独立行政法人「大学入試センター」(以下、大学入試センター)の「事業仕分け」は去る4月下旬行われ、「大学入試センター試験の実施」と「大学の入学者選抜方法の改善に関する調査研究」事業は運営費交付金(国費)に頼らず“継続”、「大学情報提供」事業は一旦“廃止”して厳しく見直す、といった仕分け結果であった。
大学入試センターは、昭和54年の第1回「共通第1次学力試験」(以下、共通1次試験)以来、今年の「大学入試センター試験」(以下、センター試験)まで31年間、大学入学者選抜の一環として参加大学と共同で公平公正、安定的な試験を実施してきた。
今回の「事業仕分け」を機に、センター試験の位置づけや大学入試センターへの期待などをまとめてみた。
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まず、大学入試センターや共通1次試験が、どのような情況で生まれたのか、その背景などをたどってみよう。
昭和40(1965)年代は、所謂“第1次ベビーブーマー(団塊世代)”による大学受験生数の急増、合格率の低下、難問・奇問の入試問題など、受験環境の厳しさが社会問題化していた。そうした中、中央教育審議会(中教審:当時の文部相の諮問機関)答申『今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について』(昭和46(1971)年6月:『四六答申』)は、初等中等教育から高等教育までの学校教育全般にわたる制度的・内容的な改善施策を提言した。その中で、大学入試制度の改善の方向として、次の3点を挙げている。
(1) 高等学校の学習成果を公正に表示する調査書を選抜の基礎資料とすること。
(2) 広域的な共通テストを開発し、高等学校間の評価水準の格差を補正するための方法として利用すること。
(3)大学側が必要とする場合には、進学しようとする専門分野において特に重視される特定の能力についてテストを行い、または論文テストや面接を行ってそれらの結果を総合的な判定の資料に加えること。
さらに、『四六答申』では改善策を実現するために、「政府は適切な援助とともに、実効を保障するために必要な立法措置を講ずることも検討すべきである」と提言している。
当時、文部省の大学入学者選抜方法の改善に関する会議や国立大学協会(以下、国大協)の入試調査特別委員会などにおいても『四六答申』と同じような改善策が構想されていた。
『四六答申』における改善策(2)の“広域的な共通テスト”は「共通1次試験」の創設/改善策(3)の“入学者選抜方法”の提起は「国公立大における共通1次試験と各大学の2次試験との総合による合否判定」/改善策の実現に向けた“実効を保障するために必要な立法措置”については国立学校設置法(当時)による「大学入試センター」の設置(昭和52(1977)年)として、それぞれ具体化された。
“広域的な共通テスト”は当初、提言のように「高等学校間の『調査書』の評価水準の格差補正」を想定したものであったが、後に国大協の入試改善の検討過程において「高等学校における一般的・基礎的な学習の達成度を共通尺度で評価するための試験」として位置づけられ、入学者選抜の“第1段階試験”としての性格が明確にされた。
こうして、共通1次試験は大学志願者の高等学校における一般的・基礎的な学習の達成度を測ることを目的に、入学者選抜に利用する“選抜試験”として位置づけられ、昭和54(1979)年1月、公立大も参加して第1回が実施された。(図1参照)
ところで、国立大は新制大学発足当初(昭和24(1949)年度)から昭和53(1978)年度までの30年間、「旧1・2期校制」が敷かれていた。旧1期校の試験日は3月初旬、旧2期校の試験日は旧1期校の合格発表後の3月下旬に設定(公立大は3月初旬から各大学で定める)されていたことなどから、国立大に対する“差別観”を招いた。この制度は、昭和54年の共通1次試験の実施とともに廃止され、国立大の入試期日は“一元化”された。
昭和54年から実施された共通1次試験は難問・奇問を排し、良質な出題の確保などの点で評価を得た。しかし、その一方で、国立大受験日の一元化に加え、国立大の共通1次試験の受験が一律に5教科7科目(昭和62(1987)年~平成元年は5教科5科目が主流)課せられていたことなどから大学(学部)の“序列化”が顕在化し、これによる“輪切り”の進路指導が行われたこと、試験の利活用が国公立大のみに留まったことなどが問題視された。
