入試動向分析

2020年 私立大入試 志願者動向分析
 【2020年5月】

“超絶安全志向”で難関~中堅上位が軒並み志願者減、ランクダウンが顕著!

2020年私立大入試について、難関私立大の一般入試を中心に、人気度を示す「志願者動向」と、難易変動の指標となる「実質倍率」を見ていく。また、2021年“新入試”の最新情報も紹介する。

※この記事は『螢雪時代・2020年5月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

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ここ数年の私立大難化への警戒心、公募制推薦の合格者増などが影響。中堅理工系で大幅増が目立つ

2020年私立大一般入試(おもに2月入試)の志願者数は、前年比4%減少した。ここ数年の難化と2021年“新入試”を警戒し、“超絶安全志向”の出願となった。「高レベル・高倍率」のセンター試験利用入試が敬遠され、志願者が激減した。学部系統別では理工、農、芸術・体育を除き軒並み減少、「中堅理工系人気」が高まった。

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一般入試の志願者は4%減、センター利用の減少が顕著

2021年“新入試”へ向け、「さあ受験勉強!」と意気込んだ矢先、新型コロナウィルス流行の影響で学校の新年度開始が繰り下がるなど、出鼻をくじかれ不安が募る人も多いことだろう。一日でも早い収束を祈りつつ、こんな時こそ、浮足立たずに自分の学力や志望校、志望分野をもう一度見つめ直す機会としたい。
 さて、旺文社では、学部学生の募集を行う全国の私立大学(586大学。通信制を除く)に対し、2020年(以下、20年。他年度も同様)の一般入試の志願者数を調査した。3月中旬現在で集計した確定志願者数のデータは「206大学:約325.9万人」にのぼる。この集計は2月に行われた各大学の独自入試(大学が独自の試験問題等で行う入試)とセンター試験(以下、セ試)利用入試を主な対象とし、2月下旬~3月の「後期募集(セ試利用含む)」も集計に一部加えた。
 その結果、私立大一般入試の志願者数は、19年の同時期に比べ約4%減少したことがわかった。今後発表される大学の志願者数を加えても、最終的に私立大の一般入試志願者数は「4%前後の減少」に落ち着きそうだ(グラフ1)。 ただし、複数の入試日程・方式等を合計した「延べ志願者数」なので、学内併願などの重複を除いた実質的な志願者数は、見かけほど減っていない可能性もある。
 私立大一般入試の志願状況を方式別に見ると(グラフ2)、大学の独自入試と、独自・セ試併用型(独自入試の指定科目と、セ試の高得点または指定科目を合計して判定)が1%減とほぼ前年並みであるのに対し、セ試利用入試は13%減と激減ぶりが目立つ。
 もともと20年の4(6)年制大学の受験生数は、本誌の推定では19年に比べ2.7%減となる見込みで、志願者が減少する素地はあった。とはいえ、「大学入学共通テスト」(以下、共テ)をはじめとする21年“新入試”を回避したい極端な現役志向から、推薦・AO入試へ受験生が流れるものの、そこでの競争が激化するため、私立大一般入試でも合格を確保するため、併願を増やすと見られた。にもかかわらず、このまま推移すれば、14年ぶりに私立大一般入試の志願者は減少することになる。

グラフ1.私立大一般入試志願者数と大学受験生数の推移

グラフ2.2016年私立大一般入試 方式別志願状況(201大学:旺文社集計)


“新入試”回避の現役志向、セ試の志願者減も影響大

20年私立大一般入試の特徴は、ただ志願者の減少だけではない。志願状況をレベル別にみると、首都圏と京阪神を中心に、19年入試で敬遠された難関~準難関校だけでなく、人気を集めた中堅上位校までが、軒並み志願者を減らした。一方で、中堅校は全国的に増加が目立ち、数年前まで低倍率だった大学で、爆発的に増加するケースも見られた。
 このような現象が起きた理由として、4つのポイントが挙げられる。

