法科大学院は、「旧司法試験」による“点”から法曹養成の“プロセス”重視への転換、グローバル化による法的需要拡大の対応等、司法制度改革の一環として16年度に創設された。
16年度の志願者数は約7万3,000人、志願倍率13倍で、法曹志向が一気に高まった。
しかし、その後「新司法試験」合格率の低迷や弁護士の就職難などを背景に、志願者数は減少の一途をたどり、25年度の志願者数は約1万4,000人で、創設時の19%まで激減した。
大学入試でも法学系志願動向の低調が続いているが、司法試験の受験資格が得られる「予備試験」の出願者数は実施3年目で1万人を超え、法科大学院に迫る勢いだ。ここでは、「法科大学院」入試の推移と現状などを中心に、法学系を取り巻く状況を探ってみた。
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◆ 入学定員の削減
法科大学院の入学定員は、創設時の16年度(法科大学院数68校)が5,590人で、17年度~19年度(法科大学院数:17年度~24年度74校)の5,825人を最多に、20年度5,795人、21年度5,765人と創設から5年間は5,000人台後半で推移していた。
しかし、中教審の法科大学院特別委員会(以下、法科大学院特別委)の『法科大学院教育の質の向上のための改善方策について』(21年4月。以下、『21年改善方策』)の提言を受け、22年度以降は多くの法科大学院で入学定員(募集人員)の削減等が図られた。
その結果、入学定員は22年度に4,909人と5,000人を割り、23年度には募集停止1校(募集校数73校)もあって4,571人になり、24年度(同)は4,484人に削減された。さらに、25年度には廃止1校、募集停止4校(募集校数69校)、及び定員削減で入学定員は4,261人となり、ピーク時(17年度~19年度:5,825人)の約4分の3まで減員された。(図1参照)
また、25年度の入学定員「100人以上」の法科大学院は国立2校、私立8校であるが、そのうち私立2校が26年度募集人員の削減(100人→ 40人 /100人→ 70人)を決めている(25年5月末現在)。なお、私立1校(入学定員30人)が、26年度から「募集停止」になる(後述)。
◆ 募集停止、統廃合
法科大学院の入学定員の適正化や組織の見直し等については、前述のように中教審の改善提言等を踏まえ、22年度からこれまでに全ての法科大学院で入学定員の削減等が実施されてきた。そうした中で、次の6校が募集停止や統廃合を実施あるいは表明している(25年3月現在)。
1.23年度から募集停止(1校)
① 姫路獨協大(22年5月表明)
* 25年3月31日付け(24年度最終日)をもって、法科大学院を「廃止」。
2.25年度から募集停止(4校)
① 大宮法科大学院大(23年8月表明)
* 桐蔭横浜大と「統合」(統合作業:24年4月~28年3月を目途)、「桐蔭法科大学院」として運営(23年8月表明)。
② 明治学院大(24年5月表明)
③ 駿河台大(24年7月表明)
④ 神戸学院大(24年7月表明)
3.26年度から募集停止(25年3月現在:1校)
① 東北学院大(25年3月表明)
法科大学院の志願者数(延べ数。以下、同)は、創設された16年度の7万2,800人を最多に、17・18年度は約4万人まで一気に激減した。
19年度は前年度より12%ほど増加して約4万5,000人まで回復したが、その後は20年度に4万人割れ、21年度に3万人割れと大幅に減少。22・23年度は2万人台前半を維持したものの、24年度は2万人割れ、25年度はさらに減少して1万3,924人と、創設時の“19.1%”まで激減した。(図1参照)
志願倍率(志願者数÷入学定員)は、入学定員の削減以上に志願者数が大幅に減少しているため、低下傾向が続いている。
志願倍率は16年度の13.0倍を最高に、17年度~20年度は7倍前後、21年度~23年度は5倍前後であったが、24年度は4.1倍、25年度は過去最低の3.3倍で、16年度の約4分の1まで低下している。(図1参照)
受験者数(延べ数。以下、同)は、上記の志願者数とほぼ同様の動きで減少している。
