全ての大学等は23年4月から、入学者数や卒業者数、就職・進学者数、授業料、教員の業績、授業科目・方法等、法令で規定された9項目の教育情報の公表が義務づけられた。また、学生の修得すべき知識・能力の情報も積極的に公表すべきとされた。
他方、23年度私立大「入試結果」では約3%が“非公表”であるうえ、各大学の教育情報の公表の仕方や内容等もまちまちで調べにくく、他大学と比較しにくいなどの指摘がある。
文科省の協力者会議はこの程、“比較・選択・分かりやすさ”をキーワードに教育情報のデータベース化を想定した『大学における教育情報の活用・公表に関する中間まとめ』を報告。「大学ポートレート」(仮称)を構想させる新たな教育情報発信の仕組みを提起した。
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大学における教育情報の公表に関しては現在、「学校教育法」第113条によって包括的に規定されている。(下記参照)
22年6月の「学校教育法施行規則」一部改正(後述)までは、大学は教育研究活動等についての情報を積極的に提供するよう「大学設置基準」第2条においても規定されていた。しかし、「学校教育法施行規則」の改正によって、第2条の趣旨は「学校教育法施行規則」に移され、当条文は削除された。
ところで、大学の教育情報の公表は、どのように整備され、定着してきたのか。その経緯を概観してみよう。
まず、平成3(1991)年の「大学設置基準」の大綱化・簡素化に伴い、各大学が自らの責任において教育研究の不断の改善を図ることを促すために導入された「自己点検・評価」は当初、制度化されたものの“努力義務”として位置づけられていた。
しかし、旧大学審議会答申『21世紀の大学像と今後の改革方策について ~ 競争的環境の中で個性が輝く大学 ~』(平成10<1998>年10月)において、“点検あって評価なし”などの厳しい指摘がなされ、「自己点検・評価」の実施と結果の公表が提言された。
また、同答申では「大学情報の積極的な提供」についても、次のように提言している。
こうした一連の提言を受け、「自己点検・評価」については、11(1999)年にその実施と結果の公表が“義務化”された。(現行の「学校教育法」第109条第1項及び「学校教育法施行規則」第166条)。また、大学の教育研究活動等の状況についても、刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によって、積極的に情報を提供することが規定された(「大学設置基準」11年9月改正)。
その後、「文科省通知」:積極的な情報提供の事項例(17年)=大学の設置趣旨・特色/開設科目のシラバス等の教育内容・方法/学生の卒業後の進路、受験者数、合格者数、入学者数等の入学者選抜に関する情報など、あるいは中教審答申『我が国の高等教育の将来像』(17年1月):大学自らが選択する機能別分化、社会的使命/教育内容・方法/財務状況/設置審査、認証評価、自己点検・評価などの社会への説明責任等、といった通知や提言などを踏まえ、「大学設置基準」を改正(20年度施行:学生への明示)するなど、大学の教育情報の公表は段階的に整備されてきた。
中教審の大学分科会では、20年9月に諮問された『中長期的な大学教育の在り方について』や中教審答申『学士課程教育の構築に向けて』(20年12月)を踏まえ、大学の質保証を確保する観点から教育情報の公表の在り方について、(1)公的な教育機関として、学生、保護者、社会に公表が求められる情報(法令による“義務化”)/(2)教育力の向上の観点から公表が求められる情報(法令による“努力義務”)/(3)国際的な大学評価活動の展開や我が国の大学情報の海外発信の観点から公表が考えられる情報、といった3つのカテゴリーに分け、21年~22年にかけて審議し、次のように整理した。
(1):社会への説明責任を果たすべき情報で、公表項目としては、学部・学科・課程等の名称/教員組織や教員数・教員の経歴等/入学者数・収容定員数・在学者数・卒業者数・卒業後の進路等/学生納付金の概要/学生支援・奨学金等の概要、などを挙げ、その取組が適切であるかどうかは第三者評価機関の「認証評価」を通じて確実に確認する。
(2):教育課程を通じて、学生が修得すべき知識・能力の体系を明らかにする取組/各種評価結果を踏まえた教育改善、教職員の職能開発といった教育研究水準の向上のための取組などの情報を積極的に公表する。