(1)ここ数年の難化で“超絶安全志向”に
 大都市圏の大学に対する「定員管理の厳格化」は、補助金が交付されなくなる定員超過率のラインが、大規模校(収容定員8千人以上)で「1.10倍」、中規模校(同4千人~8千人)で「1.20倍」に、19年入試から固定された。合格者絞り込みは緩み、合格者増で易化する大学も見られた。にもかかわらず、20年の受験生マインドは“超絶安全志向”というべき状態になった。18年までの「A判定でも合格できない」先輩たちの苦戦を見て、いったん焼き付いた“私立大難化”のイメージが消えないからだ。
 特に、独自入試に比べ見かけの志願倍率(志願者数÷募集人員)が高く、合格ラインも「8~9割」に達することが多いセ試利用入試は極端に敬遠された。受験生はより確実な合格を目指し、独自入試対策に集中したものと見られる。
 このため、19年に合格者増で倍率ダウンした難関~中堅上位校で反動が起きず、さらに志願者減となった。ましてや、19年に合格者を絞り、難化した大学は敬遠の対象となった。例えば、國學院大(12%減)は前年の「志願者19%増→合格者9%減」、甲南大(17%減)も前年の「志願者16%増→合格者3%減」の絞り込みが志願者減の要因になったものと見られる。
 確実な合格を目指し、出願の仕方は、チャレンジ校をあきらめ、第1志望校をよりランクダウンする「タテ方向」へ絞る傾向が強まり、19年入試のような実力相応校を増やす「ヨコ方向」の併願は減らされた模様(T字型→I字型)。そして、併願を減らす対象となったのが、主にセ試利用入試であった。このあたりが、中堅校が大幅に増加し、激戦化した最大要因といえる。

(2)推薦入試の影響
 一般入試の難化を警戒するあまり、本来なら難関私立大を一般入試で合格可能な成績上位者が、指定校推薦を希望するケースが増加。高校の進路指導の先生方からは、例年より希望者が大幅に増えたとの声が多く聞かれ、中には「例年の3倍に増えた」ケースも見られた。
 一方、19年に志願者大幅増で難化した公募制推薦は、その反動から志願者が伸びず、ほぼ前年並み。一方で合格者は前年比11%増となり、特に京阪神では「志願者1%減、合格者16%増」で易化した模様だ。
 こうした、指定校推薦の志願者増、公募制推薦の易化で、一般入試受験者が減少したものと見られる。さらには、大学入試そのものをあきらめ、専門学校に流出する傾向も見られた。
 2月入試が志願者減で倍率ダウンした結果、セ試利用も含めた3月入試(後期募集)の志願者は6%減となった。募集枠が小さく、推薦・AO入試や2月入試の合格状況次第では、さらに枠が狭まることも多い3月入試は、高倍率の激戦となりがちなので、敬遠されたと見られる。

(3)21年度“新入試”を敬遠
 21年度“新入試”を翌年に控えた20年度の受験生は、その回避に向け、極端な現役志向となった。特に、セ試の後継として実施される共テは、当初、英語外部検定の併用や、数学・国語の記述式問題といった新機軸が盛り込まれる予定であり、それが敬遠材料となり、指定校推薦やAO入試の志願者増にも結び付いた。
 ところが、昨年11月に「大学入試英語成績提供システム」、12月に数学・国語の記述式問題の導入が取りやめになった。“新入試”に関する迷走ぶりには、当事者の高校2年生のみならず、20年一般入試を直前に控えた受験生も翻弄されることとなった。
 17・18年の試行調査(プレテスト)に関する報道等で、思考力問題が出題される共テが、セ試よりレベルが難化することは、20年の受験生も認識している。さらに情報の錯綜も不安材料となり、確実に合格を決めたい“超絶安全志向”に結びついた模様だ。

(4)セ試の志願者減と難化
 20年のセ試は志願者減(3.3%減)。特に、減少数(約1万9千人)の45%を占める首都圏における影響が大きく、セ試利用入試の志願者大幅減に結びついた模様だ。また、志願者中の既卒者が5.9%減と、4年ぶりに減少した。19年の“超安全志向”の影響で、既卒者自体がかなり減少した模様。現役生より多く併願するため、これも志願者減の一因になった。
 さらに、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・B、英語(筆記、リスニング)の平均点がダウン(=難化)した。文・理系ともに受ける基幹科目の平均点ダウンは、受験者にダメージを与え、事後出願(セ試の本試験日の後に出願を締め切る)のセ試利用入試の志願者減につながるとともに、独自入試の“超絶安全志向”を加速したものと見られる。


