法科大学院は、旧司法試験の“点による選抜”から“プロセスによる養成”といった司法制度改革の基本理念の下、法曹養成の中核的な教育機関として16年度に創設された。
一方、「司法試験予備試験」(予備試験)は旧司法試験の廃止に伴い、経済的事情などで法科大学院に進めない者にも法曹資格の道を開くために23年から実施されている。
法科大学院の入試状況をみると、司法試験の合格率の低迷や弁護士の就職難などから低調傾向にあり、26年度の入学定員、志願者数、受験者数、入学者数はいずれも過去最低を更新。これに対し、予備試験の出願者数は1万2,622人で、初めて法科大学院を上回った。
ここでは、“募集停止”が急増している法科大学院入試や予備試験などについてまとめた。
* * *
◆ 入学定員の削減
法科大学院の入学定員は、創設時の16年度(法科大学院募集校数68校)が5,590人で、17年度~19年度(募集校数:17年度~22年度74校)の5,825人を最多に、20年度5,795人、21年度5,765人と創設から5年間は5,000人台後半で推移していた。
しかし、中教審の法科大学院特別委員会(以下、法科特別委)の『法科大学院教育の質の向上のための改善方策について』(21年4月。以下、『21年改善方策』)の提言を受け、22年度以降は多くの法科大学院で入学定員(募集人員)の削減等が図られた。
その結果、入学定員は22年度に4,909人と5,000人を割り、23年度には募集停止1校(募集校数73校)もあって4,571人、24年度(同)は4,484人、25年度には廃止1校、募集停止4校(募集校数69校)などで4,261人になった。さらに26年度は募集停止2校(募集校数67校)と定員削減が相俟って、入学定員は3,809人と4,000人台を割り込み、ピーク時(17年度~19年度:5,825人)の約65%まで減員された。(図1参照)
なお、26年度の入学定員「100人以上」の法科大学院は国立2校、私立6校。私立は25年度「100人以上」の8校のうち、3校が削減(130人→ 100人/100人→ 40人、70人)した。
◆ 募集停止、統廃合
法科大学院の入学定員の適正化や組織の見直し等については、前述のように中教審の改善提言等を踏まえ、22年度からこれまでに全ての法科大学院で入学定員の削減等が実施されてきた。そうした中で26年度までに、次の7校が募集停止や統廃合を実施している。
なお、急増している27年度からの募集停止については、後述する。
1.23年度から募集停止(1校)
① 姫路獨協大
* 25年3月31日付け(24年度最終日)をもって、法科大学院を「廃止」。
2.25年度から募集停止(4校)
① 大宮法科大学院大
* 桐蔭横浜大と「統合」(統合作業:24年4月~28年3月を目途)、「桐蔭法科大学院」として運営。
② 明治学院大 / ③ 駿河台大 / ④ 神戸学院大
3.26年度から募集停止(2校)
① 東北学院大 / ② 大阪学院大
法科大学院の志願者数(延べ数。以下、同)は、創設された16年度の7万2,800人を最多に、17・18年度は約4万人まで一気に激減した。
19年度は前年度より12%ほど増加して約4万5,000人まで回復したが、その後は20年度に4万人割れ、21年度に3万人割れと大幅に減少。22・23年度は2万人台前半を維持したものの、24年度は2万人割れ、25年度は1万人台前半まで減少し、26年度は1万1,450人と、創設時の“15.7%”まで激減した。(図1参照)
志願倍率(志願者数÷入学定員)は、入学定員の削減以上に志願者数が大幅に減少しているため、低下傾向が続いている。
志願倍率は16年度の13.0倍を最高に、17年度~20年度は7倍前後、21年度~23年度は5倍前後であったが、24年度は4倍台、25年度は3倍台になり、26年度は過去最低の3.0倍で、16年度(創設時)の4分の1以下まで低下している。(図1参照)
受験者数(延べ数。以下、同)は、前記の志願者数とほぼ同様の動きで減少している。
受験者数は創設当初の16年度の4万810人を最多に、17・18年度は約3万人まで急激に減少した。19・20年度は若干増加して3万1,000人台であったが、21年度~23年度は2万人台で毎年度減少。24年度は約1万7,000人、25年度は約1万2,000人で、26年度はさらに減少して1万267人と創設時の4分の1程度まで減少している。(図2参照)