(3):グローバル化が進展する中で、教育研究への取組を国際的に示すことを通じて、大学教育の国際競争力の向上を図る観点から、教育活動の規模と内容/教育の国際連携の状況/大学としての戦略/留学生への対応などの情報について、英語を含む外国語で発信することを想定。
文科省は上述した中教審の審議や教育情報の公表状況等を踏まえ、教育情報の公表を通じて大学等の質保証が一層図られるよう、前記(1)と(2)を中心に関係法令を整備した。
具体的には、大学の社会への説明責任を果たすという観点から、大学における教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとし(「学校教育法施行規則」第172条の2を新設)、情報の公表は、広く周知を図ることができる方法によって行うものとしている(同条第3項)。また、学位プログラムに関する情報の積極的な公表については、“努力義務”として定めている(同条第2項)。
教育情報の公表に係る「学校教育法施行規則」一部改正は、次のように整理された。
上記の「学校教育法施行規則」一部改正の公布は22年6月15日、施行は23年4月1日。これらの規定は大学院、短大についても適用され、高等専門学校にも準用されている。
なお、文科省は当省令について、次のような留意点を示している。
教育情報の公表方法については、前記の省令(第172条の2第3項)で「刊行物への掲載、インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法」とされている。文科省がこの程公表した『平成21年度の大学における教育内容等の改革状況について』(23年8月)の「教育情報公表の義務化・努力化への対応 ~ 広報誌・ホームページの教育情報の掲載内容 ~」(教育情報公表“義務化・努力化”の省令改正の施行前の調査)を見ると、次のような状況が浮かび上がってくる。
まず、「学部・学科等又は課程等(研究科又は専攻等)の名称」96.7%(21年度全国公私立大学数に対する当該内容の公表校数の割合。以下、同)/「教育 研究上の基本組織の概要」83.4%など、大学の教育研究の基盤的情報は8割~9割の高い公表率を示している。
次に、大学の“入り口” “中身” “出口”に関わるそれぞれの情報を見てみよう。
“入り口”に関しては、「入学定員」85.0%/「入学者数」60.3%/「授業料」「入学料」ともに90.7%など、「入学者数」を除き比較的高い公表率である。
“中身”については、「教員の研究業績」61.4%/「教育内容」76.5%/「収容定員」67.5%/「在学生数」67.1%/「授業方法」62.4%/「授業内容」67.3%/「成績評価基準」49.0%など、公表内容は多岐にわたっているが、公表率は5割~7割程度である。なお、学生の社会的・職業的自立に向けた指導等(キャリアガイダンス)が法令上明確にされて23年度から義務化されているが、「キャリア形成支援、就職支援の状況」は79.8%である。
“出口”に関しては、「卒業(修了)者数」46.6%/「就職者数及び進学者数」45.0%/「就職状況」44.4%/「卒業(修了)認定基準」50.1%/「科目区分別卒業(修了)必要単位数」53.7%など、公表率は5割程度と低調である。(以上、図1参照)
また、同時に調査した“ホームページ”の掲載内容では、「大学紹介(設置趣旨、特色、沿革等)」は全大学で公表しているほか、「入学案内」97.6%/「キャンパスの概要(キャンパスマップ等)」95.0%など、概して大学のPRに関する情報発信は高い公表率である。
大学ではインターネットを通じた「教育情報」の発信が多く見られるが、最近は「オープンコースウェア」による授業内容などの公表も行われている。
「オープンコースウェア」は、2001年にアメリカのマサチューセッツ工科大(MIT)が大学の講義をインターネットで無償提供する「OpenCourseWare」(OCW)構想を提唱したことに始まる。日本でも平成17(2005)年から開始され、現在、20数大学が実施している。
公表の内容は、シラバスや講義内容、講義ノート、定期試験問題等のほか、高大連携や中学校への出前講義なども公開されており、優秀な学生集めの一環としての活用もみられ、従来型の「オープンキャンパス」とともに、大学の中身の紹介としても注目される。
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23年度から全ての大学等(短大・高専含む)は、「学校教育法施行規則」第172条の2で規定された9項目の教育情報を広く周知できる方法で公表しなくてはならなくなった。