理工、農、芸術・体育が増加。文系と医療系は軒並み減少

全国6地区ごとの志願動向を見ると(グラフ3)、北海道・東北、北陸・東海、中国・四国、九州が増加したのに対し、関東・甲信越、関西は志願者減。首都圏および京阪神の難関~中堅上位校の、特にセ試利用入試が敬遠されたためと見られる。一方、志願者が増えた4地区では、“超絶安全志向”と強い地元志向による中堅校の大幅増が目立つ。国の給付型奨学金拡充や授業料減免制度の創設(低所得世帯対象)も、首都圏・京阪神以外の私立大への出願を後押しした模様だ。
 次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。東京オリンピック後の景気後退を見越してか、経済・経営・商をはじめ、文系学部は軒並み減少。「文系人気」は収まった模様だ。法の大幅減は、難関~準難関校が敬遠された影響といえる。一方、理系学部では、医、歯、薬が大幅減、医療・看護も減少するなど「理系の資格系」が人気低下する一方、理・工、農・水畜産・獣医は増加。特に、志願者が10万人を超えた千葉工業大(14%増)をはじめ、全国的に理工系中心の中堅校で志願者増が目立ち、情報系技術者の不足などを背景とした「理工系人気」の高まりを印象づけた。この他、芸術・体育系の増加も注目される。 

グラフ3.2016年私立大一般入試 地区別志願状況(201大学:旺文社集計)

学部系統別の志願状況


「MARCH」は全て減少、日本大・立命館大は増加

ここから、大学ごとの志願状況を見ていこう。表1では、志願者数(大学合計:3月中旬現在)の多い順に、上位20大学を示した。
 7年連続でトップの近畿大など、志願者数10万人を超える大学が「6→8大学」に増加した。20位までの志願者の合計は、全体(206大学:約325万9千人)の約49%とほぼ半数を占める。
 ただし、表1以外の大学も含め、首都圏や京阪神の難関~中堅上位校で、志願者減が目立つ。
 首都圏では、青山学院大(4%減)・学習院大(12%減)・慶應義塾大(8%減)・上智大(6%減)・中央大(7%減)・東京理科大(7%減)・法政大(10%減)・明治大(8%減)・立教大(11%減)・早稲田大(6%減)と、難関~準難関校がそろって志願者減。中央大・東京理科大は前年(中央大5%増、東京理科大7%増)の反動といえる。
 いわゆる「日東駒専」は、日本大(13%増)が前年の大幅減(12%減)の反動で人気を集めたが、駒澤大(41%減)・東洋大(17%減)は大幅減、専修大(9%減)も減少した。前年とは逆に、日本大に他大学から流入した模様。駒澤大は前年の合格者絞り込み(志願者9%増、合格者17%減)が敬遠されたものと見られる。
 京阪神では、いわゆる「関関同立」のうち、立命館大(10%増)の大幅増に対し、同志社大(7%減)・関西大(6%減)・関西学院大(14%減)は減少。立命館大は前年の合格者数緩和(志願者4%減・合格者10%増)が人気を集めたと見られる。
 一方、いわゆる「産近甲龍」のうち、京都産業大(2%増)は微増だが、龍谷大(4%減)・近畿大(6%減)・甲南大(17%減)は減少した。特に甲南大は前述の通り、前年の合格者絞り込みが影響したと見られる。また、近畿大は公募推薦が易化(志願者26%減に対し、合格者28%増)したため、再チャレンジ組の一般入試への流入が弱まったものと見られる。
 表2では、志願者1,000人以上の大学について、増加率が高い順に上位20大学を示した。東北工業大・東京工科大・神奈川工科大・福井工業大・岡山理科大といった理工系中心の大学が並び、20年の特徴である「理工系人気」と「地方回帰」を象徴する。
 1位の大阪体育大(107%増)は2月入試の日程分割も要因となった。その他の大学も、学部・学科の増設や前年の志願者減の反動といった人気材料はあるが、それだけでは「爆発的」ともいえる志願者増を説明できない。やはり“超絶安全志向”が、共通する最大の要因といえる。