受験者数は創設当初の16年度の4万810人を最多に、17・18年度は約3万人まで急激に減少した。19・20年度は若干増加して3万1,000人台であったが、21年度~23年度は2万人台で毎年度減少。24年度は1万6,519人、25年度は1万2,389人で創設時の30.4%まで減少している。(図2参照)
合格者数(延べ数。以下、同)は、16年度の9,171人から18年度の1万6人まで増加し、その後は毎年度減少している。19年度~21年度は9,000人台、22・23年度は7,000人台で、24年度は6,522人に減少。25年度はさらに減少し、ピーク時(18年度)より4,387人(43.8%)少ない5,619人である。(図2参照)
競争倍率(受験者数÷合格者数)は、受験者数の減少に連動して、上述した志願倍率とほぼ同様の傾向を示している。
競争倍率は16年度の4.45倍を最高に、17年度~20年度は3倍前後、21年度~23年度は2倍台後半に低下。24年度は2.53倍、25年度は過去最低の2.20倍で、16年度の約2分の1まで低下している。(図2参照)
◆ 競争性の確保
中教審の法科特別委は『21年改善方策』で、入学者の質保証に係る入学者選抜の競争性の観点から、「相応の競争原理がはたらき、適正な入学者選抜が確保できる」と考えられる競争倍率は“2倍以上”が必要と指摘している。
“競争倍率2倍未満”の法科大学院は、最近では21年度が42校(74校中)、22年度が40校(同)にのぼり、数年前は半数以上の法科大学院が競争的環境とは言い難い状況で入試を行っていた。
そうした中、各法科大学院は中教審の『21年改善方策』提言を受けて定員削減を行った。その結果、“競争倍率2倍未満”の法科大学院は、23年度19校(73校中)、24年度13校(同)、25年度7校(69校中)と、“競争性の確保”の改善取組がみられる。
入学者数は、これまで最多の18年度(5,784人:前年度より240人、4.3%増)以外、毎年度減少している。
入学者数の推移をみると、16年度~19年度まで、17年度の約5,500人を除き5,700人台、20年度は約5,400人である。21・22年度は4,000人台で、23年度は3,620人、24年度は3,150人と、3,000人台。25年度は2,698人で、18年度ピーク時の46.6%まで減少した。(図3参照)
◆「法学未修者」、「法学既修者」別の入学状況
法科大学院教育の基本的な理念の一つである“多様な人材養成”を目指す「法学未修者コース」(3年制。以下、未修者コース)の入学者数の推移をみると、16年度~18年度まで増加し、19年度以降は毎年度減少している。未修者コースの入学者数は、18年度の3,605人(全入学者数に占める割合62.3%)をピークに、19・20年度は3,000人台(同60%強)、21・22年度は2,000人台(同50%台)である。23年度の未修者コースは1,704人(同47.1%)となり、「法学既修者コース」(2年制。以下、既修者コース)の入学者数(1,916人、占有率52.9%)を創設以来、初めて下回った。
24年度は未修者コース1,325人(占有率42.1%)、既修者コース1,825人(同57.9%)/25年度は未修者コース1,081人(同40.1%)、既修者コース1,617人(同59.9%)と、未修者コースの減少が続き、両コースの入学割合の差は拡大している。(図3参照)
◆「社会人」の入学状況
法科大学院入学者のうち、「社会人」入学者数と、その割合状況を概観してみる。
「社会人」入学者数は16年度の2,792人を最多に、18年度~21年度が1,000人台、22年度に1,000人を割り、25年度には521人で、16年度の18.7%まで激減している。
「社会人」入学者数の全入学者数に占める割合も16年度の48.4%をピークに、17年度~19年度が30%台、20年度~24年度が20%台で、25年度は19.3%まで低下した。
法科大学院の入学定員充足率(入学者数÷入学定員×100)を全体の平均でみると、創設時の16年度のみが103.2%で定員を充たしているが、その後は17年度~20年度90%台、21・22年度80%台、23・24年度70%台、25年度は63.3%にダウンし、16年度を除き各年度とも“入学定員割れ”状態である。(図4参照)
法科大学院ごとに、最近の入学定員充足率をみてみる。
