今月の視点 2010.7

どうなる?「新課程センター試験」の「理科」出題科目!

“理数教育の充実”に、「基礎科目」(2単位)と「発展科目」(4単位)をどう対応させるのか?

2010(平成22)年度

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 高等学校の新学習指導要領は21年3月に改正告示されており、24年度入学者から数学、理科及び専門教科の理数で「先行実施」(「移行措置」)、25年度入学者から年次進行で「全面実施」される。これに伴い、センター試験は27年度から数学・理科、28年度から全教科において、旧課程履修者に対する「経過措置」を除き、新課程からの出題となる。
 新学習指導要領では、“理数教育の充実”を改訂のポイントの一つに挙げており、特に理科では物理、化学、生物、地学の4領域において、現行課程の2領域主体の選択必履修を3領域主体の選択必履修になるよう、科目編成や単位数、内容等を大幅に変更している。
 ここでは「理科」に焦点を当て、これまでの学習指導要領とセンター試験との関係などを振り返る中で、新課程センター試験「理科」の出題科目がどうなるか、探ってみる。

 

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<「理科」 における現行課程と新課程との相違>

 

 まず、「理科」における現行課程と新課程との相違点や新課程「理科」の特色などについて、その概要を整理してみよう。(図1参照)

 

科目編成、履修方法、単位数等

 現行課程「理科」の科目編成は、「理科基礎」及び「理科総合A」(物理・化学分野)、「理科総合B」(生物・地学分野)といった所謂“総合科目”(各2単位)、及び物理、化学、生物、地学の4領域にそれぞれ「Iを付した科目」(3単位)と「IIを付した科目」(3単位)が配置された計、11科目からなる。

 新課程では物理、化学、生物、地学の4領域のそれぞれが「基礎を付した科目」(2単位。以下、「基礎科目」)と「発展的な科目」(4単位。以下、「発展科目」)に再構成されるとともに、“総合科目”である「科学と人間生活」(2単位)及び「理科課題研究」(1単位)が新設されて計、10科目となる。

 現行課程での履修は、2科目を選択して履修する必要があり(以下、「選択必履修」という)、そのうち1科目以上は“総合科目”(上記の3科目。各2単位)を選択必履修する。他の1科目は4領域の「Iを付した科目」(3単位)から1科目を選択必履修する。

 新課程における履修は、“総合科目”の「科学と人間生活」(2単位)1科目、及び4領域の「基礎科目」(2単位)1科目を選択必履修する計2科目、又は「基礎科目」から3科目を選択必履修する。

 

新課程「理科」の特色

 

 新科目である「科学と人間生活」は、科学に対する興味・関心を広く養う観点から、物理、化学、生物、地学の4領域から人間生活に関わりの深い内容で構成され、観察、実験を重視している。

 また、「理科課題研究」は、現行課程のそれぞれ「IIを付した科目」内に配されている「課題研究」(必修項目)を先端科学や学際的領域に関する研究なども扱えるよう、独立した“科目”として設置している。当科目は、個人やグループでの課題設定、大学や研究機関との連携、協力、研究成果の発表などを重視し、指導を効果的に行うために、授業を“特定の期間”に行うことなども想定されている。

 4領域の「基礎科目」においては、中学との連携を図る観点から、それぞれ「エネルギー」(物理)、「粒子」(化学)、「生命」(生物)、「地球」(地学)などの科学の基本的な見方や概念を踏まえて内容が構成されている。

 他方、4領域の「発展科目」においては、現行課程の「IIを付した科目」で“選択項目”(例えば、物理IIの「物質と原子」、「原子と原子核」。因みに、「力と運動」、「電気と磁気」、「課題研究」は必修)を“必修化”し、履修内容を充実させている。

 「発展科目」は原則として、それぞれに対応する「基礎科目」を履修した後に履修する。「理科課題研究」は、「基礎科目」を1科目以上履修した後に履修する。

 「基礎科目」が日常生活や社会との関連を重視した、概して“定性的な科目”であるのに対し、「発展科目」は「基礎科目」に比べ“定量的な科目”といえる。

 

<理科教育の充実>

 

履修方法の変更の背景

 