試験日が一元化された昭和54年~61年まで、国立大及びほとんどの公立大の2次試験日は3月初旬に統一されたため、受験生への措置として「自己採点方式」(共通1次試験の自己採点結果に基づいて出願先を選択)が導入された。このことが、大学の序列化や進路指導の輪切り現象に拍車をかけたとされた。このため、昭和62年からは“受験機会の複数化”(「連続方式」「分離分割方式」(平成元年))が図られるとともに、大学への出願を共通1次試験実施前に行うことになり(事前出願)、「自己採点方式」は一旦廃止された。なお、大学への出願期間については、63年から再び共通1次試験実施後となった。(図1参照)
前述のような共通1次試験の問題点を改善すべく、臨時教育審議会(臨教審:総理大臣の私的諮問機関)は『第1次答申』(昭和60(1985)年6月)の「大学入学者選抜制度の改革」において、偏差値偏重の受験競争の弊害を是正し、受験生の個性・能力・適性等の多面的な判定や、国公私立大を通じて各大学が自由に利用できる「共通テスト」の創設を提言した。
文部省(当時)は臨教審の「共通テスト」提言を受けて「大学入試改革協議会」を設け、提言の具体化に向けて検討・協議を重ね、昭和61(1986)年7月、共通1次試験に替わる「新テスト」構想をまとめた。新テストの目的は、「高等学校教育を尊重した優れたテストによる試験を行い、各大学の特色ある多様な入学者選抜のための基礎資料を提供する」ことであり、その内容は「高等学校における基礎的、基本的な内容に関する学習の達成度を評価することを基本とし、難問・奇問を排除した良質な試験問題を用意する」こととされた。
新テストは「大学入試センター試験」と命名され(昭和63年)、平成2(1990)年1月、第1回が実施された。共通1次試験は、第11回の平成元(1989)年で幕を閉じた。
センター試験は、国公私立の全ての大学が利用でき(16年からは短大も利用可能。22年は160短大が利用)、受験教科・科目も各大学の自由に任せる「アラカルト方式」になるなど、入試の多様化に寄与するものとなった。
第1回センター試験の利用大学数は全国立大95校(22年:全82校)、全公立大37校(同:全75校)、及び私立16大学・19学部(同:494大学・1,404学部)で、志願者数43万542人(22年:55万3,368人<短大含む>)、受験者数40万8,350人(同:52万600人<短大含む>)。(図1参照)
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これまでみてきたように、センター試験は「大学(短大を含む)入学志願者の高等学校段階における一般的・基礎的な学習の達成の程度を評価する」ことを主な目的としている。
高等学校段階の「一般的・基礎的な学習の達成度評価」は、高等学校「学習指導要領」の“評価規準”に則って行われるべきである。したがって、センター試験は「“目標準拠型”の達成度テスト」(絶対評価)であるといえる。
しかし、前述したように、センター試験は「各大学の入学者選抜のための基礎資料」として利用されており、その点では「“集団準拠型”の選抜テスト」(相対評価)である。
つまり、センター試験は一般的・基礎的な学習の達成度を測る目的・機能と、大学志願者を選抜する目的・機能といった、“2つの側面”を併せ持っているといえる。そして、志願者・大学側双方とも、専ら“選抜テスト”としてのセンター試験に目を向けている。
センター試験は、一般的・基礎的な学習の達成度評価を目的としながら、その出題に関しては“選抜テスト”としての公平公正性などの観点から、過去問や教科書の掲載文などからの出題は避ける(22年からは出題可能)/出題難易度の標準化/得点調整の対象科目間の平均点格差の是正など、非常に厳しい制約の中で問題作成が行われてきた。