学部系統別の志願状況


学部系統別の志願状況


女子大でも志願者減が目立つ。京阪神の中堅校で明暗分かれる

ここまで紹介した以外の大学を中心に、各地区の志願状況(おもに2月入試)を見てみよう。

①首都圏地区
 難関~中堅上位校では、国際基督教大(4%増)が増加したが、國學院大(12%減)・芝浦工業大(12%減)・成蹊大(13%減)・成城大(25%減)・津田塾大(28%減)・東京女子大(19%減)・日本女子大(14%減)・明治学院大(20%減)と大幅減。前年の反動が随所に見られた。
 中堅グループでは、国士舘大(2%増)・東京電機大(4%増)・神奈川大(12%増)が増加。一方、亜細亜大(21%減)・玉川大(6%減)・大東文化大(8%減)・東海大(7%減)が減少した。


②京阪神地区
 女子大では、京都女子大(4%減)・同志社女子大(8%減)・神戸女学院大(15%減)の志願者減に対し、3学部(経営・建築・食物栄養科学)を増設した武庫川女子大は17%増となった。
 中堅グループでは、追手門学院大(14%増)・大阪電気通信大(15%増)の大幅増に対し、京都橘大(15%減)・大阪経済大(16%減)・関西外国語大(12%減)・摂南大(26%減)・桃山学院大(11%減)・神戸学院大(16%減)は大幅減と明暗が分かれた。追手門学院大は3月入試で志願者が伸び、桃山学院大は失速した。


③その他の地区
 国公立大との併願が多い各地域の拠点大学のうち、北海学園大(10%増)・中京大(5%増)・岡山理科大(46%増)・広島修道大(3%増)・九州産業大(50%増)・福岡大(4%増)で志願者増。一方で、東北学院大(7%減)・南山大(10%減)・西南学院大(4%減)は志願者が減少した。

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京阪神で合格者増と倍率ダウンが目立つ。龍谷大・近畿大・甲南大が倍率ダウン、九州産業大・西南学院大が倍率アップ

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受験生が注目すべきは、見かけの「志願倍率」よりも「実質倍率」だ。2月入試を中心に、一般入試の受験・合格状況を集計したところ、「受験者5%減、合格者8%増」のため、実質倍率は19年4.5倍→20年3.9倍にダウンした。追加合格や補欠合格の増加をにらみ、合格者を増やす大学が目立った。


「志願倍率」に惑わされず、「実質倍率」に注目しよう

次に、私立大一般入試の合格状況を見よう。中でも倍率の変化は、「難化・易化」を計る物差しとなる重要データだが、一般的に使われる「倍率」には次の2通りあることに注意したい。

*志願倍率=志願者数÷募集人員=見かけの倍率
*実質倍率=受験者数÷合格者数=実際の倍率


私立大では合格者の入学手続率を考え、一般入試で募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試では10倍程度の合格者を出すのが普通だ。
 グラフ5で関西学院大‐理工の例を見てみよう。一般入試(全学日程)の志願倍率は12.4倍だが、合格者(補欠合格を除く)を募集人員の3.9倍出しているので、実質倍率は3.1倍となる。また、セ試利用入試(1月出願)の志願倍率は33.2倍もの超高倍率だが、合格者を募集人員の9.1倍も出しているので、実質倍率は3.6倍におさまった。これなら「とても手が出ない」という倍率ではないだろう。
 見かけの倍率に惑わされることなく、実際の倍率を志望校選びのデータとして活用しよう。


学部系統別の志願状況


受験者5%減、合格者8%増。全体で4.5→3.9に倍率ダウン

旺文社が私立大一般入試(主に2月入試)の受験・合格状況について調査したところ、正規合格者まで発表した98大学の集計(3月中旬現在)では、受験者数(未公表の場合は志願者で代替)の5%減に対し、合格者数は8%増のため(グラフ6)、実質倍率(以下、倍率)は19年4.5倍→20年3.9倍とダウンした。
 地区別の集計では、首都圏(5.1倍→4.7倍)、京阪神(5.2倍→4.3倍)といずれもダウンしたが、その他の地区は3.1倍と前年並み。特に京阪神地区の合格者増と倍率低下が目立つ。
 合格者増の要因は、①段階的に抑制されてきた、大規模大学の入学定員超過率が昨年から固定されたため、跳ね上がった倍率の緩和が図られた、②19年に難関~準難関校で追加合格や補欠合格が増えた結果、併願先の中堅上位~中堅校の入学手続率に影響したため、同じ事態に備え合格者を多めに出した、等が挙げられる。
 以下、おもな大学で倍率が目立って変動したケースを紹介する(*は「志願者÷合格者」、その他は実質倍率。おもに2月入試の集計)。