 履修方法の変更の背景には、学校現場での履修実態があるようだ。現行課程では、例えば、「理科総合A」(物理・化学分野)と「生物I」の2科目を選択することが適当であるとされ、この2科目を履修することで理科の“3領域”が履修できると構想されていた。 

 しかし、限られた授業時数における学習指導の効率化を図る観点などから、例えば、「理科総合A」(物理・化学分野)と「物理I」又は「化学I」の2科目を選択させ、実質的には“2領域”の履修に留まるケースが少なくない。 

 新課程では、こうした実態も踏まえ、物理、化学、生物、地学の4領域から3領域以上を履修するという現行課程の“理念”を維持したうえで、学校の裁量を拡大し、生徒のニーズに応じた科目履修の柔軟性を高める観点から、3領域以上の科目を履修する場合には所謂“総合科目”の履修を不要としている。

 

新課程「基礎科目」の単位数“縮減”と、履修領域“拡大”

 

 前述のように、新課程における“総合科目”を履修せず、4領域それぞれの「基礎科目」から3科目(3領域)を選択必履修する場合、現行課程の「Iを付した科目」と同じ単位数にすると合計9単位となり、現行課程の選択必履修の合計単位数である4単位又は5単位に比べ、大幅な“増単”になってしまう。 

 このような事情にも配慮しつつ、「基礎科目」の履修領域を“拡大”するために、単位数を“縮減”せざるを得なかったことが伺える。 

 その一方、「発展科目」の単位数を3単位 → 4単位とし、現行課程の“選択項目”を“必修項目”にするなど、高等学校の理科教育全体としての充実は図られている。

 

「理科」の現行課程と新課程における履修科目等

 

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<センター試験の出題と学習指導要領>

 

 センター試験は「大学(短大を含む)入学志願者の高等学校段階における一般的・基礎的な学習の達成の程度を評価する」ことを主な目的としている。この「一般的・基礎的な学習の達成度評価」は学習指導要領の“評価規準”に則って行われるべきで、センター試験は高等学校の学習指導要領に準拠して出題される。 

 そのため、センター試験は高等学校の学習指導要領の改訂の度に出題教科・科目を改編したり、出題内容や範囲などを変更したりしてきた。 

 センター試験の前身である共通1次試験時代(昭和54(1979)年~平成元(1989)年)も含め、これまでの学習指導要領の改訂区分に沿って、学習指導要領上の「理科」の科目編成などと共通1次試験・センター試験の出題科目との関係をたどってみる。 

 なお、以下の枠囲み(1~4)で、両試験における「経過措置」の出題科目は除いてある。
 
1.昭和48(1973)年度~昭和56(1981)年度の学習指導要領実施(告示:昭和45年)

● 学習指導要領「理科」の科目・単位数・履修等

・基礎理科(6、○)/・物理I(3、☆)、・物理II(3)/・化学I(3、☆)、・化学II(3)/・生物I(3、☆)、・生物II(3)/・地学I(3、☆)、・地学II(3)

*注.《1》 ( )内数字は標準単位数。○印は1科目の必履修。☆印は選択必履修。

    《2》 履修方法:「基礎理科」1科目、又は「Iを付した科目」から2科目を選択、履修。

● 共通1次試験(昭和54年~昭和59年)の出題科目等

・物理I/・化学I/・生物I/・地学I/・基礎理科

*注.《1》 「Iを付した科目」から2科目を選択、解答。

    《2》 「基礎理科」は選択承認の指定者に限られ、1科目解答。

 

2.昭和57(1982)年度~平成5(1993)年度の学習指導要領実施(告示:昭和53年)

● 学習指導要領「理科」の科目・単位数・履修等

・理科I(4、◎)/理科II(2)/・物理(4)/・化学(4)/・生物(4)/・地学 (4)

*注.《1》 ( )内数字は標準単位数。◎印は全ての生徒が必履修。

    《2》 履修方法:「理科I」は原則として、第1学年で全ての生徒が履修。「理科II」及び「物理」、「化学」、「生物」、「地学」は、原則として「理科I」の履修後に選択、履修。