合格者数(延べ数。以下、同)は、16年度の9,171人から18年度の1万6人まで増加し、その後は毎年度減少している。19年度~21年度は9,000人台、22・23年度は7,000人台で、24年度は6,500人台、25年度5,600人台に減少。26年度はさらに減少し、ピーク時(18年度)より4,867人(48.6%)少ない5,139人である。(図2参照)
競争倍率(受験者数÷合格者数)は、受験者数の減少に連動して、前述した志願倍率とほぼ同様の傾向を示している。
競争倍率は16年度の4.45倍を最高に、17年度~20年度は3倍前後、21年度~23年度は2倍台後半に低下。23年度はやや上昇したものの、24年度2.53倍、25年度2.20倍、26年度2.00倍で、3年連続低下。16年度の2分の1以下まで低下している。(図2参照)
◆ 競争性の確保
中教審の法科特別委は『21年改善方策』で、入学者の質保証に係る入学者選抜の競争性の観点から、「相応の競争原理がはたらき、適正な入学者選抜が確保できる」と考えられる競争倍率は“2倍以上”が必要と指摘している。
“競争倍率2倍未満”の法科大学院は、21年度42校(74校中)、22年度40校(同)にのぼり、数年前は半数以上の法科大学院が競争的環境とは言い難い状況で入試を行っていた。
そうした中、各法科大学院は中教審の『21年改善方策』提言を受けて定員削減を行った。その結果、“競争倍率2倍未満”の法科大学院は、23年度19校(73校中)、24年度13校(同)、25年度7校(69校中)と改善されたが、26年度は23校(67校中)に激増。特に国立大は25年度0校から5校に急増した。なお、私立大は25年度7校から18校に増加。(表1参照)
入学者数は、これまで最多の18年度(5,784人:前年度より240人、4.3%増)以外、毎年度減少している。
入学者数の推移をみると、16年度~19年度まで、17年度の約5,500人を除き5,700人台、20年度は約5,400人である。21・22年度は4,000人台で、23年度3,620人、24年度3,150人と、23・24年度は3,000人台。25年度は2,698人で2,000人台後半、26年度は2,272人で18年度ピーク時の39.3%まで減少した。(図3参照)
◆「法学未修者」、「法学既修者」別の入学状況
“多様な人材養成”を目指す「法学未修者コース」(3年制。以下、未修者コース)の入学者数の推移をみると、16年度~18年度まで増加し、19年度以降は毎年度減少している。未修者コースの入学者数は、18年度の3,605人(全入学者数に占める割合62.3%)をピークに、19・20年度は3,000人台(同60%強)、21・22年度は2,000人台(同50%台)である。23年度の未修者コースは1,704人(同47.1%)となり、「法学既修者コース」(2年制。以下、既修者コース)の入学者数(1,916人、占有率52.9%)を創設以来、初めて下回った。
24年度は未修者コース1,325人(占有率42.1%)、既修者コース1,825人(同57.9%)/25年度は未修者コース1,081人(同40.1%)、既修者コース1,617人(同59.9%) /26年度は未修者コース811人(同35.7%)、既修者コース1,461人(同64.3%)で、未修者コースの入学者はピーク時の22.5%まで減少している。(図3参照)
◆「社会人」の入学状況
法科大学院入学者のうち、「社会人」入学者数と、その割合状況の概観は次のとおりである。
「社会人」入学者数は16年度の2,792人を最多に、18年度~21年度が1,000人台、22年度に1,000人を割り、26年度は422人で、16年度の15.1%まで激減している。
法科大学院の入学定員充足率(入学者数÷入学定員×100)を全体の平均でみると、創設時の16年度のみが103.2%で定員を充たしているが、その後は17年度~20年度90%台、21・22年度80%台、23・24年度70%台、25年度60%台、26年度は59.6%と60%を割り込み、16年度を除き各年度とも“入学定員割れ”状態である。(図4参照)
法科大学院ごとに、最近の入学定員充足率をみてみる。
まず、充足率100%以上の法科大院は、21年度15校(74校中) → 22年度11校(同) → 23年度15校(73校中) → 24年度10校(同) → 25年度5校(69校中) → 26年度6校(67校中)と、26年度は21年度の4割までに減っている。26年度の充足率100%以上の6校は、千葉大(充足率110%)/首都大学東京(同108%)/一橋大(同104%)/筑波大(同103%)/京都大(同101%)/大阪大(同100%)で、国立5校、公立1校である。(表1・図5参照)