23年8月下旬の時点で大学のホームページを開くと、トップページに「教育情報の公表」などのウェブサイトをわかりやすく設け、9項目を主体に詳細な情報を掲載している大学も見られる。
しかし、その一方で、9項目の内容が1箇所に集約されずに複数のウェブサイトに分散していたり、目的の情報にはいくつかのウェブサイトを経由しないとたどり着かなかったり、掲載項目の内容が不十分であったりする大学も少なくない。「教育情報の公表」開始から5か月経った現在、情報の受け手から見たホームページ上での情報公表は、必ずしも十分とはいえない状況にあるようだ。今年は3月11日に東日本大震災と原発事故が起こり、各大学はその対応に追われ、ホームページ上でもそれらに関連した業務が輻輳するなど、公表開始時が特異な時期であったことも背景にあるとみられる。
教育情報公表の義務化(開始)は23年4月1日からであるが、その省令改正の公布は22年6月15日で、実施まで10か月程の準備期間があった。しかし、公表すべき法定事項(9項目)全てを全大学一斉に4月1日からホームページ等で“分かりやすく”開示することは、現実問題として難しかったとみられる。
とはいえ、社会への説明責任を負っている大学としては、規定された9項目を含め、早期の公表と情報の受け手にとって分かりやすく、相互に比較しやすい共通性にも配慮した情報発信が求められる。
教育情報の公表については、大学団体でも公表内容や範囲、公表方法等を検討、工夫し、ガイドラインの策定などに取り組んでいる。
公立大学協会(公大協)では、大学間の共通のフォーマットで教育情報が参照・比較できる、分かりやすい情報の公表を工夫した「教育情報公表ガイドライン」を策定。各公立大は、ホームページの分かりやすい位置に「教育情報の公表」(法定事項+任意事項)のウェブサイトを開設している。さらに公大協のホームページ上においても、各公立大の「教育情報の公表」ページとリンクしているポータルサイトを設置している。
また、日本私立大学連盟(23年4月現在、123大学加盟)では教育情報の公表に関し、加盟大学の参考として『大学の情報公表義務化と三つの方針』(23年3月)をまとめている。そこでは大学教育の根幹をなす「入学者受入れ方針」「教育課程編成・実施の方針」「学位授与の方針」の“三つの方針”について、どのように策定・公表すべきかを提言している。
今回の教育情報公表で“入試情報”に係る事項としては、改正された「学校教育法施行規則」第172条の2第1項第4号の「入学者受入れ方針及び入学者数」に集約される。
「入学者受入れ方針」(アドミッション・ポリシー)については毎年5月頃、文科省から各国公私立大に通知される『大学入学者選抜実施要項』において、「求める学生像だけでなく、高等学校で履修すべき科目や取得しておくことが望ましい資格等を列挙するなど“何をどの程度学んできてほしいか”をできる限り具体的に明示する」と規定されている。これを受け、各大学ではこれまでも、国公立大の『入学者選抜要項』や私立大の『学生募集要項』、あるいはホームページ上で「入学者受入れ方針」を記載している。ただ、記載内容については抽象的で一般論的なものが多いが、中には高校での学習科目や出題意図、出題範囲など、具体的な方針も見られる。今回の「教育情報の公表」では、こうした「入学者受入れ方針」に基づいた公表となろうが、できるだけ具体的な方針提示が求められる。
ところで、各大学が個別に行う「入学試験」(センター試験利用入試を除く、一般・推薦・AO入試等)は、受験生に対する大学側の「入学者受入れ方針」を“試験”(学力把握と入学者選抜)という形で具現化したものといえる。したがって、「入学者受入れ方針」と「入学試験」の試験問題そのものや事前に公表される入試科目・配点・出題範囲等、あるいは出題意図・採点基準等とは本来、互いに繋がっているものであるといえる。
入試情報のデータで、「入学者数」についてはこれまで、国公立大では全大学で公表されてきたが、私立大では非公表の大学も少なくなかった。私立大の「入試結果データ」(一覧)を見ると、入試形態別、学部・学科・専攻等別に「募集人員/志願者数/受験者数/合格者数」などを公表している場合が多い。
小社が23年7月に各私立大に「大学情報公開」のアンケート調査を行ったところ、92.3%(集計495校中、457校)の私立大が「入学者数」を回答している。前述した「21年度の広報誌・ホームページ」での「入学者数」公表は、私立大は52.9%だった。(図1参照)
今回の調査で9割以上が回答したのは、「入学者数」の“公表義務化”のためとみられる。