まず、充足率100%以上の法科大院は、21年度15校(74校中) → 22年度11校(同) → 23年度15校(73校中) → 24年度10校(同) → 25年度5校(69校中)と、25年度は前年度の半数、21年度の3分の1に減っている。25年度の充足率100%以上の5校は、千葉大(充足率118%)、大阪大(同114%)、神戸大(同105%)、一橋大(同102%)、京都大(同101%)で、いずれも国立大である。(表1・図5参照)
次に、充足率100%未満、つまり“入学定員割れ”の 法科大学院は、21年度59校(募集校数に占める割合79.7%) → 22年度63校(同85.1%) → 23年度58校(79.5%) → 24年度63校(同86.3%) → 25年度64校(同92.8%)と、これまでは8割ほどの法科大学院が“入学定員割れ”状態であったが、25年度は9割を超えた。(表1・図5参照)
また、 “充足率50%未満”の校数は、21年度13校(募集校数に占める割合17.6%) → 22年度13校(同17.6%) → 23年度21校(28.8%) → 24年度35校(同47.9%) → 25年度40校(同58.0%)と23年度から急増して、充足率の2極化が伺える。(表1・図5参照)
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司法試験の受験資格が得られる「司法試験予備試験」(以下、予備試験)は、旧司法試験(18年~23年まで新司法試験と併行実施)の廃止に伴い、23年から実施されている。
予備試験は、経済的事情や既に実社会で十分な法律に関する実務を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する途を開くために設けられた、いわば法科大学院の“例外的ルート”に当たる。
予備試験は、短答式試験(5月)/論文式試験(7月)/口述試験(10月)の3段階で行われ、最終合格発表は11月上旬。予備試験合格者は、法科大学院修了者と同等の資格で翌年から司法試験を受験することができ、受験制限も次のように、法科大学院修了者と同様の扱いである。つまり、予備試験合格者は「合格発表日後の最初の4月1日から5年間の期間において、3回の範囲内」で司法試験を受験することができる。
23年に実施された第1回目の予備試験は、出願者数8,971人/受験者数6,477人(最初の短答式試験)/最終合格者数116人で、合格率(最終合格者数÷短答式受験者数。以下、同)“1.8%”と、旧司法試験の合格率(17年までの単独実施時の合格率は2~3%台)よりも厳しい“超難関”試験であった。
24年実施の第2回予備試験は、出願者数9,118人(前年比1.6%増)/受験者数7,183人(最初の短答式試験:同10.9%増)/最終合格者数219人(同88.8%増)で、合格率は23年より1.2ポイントアップの3.0%に伸びた。
第3回目の25年予備試験の出願者数は24年より2,137人、23.4%増の1万1,255人と、予備試験実施から3年目で1万人の大台に乗り、25年法科大学院の志願者数1万3,924人に迫る勢いである。受験者数は9,224人(25年5月発表の速報値)で、前年に比べ2,041人、28.4%増加している。
予備試験は23年の実施以来、2年連続で出願者数・受験者数とも増加しており、減少が続く法科大学院とは対照的である。
第1回目の23年“「予備試験」合格者”116人のうち、24年「司法試験」の受験者は85人、合格者は58人で、「予備試験」合格者の司法試験合格率は68.2%だった。この合格率は、法科大学院修了者の合格率24.6%(受験者数=8,302人、合格者数=2,044人)を3倍近く上回っている。
ただ、「司法試験」の合格を目指す“「予備試験」受験者”にとっては、「予備試験」が“1次試験”、「司法試験」が“2次試験”(本番)とみることができる。こうした試験日程の流れからみれば、第1回目の“「予備試験」受験者”6,477人のうち、最終目標の24年「司法試験」に合格したのは58人で、その合格率は“0.9%”に過ぎない。
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法科大学院が創設された16年度をはさんで、13(2001)年~25年までの大学入試における法学系の志願動向を概観してみる。(図6参照)