次に、充足率100%未満、つまり“入学定員割れ”の法科大学院は、21年度59校(募集校数に占める割合79.7%) → 22年度63校(同85.1%) → 23年度58校(79.5%) → 24年度63校(同86.3%) → 25年度64校(同92.8%) → 26年度61校(同91.0%)と、25・26年度は9割以上が“入学定員割れ”状態である。(表1・図5参照)
また、 “充足率50%未満”の校数は、21年度13校(募集校数に占める割合17.6%) → 22年度13校(同17.6%) → 23年度21校(28.8%) → 24年度35校(同47.9%) → 25年度40校(同58.0%)
→ 26年度44校(同65.7%)と、23年度から急増している。(表1・図5参照)
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司法試験の受験資格が得られる「司法試験予備試験」(以下、予備試験)は、旧司法試験(18年~23年まで新司法試験と並行実施)の廃止に伴い、23年から実施されている。
予備試験は、経済的事情や既に実社会で十分な法律に関する実務を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する道を開くために設けられた、いわば法科大学院の“例外的ルート”に当たる。
予備試験は、短答式試験(5月)/論文式試験(7月)/口述試験(10月)の3段階で行われ、最終合格発表は11月上旬。予備試験合格者は、法科大学院修了者と同等の資格で翌年から司法試験の受験が可能で、受験回数等も次のように法科大学院修了者と同様の扱いである。
◆ 司法試験の受験回数等
法科大学院修了もしくは予備試験合格後、最初の4月1日から5年の期間内は司法試験を毎回受験することができる(改正司法試験法:26年10月1日施行)。
23年に実施された第1回目の予備試験は、出願者数8,971人/ 受験者数6,477人(最初の短答式試験。以下、同)/最終合格者数116人で、合格率(最終合格者数÷短答式受験者数。以下、同)“1.8%”と、旧司法試験の合格率(17年までの単独実施時の合格率は2~3%台)よりも厳しい“超難関”試験であった。
24年実施の第2回予備試験は、出願者数9,118人(前年比1.6%増)/ 受験者数7,183人(同10.9%増)/最終合格者数219人(同88.8%増)で、合格率は23年より1.2ポイントアップの3.0%に伸びた。
第3回目の25年予備試験は、出願者数1万1,255人(同23.4%増)/受験者数9,224人(同28.4%増)/最終合格者数351人(同60.3%増)で、合格率は24年より0.8ポイントアップの3.8%。出願者数は初の1万人の大台に乗り、25年度法科大学院の志願者数1万3,924人に迫る勢いであった。
導入4年目に当たる26年予備試験の出願者数は25年より1,367人、12.1%増の1万2,622人/受験者数は25年より1,123人、12.2%増の1万347人で、いずれも26年度法科大学院の志願者数1万1,450人と受験者数1万267人を初めて上回った。(図6参照)
法科大学院の志願者は、法学既修・未修に関わらず、「法科大学院全国統一適性試験」(適性試験)を受験しなければならない。出題内容は論理的判断力、分析的判断力、長文読解力、表現力の4部構成で、法科大学院入試の出願時に試験成績を提出する。
各法科大学院では適性試験の統一的な入学最低基準点について、中教審の法科特別委の『21年改善方策』(21年4月)の提言を受け、22年度以降は適性試験の総受験者の“下位15%程度”に該当する受験者層の成績を目安として設定しているようである。
この適性試験の実受験者数(適性試験は年2回受験可能)と予備試験の受験者数の推移は、次のようになっている。
・「適性試験」実受験者数:23年7,249人 → 24年5,967人(前年比17.7%減) → 25年4,945人(同17.1%減)/・「予備試験」受験者数:23年6,477人 → 24年7,183人(前年比10.9%増) → 25年9,224人(同28.4%増) → 26年1万347人(同12.2%増)
適性試験の実受験者数は“減少”傾向、予備試験の受験者数は“増加”傾向にある。
また、予備試験の受験者増は、「学部在学中」と「法科大学院在学中」(いずれも、出願時。以下、同)の学生受験者によるものであることが目立つ。(図6・図7参照)
◆ 受験者数:学部生・法科大学院生の割合が“増加”傾向
