今月の視点 2010.8

“口蹄疫”問題で注目される「獣医系大学」と「獣医師」養成の現状と課題 !

ペットブームで「小動物診療医」“増加”、
「産業動物診療医」「公務員獣医師」“減少”傾向!

2010(平成22)年度

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 22年4月下旬に宮崎県で感染が確認された家畜伝染病・口蹄疫(豚・牛等の偶蹄類に感染。人には感染しない)は、県内での急激な感染拡大で甚大な被害をもたらした。全国から駆けつけた獣医師はじめ、地元自治体職員や自衛隊員らによる懸命な感染防止策により、発生から3ヶ月余り経てようやく家畜の移動制限が解除され、事態はひとまず収束の方向にある。その間、県内外も含め、畜産農家はじめ関係者の精神的不安・打撃は、如何ばかりであったか想像に難くない。地域産業・経済への打撃も計り知れない。
 ところで、近年のペットブームで小動物を診療する獣医師は増えている一方で、“食の安全・安心”への関心が高まる中、公衆衛生業務などに携わる公務員獣医師は減少傾向にあるという。現在、16校ある獣医系大学と獣医師養成の現状と課題を探ってみた。

 

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<活かされていなかった10年前の教訓!?>

 

 国内での口蹄疫の発生は、ちょうど10年前の平成12(2000)年に宮崎県(3~4月)と北海道(5月)で92年ぶりに発生していた。この時は、発見が早く迅速な防疫対策が講じられたことなどから患畜・擬似患畜は740頭(今回の口蹄疫で殺処分された豚や牛は7月中旬現在、約28万9,000頭)で、今回のような深刻な事態には至らずに済んだ。
 宮崎県は全国有数の畜産県で、地元には宮崎大-農学部・獣医学科がある。当学科は12年の口蹄疫発生時、いち早く対策委員会を設置して緊急動員体制を敷き、学科教官、大学院生、学生が県の支援要請に応じて血清検査等に協力したという。
 当学科は当時、口蹄疫ウイルスの感染ルートの特定が難しいことや、グローバル化の進展などで我が国は海外からの伝染病の進入に絶えず晒されている危険性などを指摘。今後、こうした問題が起こらないようにするため、獣医学科や獣医師は海外の獣医師と連携して防疫に努めることや、再び口蹄疫などが発生した際には直ちに対処できる獣医師を多く養成することなどを訴え、獣医学教育の改善・充実や、国際的な通用性と質保証を備えた獣医師の養成が喫緊の課題であるなどと警鐘を鳴らしていた。

 前回の口蹄疫禍から10年が経ち、図らずも宮崎県で再び口蹄疫が発生してしまった。

 この10年間、獣医学教育の充実の必要性や取組の方向性などは関係会議などで種々、検討・議論され、提言も出されてきた。しかし、10年前の口蹄疫禍や宮崎大-獣医学科の指摘は、獣医学教育の改善・改革に活かされてきたのだろうか。

 人や動物を取り巻く環境は、自然科学の事象に留まらず、社会的・経済的にも世界規模で急激に変化している。今回の口蹄疫問題で、初めて口蹄疫の症状を目の当たりにした獣医師も少なくないとみられる。口蹄疫は、国内での発生は珍しいようだが、海外ではオセアニアと北米以外の世界中で発生が見られるという。グローバル化の進展に伴い、獣医学教育にも世界的な規模(範囲)、基準が求められる。

 

<獣医学教育、獣医系大学の変遷>

 

 上述したように、獣医学教育の具体的な改善・改革や大学の獣医師養成の体制づくりが社会の急激な変化に遅れをとっている背景には、我が国特有の獣医学教育の成り立ちや獣医系大学の設立があるとみられる。

 

“軍馬”の診療、生産を第一義とする戦前の獣医学教育

 