ただ、大学のホームページを見ると、「教育情報の公表」サイトでは「入学者数」が掲載されているが、「入試情報」サイトでは従来どおり「入学者数」の記載がないところもある。
小社では毎年春に、全ての国公私立大及び短大に対して当該年度の入試結果データの収集調査を行っている。その中で例年、「入試結果」を“非公表”とする私立大が見られる。
19年度~23年度の私立大の“非公表”割合(各年度とも6月末時点での集計私立大に対する割合)を見ると、19年度7.0% → 20年度7.1% → 21年度6.8% → 22年度4.9% → 23年度3.1%と減少傾向にあり、20年度~22年度は「入学定員割れ」割合のアップ・ダウンと重なっている。23年度は教育情報公表の義務化で非公表は激減しているが、なお3%程が非公表としていることは、今後の課題である。(図2参照)
国立大学協会は11(1999)年6月、「情報公開法」施行(13年4月)に先立ち、当時、国の行政機関でもあった国立大の入試情報の積極的開示に向けたガイドラインを策定。さらに、16年度からの法人化を受けて、17(2005)年6月にはガイドラインを改正した。
国立大の「入試情報開示」のガイドラインでは、例えば、受験生や社会一般などへの情報提供である「自主的・積極的に開示する情報」として、次のような事項を挙げている。
(1)志願者数(中間集計・最終集計)/(2)受験者数/(3)合格者数/(4)試験問題/(5)採点・評価基準/(6)合否判定基準/(7)合格最高・最低点及び合格者の平均点、等の合格者の成績についての資料。
さらに、「問い合わせや求めに応じて開示する情報」や「開示に努める情報」、「不開示情報」などについても例示している。
日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)では、国から補助金の交付を受け、これを財源として全額、学校法人に対して私立大等の経常的経費について補助している。
私学事業団ではこれまでも、大学等の「在籍学生数」や「財務状況」の情報公表の実施状況に応じて、基準額に掛けられる傾斜配分(増減率)を“補正”してきた。
さらに、23年度からの教育情報の公表義務化を踏まえ、その積極的な公表促進を図るために22年度交付分から新たな要件を新設するなどして増減率の補正を行っている。
22年度では、新設された要件である「教育研究上の基礎的な情報」について:全て公表=補正0%、非公表情報あり=補正-2%/「修学上の情報等」について:全て公表=補正+1%、公表情報あり=補正0%、公表情報なし=補正-1%のほか、既設の要件である「財務情報」については、全て公表=補正+1%、非公表情報あり=補正0%としている。
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大学は「学校教育法施行規則」に規定された「教育情報」の“公表義務化・努力化”を受け、今後、各大学の透明性が一層高まり、教育研究活動の更なる進展が期待される。
他方、各大学は大学のもつ特性や多様性(機能別分化)を踏まえつつ、教育情報を自らの教育研究活動の把握・分析に活用するとともに、国内外に向けて分かりやすく公表していくことが求められる。
大学における教育情報の在り方が新たな展開を迎えたことを踏まえ、今後の教育情報の活用支援と公表の促進について検討、審議する「大学における教育情報の活用支援と公表の促進に関する協力者会議」(以下、「協力者会議」)が23年5月、文科省に設置された。
「協力者会議」は23年8月、大学教育情報の活用・公表に関するそれまでの検討・審議事項を『中間まとめ』に整理した。
この中で、特に「教育情報の活用と公表を進めるための場の整備」において、全国の大学の基礎的な教育情報を“データベース”(DB)によって一元化し、教育情報が大学関係者に共有されるとともに、大学に関心をもつ者に幅広く分かりやすく提供される仕組みの整備を提起したことが注目される。
文科省は『中間まとめ』の報告を受け、アメリカで大学間の比較データ類を公表して高校生の大学選択などに利用されている「カレッジポートレート」(The College Portrait)のような新たなデータシステムとして、「大学ポートレート」(仮称)構想を中教審の大学分科会に提示した(23年8月下旬)。
『中間まとめ』では、データベースを用いた教育情報の活用・公表の共通的な仕組み、すなわち「大学ポートレート」(仮称)の構築、整備について、次のように構想している。
◎ 大学が、質の保証と向上に資するよう、教育情報を、自らの活動状況の把握・分析に活用する。