①倍率アップ 佛教大2.9倍→3.7倍、九州産業大*2.6倍→3.2倍、西南学院大3.8倍→4.1倍


②倍率ダウン 亜細亜大6.1倍→4.8倍*、東京経済大8.4倍→5.3倍、日本女子大3.5倍→3.0倍、龍谷大5.1倍→3.8倍、追手門学院大11.5倍→8.2倍、近畿大5.2倍→4.2倍、摂南大8.3倍→3.1倍、桃山学院大4.5倍→3.7倍、甲南大5.7倍→4.7倍、神戸学院大5.7倍→3.8倍


このうち、近畿大は受験者9%減に対し、合格者を10%増やし、前年に合格者絞り込みで難化(4.3倍→5.2倍)した甲南大も、受験者17%減に対し、合格者は微増(1%増)となった。激戦覚悟で出願した結果、意外な合格を手にした受験者もいたのではないだろうか。
 一方、上智大は「志願者6%減、合格者6%減」で、倍率(志願者÷合格者)は7.1倍→7.0倍、早稲田大も「受験者6%減、合格者3%減」で7.3倍→7.1倍と、いずれもわずかな倍率ダウンに留まり、ハイレベルを保った。


学部系統別の志願状況


ボーダーライン付近は激戦。明暗を分ける1点の重み

受験生の中には、ふだん「1点の差」を気にも留めない人がいるだろう。しかし、入試本番では、その「1点」が大切なのだ。
 グラフ7に、関西大学商学部の2月一般入試(学部個別日程と全学部日程の合計)の20年入試結果から、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。受験者6,318人、合格者1,155人で倍率は5.5倍。合格最低点は450点満点で286点(得点率63.6%)だった。
 注目すべきは、最低点を含めた「上10点幅」の部分で、ここに合格者全体の22%が集中する。最低点ぴったりのボーダーライン上にいるのは30人。高校の1クラス分にあたる人数だ。わずか1点差での不合格者も31人(やはりほぼ1クラス分)、10点差以内の不合格者は336人もいる。合格ライン付近は、同じ得点帯の中に、多くの受験生がひしめき合っているのだ。
 たった1つのケアレスミスが命取りになり、合否が入れ替わるのが「入試本番」。ふだんの勉強から解答の見直しを習慣づけよう。


学部系統別の志願状況

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公募制推薦は合格者が11%増。特に京阪神で16%増、倍率ダウン。近畿大・追手門学院大などが易化か

一般入試に先立って行われた、公募制推薦とAO入試。旺文社の集計では、公募制推薦は「志願者:前年並み、合格者11%増」で倍率ダウン、一方でAO入試は「志願者11%増、合格者:前年並み」で倍率アップと対照的だった。公募制推薦では、近畿大をはじめ、京阪神で合格者大幅増と倍率ダウンが目立った。

