入試動向分析

国公立大2次出願のポイントはコレだ!【2008年2月】

2007(平成19)年度

国公立大志願者は必読!
“先行逃げ切り”が基本、“2次逆転”するには…?

 

※この記事は『螢雪時代・2008年2月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 


 

自己採点の結果は冷静に
受け止め、的確な出願を


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 センター試験(以下、セ試と略)の終了後、キミたちがまずやることは「自己採点」だ。大半の受験生は1月21日(月)に行い、予備校等が実施する全国レベルの自己採点集計に参加することになる。まずはセ試の結果を正確に採点し、受験科目の得点、志望校の配点による得点を把握しておこう。集計結果は4~5日で戻ってくる。
  
 自己採点データが届いたら、最初に各科目の得点を全国平均と比較しよう。予想通りの科目、思わぬ高得点の科目、ミスした科目に分かれるはず。こうした特徴をつかんだら、志望校について目標とした得点と比較してみよう。
 また、返却されてきた集計データでは、前年の合否状況と比較しながら、自分の立ち位置(志望学部・学科の全志望者中の自分の席次)を確認し、前年の合格者・不合格者の分布と比較しておこう。その際、全国レベルの総合平均点や科目別平均点の変化に注意したい。特に、前年より平均点が大幅に変動(±10点程度)した科目があると、志望校の配点によっては合格ラインに大きく影響するからだ。
  
 以下に、自己採点結果の基本的な受け止め方と対応策を示した。いずれの場合も、担任や進路の先生とよく相談して出願校を決定しよう。

(1)目標どおりに得点できた場合

 全国レベル(平均点の変動などを加味)で予定した得点が取れた場合、またそれより±20点(900点満点で)の範囲でA~B、あるいは50%以上の合格可能性がある場合は、おおむねそのまま出願すればよい。

(2)目標よりかなり多く得点できた場合

 予定よりも40点ぐらい上回った場合、2次の科目・配点を考えずに志望校を1ランク上げる人がよくある。この場合、2次科目の学力不足で不合格になるケースも多い。マーク式特有の幸運によるプラスアルファは、割り引いて考えよう。ただし、セ試の配点が高く、2次科目に不安がなければ、ランクアップしてもよい。

(3)予想外に悪く、目標を下回った場合

 逆にCやDの判定になり、30%以下の合格可能性の時は注意したい。実力不足だった場合は、すみやかに志望校を変更する必要があるが、セ試の失敗があくまでも勘違いや計算ミスなど不注意によるもので、2次学力に自信があれば、2次の配点比率が高い大学を選ぶとよい。その際、志望校が2段階選抜を予告していたら、ここ数年の実施の有無と突破ラインを調べておこう。
  
 とはいえ、合格への基本となるのは、セ試の持ち点を活かした「先行逃げ切り」だ。国公立大は受験機会が少なく、しかも後期を廃止・縮小する大学・学部が続出するなど、一般入試は実質「1回化」している。そのため、満足感の得られる大学なら、”次善の志望校”への変更もやむをえない。その場合は科目・配点の面で極力有利になる大学を重視し、受験校を再選定しよう。


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セ試高得点でも油断は禁物
2次逆転は本当に起こる


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表2 19年入試/金沢大-経済(前期)の合格・不合格の状況

 上記の(3)のような場合、本当に挽回できるのだろうか?図1に、駿台予備学校の「入試データバンク」の中から、金沢大‐経済(20年から人間社会学域経済学類)の前期日程について、19年センター試験の合否調査結果を示した。
 
 19年入試では、セ試が6教科7科目の900点、2次が「国語・数学・外国語から2(各200点)」の400点。入試結果は志願者269人、受験者243人、合格者145人、実質倍率1.7倍(18年2.1倍)だった。図1のデータは、受験者の91%、合格者の94%をカバーする。ちなみに、大学公表のセ試の合格者成績は「最高736.0点、平均663.6点、最低596.6点」で、本データの合格者の分布にほぼ合致する。そして、合格率は得点の増加とともに100%へほぼ着実に高まっていく。
 
 ここで注目したいのが、得点帯ごとの度数分布表でアミをかけた箇所だ。本データでは不合格者の最高が約700点で、合格者の最低は約600点。この差100点の範囲が「合否混在ゾーン」で、合格者の9割以上、不合格者の約8割が含まれる。この広い範囲で「2次逆転」が起こったのだ!
 セ試が合格最低点の場合、2次で合格者平均(60%)を超える高得点率(65%)が必要だが、それでも最後のがんばり次第で一発逆転も可能だったことになる。逆に、セ試で高得点を取っていても、油断は禁物なのだ。