◎ 大学の多様な教育研究活動の状況を大学進学希望者、自治体、産業界など、国内外の大学教育に関係・関心をもつ者に分かりやすく発信する。
◎ 基礎的な情報について共通的な公表の仕組みを構築し、大学の業務負担を軽減する。
教育情報の活用・公表については、まず、大学の自主的・自律的な取組を重視して各大学での取組を第一義としているが、大学団体等の役割も重要であるとしている。
そして、大学や大学団体等の共通の情報発信の基盤を整備するとともに、その運営は透明性を十分確保する観点から、大学や大学団体等の参画により、大学コミュニティによる自主的・自律的なものとして行われるべきであるとしている。
また、高等学校関係者や企業関係者等の意見も適切に反映されるようにするという。
◇ 収集する教育情報の範囲
まず、教育情報の範囲としては、義務化された教育情報公表の法定事項(9項目:前掲参照)などの「学校教育法施行規則」で定められた教育情報や、『学校基本調査』がある。
その際、公表が“義務化”された教育情報のみならず、“努力義務”として位置づけられた「学生の修得すべき知識・能力」や、その達成に向けた教育活動における“特色や強み”を社会に分かりやすく示すための一層の努力と工夫を求めている。例えば、小規模大学における少人数できめ細かな指導や手厚い学生支援・就職支援を通じて学生の就業力向上に成果を上げている事例、地方大学などによる地域に根ざした特色ある教育で地域の人材育成のニーズに応えている事例など、大学の特色や強みを表す情報(各種GP<Good Practice>事業等の教育改革の優れた取組を含む)を挙げている。
◇ 情報の収集方法
情報の収集は、各大学で『学校基本調査』のために作成されるデータファイルを活用するなど、大学の負担の少ない方法によるとしている。そのほか、各大学の特色や強みを表すデータも活用するという。
◇ 情報の表示方法
情報の表示方法は、画一的なランキングを助長するものにならないように、各大学の多様な経緯や背景に配慮しつつ、上述したような各大学の特色や強みが具体的な根拠をもって示されるよう求めている。その上で,例えば、学部・研究科などの分野に着目するなど、一定の範囲で比較可能なものとする。その際、地域や規模の違いにも留意する。
また、情報の受け手を想定し、その受け手にとって、大学を選択する際や、複数の大学の状況を比較する際に、必要な情報が分かりやすく公表されていることが重要であるとしている。そのため、高校生など大学進学希望者の視点を重視し、進路選択のために求める情報が十分提供されるよう求めている。
国際的な教育研究活動や学生交流に特色を発揮する大学については、海外への情報発信に活用できるものにするという。
「協力者会議」では、以上のようなデータベース等の構築に当たり、幅広く関係者のニーズを踏まえながら段階的に整備し、かつ柔軟に改善することが適当であるとしている。
現在、独立行政法人「大学評価・学位授与機構」では、国立大のみを対象として一般には公表されていないが、国立大の国立大学法人評価や教育研究活動の改善に資するための様々な情報(データ類)をデータベース化し、各国立大に情報を提供している。
今後は、こうした組織等も含め、具体的な「大学ポートレート」(仮称)構築の場(組織)や、公表項目、公表方法などの制度設計に向け、さらに検討が進められていくとみられる。
知識・情報・技術が社会活動の基盤となる所謂「知識基盤社会」にあって、大学進学率の向上と大学に対する社会的関心の高まりとが相俟って、大学情報の収集・分析・発信が一段と増大している。
これまでの大学情報の公表を見ると、同じ事項の情報でも、公表する大学によって内容の捉え方や集計方法、表示方法などが異なっていたり、比較(評価)や進路先などの選択が容易でなかったりして、公表されている情報の価値が十分に活かされていない実態もある。
そうした状況の下では、“比較・選択”が容易で、“分かりやすい”情報提供のための統一的なデータベースの構築が期待される。ただ、大学の機能別分化が進み、大学の特色や個性がより一層打ち出されていくとすれば、どこまで統一的な情報公表が可能なのか、今後の課題でもある。
また、公表された情報を受け取る側にも、意識改革が求められる。特に、データ類(数値)の情報については、単に“ランキング”(序列化)として見る場合も少なくない。情報の受け手は、大学の機能別分化や各大学の特色・個性を踏まえ、公表されたデータの背景も情報収集して複数の大学間で相互に比較・分析することによって、大学を適切に“評価・選択(進学)”する“大学選び”が大事だ。