中化」の影響を受け、同志社大・立命館大・関西大・関西学院大は国公立大志願者が併願を増やし、いずれも19年に続き志願者増が予想される。特に、新設学部(同志社大‐生命医科学・スポーツ健康科学、立命館大‐生命科学・薬、関西学院大‐人間福祉)は注目度が高く、かなりの人気を集めよう。また、立命館大‐薬の新設の影響で、京都薬科大、同志社女子大‐薬など、近隣の薬学部は志願者が分散し、易化しよう。
一方、「産近甲龍」では、龍谷大(セ試利用枠を拡大、特待生制度を導入)は志願者増が見込まれるが、京都産業大・近畿大・甲南大は横ばいからやや志願者減、大阪経済大・大阪工業大などの中堅クラスは志願者減が見込まれ、「産近甲龍」を境に2極化が進行しよう。
以下、志望動向に影響を与えそうな、各大学のおもな変動要因を紹介する。
●京都産業大 コンピュータ理工学部を新設。一般・セ試併用のAC方式を、3科目型のA・AS方式と同日実施に変更(19年は2科目型のB方式と同日)。A方式の配点を均等配点(各100点の300点満点)に統一(従来は経済・経営・法・文化が国・英重視、外国語が英語重視の傾斜配点)。
●同志社大 生命医科学・スポーツ健康科学の2学部を新設。工を「理工学部」に改組・再編。従来の工B方式をもとに全学部日程(理系)を新規実施。理工の全学部日程・個別日程で、類似分野の学科について、同一試験日の第2志望を可とするなど、理系受験生を対象とした入試改革が目立つ。また、一般入試の全学部日程で、学外試験場を高崎・静岡・米子・松山・鹿児島に増設。積極的な全国展開として注目される。なお、前年の結果をみて、一般入試は「商→経済」に志願者が移行し、倍率が平準化しよう。
●立命館大 生命科学・薬の2学部を新設。映像でセ試利用を新規実施。文・法・経済・経営・産業社会・政策科学のセ試併用入試(一般・セ試併用)で5教科型を導入。経営・情報理工・生命科学のセ試利用で7科目型を導入する。なお、前年の入試結果から、一般・セ試利用ともに経済が狙われよう。
●龍谷大 セ試利用前期を全学で148人→264人に増員し、成績上位者(全学で計82人)対象の特待生制度を導入。志願者大幅増の要因となろう。
●大阪医科大 一般入試で3月実施の後期を導入。後期日程を廃止した神戸大・京都府立医科大の各医学科からの併願者を集めよう。
●大阪工業大 一般・セ試併用型の前期AC日程・BC日程を新規実施、セ試3科目+個別3科目で合否判定する。それぞれA・B日程に出願する場合のみ同時併願でき、単独での出願はできない。
●関西大 一般入試を「S・S2日程→全学部日程、A・D・E日程→学部個別日程、後期B日程→後期日程」に名称変更。政策創造で漢英方式(漢文・英語)を、文で国数方式(2科目型)を導入。セ試中期(一般・セ試併用)の個別試験を全学部日程の指定科目利用に変更(従来は別日程で実施)し、募集人員を文10→20、社会20→40、システム理工30→55、環境都市工25→33、化学生命工25→40に拡大、政策創造で新規実施(10人)。自動的に学内併願のチャンスを増やせるため、人気を集めよう。
●関西外国語大 公募推薦・一般入試の英語で、リスニング (10分)を新たに課す。大阪大‐外国語の科目負担増などの影響で、志願者増が見込まれる。
●近畿大 前期B日程で法・経済・経営・理工・工・生物理工・農の7学部に高得点科目重視方式を導入(高得点科目を自動的に2倍)。法・経済・経営のC方式セ試前期を4→3科目に負担減。ただし、法・経済・経営は前年の志願者大幅増の反動が予想される。生物理工の一般入試全日程で、数学に代えて国語選択が可能になり、女子志願者が増加しよう。
●桃山学院大 文を「国際教養学部」に改組。前期B日程で、3教科型を廃止し2教科型に統一。