センター試験の利活用については、素点による選抜だけではなく、一定の学力水準に達しているかどうかを総括的に判定する「資格試験的な取扱い」や、それを推進するための「年度内複数回実施」などの改善策が旧大学審議会答申『大学入試の改善について』(12年11月)などで提言されてきた。しかし、センター試験を「第1段階選抜」のみに利用し、最終的な合否判定は「個別学力試験」(2次試験)と調査書で行う一部の大学・学部も含め、センター試験は専ら“選抜テスト”として利用されているのが実態である。
共通1次試験とセンター試験は、その目的達成のため、高等学校の「学習指導要領」改訂の度に出題教科・科目を改編したり、出題内容や範囲などを変更したりしてきた。平成2年の第1回から22年まで21回のセンター試験(本試験)が実施されてきたが、その間の「学習指導要領」改訂による出題教科・科目の変更や平均点の推移をたどってみよう。(図2参照)
(1) 平成2年~8年:当該「学習指導要領」実施=昭和57年度~平成5年度(告示=昭和53年) ⇒ 普通科必修単位数=32単位、卒業単位数=80単位以上。国語I、数学I、理科I、現代社会といった、総合科目(必履修)を新設/センター試験=国語(「国語I・国語II」)、社会、数学、理科、外国語の“5教科18科目”からの出題。*7回実施(本試験)した「5教科6科目加重平均点」(数学2科目、他は1科目の800点満点を900点満点に換算) の平均点=564.7点。
(2) 9年~17年:当該「学習指導要領」実施=6年度~14年度(告示=平成元年) ⇒ 普通科必修単位数=38単位、卒業単位数=80単位以上。社会科を地理歴史科(世界史、日本史、地理に各「A、B」科目新設)と公民科に再編。数学は数学I、II、III、及び数学A、B、Cに再編。理科は総合理科を新設、及び物理、化学、生物、地学を各「IA、IB、II」科目に再編。/センター試験=国語(2科目)、地理歴史(6科目)、公民(3科目)、数学(7科目)、理科(9科目)、外国語(5科目)の“6教科32科目”(旧課程履修者用の「経過措置」科目は除く。韓国語は14年から導入)からの出題。*9回実施(本試験)した「5教科6科目加重平均点」(地歴・公民から1科目、数学2科目、他は1科目の800点満点を900点満点に換算)の平均点=537.9点。
(3) 18年~22年(現在):当該「学習指導要領」実施=15年度~24年度(数学・理科は23年度まで。告示=11年) ⇒ 普通科必修単位数=31単位、卒業単位数=74単位以上。14年度から完全学校週5日制。“ゆとり”ある教育活動の展開と「生きる力」の育成。「総合的な学習の時間」及び「情報」を新設(必履修)。理科は理科基礎、理科総合A、理科総合Bを新設、及び物理、化学、生物、地学を各「I、II」科目に再編。/センター試験=国語(1科目)、地理歴史(6科目)、公民(3科目)、数学(7科目)、理科(6科目)、外国語(5科目)の“6教科28科目”(旧課程履修者用の「経過措置」科目は除く。英語にリスニングテスト導入)からの出題。*5回実施(本試験)した「5教科6科目加重平均点」(地歴・公民から1科目、数学2科目、他は1科目の800点満点を900点満点に換算)の平均点=534.2点。
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前述した学習指導要領の改訂とセンター試験との関連で、改訂の度にセンター試験の平均点が“低下”傾向にあることが懸念される。 (図2参照)
高等学校(全日制・普通科)学習指導要領におけるこれまでの履修単位数をみると、昭和38(1963)年度~昭和47年度まで実施された必修単位数=男子68単位~74単位、女子70単位~76単位、卒業単位数=85単位以上を最高に、その後は所謂“ゆとり教育”カリキュラム(昭和57年度実施)や“高校教育の多様化”対応などで、高等学校の履修単位数や卒業単位数は前記のように縮減されてきた。
センター試験平均点の低下傾向は、こうした教育課程上の変容と関連しているのか。
他方、私立大や短大の「センター試験利用入試」は拡大の一途をたどり、センター試験受験者層も裾野を広げて年を追うごとに多様化しているが、こうした受験生の多様化と平均点とはどう関係しているのか。
センター試験は“選抜機能”に専ら目が向けられているが、その目的として学習の到達度を測る=“学力把握機能”も備えている。センター試験の“選抜テスト”としての利用実態から、同一問題による学力の経年比較や分析は難しいとはいえ、センター試験のもつ“学力把握機能”をもっと有効に活用すべきであろう。