 我が国の西洋獣医学の発展の歴史をたどると、“軍馬”に行き着く。欧米では畜産とともに発展してきたといわれるが、これは食文化の違いによるものであろう。

 我が国で近代的な獣医学教育が始まったのは明治初期といわれ、その主な目的は、当時の陸軍の軍馬の診療や生産といった「軍馬の維持・確保」にあったようだ。もちろん、当時の重要な輸送力や農耕作業などを担っていた労役牛馬や畜産動物の診療も行われた。しかし、明治26(1893)年の陸軍獣医学校の設立に加え、日清戦争(明治27(1894)年~明治28年)、日露戦争(明治37(1904)年~明治38年)を通じて軍馬の改良と生産の増大が課題とされたことから、大正10(1921)年頃にかけて多くの獣医学校や獣医講習所が各地に設置され、軍馬のための獣医師養成が盛んに行われた。

 昭和期に入ると日中戦争(昭和12(1937)年~昭和20(1945)年)の影響などから、官立の高等農林学校や私立の獣医学校などに獣医学科(一部畜産学科)が設置され、軍馬に関する獣医学教育が一層活発だったようだ。当時の獣医学科生は軍部の依託生になり得る特権があり、昭和10年代初めの卒業後の進路としては、陸軍獣医将校、陸軍省の軍馬補充部などのほか、農林省の畜産局、馬政局、道府県(東京は昭和18年に「府」から「都」に)の畜産、種畜、農事の各試験場などがあげられていた。

 

戦前の農林専門学校、獣医畜産専門学校等を引き継いだ戦後の新制「獣医系大学」

 

 終戦(昭和20(1945)年)とともに、大学も含めた学校教育制度は大きく変わり、戦前の旧制大学や旧制高等学校、専門学校、師範学校などが単独あるいは統合し、概ね昭和24(1949)年には多くの「新制大学」が発足したり、旧制から新制へ切り替わったりした。

 獣医系大学も、こうした中で生まれた。現在ある国立10大学の獣医学系のうち、北海道大と東京大以外の新制8大学では、岩手(岩手大)・東京(東京農工大)・岐阜(岐阜大)・鳥取(鳥取大)・宮崎(宮崎大)・鹿児島(鹿児島大)の各農林専門学校、及び帯広農業専門学校(帯広畜産大)、山口獣医畜産専門学校(山口大)がそれぞれ大学に移行し、獣医学科(課程等)となった。なお、宇都宮農林専門学校から移行した宇都宮大の獣医学科は、昭和27(1952)年に廃止されている。

 公立では大阪獣医畜産専門学校(大阪府立大:現名称。以下、同)、私立では東京獣医畜産専門学校(日本大)、日本高等獣医学校(日本獣医生命科学大)、麻布獣医畜産専門学校(麻布大)の各校が大学に移行。さらに私立では、昭和40(1965)年前後に酪農学園大と北里大にそれぞれ獣医学科が設置された。

 以上のような経緯をたどって、現在、国立10大学(北海道大・帯広畜産大・岩手大・東京大・東京農工大・岐阜大・鳥取大・山口大・宮崎大・鹿児島大)/公立1大学(大阪府立大)/私立5大学(酪農学園大・北里大・日本獣医生命科学大・日本大・麻布大)の計、16大学に獣医学科(課程等)が設置されている。(表1参照)

 

獣医系大学の入学定員&第61回獣医師国家試験結果

 

<旧態然の教育内容で、教育体制を4年制 →「4年+2年修士」制 → 学部一貫6年制に>

 

 戦後の獣医学教育は、戦前の専門学校時代の教育内容、教育施設をほとんどそのまま移行した形でスタートしたようだ。つまり軍馬を主要な対象としていた基礎獣医学主体で、臨床実習や獣医公衆衛生等の応用獣医学の教育は十分でなかったという。

 また、当初は医学・歯学と同様、獣医学も「専門4年教育」(一般教養教育2年+専門教育4年の6年制)が適当であるとされたが、結局、4年制(教養教育2年+専門教育2年)課程が30年近く続くことになった。

 終戦直後の食糧難を経て、国民の食生活の多様化、畜産振興、畜産物の自由化、獣医公衆衛生、防疫等に加え、動物愛護などで、獣医師には広範で高度な専門職の能力・技能が求められるようになった。