● 共通1次試験(昭和60年~平成元年)・センター試験(平成2年~8年)の出題科目等

・理科I/・物理/・化学/・生物/・地学

*注.《1》 昭和60年~平成元年は、「物理」、「化学」、「生物」、「地学」から1科目を選択、解答。

    《2》 「理科I」は、昭和60・61年は全員解答、昭和62年~平成元年は受験承認の指定者のみが解答。

    《3》 平成2年~8年は、Aグループ=「物理」、「地学」/Bグループ=「化学」、「理科I」/Cグループ=「生物」に区分し、A・Bグループにおいてはそれぞれ1科目を選択、解答。

 

3.平成6(1994)年度~14(2002)年度の学習指導要領実施(告示:平成元年)

● 学習指導要領「理科」の科目・単位数・履修等

・総合理科(4、☆)/・物理IA(2、☆)、・物理IB(4、☆)、・物理II(2)/・化学IA(2、☆)、・化学IB(4、☆)、・化学II(2)/・生物IA(2、☆)、・生物IB(4、☆)、・生物II(2)/・地学IA(2、☆)、・地学IB(4、☆)、・地学II(2)

*注.《1》 ( )内数字は標準単位数。☆印は選択必履修。

    《2》 履修方法:上記の5区分(/で区分)から2区分にわたって、「☆印の科目」から2科目を選択して履修。

● センター試験(平成9年~17年)の出題科目等

(1)9年~15年

グループ<1>=・物理IA/・物理IB/・生物IA/・生物IB /・総合理科

グループ<2>=・化学IA/・化学IB/・地学IA/・地学IB

(2)16年~17年

理科<1>=・物理IA/・物理IB/・総合理科

理科<2>=・化学IA/・化学IB/・地学IA/・地学IB

理科<3>=・生物IA/・生物IB

*注.上記の(1)、(2)とも、各試験枠から1科目を選択、解答。

 

4.平成15(2003)年度~23(2011)年度の学習指導要領実施(告示:平成11年)

● 学習指導要領「理科」の科目・単位数・履修等

・理科基礎(2、☆)/・理科総合A(2、☆)/・理科総合B(2、☆)/・物理I(3、☆)、・物理II(3)/・化学I(3、☆)、・化学II(3)/・生物I(3、☆)、・生物II(3)/・地学I(3、☆)、・地学II(3)

*注.《1》 ( )内数字は標準単位数。☆印は選択必履修。

    《2》 履修方法:「理科基礎」「理科総合A」「理科総合B」を少なくとも1科目、「Iを付した科目」から1科目、計2科目を選択して履修。

● センター試験(平成18年~26年)の出題科目等

(1)18年~23年

<1>グループ=・理科総合B/・生物 I
<2>グループ=・理科総合A/・化学 I

<3>グループ=・物理 I/・地学 I

(2)24年~26年

・理科総合A/・理科総合B/・物理 I/・化学 I/・生物 I/・地学 I

*注.《1》 上記(1)では、各グループ(試験枠)から1科目を選択、解答。

    《2》 (2)では、1科目又は2科目を選択、解答。

 

<出題科目の原則は、“必修” 及び “選択必修”科目>

 

 ここまでみてきたように、共通1次試験とセンター試験「理科」の出題科目は、学習指導要領上の“必履修科目”及び“選択必履修科目”であることがわかる。 

 両試験とも、高等学校学習指導要領における「基礎的な学習の到達度」を測ることを目的としていることから、こうした“基礎的な科目”からの出題は当然といえる。

 

出題科目の変則的な構成

 

・ “基礎的内容”+“発展的内容”の出題 

 昭和60年~平成8年の共通1次試験とセンター試験では、全員必履修の「理科I」(総合科目。4単位)、及び4領域においてそれぞれ“基礎的内容”と“発展的内容”を総合した、教育課程上“単一”の科目である「物理」「化学」「生物」「地学」を出題科目とした。

・ 同一科目に「IA科目」と「IB科目」の2種類を出題 

 平成9年~17年のセンター試験では、「総合理科」(4単位)の他、4領域それぞれに「I Aを付した科目」(2単位)と「I Bを付した科目」(4単位)の計、9科目が出題された。 