一般に大学志願者数の増減は、18歳人口・高卒者数の増減を基本ベースに、現役志願率やセンター試験出願者数の動向、景気の動向などに影響される。
また、学部系統の動向は、センター試験平均点(文・理系共通の基幹科目や学部系統に関係する科目の平均点)のアップ・ダウンに加えて、関係分野の就職状況や資格取得制度の変更、前年競争率の反動などにも影響される。
法科大学院設置(16年度)前からの法学系の志願動向をみると、国公立大、私立大とも概ね16年入試を境に変化していることが伺える。
国公立大では、13年~15年(私立大は13・14年)まで連続して志願者指数(前年の志願者数を100とする指数)は伸びている。
これは16年度からの法科大学院設置に伴う「法曹人口の拡大」予測が“呼び水” となり、法学系志願者の増加につながった結果である。
16年入試の法学系志願者指数をみると、国公立大では前年までの上昇傾向から一転して指数84(前年に比べ志願者数約16%減)と大幅に落ち込み、私立大も前年と同じ指数97(同、約3%減)で、国公私立大とも志願者数減であった。
これは、法科大学院設置に伴い法学部系の入学定員を減らした大学が多かったため、特に国公立大を中心に法学系の“狭き門”(難化)を敬遠した結果とみられる。
その後、一時的に志願者増の年もあったが、前述した法科大学院の志願者減に呼応するように、国公私立大の法学系志願者動向も低調が続いている。
25年入試は、18歳人口・高卒者数、受験生数(実数)とも3年ぶり、3%程度の増加が予測される中、国公立大志願者数(延べ数)は国立大「後期試験」を中心に全体で前年より1%減少し、法学系はそれを上回る3%程度減少した。
国公立大の法学系志願者の大幅な減少は、法科大学院の低迷や公務員の定員・給与削減などに加え、センター試験の平均点大幅ダウン(文・理系共通の5教科6科目の加重平均点<800点満点>で約34点ダウン)によって2次出願で“弱気・慎重”出願に走り、文系では合格難易度の高い法学系出願に、その傾向がより強く出たためとみる。
他方、私立大でも、法科大学院の相次ぐ募集停止や公務員の厳しい就職環境などで法学系が敬遠され、法学系の志願者数は全体の伸び(私立大一般入試の志願者数は前年より約5%増。25年3月中旬速報値)に比べて鈍かった(同、約3%増)。
法学部系進学の最難関である東京大-法学部の進学を巡って、これまで予測されなかったような“異変”が昨秋から相次いでいる。
(1) 「文科1類」→「法学部」進学枠、初の“定員割れ” !
東京大では、文科1~3類、理科1~3類の6科類に分かれて入学し、学士課程前半の2年間を「教養学部」(前期課程)において専門教育に進む前段として“リベラルアーツ”を学修した後、後半の2年間もしくは4年間を各学部・学科等(後期課程)で過ごす。後半の進学先の学部・学科等は、学生の志望と前期課程での成績によって決まる。この制度を「進学振分け」制度という。
進学振り分けは「第1段階」、「第2段階」の2度にわたって行われる。2年生の6月に進学志望先の学部・学科等を第1段階、第2段階に分けて登録し、9月上旬に第1段階、9月下旬に第2段階の進学内定者が決まる。
各科類から学部・学科等への進学枠については、科類と進学先の学部・学科等が基本的対応関係にある「指定科類」枠と、すべての科類から進学できる「全科類」枠がある。
25年度の法学部の進学振り分けは、総定数415人で、「第1段階」定数293人(「指定科類」枠:文科1類=277人、理科=4人/「全科類」枠:12人)、及び「第2段階」定数122人(「指定科類」枠:文科1類=118人、文科2・3類=2人、理科=2人)である。
文科1類から法学部への「指定科類」枠の志望者は、「第1段階」では383人で定数277人を上回っていたが、「第2段階」では定数の118人を5人下回る113人に留まった。そのため、法学部への進学内定者数は第1・2段階合計410人で、5人の定員割れとなった。
進学振り分けで法学部が定員割れになったのは、「全科類」枠を設けて進学振り分けを弾力化させた20年度以降、初めてである。
(2) 25年入試:文科1類(前期試験)志願者激減 → 13年ぶりに第1段階選抜“実施せず” !