予備試験の受験者の内訳をみると、「学部在学中」と「法科大学院在学中」の全合格者数に占める割合が23年22.1% → 24年30.8% → 25年43.1%と、“増加”傾向にある。
また、学部生に比べ、法科大学院生の増加率の伸びが目立つ。(図7参照)
◆ 合格者数:学部生の割合、“ほぼ一定”。法科大学院生は“増加”傾向
予備試験の合格者の内訳をみると、「学部在学中」の割合は全合格者数の30%台前半で推移しているのに対し、「法科大学院在学中」の割合は23年5.2% → 24年27.9% → 25年46.7%と、急激に増加している。(図8参照)
25年の予備試験の合格者数は351人であるが、そのうち、予備試験の出願時に「学部在学中」であった者は107人、「法科大学院在学中」の者は164人であった。
◆ 出願時、学部生の合格者107人の“約8割”が上位5校に集中
予備試験の出願時に学部生であった合格者107人の所属大学をみると、東京大41人(合格者数107人に占める割合38.3%)/中央大19人(同17.8%)/慶應義塾大18人(同16.8%)/一橋大6人(同5.6%)/京都大5人(同4.7%)/その他<12校>18人(同16.8%)となっており、合格者数の83.2%が上位5校で占められている。(図9参照)
◆ 出願時、法科大学院生の合格者164人の“約7割”が上位5校に集中
予備試験の出願時に法科大学院生であった合格者164人の所属大学をみると、東京大43人(合格者数164人に占める割合26.2%)/慶應義塾大29人(同17.7%)/中央大15人(同9.1%)/一橋大13人(同7.9%)/京都大12人(同7.3%)/その他<25校>52人(同31.7%)で、合格者数の68.2%が上位5校の法科大学院に集中している。(図10参照)
ところで、在学中に予備試験に合格した学部生と法科大学院生が所属する大学をみると、学部生、法科大学院生それぞれの合格者数上位5校の顔ぶれは同じであり、合格者数の順位も一部を除きそれぞれ同じである。(図9・図10参照)
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ここまで、法科大学院の入試状況と予備試験の実施状況を中心に、その実態をみてきた。
ここでは、予備試験が法科大学院教育に与えている影響や予備試験に関する法科大学院生の意見などをみてみる。(中教審法科特別委:第61回<26年5月>配付資料より)
文科省は全ての法科大学院(73校)を対象に、予備試験を利用して法曹を目指す学生の動向等についてのアンケート調査を実施した。
以下に、その主な回答結果の概要をまとめた。
文科省は、日本弁護士連合会と法科大学院協会が法科大学院2年次生を対象に共同実施した「司法試験予備試験制度に関するアンケート調査」の結果を基に、いくつかの観点から学生の意見を分析、取りまとめた。以下に、その主な意見を紹介する。
中教審の法科特別委は法科大学院と予備試験のそれぞれ創設理念や実態等を踏まえ、法科大学院教育の観点から、予備試験の在り方について検討、議論し、両者に対する基本的な考え方をおよそ次のように整理している(26年5月)。
京都大、慶應義塾大、中央大、東京大、一橋大、早稲田大(50音順)の法科大学院の代表6名は26年6月初め、連名で「司法試験予備試験制度に関する緊急の提言」を政府の法曹養成制度改革推進会議及び法務大臣・文部科学大臣に提出した。
提言では、法科大学院の設立趣旨やこれまでの実績、予備試験の制度趣旨に反する状況等を述べ、予備試験制度に関して次のような方策を講じることが必要であるとしている。
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26年度は法科大学院創設10周年の節目に当たるが、長引く低迷から脱しきれず、ついに法科大学院の志願者数が法曹への“例外ルート”である「予備試験」出願者数を初めて下回ってしまった。法科大学院組織についても、統廃合を含めた募集停止が進んでおり、前述のように26年度までに7校が既に募集停止(うち1校は廃止、1校は統合)となった。
さらに、27年度からの募集停止が国立5校(新潟大/信州大/香川大<香川大・愛媛大連合法務研究科>/島根大/鹿児島大)、私立8校(白鷗大/獨協大/大東文化大/東海大/関東学院大/龍谷大/広島修道大/久留米大)の計13校で表明されている(26年6月下旬現在)。
募集停止の急増の背景には、司法試験合格率の低迷、弁護士の就職難など法曹需要の停滞、歯止めのかからない志願者の減少、入学定員充足率の低下、極端な入学定員割れ状態といった現状に加え、公的支援(財政・人的支援)の見直しの強化策(後述)が挙げられる。