 「IA科目」と「IB科目」との違いは、必ずしも前者が“基礎的(易しい)”、後者が“発展的(難しい)”というわけではない。当該の学習指導要領(平成6年度~14年度実施)より1回前の学習指導要領(昭和57年度~平成5年度実施)では、前述したように、4領域の各科目は基礎的・発展的内容を総合して単一の科目として構成された。平成6年度~14年度実施の学習指導要領では、各領域で単一であった科目構成を、“基礎的な内容を扱う”「IBを付した科目」(4単位)と、“発展的な内容を扱う”「IIを付した科目」(2単位)に再編成されたとともに、日常生活や人間社会との関わりなどに題材をとり、基礎的・基本的な事項を重視した新しい理念のもとに「IAを付した科目」(2単位)が新設された。このため、センター試験には「総合理科」のほか、4領域においてそれぞれ「IA科目」と「IB科目」の双方が出題されるという、変則的な出題構成になった。 

 こうした変則的な出題構成は当時、国語の「国語I」「国語II」/地理歴史の「世界史A」「世界史B」/「日本史A」「日本史B」/「地理A」「地理B」(現行のセンター試験にも引き継がれている)にもあり、地理歴史の「A科目」(2単位)と「B科目」(4単位)は理科の「IA科目」、「IB科目」と同じような理念から出題されている。 

 ただ、高等学校側などから、所謂“軽量科目(2単位)受験者”と“4単位科目受験者”を同一の試験枠、同一の試験時間、同一の標準配点で扱うことなどに対し、試験の“公平性”や“難易度”などの観点から様々な問題点や批判が寄せられた。

 

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<新課程センター試験 「理科」 の出題構想>

 

“2単位科目”のみからの出題に課題

 

 27年度から実施される新課程センター試験「理科」の科目構成は、これまでの事例等から「科学と人間生活」、及び「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」が予測される。しかし、これでは、センター試験「理科」は全て“2単位科目”からの出題になる。前述した「IA科目」(2単位)の問題作成時においても問題視されていたように、“2単位科目”からの出題は、内容や範囲、題材などが限定されるうえに、科目の特性から“定性的な出題”になりがちで、現行の“3単位科目”(「Iを付した科目」)からの出題に比べ、難易度や出題範囲などの点で軽減されるのは必至だ。 

 これでは、“理数教育の充実”を改訂の柱の一つに据えている新課程の理念に反する。 

 また、国立大学協会(以下、国大協)は、センター試験の出題に関し、“4単位科目”からの選択、受験を可能にすることを求めており、現行のセンター試験「公民」(全科目“2単位”)に『倫理、政治・経済』(合計、4単位。『 』印は2科目を総合した出題科目。以下、同)の新設を要請(『平成22年度以降の国立大学の入学者選抜制度~国立大学協会の基本方針~』:19年11月)した。これを受け、24年度センター試験から「公民」に『倫理、政治・経済』が出題されることになった。

 

“2単位科目”と“4単位科目”の並行出題となるのか?

 

 「理科」4領域におけるそれぞれ「基礎科目」、及び「科学と人間生活」といった“2単位科目”のみの出題では、前述のような様々な問題点を孕むことになる。そのため、27年度からの新課程センター試験「理科」の出題科目は、4単位の「発展科目」も含め、4領域それぞれにおいて、“2単位科目”と“4単位科目”双方からの並行出題が想定される。 

 その際、“2単位科目”と“4単位科目”を総合した、例えば単一の『物理』(2単位+4単位 → 6単位)としての出題も考えられる。 

 しかし、これは、現行センター試験の例えば『数学II・数学B』(4単位+2単位 → 6単位)と“似て非なる”出題構成だ。現行課程の「数学B」は4項目中(4単位)、2項目(2単位)の“選択必履修”であるため、センター試験の「数学B」問題も2項目の“選択解答”となっている。しかし、新課程「物理」は“全項目必修”であるため、“全問必答”にせざるを得ない。これでは、「基礎的な達成度」をみるセンター試験としては、特に文系志願者にとって、出題内容・範囲などの点から負担が大きすぎる。 

 以上のような事情を勘案すると、新課程センター試験「理科」の出題科目等は、下の枠囲みで示したような構成になると予測される。 

 なお、予測される出題科目はちょうど、“発展的内容”をも内包した昭和60年~平成8年の出題と、同一科目“2種類”の9年~17年の出題とを併せ持つ出題構成といえる。

 