 このため、獣医学の修業年限を延長して社会的要請や診療・検査対象の拡大等に応えられる獣医学教育の向上を訴える動きが起こり、昭和52(1977)年に獣医師法が改正され、獣医師国家試験の受験資格が学部卒業(4年制)から大学院修士課程修了(4年+2年)といった、所謂「積み上げ方式」に引き上げられた(昭和53年度入学者から適用)。

 その後、学部段階の修業年限を6年制にすることが望ましいとされ、昭和58(1983)年に学校教育法が一部改正され、獣医学修業年限は「学部一貫6年制」(昭和59年度入学者から適用)になった。このように、教育課程が延長されたため、基礎獣医学の教育・研究はある程度充実したものの、国立大などの多くは教員数や施設・設備等の条件整備が十分でなく、臨床実習などの実務教育はほとんど旧態然として進められてきたという。

 

<規模的にみた獣医師養成の現状>

 

年間、約1,000人の獣医師を養成

 

・ 35年以上変わらない入学定員

 平成23(2011)年度の獣医系16大学(国立10大学、公立1大学、私立5大学)の入学定員(編入学定員5人含む)は930人で、昭和50(1975)年以降、35年余りにわたって“一定”である。特に国立10大学の入学定員330人(1大学当たり30人~40人)、公立大の40人は昭和40(1965)年以降、変わらない。(図1参照)

 

国公私立大別獣医学系入学定員の推移

 

・ 高倍率の獣医系入試 

 獣医系入試における過去(平成16年度~21年度)の志願倍率をみると、国立大が9倍台~6倍台、公立大が10倍台前半~9倍台で、私立大は下降傾向にあるものの20倍台を維持している。国公私立大ともそれぞれの全学部平均の志願倍率より高く、難易度も高い。

 特に獣医系入学者の65%ほどを占める私立大では、授業料が国公立大の3倍弱(22年度獣医系授業料:国公立大約54万円、私立大約150万円)であるにもかかわらず、近年のペットブーム(小動物診療)などを背景に、高倍率である。(図2参照)

 

国公私立大別獣医学系の志願倍率の推移

 

立ち消えになった国立大獣医系の「再編・統合」構想

 

 国立獣医系1大学当たりの入学定員30人~40人という規模は、獣医学の充分な教育組織を構築するうえで少な過ぎるとされ、国立大の獣医系を「再編・統合」してスケール・メリットを活かし、国際的基準も充たせるような獣医学教育を再構築すべきとの構想が平成10(1998)年代初めにみられた。

 獣医学教育の国際的な基準や地域的配置などを考慮し、既存の国立10大学の獣医系学部等を北日本、東日本、西日本に3分割し、それぞれの基幹大学(3大学)は入学定員約110人、教員定員約100人とする構想など、いくつかの「再編・統合」案が検討された。

 しかし、各大学間での合意が得られず、「再編・統合」構想は立ち消え状態にある。

 

定員抑制の方針

 

 旧大学審議会答申『平成5年度以降の高等教育の計画的整備について』(平成3(1991)年5月)では、18歳人口が急減する平成5(1993)年度~12(2000)年度までの8年間における高等教育の規模の想定や整備の方向性を提言している。その中で、医師、歯科医師、教員、船舶職員とともに獣医師も、「概ね必要とされる整備が達成されているので拡充は予定しない」とされた。さらに平成10年代半ば、獣医師の需給状況について、「獣医師は総体として不足していない」(農水省等)などとされていた。

 また、文科省は平成15(2003)年3月、各大学及び大学を設置する自治体や法人に対し、大学等の設置の際の入学定員の取扱い等に係る基準(文科省告示)、すなわち「医師、歯科医師、獣医師、教員、及び船舶職員の養成に係る大学の設置又は収容定員増については認可対象から除外」とする規定を通知している。なお、「教員」の養成については、17年4月から認可対象になっている。

 上記のようなことから、獣医系の入学定員は過去何十年にもわたって変わらず、特に国公立大では1大学の入学定員が30人~40人の小規模な教育組織のまま現在に至っている。

 

合格者約1,000人、合格率80%程度の獣医師国家試験

 