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2次で得点差がつきやすい
のは「数学・理科・英語」


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 次に、2次試験の教科別に、得点分布の特徴を見ていこう。2次で課されることの多い、英語・国語・数学・理科について、ここ数年の標準的な事例を、以下の図2(A~H大学)として示した。

図2 二次試験 教科別の得点分布の例

 

<英語>得点差がつきやすいキー科目

 英語は大半の大学で課されるが、A・B大学の例をみると、国語に比べて得点差がつきやすく、合否に大きな影響を与えている。
 A大学は文系だけに英語得意者も多く、受験者の平均点は65%前後、合格者は100~175点の範囲に多く分布。配点ウエートが大きいこともあるが、英語の高得点者の多くが合格している。B大学では理系のためか、150点の配点でも合格者は50~140点ぐらいに幅広く分布。やはり英語での高得点者の合格率は高い。文理を問わず、英語は合否を決めるキー科目といえる。大学による難易差はあるが、少なくとも50%、できれば60~75%の得点率を目標にしたい。

 

<国語>比較的、差がつきにくい

 国語は平均点レベルに得点分布が集中し、差がつきにくい。C大学は文系学部だけに、D大学の理系学部よりも平均点が高く、合格者は高得点者が多い。逆にD大学の理系学部では50~150点と合格者の分布は幅広い。理系の場合、国語の配点は数・理に比べて極端に低いケースも多く、得点率が低くても合格している反面、高得点者であっても必ずしも合格していない。
 とはいえ、不得意の場合でも50~60%の得点を目指し、得意者はさらに上積みをしてほしい。

 

<数学>わかりやすい答案で部分点確保を

 数学は文系・理系を問わず、得点差が大きい。できる人は満点に近くなるが、できない人は0点に近い得点になるからだ。
 E大学の文系学部の場合、受験者・合格者ともに得点差が大きく、90点(60%)を超えるような高得点者の合格率はきわめて高い。文系の場合、数学が得意なら強力な武器となるのだ。逆に、不得意で低得点になる場合は、ほかの国語・英語で補う必要がある。F大学の理系学部では、出題レベルがやや難しかったようで、受験者の平均は80点前後で、合格者は広く分布している。合格には最低限40%程度が必要で、60%以上になると、大半が合格している。
 数学では4~5題の出題で、それぞれ2~3の小問に分かれる場合が多い。受験生の最近の回答はメモ的なものが多く、論理的な流れがわかりにくいという。論理展開、計算の過程、推論などを明確にし、採点者にわかりやすい答案作成を心がけ、きめ細かく得点しよう。完答できなくとも、部分点だけで合格している人が多いのだ。

 

<理科>高得点が合格への必須条件

 各大学とも、理科の平均点は数学ほど年度ごとの変動はなく、比較的安定している。物理に比べ、化学の方が受験者の平均点がやや高い傾向がある。G大学・H大学の得点分布を見ると、理科の高得点者は大半が合格していることがわかる。全国的に理科の得点分布は安定しており、過去問を入念に調べて学習を進めよう。合格を確実にするには、65~80%の大量点が必要とされる。
 ただし、2次で理科2科目を課す大学で、なおかつ低倍率の場合は、うち不得意な方の1科目が30%程度の低得点率で合格したケースもみられる。

 

<小論文>読解型は得点差が小さい

 小論文の出題方式にはさまざまなタイプがある。ここでは、国語または英語の文章が出され、これに一定の要約、さらに自分の考えを述べるものについて触れておく。
 この種の小論文は、国語力(または英語力)や学科の専門分野に関連する科目(地歴・公民・理科など)の総合的な基礎学力や、論理能力などを見ようとしている。採点者は各設問に対して、5段階で3~5人で評価することが多い。したがって、ごく一部の個性的で水準の高い答案を除き、大半の人の得点は100点満点で45点~65点の範囲に集中するという。


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逆転するには2次試験で
合格者平均点の確保を!


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 国公立大ではごく一部を除き、セ試と2次の合計点で合否が決まる。その実態がどうなっているか、「螢雪時代」取材のデータ(下に掲載の図3:X大学-理系学部の事例)を示そう。
 
 同学部の入試科目・配点は、セ試が5教科7科目の450点、2次が数学・理科・英語各200点の計600点。人数の分布は、セ試を10点刻み、2次を30点刻みの得点帯で示した。黒丸は合格者、白丸は不合格者で、直線帯k( x + y = k )の右上部分が合格ゾーンとなる。全体的な特色を分析すると、次のようになる。
 