東京大の入試は、文科1~3類、理科1~3類の6科類に分けて募集する「前期試験」と、理科3類を除く各科類一括募集(入学手続き時に進学科類を登録)の「後期試験」によって行われる。前・後期試験とも、一定の志願倍率(予告倍率)を超えた場合、センター試験の成績により第1段階選抜を行い、その合格者に対して第2次学力試験(個別試験)を行う。
25年入試は前述したように、センター試験平均点の大幅ダウンなどで国立大の難関大や準難関大では志願者数の減少が目立った。
東京大でも25年の前・後期合わせた志願者数は24年より978人、7.4%減の1万2,237人であった。特に文科1類(前期試験:募集人員401人)の志願者数は前年より423人、26.6%の激減で、志願者数は1,169人に留まり、志願倍率は2.92倍で予告倍率の約3.0倍に達しなかった。そのため、同科類では12年入試以来、13年ぶりに第1段階選抜は実施されなかった。
なお、文科1類の「前期試験」(センター試験5(6)教科7科目900点満点を110点満点に圧縮 + 個別試験(4教科440点満点)=550点満点)では、受験者数1,157人、合格者数401人で、合格者の成績は最高点=460.2778点(得点率83.69%)/最低点=348.5333点(同63.37%)/平均点=377.3589点(同68.61%)であった。この成績はいずれも、理科3類(医学部医学科に進学)に次ぐ高得点で、文科1類が難関であることに変わらない。
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司法制度改革の一環として、10年程前に提起された司法試験制度や法曹養成制度の改革構想は、それまで超難関であった旧司法試験の合格率を高め、創設される法科大学院には法学既修者コース(標準2年制)のほか、法学未修者コース(標準3年制)が設けられるなど、法曹の門戸が広がるとして期待された。
そのため、16年度創設の法科大学院には、非法学部出身者も含めた法曹志望者が多数集まり、志願倍率は13倍に達した。
大学も法曹需要の拡大、志願者増を見込み、それまでの司法試験や法曹養成の実績に関係なく、こぞって法科大学院を設置。創設2年目の17年度には、74校もの乱立ぶりとなった。
しかし、創設から9年経過した現在、司法試験の合格状況は政府目標の年間3,000人を大きく下回る2,000人台で推移し、合格率も20%台に低迷している。
25年度には、法科大学院志願者数は創設時の19%まで激減し、90%以上の法科大学院が入学定員割れで、「廃止」が1校、「募集停止」が4校といった状況である。
こうした法科大学院の低迷に加え、弁護士の就職難や公務員の就職環境の厳しさなどから、大学入試においても法学系の志願動向は低調傾向を呈している。前述したように、25年度はセンター試験平均点の大幅ダウン(難化)があったとはいえ、法学系の合格難易度トップの東京大-文科1類で第1段階選抜が13年ぶりに実施されなかったほど志願者数が激減したり、文科1類から法学部への進学振り分けに初めて定員割れが起きたりしたことは、法学系志望の低調さを象徴する出来事といえよう。
中教審法科特別委は、前述の『21年改善方策』や『法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策について』(24年7月。以下、『24年改善方策』)などで、法科大学院教育の改善を提言してきた。
文科省は中教審の『24年改善方策』を踏まえ、24年7月には法科大学院教育の成果目標の設定(23年司法試験合格率23.5%からの大幅な増加を目指すなど)と、具体的改善方策の明確化(26年度から実施する補助金の新たな減額措置など)を盛り込んだ『法科大学院教育改善プラン』を策定している。
また、24年8月には、政府に法曹養成制度関係閣僚会議が設置され、現在、法曹養成制度検討会議で議論されている意見等を踏まえ、25年8月までに法曹養成に係る一定の改善策が提起される予定である。
26年度は、法科大学院創設10周年の節目に当たり、第2ステージに入る。
これまで、さまざまな改善策が提言され、その実現に向けた具体的取組も行われてきた。その一方で、法科大学院間における司法試験合格率や入学定員充足率の格差、法学未修者と既修者間における修了率や司法試験の累積合格率の格差など、2極化が進んでいる。
こうした中で、第2ステージに向けた法科大学院の改善・取組については、司法制度改革の趣旨と法科大学院創設の理念を基本に据えるならば、多様なバックグラウンドをもつ法曹人材の養成、司法試験の予備校化とは一線を画したプロセス重視のカリキュラム編成、法学未修者教育の改善・充実などが重要となってこよう。
そして、法化社会における政府の法曹関連政策については、法科大学院に限らず、「予備試験」や「司法試験」の在り方、法曹需要の促進、法曹養成への支援体制の整備など、“法曹・法学系離れ”に歯止めがかかるような総合的な改善策が求められる。