 獣医師国家試験の合格者数は毎年1,000人前後で推移しており、第61回の試験(22年3月実施)では合格者1,111人中、新卒者960人(86.4%)、既卒者147人(13.2%)、その他4人(0.4%)となっている。合格率は、全体で84.1%(新卒者92.3%、既卒者53.5%)である。

 新卒者の合格者960人の国公私立大別(内訳)をみると、国立大322人(新卒合格者960人に対する割合33.5%、合格率93.3%)、公立大42人(同4.4%、合格率93.3%)、私立大596人(同62.1%、合格率91.7%)となっている。(表1参照)

 

<国立2大学間の 「共同教育課程」 編成・実施に向けた動き>

 

 複数の大学(学部・大学院)がそれぞれ優位な教育研究のリソースを結集し、スケール・メリットを活かして教育研究体制の充実を図る「共同教育課程」(大学設置基準等改正:21年3月施行)の編成・実施に向けた準備が現在、北海道大-獣医学科と帯広畜産大-獣医学課程において進められている。この制度は、一般的に「共同学部」「共同大学院」といった新たな“組織”の設立が想定されるが、北海道大と帯広畜産大では既存の学部等をそれぞれ残し、“共同の教育課程”を編成・実施する。

 共同教育課程の実施は24年4月からを予定しており、獣医系以外も含め、学部段階では初の設置となりそうだ。学生募集(24年度入試)は、それぞれの大学で行う計画であるという。両大学共通の人材育成目標のもと、共通の教育カリキュラムを編成・実施し、国際的に通用する獣医師を養成するという。卒業者には、両大学の連名で学位が授与される。

 

<獣医師の供給>

 

約3万5,000人の獣医師

 

 平成20(2008)年12月末現在の獣医師の届出数(2年ごとの年末に調査)は3万5,028人で、平成10(1998)年の2万9,643人に比べ、10年間で5,385人(18.2%)増加している。しかし、20年の調査によると、獣医事に従事しない者が4,277人で、10年前に比べて527人(14.1%)増えており、他業種への就職や高齢化による退職などの増加がうかがえる。
 獣医事に従事する者(20年12月現在。以下、同)は、3万751人(獣医師届出数に対する割合87.8%。以下、同)。公務員獣医師は8,950人(25.6%)、産業動物獣医師は4,541人(13.0%)、小動物獣医師は1万3,027人(37.2%)である。また、大学教員等が約1,168人(3.3%)、会社勤務(製薬・飼料会社等)が1,986人(5.7%)などとなっている。(図3参照)

 

職域別獣医師数の推移

 

活動領域の動向

 

 過去10年の獣医師の活動領域の動向をみると、公務員獣医師(獣医師届出数に対する割合:平成10年31.4% → 20年25.6%)や産業動物獣医師(同、17.0% → 13.0%)が減少傾向にある一方、犬・猫などの小動物獣医師(同、28.4% → 37.2%)が大幅に増えている。

 近年、ペットフードの増加などから犬・猫などの小動物の飼育戸数や頭数も増加していることが推測され、獣医師の小動物診療は今後とも増加するとみられる。(図3参照)

 

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<獣医学教育の改善、獣医療体制の整備についての提言>

 

 近年の獣医学教育、獣医療を取り巻く環境は急激に変貌しており、新たな社会的要請への対応、獣医学教育の質保証を含めた国際的な通用性の確保、獣医師の活動領域の偏在、人獣共通感染症の予防対策、安全・安心な畜産物の安定供給など、早急に取り組まなくてはならない課題が山積している。これらの課題に対し、関係省庁や大学・学協会などから様々な意見や報告等が出されている。

 現在、文科省で審議・検討されている獣医学教育の改善・充実方策、農水省で審議されている獣医療の体制整備の基本方針について、その要旨(案)を紹介しておく。

 

獣医学教育の改善・充実方策(文科省)

 