● 新課程センター試験「理科」の出題科目等の予測

・科学と人間生活(*注《1》)/・物理基礎、・物理/・化学基礎、・化学/・生物基礎、・生物/・地学基礎、・地学

*注.《1》 基礎的な“総合科目”である「科学と人間生活」は、観察・実験を重視した科目の特性や、現行課程の「理科基礎」が出題されていないことなどから、当面、出題が見送られる可能性もある。

    《2》 24年度からの「理科」試験枠の統合(3コマ→1コマ)が27年度以降も継承された場合、一つの試験枠から1科目、又は2科目を選択、解答。

    《3》 同一名称を含む科目同士(例:「物理基礎」と「物理」)の選択はできない。

 

<大学側の対応予測>

 

国(公)立大

 

 国大協では前述したように、センター試験の“4単位科目”の選択、受験を主体に据えていることなどから、当然「発展科目」を含めた科目を課すことになろう。 

 ただ、文系志願者が高等学校で「発展科目」をどの程度履修するか、その実態も考慮しなくてはなるまい。 

 また、理系志願者に対しては、「発展科目」におけるセンター試験と個別試験(2次試験)との出題範囲(項目)が同じになるため、各大学(学部)の個別試験ではアドミッション・ポリシーを反映した出題内容、難易度など、センター試験との“差別化”を図る必要に迫られよう。この点については、前述した昭和60年~平成8年の共通1次試験・センター試験の「理科」における出題項目(範囲)が個別試験と同じであったことから、当時の出題内容、難易度などが参考になる。 

 ところで、国大協は16年度入試からのセンター試験「5(6)教科7科目」化に先立ち、『国立大学の入試改革~大学入試の大衆化を超えて~』(12年11月)において、センター試験の「理科」は文系・理系の区別なく、4単位科目を基本とする2科目選択などを提言している。 

 因みに、共通1次試験の当初(昭和54年~61年)、国立大では文・理系の別なく、国語1科目(200点)、社会(現行の地歴と公民)2科目(200点)、理科2科目(200点)、数学1科目(200点)、外国語1科目(200点)の「5教科7科目」(1,000点満点)であった。 

 ともあれ、新課程センター試験「理科」の出題科目が前掲のようになると仮定すると、国立大のセンター試験科目は、次のように文系と理系とで大きく分かれることが予測される。

 

《1》 文 系:

  「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」「科学と人間生活」(*注《1》)から“2科目(4単位分) ”、又は“1科目(2単位) ”を選択、解答。

《2》 理 系:

  a. 「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」「科学と人間生活」 (*注《1》) 、から“1科目(2単位) ”、及び「物理」「化学」「生物」「地学」から“1科目(4単位)”の計、“2科目”(6単位分)を選択、解答。

b. 「物理」「化学」「生物」「地学」から“2科目(8単位分)” を選択、解答。

*注.《1》 「科学と人間生活」は、前述したように、出題されない場合もある。

    《2》 理系では、個別試験(2次試験)において、センター試験で選択、受験しなかった科目を受験させることで、少なくとも理科“3領域”以上の試験を課すことも予測される。

 

 なお、公立大においても、概ね上掲のような国立大と同様の傾向になるとみられる。

 

私立大

 

 私立大-理系のセンター試験利用入試では、「理科」全体の出題科目(2単位科目、4単位科目)から“1科目”を選択、解答させるところが多くなるとみられる。 

 一部の私立大では「基礎科目」を“2科目”(4単位分)、又は「発展科目」を“1科目”(4単位)課すところもあろう。

 

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<新課程センター試験 「出題教科・科目」 編成の工程予測>

 

文科省の新課程入試に係る“通知”

 

 文科省は21年3月、新課程「移行措置」等と大学入試などに関して、次のような事項を各国公私立大学長及び大学入試センター理事長宛に通知している。

● 移行措置等に関する事項(一部抜粋)平成21年3月9日
* 数学、理科及び理数の各教科については、平成24年度に入学する生徒に係る教育課程から新学習指導要領によることとされていること。このため、平成26年度に高等学校を卒業する生徒を対象とする大学入学者選抜においては、当該生徒はこれらの教科については新学習指導要領の科目を履修し、他の教科については現行学習指導要領の科目を履修していることに特に留意する必要があること。