つまり、現在行われているセンター試験の各科目の平均点や出題教科・科目の問題講評などに加え、受験者の属性(学科別(普通・専門・総合学科)/設置形態別(公・私立校別、中高一貫教育校別など)/都道府県別/現浪別など)と各問題の正答率などとの関係、さらに学習指導要領(評価規準)の達成度(理解度)との関連など、受験生の成績を多面的に分析し、出身高校や教育委員会等に“フィードバック”してはどうか。もちろん、受験者の個人情報保護や学校の序列化助長の可能性には最大限配慮することはいうまでもない。
現在、小・中学校で実施されている「全国学力・学習状況調査」(19年度~21年度は悉皆調査、22年度は抽出調査と希望利用で約74%の学校が参加)と同じように、受験者も含め、出身高校や教育委員会に得点のみならず多面的な分析結果をフィードバックすることで、学習指導の改善や授業計画の立案等に役立たせることができよう。受験者も志願大学・学部に合格できなかった場合、得点や正誤結果だけでなく各問題の評価規準(出題の狙い)や正答率などもフィードバックされれば、再チャレンジへの学習に役立つのではないか。
現役高校生の4割、大学(短大含む)志願者の7割以上が出願するセンター試験について、その“学力把握機能”を高校生(受験生)の学力向上に役立たせない手はない。
「大学全入」時代を迎え、大学教育の質保証とともに、高校生の学力や学習意欲の低下、入試の選抜機能の低下、とりわけ推薦・AO入試入学者などの基礎学力の担保が問題視されている。そうした中、適切な高大接続を実現するべく「高等学校等における基礎的教科・科目の普遍的学習の成果を把握する新たな仕組み」の構築に関する検討要請(国大協:19年11月)/「少数科目入試の見直しと幅広い基礎学力を測る制度設計、センター試験あるいはこれに変わりうる“統一試験”を広範に取り入れた入試制度の設計」など(日本私立大学連盟提言:20年3月)/「高大接続のための基礎学力の把握措置の必要性」(高等学校側)など、大学側・高校側から高大接続に関する意見が相次いで出されている。
このような情況の下、中教審答申『学士課程教育の構築に向けて』(20年12月)は大学入試改革の一環として、高等学校段階の学力を客観的に把握し、高校・大学が活用できる新たな“学力把握”の仕組みを高大接続の観点から取り組むことを提言した。この新たな仕組みに係るテストは「高大接続テスト(仮称)」と称され、推薦・AO入試での学力把握措置や高校での学びのマイルストーンなどへの活用が想定され、現在、テストの基本的な性格・特徴などが大学側・高校側関係者などによって検討、協議されている。
22年5月下旬、調査研究会の代表者名(佐々木隆生・北海道大特任教授)で『経過報告』が出されたので、“「高大接続テスト(仮称)」像”のポイントを以下に紹介しておく。
*「高大接続テスト(仮称)」は、「高等学校段階における基礎的学習の到達度を測る」という点ではセンター試験と同様の目的、性格をもつ。
しかし、センター試験の利用実態や従来のテストにみるような「集団準拠型」(相対評価)の“選抜テスト”ではなく、基礎的教科・科目を高校生が学習することを促す「目標準拠型」(絶対評価)の“達成度テスト”でなければならない。
*「高大接続テスト(仮称)」は、(1)基礎的教科・科目についての、(2)教科書に掲載されるような基本的な問題に関する(普通・専門・総合の3学科に共通したカリキュラムベース)、(3)複数回受験可能なテストで、(4)アメリカの共通テストのスコアのように、多様な高校と機能分化した大学が利用できるものとする(「進学適性試験」ではない)。
*「高大接続テスト(仮称)」は、欧米の共通テストや我が国の医学系共用試験などと同様に、“IRT(Item Response Theory ;項目反応理論)”を利用したテストとする。
*テストは、「ペーパー試験(PBT)」と「コンピュータ試験(CBT)」を併用し、漸次コンピュータ試験への移行を計画する。
*「マークシート」での多肢選択方式を採用する。ただし、IRT利用テストでも、“論理的思考力や表現力”を測るための開発に努力を払うことが望まれる。