●関西学院大 人間福祉学部を新設。一般入試で「関学独自方式」を、F・A方式と別日程で新規実施。法・経済・商・人間福祉で英語・数学型を、神・総合政策で英語・小論文型を、神以外の文系7学部で「セ試1~2科目+英語」を課すセンター併用型〈英語〉を導入。文が募集単位を「学科別→専修別」に細分化、セ試利用3月を10人→26人に増員。社会でセ試利用3月を新規実施、セ試利用1月を50人→67人に増員。前年倍率ダウンの反動もあり、文・社会の志願者は増加しよう。また、F方式の試験場を山口・大分・長崎・熊本・鹿児島に増設、九州方面への集中的な進出で、国公立大志望者の併願が増加しよう。
●甲南大 知能情報学部を新設、多くの志願者を集めよう。文・経済でB日程C方式(3月募集の一般・セ試併用)を導入。セ試利用C日程で、文が前期2・4教科型を、法が後期2教科型を、EBA総合コースが前期を新規実施する。
●神戸学院大 栄養・薬で一般・セ試併用型のAC・BC日程を新規実施。A日程もしくはB日程に出願する場合のみ同時併願でき、単独での出願は不可。
【中国・四国】
広島大・香川大・広島修道大が志願者増か。
徳島大・高知大の医学科の後期廃止が影響大。
<国公立大>
●鳥取大 農で(前) 156人→141人に削減、(後) 27人→32人に拡大。(後) は19年の倍率急下降の反動に加え、生物資源環境で2次(面接)を除外、難化しよう。また、19年の倍率アップ・ダウンの反動で、医(医)(前) は志願者減、工(後) は志願者増の見込み。
●島根大 医(医)(前) のセ試で、英語にリスニングを追加。19年の倍率アップの反動で、医(看護)(前) (後) 、総合理工(前) (後) は志願者減の見込み
●岡山大 前年の反動で、文(前) (後) ・理(前) ・歯(前) (後) が志願者減、医(医)(前) が志願者増の見込み。ただし、文(後) は推薦枠拡大で40人→30人に減員、少数激戦化しよう。経済〈昼〉(前) も推薦枠拡大で150人→135人に減員、難化の要因となろう。医(医)(後) は、神戸大‐医(医)(前) からの併願が増加しよう。
●広島大 19年の志願者減の反動で、文(後) ・経済(前) (後) ・医(保健)(前) ・薬(前) の志願者増が予想される。一方、医(医)(前) ・歯(歯)(前) は2次で面接を追加、生物生産(後) は2次で「総合問題600点→面接300点」に変更。19年の倍率アップの反動もあり、いずれも志願者減の見込み。教育(第4類=人間生活系)(前) (後) のセ試科目増(5→7科目)も敬遠材料となろう。
●山口大 工はAO枠拡大で(前) 342人→323人、(後) 114人→96人に減員、(前) で学外試験場を新設(大阪)。(前) (後) ともやや難化か。経済(後) もAO枠拡大で70人→60人に減員、激戦化しよう。一方、経済(前) は2次を「数学・英語必須→数学・英語から1」に軽減、志願者増の要因となろう。理(後) (物理・情報科学)も2次で「数学・理科→面接」に軽減するが、前年の志願者大幅増の反動もあり、志願者はほぼ前年並みか。
●徳島大 医(医)で後期を廃止、地域枠推薦の新規実施とともに、(前) 60人→65人に増員、やや易化しよう。工〈夜〉も後期廃止、(前) 22人→32人に拡大、易化は必至。一方、前年の反動で、医(保健)(前) ・歯(前) (後) は志願者増の見込み。
●香川大 前年の反動で法〈昼〉(前)・医(医)(前) (後)・農(前) (後) が志願者増の見込み。医(医) (後) は徳島大‐医(医)の、医(看護)(後) は愛媛大‐医(看護)の後期廃止の影響で激戦化は必至。工(後)は前年の反動に加え、推薦枠拡大で65人→52人に減員、志願者減の見込み。