(1)セ試の得点は、受験者が330~400点に、合格者は360~410点(80~90%)に集中。合格者平均は380点(得点率85%)程度である。
(2)2次では、受験者は180~450点(得点率30~75%)に広く分布し、特に集中するのは240~420点(40~70%)である。合格者は270~450点(45~75%)の幅にあり、特に集中するのは55~70%の得点帯である。
(3)合格者の大半は、セ試で80~90%、2次で45~75%のゾーンにいる。その幅はセ試の10%差に対し、2次は30%差になる。マーク式のセ試に比べ、記述式の2次(特に数・理)では得点差が大きくなる。
(4)全体としては、多数が分布する得点帯を示すと、図3のようなタマゴ型になり、セ試と2次の得点は高い相関関係にある。ただし、セ試が340点と低くても、2次で360~390点(60~65%)の高得点をとり、合格している者もいる。逆に、セ試でほぼ400点をとっても、2次で240点(40%)程度しかとれず、不合格となっている。
 
 ここで注意したいのは、セ試が高得点でも、必ずしも2次が高得点とは限らない、ということ。2次向きの深い学習をし、真に実力がついていれば、たとえセ試で思わぬ失敗をした場合でも、2次の配点が高ければ、ある程度挽回は可能なのだ。
 
 次に、セ試で合格最低点の場合、2次でどれだけとれば合格できたのか、大阪市立大(前期)のケースを見てみよう。同校ではセ試・2次・総合点それぞれに、合格者の最低点や平均点を公表している。そこで、総合の合格最低点からセ試のそれを引き、「2次必要点」として下表に掲載した。
 これをみると、2次科目が国語・外国語(商・経済は数学も)の文系学部では得点率70%前後と、学部により合格者平均を3~8ポイント程度上回る高得点が必要だ。一方、2次科目が数学・理科・外国語の理・工では、得点率50%台で、学科により合格者平均点とほぼ同じか、1~4ポイント下回る得点で合格している。ただし、同じ「数・理・外」でも、医学科は得点率73.5%と、合格者平均(72.1%)を上回る必要があり、やはりハイレベルの激戦といえる。

図 センター試験&2次試験の得点帯別にみる合否状況と相関


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得意科目に強い意志……
こんな人は2次逆転できる!


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ここまでの事例を踏まえ、”2次逆転”のポイントをまとめてみた。
 
(1)2次逆転は、セ試の低得点者が2次で合格者の平均レベルの得点を取り、合格ゾーンに入るケースが多い。経験的には、2次の最高・最低点差のおよそ半分が逆転ゾーンとなる。
(2)逆転ゾーンは、一般的に文系学部は2次配点の10%前後、理系学部で15%前後といわれ、文系で狭く理系で広い傾向がある。また、配点比率が2次重視で、2段階選抜がなければ逆転幅はかなり広くなるが、セ試重視の配点になればなるほど、逆転ゾーンは狭くなる。
(3)2次逆転の要因となるのは、得点差のつきやすい数学・理科・英語。特に文系で数学が得意、理系で英語が得意だと、逆転の可能性が高い。
 
さらに、高校や予備校の進路指導の先生方に取材したところ、2次逆転できる受験生には、次のような特徴があるという。

【1】志望校に対する強い意志

 「必ずこの大学に入る!」という強い意志を持っていることが必須条件だ。加えて、セ試の失敗を引きずらない、気分転換の早さも必要だ。

【2】高レベルの得意科目がある

 絶対の自信を持つ得意科目がある人は強い。その科目の配点が高ければ2次逆転のチャンスは広がる。また、セ試の準備のように不得意科目を意識せず、得意科目を集中的に勉強できるので、残り1か月で学力が飛躍的にアップするという。

【3】思考力・論理力重視の2次試験に適性あり

 セ試のようなスピードを要求される試験より、じっくり考えさせる試験(京都大・東京工業大・一橋大など)の方が得意で、論理構成のしっかりした答案が作れる人は、大学ごとの出題傾向にもよるが、2次で真価を発揮し、高得点をかせげる。
 一方、2次で逆転されやすいのは、セ試が予想外に高得点で、合格可能性もA判定のため、安心しきってしまうケースだ。
 また、マーク式には強いが、志望校にとって必要最小限の2次学力がついていない人も要注意。自分の学力を冷静に判断し、なるべくセ試の配点比率が高い大学・学部を選んで逃げ切る戦略も必要だろう。
 
ともあれ、2次試験まであと1か月。受験生はこの期間に学力が「偏差値で5は上がる」という。セ試が好成績だった人は逆転されないために、思うように得点できなかった人は挽回を狙って、最後まで集中力を切らさないでほしい。 

 
 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2022年2月号)」より転載いたしました。

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