* 平成25年度以降に入学する生徒に係る教育課程からすべての教科等について新学習指導要領によることとされていること。このため、平成27年度以降に高等学校を卒業する生徒を対象とする大学入学者選抜においては、当該生徒はすべての教科について新学習指導要領の科目を履修していることに留意する必要があること。

 

 上記の通知から、センター試験や大学入試等における教育課程の扱いは、次のように想定される。

(1) 27年度入試:26年度卒業見込み者、及び浪人生対象。27年1月~3月頃実施。

 ・「数学」「理科」の出題範囲等については、新課程による。

 ・上記以外の教科・科目については、現行課程による。

 ・「数学」「理科」及び「理数」の旧課程(23年度までの現行課程等)履修者に対しては、「経過措置」を講ずる。

(2) 28年度入試:27年度卒業見込み者、及び浪人生対象。28年1月~3月頃実施。

 ・全ての教科・科目について、新課程で実施する。

 ・旧課程(「数学」「理科」及び「理数」は23年度まで、他の教科は24年度までの現行課程等)履修者に対しては、「経過措置」を講ずる。

 

センター試験「出題教科・科目」と高校カリキュラム

 

 上掲の文科省通知を踏まえ、文科省や大学入試センター、及び各大学(学部)は、新課程入試に向け、出題教科・科目、選抜方法などを策定していくことになる。 

 各大学(学部)では、センター試験の「出題教科・科目」の構成をみて、自校の入試科目を決めていくところが多いようだ。 

 他方、高等学校側では、センター試験の教科・科目構成を参酌して“新課程カリキュラム”を編成することが少なくないとみる。 

 24年度高校入学者から、「数学」「理科」及び「理数」の各教科で「移行措置」が講じられる。そのため、それらの教科を含めたカリキュラム編成を策定する23年度中には、新課程「数学」「理科」を含めたセンター試験「出題教科・科目」の枠組みの公表が望まれる。

 

今秋~年内には、新課程センター試験の「基本方針」公表か?

 

 前述した平成9(1997)年から実施されたセンター試験は、基礎・基本の充実と多様化教育に基づく教育課程の大幅な改訂で、センター試験の「出題教科・科目」は「理科」だけでも9科目、全体では“6教科・31科目”にも及ぶ多様な出題構成となった。 

 そのため、文科省や大学入試センターは、センター試験実施の4年半前に当たる平成4(1992)年6月に「基本的方針」、5年6月に「中間まとめ」を公表して、大学、高等学校、関係団体などから多くの意見を収集し、センター試験実施の2年半前の6年6月に「最終まとめ」として公表した。 

 また、18年から実施されている現行のセンター試験の「出題教科・科目」の経緯をたどってみると、14年3月に「中間まとめ」を公表して高等学校、大学等、関係団体からの意見公募を集約、15年6月に「最終まとめ」を公表している。現行課程のセンター試験は『英語』のリスニング・テスト導入などで注目されたが、「出題教科・科目」の改編は「理科」の再編・整理(9科目 → 6科目)が中心であったこと、センター試験の出題に関わる教科の「移行措置」が講じられなかったことなどから、「基本方針」の公表は見送られたとみる。 

 そこで、27年センター試験における「数学」「理科」の新課程“前倒し実施”を、9年から実施されたセンター試験「出題教科・科目」決定までの工程に当てはめてみよう。

 まず、既に経過したが、22年6月頃に「基本方針」が公表されていたことになり、以降、23年夏頃に「中間まとめ」、24年夏頃に「最終まとめ」といった、新課程センター試験「出題教科・科目」の編成工程が浮かび上がってくる。(図2参照)

 

新学習指導要領の移行措置、完全実施&新課程セ試験、大学入試の工程予測

 

 現在、文科省と大学入試センターでは、様々な観点から新課程センター試験の「出題教科・科目」等を検討、研究しているものとみられる。そして、今秋~年内にはまず、“前倒し実施”の「数学」「理科」を中心にした「基本方針」(基本的構想)が公表される可能性がある。 

 いずれにしろ、新課程センター試験の「基本方針」発表を契機に高等学校側、大学側双方とも、新課程入試への関心が一気に高まっていくものとみられる。

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