●愛媛大 前年の反動で教育(前) (後)・農(前) (後) の志願者減、理(前) ・医(医)(前) の志願者増が予想される。農はAO導入で(前) 100人→94人・(後) 30人→24人に減員、教育(後) もAO・推薦枠拡大で57人→44人に減員のため、難易は前年並みか。医(医)(後) は徳島大‐医(医)、高知大‐医(医)の後期廃止の影響で激戦化しよう。医(看護)で後期廃止、(前) 25人→33人に増員し、セ試7→4科目に軽減、前期は志願者大幅増の見込み。工(後) は2次で「面接→数学」に変更、志願者増の要因となろう。
●高知大 医(医)で後期廃止、地域枠推薦を導入し、(前) 30人→50人に増員。2次の「数学・英語→問題解決能力試験」の変更で敬遠され、易化しよう。理は3→2学科に統合、学科別募集から学部一括募集に移行、(前) 144人→160人、(後) 60人→30人に変更。前期が易化、後期で難化しよう。人文(前) ではセ試を6→3科目に軽減した国際コミュニケーションが人気を集めよう。また、前年の反動で農(前) (後) の志願者増、医(看護)(前) の志願者減が見込まれる。
●岡山県立大 情報工は中期に加え前期(38人)を導入、香川大‐工(前) 、兵庫県立大‐工(前) などに若干影響しよう。中期は99人→61人に削減も、セ試を7→6科目に軽減、情報通信工・情報システム工2学科の2次で理科除外、志願者増でかなり難化しよう。
鳴門教育大は前年に志願者がほぼ半減した反動で人気アップ、兵庫教育大から志望者が流入しよう。島根県立大は総合政策(後) でセ試を1→2科目に負担増、志願者減の見込み。下関市立大・山口県立大も、前年の反動で志願者減が予想される。愛媛県立医療技術大は、愛媛大‐医(看護)の後期廃止の影響で、前期は易化、後期は併願者増で難化しよう。
<私立大>
19年入試では、地区全体で志願者3%減、合格者は前年並み、倍率は2.0→1.9倍にダウンと、全般的に易化。20年では、岡山理科大は一般前期で2科目型のSAB方式を導入、一般・セ試併用のSAC方式を廃止。広島修道大は、成績優秀者対象のスカラシップの募集枠拡大(30人→37人)、スカラシップ志願書による出願を廃止し、一般前期の全志願者を対象としたため、志願者増が予想される。徳島文理大では看護学科を増設。松山大では経済のセ試利用入試で後期を新規実施する。
【九州】
九州大はやや志願者減、長崎大・宮崎大が志願者増か。
西南学院大は多彩な入試改革で人気回復!?
<国公立大>
●福岡教育大 初等教育(前) の2次を、2科目→1科目または小論文など(選修・コースによって異なる)に軽減。志願者増の要因となろう。
●九州大 医(医)(前) (後) でセ試7→8科目(理科2→3科目)に増加、少数激戦化しよう。芸術工で後期廃止、(前) 180人→141人に削減(AOの実施学科を2→5に)。前期は音響設計以外の4学科の2次で「理科・実技→理科2科目」に変更、難化しよう。前年の反動で、文(前) (後)・教育(前) (後) の志願者増、法(前) (後)・経済(前) (後)・理(後)・工(後) の志願者減も予想される。
●九州工業大 工で学科分割(物質工→応用化学・マテリアル工)、学科新設(総合システム工)。九州大‐芸術工の後期廃止の影響で、工(後) は志願者増で難化しよう。ただし、工(前)・情報工(前) は北九州市立大‐国際環境工(前) の募集人員増もあり、やや易化か。
●佐賀大 経済は推薦枠拡大で(前) 155人→135人に削減、やや難化しよう。医(医・看護)(前) は前年の倍率ダウンの反動でやや難化の見込み、(後) は2次の面接点数化(段階評価→180点)が敬遠材料になろう。