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“超絶安全志向”の影響大、指定校推薦が志願者11%増

私立大の公募制推薦について、20年入試結果の調査を行ったところ、昨年12月末現在の集計データ(127校:志願者数=約25万3千人)では、前年度に比べ志願者数は前年並みだった(グラフ8)。一方で、指定校推薦の志願者(約1万人:46校)は前年比で11%も増えた。
 公募制推薦は、ここ数年難化が続いた一般入試と、21年“新入試”を回避するため、受験生が流れ込むと予想されていた。志願者が増えなかった理由は、①19年の志願者18%増(前年同時期)の反動、②19年は大都市圏で合格者絞り込みが厳しく、そこで難化した大学が敬遠された、③「より早く確実に」合格するため、指定校推薦や、募集枠拡大が顕著なAO入試へ流れた、などが挙げられる。指定校推薦は、全体に成績上位者の利用率が高まったといわれ、北海学園大(12%増)・青山学院大(4%増)・西南学院大(14%増)などで志願者が増加した。
 地区別にみると、推薦志願者全体の8割超を占める京阪神地区が1%減、首都圏も1%減に対し、その他の地区は7%増と対照的だった。
 一方、合格者数は全体で前年比11%増のため、私立大の公募推薦全体の倍率(ここでは志願者数÷合格者数。AO入試も同じ)は19年4.0倍→20年3.6倍とダウンした。特に、京阪神の大幅ダウン(4.8倍→4.1倍)が注目される。前年に合格者を厳しく絞り込んだ反動といえる。
 中でも、「志願者減、合格者大幅増」の追手門学院大(7.5倍→4.5倍)・近畿大(8.8倍→5.1倍)・大阪経済大(9.0倍→5.8倍)の倍率急下降が目立ち、易化したものと見られる。この他、龍谷大(6.1倍→5.4倍)・摂南大(4.1倍→3.5倍)の倍率ダウン、佛教大(4.2倍→4.7倍)・大阪工業大(3.6倍→4.0倍)・神戸学院大(3.9倍→4.3倍)の倍率アップが目立った。
 学部系統別にみると(グラフ9)、ここ数年の難化傾向が敬遠され、社会・社会福祉を除く文系学部が志願者減、「文系人気」は収まった模様。一方、理系学部は薬を除き志願者増、「文低理高」となった。全般に合格者増で倍率ダウン(=易化)し、特に文・人文・教養、経済・経済・商の倍率ダウンが注目され、易化したと見られる。


学部系統別の志願状況


AO入試も志願者11%増、合格者を絞り倍率アップ

一方、AO入試についても調査を行ったところ、昨年12月末現在の集計(108大学:志願者数=約3万1千人)によると、前年比で「志願者11%増、合格者:前年並み」で、AO入試全体の倍率は19年2.2倍→20年2.4倍とアップした。公募制推薦と異なり、大学によってはやや合格者を絞り込む傾向が見られた。
 21年“新入試”のうち「主体性、多面的・総合的な評価の重視」を先取りする形で、AO入試の導入・拡大が活発化し、志願者増につながった模様。例えば、東京農業大では実施学部を「1→6学部」に拡大、志願者が約9倍に急増し、倍率も急上昇(1.4倍→3.0倍)した。
 おもな実施大学(原則として志願者300人以上)を見ると、東京都市大(2.6倍→3.2倍)・立教大(4.3倍→5.6倍)・早稲田大(4.9倍→6.9倍)・愛知淑徳大(2.3倍→2.9倍)・関西大(4.3倍→5.2倍)などで倍率アップ、金沢医科大(12.1倍→11.2倍)などでダウンした。特に、関西大で「志願者4%増、合格者13%減」と合格者を絞り込んだのが注目される。

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2021年の私立大入試はここに注目! 学習院大・上智大が共テを新規利用。関西学院大で理工系4学部が誕生!

ここからは、21年私立大入試における、3月中旬現在までに判明した主な変更点を紹介する。関西学院大の理工系4学部の開設や、大阪医科大と大阪薬科大の統合が注目される。一般選抜では、セ試を利用しなかった学習院大・上智大が共テ利用入試を新規実施する。早稲田大‐政治経済をはじめ、一般選抜の「独自のみ→共テ併用」への移行も目立つ。

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大阪医科大と大阪薬科大が統合。立教大の全学部日程が共テ併用に

ここからは、私立大の21年入試について、主な変更点の一部を紹介する。
 21年の共テ利用入試および独自入試の教科・科目の発表が、共テ関連の度重なる変更などの影響で断続的になっているのをはじめ、一般選抜や推薦型・総合型の変更点についても、各大学から十分に発表されているとはいえない状況だ。くわしくは、5月以降に各大学から発表される入試ガイドや案内パンフレットなどで、必ず確認してほしい。