文科省は中教審法科特別委の改善提言を踏まえ、法科大学院の規模の適正化、教育の質の向上、優れた取組を行う法科大学院への支援等、さまざまな改善・充実施策を講じてきた。
特に「規模」の適正化については、公的支援の見直しの強化策や連合・連携、改組等を通じて、法科大学院全体の入学定員について、当初“3,000人程度”を目途に見直しを促進するとしている(中教審法科特別委:26年3月)。
なお、この数値目標は、政府の法曹人口の在り方の検討結果によって見直すとされている。
文科省は課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な見直しを促進するため、司法試験合格率や競争倍率、入学定員充足率などを指標にして、公的支援の見直しを行っている。
なお、財政支援の見直しについては、「国立大学法人運営費交付金」及び「私立大学等経常費補助金」の法科大学院に係る項目が減額される。
◆「補助金」等減額対象校:第1弾=24年度6校、25年度4校/第2弾=26年度18校
財政支援見直しの第1弾(22年9月公表)として、司法試験合格率と競争倍率の指標に該当する法科大学院が24年度6校(私立大)、25年度4校(国立1校、私立3校)に上った。
さらに入学定員充足率を新たな指標として加えた第2弾(24年9月公表)では、26年度対象校として私立16校、国立2校の計18校が該当している。
◆ 第3弾:27年度の補助金、最大“5割カット”/ 28年度から、“全額カット”も !
文科省は、政府の法曹養成制度関係閣僚会議決定(25年7月)を踏まえ、入学定員の適正化を含む抜本的な組織見直しを加速するために、見直しの第3弾として、次のような「公的支援見直しの更なる強化策」(25年11月公表)を決定し、27年度予算から適用する。
● 公的支援見直しの更なる強化策の仕組み
27年度に適用される補助金等見直し強化策は、およそ次のような仕組みで実施される。
まず、全ての法科大学院を、司法試験合格率(累積合格率、法学未修者の直近の合格率)/直近の入学定員充足率/法学系以外の出身者や社会人の直近の入学者数・割合など多様な「指標」に基づき、その成果(点数化)に応じて「3類型」に分類する。
各類型には、現在の入学定員充足状況の傾向を勘案して、「第1類型」=90%/「第2類型」=A:80%、B:70%、C:60%/「第3類型」=50%といった“5ランク”に減額された「基礎額」が設定される。
こうした法科大学院の財政支援上の類型化を図った上で、先導的な教育システムの構築、教育プログラムの開発、質の高い教育提供をめざした「連合」など優れた取組の提供を評価し、「第1類型」には“+5%~+20%”/「第2類型」(A・B・C)には“+5%~+50%”、/第3類型」には“+50%~+60%”の加算率をそれぞれ措置(加算)する。
また、28年度以降は、「第3類型」の「基礎額」(50%)を“0%”まで減額した上で、“地方校・夜間校”のみに加算額分だけの増額の可能性があるとしている。つまり、28年度以降は、法科大学院に係る補助金等の“全額カット”もあり得る。(図11参照)
なお、こうした財政支援の見直しに加え、法科大学院に裁判官や検察官等の教員派遣を行わない人的支援の見直しも講じられる。
予備試験は前述したように、既に創設理念とかけ離れた法曹への“ショートカット”(時間的・経済的)として利用され、その出願者数は法科大学院の志願者数を超えている。
また、全法科大学院の2年次生の約4割近くが司法試験に向けた“実力把握”のためなどから予備試験を受験しているという。
こうした中、文科省は法科大学院教育の改善・充実に向け、公的支援見直しの更なる強化策を通じた組織見直しの促進、入学定員の適正化などとともに、学生の進級時に実施する「共通到達度確認試験」(仮称)導入の検討や法学未修者教育の充実促進等を進めている。 他方、政府の法曹養成制度改革推進会議は、文科省の公的支援の見直し強化策等による法科大学院の組織見直しの進展状況を見つつ、27年7月までに組織見直しの“法的措置”の具体的な制度の在り方について結論を出すとしている。
また、予備試験の在り方についても27年7月までに結論を得るとしている。
いずれにしろ、法科大学院創設10周年を迎えて様々な課題が山積する中、次のステップに向けて司法制度改革の趣旨と法科大学院創設の理念を基本に据えた法曹養成の大胆な改善・充実策が求められる。特に、法科大学院と予備試験については、司法試験の受験資格において“表裏一体”の関係になっている現状をどう捉えるかがポイントになろう。