●長崎大 教育で情報文化教育課程を廃止、教員養成課程を(前) 105人→127人、(後) 19人→23人に拡大(推薦・AO枠も拡大)、やや志願者増の見込み。医(医)(前) (後) は九州大‐医のセ試8科目化の影響で志願者増、AO地域枠新設で(後) 25人→20人に削減、後期は難化か。環境科学でセ試を軽減((前) 7→6科目、(後)7→5または4科目)、志願者増が見込まれる。
●熊本大 薬は6年制の薬学科で(前) 40人→45人、(後) 15人→10人に変更、4年制の創薬・生命薬科学科で後期を新規実施(10人)。前年の志願者減の反動もあり、やや人気回復か。一方、前年の志願者大幅増の反動で理(前) ・工(前) (後)・医(医)(前) が易化しよう。
●大分大 経済(後) はセ試6→5科目に軽減、難化しよう。19年の志願者大幅減の反動で、教育福祉科学(前) (後) ・工(前) が志願者増か。一方、医(看護)(前) (後) は19年の志願者倍増の反動で、大分県立看護科学大・宮崎県立看護大などへ志望者が流出しよう。
●宮崎大 教育文化で、教員養成課程を拡大(定員100人→150人)し、他の課程を統合・縮小(3→1課程、定員130人→80人)。前年の倍率ダウンの反動もあり、やや志願者増か。医(看護)(前) (後) で2段階選抜を廃止、志願者増の見込み。工(後) の3学科と農(後) の2学科で2次の面接→理科に変更。対策が立てやすくなり、志願者増の要因に。工(前) ・農(前) は前年の志願者大幅増の反動で易化しよう。
●鹿児島大 水産は募集人員を後期に移し((前) 108人→96人、(後) 28人→38人)、前期はやや難化しよう。歯は(前) の2次で数学に数Ⅲ・Cを追加、(後) でセ試4→7科目に負担増、いずれも志願者減の見込み。前年の反動で、教育(前) (後) ・理(前) (後)・工(後) はやや易化、医(医・保健)(前) (後) ・農(前) はやや難化しよう。
●琉球大 法文(産業経営・観光科学)を母体に「観光産業科学部」を新設し、産業経営〈昼〉45人→60人、観光科学40人→60人に定員増。人気分野だけに多くの志願者を集めよう。
●北九州市立大 前年の反動で経済〈昼〉(後) ・文〈昼〉(後) ・外国語〈昼〉(後) は易化、法〈昼〉(後) は難化しよう。国際環境工で学科分割(環境科学プロセス工→エネルギー循環化学・環境生命工)し、(前) 110人→128人、(後) 55人→72人に増員。志願者増に結びつこう。
●長崎県立大 長崎県立大と県立長崎シーボルト大が統合、新「長崎県立大」に。経済(前) (後) は前年倍率ダウンの反動に加え、AO導入で(前) 225人→210人、(後) 90人→72人に削減、やや難化しよう。
●熊本県立大 環境共生を1学科3専攻→3学科(環境資源・居住環境・食健康科学)に改組。総合管理はAO枠拡大で前期B方式を80人→60人に減員、同方式の難化が見込まれる。
<私立大>
19年入試では地区全体で志願者1%減、合格者2%増、倍率は2.3→2.2倍にダウン。20年も志願者減が続き、易化傾向が強まろう。ただし、西南学院大は、神以外の6学部でセ試後期を、経済で一般・セ試併用型を導入、文の一般入試で英語のリスニング廃止と多彩な入試改革を行い、志願者増が予想される。福岡大は、理の学科横断教育「インスティテュート(社会数理・情報、ナノサイエンス)」新設が目立つ程度だが、地区の国公立大の併願先として人気安定か。この他、九州産業大は経済〈昼〉の前期3科目でB方式(最高得点科目を2倍)を、経営のセ試前期でB方式(国語必須の3科目)を廃止。久留米大は経済で3月募集を導入した。
(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2007年11月号)」より転載いたしました。