*「高大接続テスト(仮称)」だけではすべての問題は解決できない。高校・大学関係者が協力する、種々の教育・入試改革が求められている。
なお、今秋には『最終報告』がまとめられる予定で、その後は大学入試センターに今春発足した入学者選抜研究機構において、実現可能性等が検討されていくものとみられる。
大学入試センターの設置目的は、法令によって次のように規定されている。
独立行政法人大学入試センター(以下「センター」という。)は、大学に入学を志願する者に対し大学が共同して実施することとする試験に関する業務等を行うことにより、大学の入学者の選抜の改善を図り、もって大学及び高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。以下同じ。)における教育の振興に資することを目的とする。 (独立行政法人大学入試センター法 第3条) |
大学入試センターは、前記の規定にあるように、“大学が共同で実施する試験”(センター試験)に関する業務を行うことで、大学入試の改善を図り、“大学と高等学校の教育の振興”に役立たなければならない。さらに、この目的を達成するために「大学の入学者の選抜方法の改善に関する調査及び研究を行うこと」(同法、第12条第2項)も規定されている。
つまり、大学入試センターは、センター試験受験者の成績を受験者の志願大学(学部)に提供するだけでなく、大学及び高等学校の教育振興にも寄与することが求められている。
センター試験や前述の「高大接続テスト(仮称)」は、高校教育と大学(学士課程)教育との“接続”(アーティキュレーション<articulation>:“つながり”と“区別”の2面性をもつ)の一翼を担うテストであることに間違いない。したがって、これらのテストは、単に高等学校の「学習指導要領」だけに準拠した出題、評価では済まないのではないか。
そうであるならば、例えば、高校生を対象とした全国的な学力調査である「教育課程実施状況調査」(第3学年)や国際的な学力調査「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」(15歳児<第1学年>)、16歳以上65歳以下の男女個人を対象にした「OECD国際成人力調査(PIAAC)」(2010年に予備調査、2011年~2012年本調査)なども含め、国立教育政策研究所などと連携し、センター試験の出題教科・科目の背景にある高校教育を多面的に幅広く分析し、高校生の学習実態や学力の実態をつかむことも必要ではないか。
ところで、大学入試センターには、先般の「事業仕分け」で運営費交付金(22年度政府予算案=8千万円、全収入の0.7%)に頼らず、独立採算制による事業運営が求められている。
知識基盤社会といわれる現在、大学の受験環境は、受験生の90%以上が入学を果たす「大学全入」時代にあり、大学進学適齢期(18歳)人口の50%以上が大学に進学する「ユニバーサル」段階に達している。こうした現状を踏まえ、高校教育と大学(学士課程)教育の質保証に資するような、例えば、前述したセンター試験の新たな活用方法や「高大接続テスト(仮称)」の調査・研究、試行テストなど、円滑な「高大接続」を促進するための大学入試センターの諸事業に対しては、運営費交付金が廃止されたとしても、何らかの“公的財政支援”を検討する必要があるのではないか。センター試験に関わる収入(検定料や大学への成績提供料など)は、センター試験の実施経費に充てるべきであろう。
現下の厳しい公財政事情は看過できないが、教育は“国家百年の計”であり、将来に向けた国としての教育投資は大事である。先述した中教審の『四六答申』においても大学入試改善の実現に向けた“政府の適切な援助”を提言している。
いずれにしても、大学入試センターには、高等学校までの初等中等教育で育成されてきた「生きる力」、とりわけ、それを支える構成要素の一つである「確かな学力」(基礎的・基本的な知識・技能/課題解決のための思考力・判断力・表現力など)を、大学の学士課程で育成される「学士力」(各専門分野を通じて培う知識・理解/汎用的技能/態度・志向性/総合的な学習経験と創造的思考力)に有意につなげるような事業展開を期待したい。