 文科省は20年12月、「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」(以下、「協力者会議」)を設置し、社会的ニ-ズに対応した獣医学教育の改善、臨床分野や公衆衛生分野を中心とした獣医学教育の充実、モデル・コア・カリキュラムの作成と到達目標の策定、獣医学教育の質の保証と国際的通用性の確保、教育研究体制の改善などについて審議・検討している。「協力者会議」がこれまでの審議内容をまとめた『今後の獣医学教育の改善・充実方策について』(意見のとりまとめ(素案):22年5月)では、改善の具体的方策として次のような提言の柱を立てている。

(1) モデル・コア・カリキュラムの策定等による教育内容・方法の改善促進

(2) 獣医学教育の質を保証する評価システムの構築

(3) 共同学部・学科の設置など大学間連携の促進による教育研究体制の充実

(4) 臨床教育の充実に対応しうる附属家畜病院の充実

(5) 新たに必要性が高まった生命科学分野の教育研究の推進

(6) 教育研究環境の充実に向けての国の取組

 

獣医療の体制整備の基本方針(農水省)

 

 農水省の「獣医事審議会・計画部会」は22年6月末、22年度から10年間にわたる第3次の『獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針』(案)をまとめている。

 当『基本方針』では、今回の口蹄疫問題を踏まえ、「家畜伝染病の大規模な発生に対する危機管理体制の再点検・強化とともに、緊急時に最前線で防疫措置を実施する獣医師の養成・確保」を喫緊の重要課題としてあげている。そのうえで、産業動物獣医師や公務員獣医師の養成・緊急確保/診療技術の高位平準化/臨床研修の充実/獣医師の活動分野や地域の偏在等に対する獣医療の体制整備の強化/安全で良質な畜産物の安定供給/公衆衛生行政や動物愛護・福祉行政、自然環境保全などの体制整備/飼育者の衛生知識の啓発・普及、などを盛り込んでいる。

 

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<獣医学教育・獣医療の早急な改善を!>

 

 獣医界を取り巻く環境は世界規模で急激に変化しており、獣医師に対する社会のニーズは広範囲な領域に及び、高度な能力・技能が求められている。

 しかし、前述のように、我が国の獣医学教育は、これまで修業年限などの制度改革はなされてきたものの、それに伴う教育内容の改善は必ずしも十分でなかった。特に国立大における小規模な教育研究組織の分散や、実務教育の施設・設備の不備などから、臨床教育(実習・演習)よりも、基礎獣医学教育(講義)の比率が高かったといわれる。

 

産業動物獣医師・公務員獣医師の育成促進、臨床教育の改善・充実等

 

 今回の口蹄疫問題で指摘されている防疫対策などの危機管理体制の整備には、産業動物獣医師や公務員獣医師の養成・確保をはじめ、卒前(獣医学生)臨床実習の強化・充実、卒後(獣医師)臨床研修の充実等が喫緊の課題といえる。

 今後は、前掲した文科省や農水省の関係会議で指摘、提言された事項を大学や関係機関等ができるだけ早急に改善、実行できるよう、国や自治体等は財政面も含めて支援していくことが大事だ。

 例えば、獣医学生に対しては、現在行われている「産業動物獣医師修学資金給付制度」のさらなる拡充や当制度の周知・広報(獣医学生の他、高校進路部(受験生)等に対し)、産業動物獣医師・公務員獣医師に対しては、労働環境の整備や待遇改善も必要であろう。

 「産業動物獣医師修学資金給付制度」は獣医学生に対し、将来、自治体や農協等で産業動物獣医師として従事することを条件(従事すべき期間は受給期間の1.5倍)に、月額10万円(私立大12万円)が給付される。給付金は国(農水省)と自治体・農協等(受け入れ側)が二分の一ずつ負担することになり、現在、全都道府県や全ての農協等に当制度が適用されているわけではない。

 

“口蹄疫禍”体験で志望変更

 

 ところで、冒頭に紹介した地元の宮崎大-獣医学科では、10年前と同様、今回の口蹄疫問題でも防疫措置などに支援、協力した。
 ただ、学内で飼育していた偶蹄類20頭ほどが殺処分されたことなどで、学生には強いインパクトを与えたようだ。もともと宮崎大では産業動物獣医師志望の学生が多いというが、今回の口蹄疫禍を体験した小動物獣医師志望の何人かは産業動物へ志望変更する意向だという。

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