●新設予定大学
 3月中旬現在、幸福の科学大・松本看護大・大阪信愛学院大の3大学、モビリティシステム専門職大・ビューティアンドウェルネス専門職大・かなざわ食マネジメント専門職大・名古屋国際工科専門職大・大阪国際工科専門職大・和歌山リハビリテーション専門職大の6専門職大が開設を申請中(いずれも仮称)。
●学部等の増設・改組
 大阪医科大・大阪薬科大の2大学が統合し、医・薬・看護の3学部からなる「大阪医科薬科大」が開設される予定だ。
 工学系では、関西学院大‐理工が分割・改組され、理・工・生命環境・建築の4学部が開設されるのと、東京理科大の学部改組(基礎工→先進工)が注目される。
 医療系では、群馬パース大・岐阜保健大・関西医科大の「リハビリテーション学部」増設、金城学院大‐看護の増設が注目される。
 この他、國學院大‐観光、湘南医療大‐薬の増設や、京都橘大の3学部増設(工・経済・経営)、神奈川大‐経営の「国際経営学部」への改組も、志願者増の要因として注目される。
●総合型(旧AO)の変更
 中央大‐法で「チャレンジ入試」を新規実施(自己推薦をリニューアル)。また、日本大‐生物資源科学、福岡大‐経済・工などで総合型を新規実施する。
●一般選抜の変更
【共テ利用入試】セ試を利用してこなかった学習院大と上智大で、共テ利用入試を新規実施する。いずれも全学規模の利用で、上智大では一般選抜の学科別募集も、独自入試から共通テスト併用型(独自・共テ併用)に移行する。
 この他、青山学院大‐総合文化政策・経営で4教科型を廃止/東京女子大で5科目型を新規実施/明治大‐商・国際日本の共テ利用前期で数学を「選択→必須」とし、「商=3→4科目方式、4→5科目方式/国際日本=4→5科目方式」に負担増/早稲田大‐文・文化構想・商・国際教養で共テのみ利用(旧セ試利用)を廃止(文・文化構想の共テ併用は継続)。
【共テ併用入試】青山学院大の個別学部日程(経済と、文・理工の一部方式を除く)が、独自入試から独自・共テ併用に移行/日本大‐生産工でCA共テ併用方式を新規実施/早稲田大‐政治経済で一般入試を、独自入試(3科目)から共テ併用方式に移行(共テ=数学Ⅰ・A必須の4または5科目、独自試験=総合問題)。また、同‐国際教養・スポーツ科学の独自入試も、独自・共テ併用方式に移行する。
【独自入試】青山学院大‐経済の個別A方式で3→2科目に軽減/日本女子大‐家政・理の一般個別選抜型で3教科型を追加/立教大が文以外の9学部で個別学部日程を廃止し、全学部日程の試験日を「1→5日(理は2日)」に増加。全学部日程の英語が共テ利用または英語外部検定利用(選択可)となり、大学独自の出題を廃止/早稲田大‐商で3方式(地歴・公民型、数学型、英語4技能型)に複線化/関西大で一般後期を廃止/甲南大‐文で一般後期を廃止する。
【英語外部検定利用】上智大の共テ利用型と学科別募集で英語外部検定利が可能になり、TEAPスコア利用型の利用方法が「出願要件→得点換算」に/明治大‐経営の全学部統一入試で「英語4技能3科目方式」を新規実施/立教大の全学部日程と共テ利用入試で、英語外部検定利用の最低スコア基準を撤廃/関西大‐社会安全・人間健康の一般選抜、文の共テ利用入試で英語外部試験利用方式を導入する。
●主体性の評価への対応
 一般選抜における「主体性の評価」については、関西学院大が一般選抜と共テ利用入試で、主体性の評価を反映する合否判定を導入。筆記試験の総合点と「筆記試験の総合点と学びに向かう力(高校時代の活動記録など、主体性の評価の評価点)の合計」を比較し、高得点(後者の筆記試験を圧縮し、同一基準で比較)の方を合否判定に利用する。その他は、出願時に何らかの本人記載の資料を提出させるものの、合否判定には利用しない大学がほとんどだ。
●キャンパス移転
 日本女子大‐人間社会が、西生田キャンパス(川崎市多摩区)から目白キャンパス(東京都文京区)に移転する予定。ここ数年のトレンドである「都心回帰」として人気を集めそうだ。

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2020年5月号)」より転載いたしました。

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