今月の視点

12月

「達成度テスト(仮称)」 と 高大接続 !

高校教育の“質保証”と
大学入学者の“選抜基準”の設定

旺文社 教育情報センター長 大塚/2013年12月3日掲載

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25年10月末、政府の「教育再生実行会議」(座長・鎌田薫早稲田大総長:以下、実行会議)は、高大接続や大学入学者選抜の在り方などを提言した『高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について』(第4次提言)を安倍晋三首相に提出した。
 提言では、高校教育の質の確保と向上を図るとともに、大学の人材育成機能を強化し、受験生を多面的、総合的に評価・判定する入学者選抜への転換を求めている。
 具体的には、高校段階での学習の到達度を把握して指導改善や推薦・AO入試に利用したり、入学者の基礎資格として選抜基準の設定に活用したりする新たなテストとして、“基礎レベル”と“発展レベル”からなる「達成度テスト(仮称)」の導入を基本に据えている。
 中教審では当提言を受け11月上旬、具体的な制度設計に向けた検討、議論を開始した。


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< 『第4次提言』 の概要 >
提言の3本柱

『第4次提言』では、まず我が国を取り巻く状況として、グローバル化の急速な進展、少子・高齢化、生産年齢人口の減少といった厳しい時代の変化を挙げ、イノベーションの創出を活性化させ、人材の質を飛躍的に高めていくことが必要であると指摘している。
 そのためには教育の在り方が重要であり、若者の夢を強い志に高め、実現に導く情熱や力、社会に貢献し責任を果たす規範意識や使命感が必要であり、幅広い教養と日本人としてのアイデンティティ、多様な人と協働するコミュニケーション能力、課題発見・探究・解決能力、豊かな感性などを培うことが重要であるとしている。
 提言では、こうした力は義務教育の基礎の上に高校、大学の段階で伸ばしていくものであるとし、「高校教育の質の向上」/「大学の人材育成機能の強化」/「能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価する大学入学者選抜への転換」といった3本柱を立て、その一体的な改革を求めている。
 以下に、提言の3本柱のポイント及び「達成度テスト(仮称)」の創設や大学入学者選抜の改革提言に係る事項についてまとめた。

1  高校教育の質の向上
 ● 全ての生徒が共通に身に付けるべき資質・能力の育成
 ・国は、基礎的・基本的な知識・技能や思考力・判断力・表現力等について、高校で共通に身に付けるべき目標を明確化する。学校は、生徒に対し、主体的に学習に取り組み、生涯にわたって学ぶ基礎となる力や規範意識等の基礎的能力を確実に育成する。
 ・国と地方公共団体は、インターンシップ、ボランティア活動等の体験活動の充実、海外留学の促進、文化・芸術・スポーツ活動、大学や地域と連携した教育機会等の充実を図る。学校は、生徒がこれらの能動的・主体的な活動に少なくとも一つは深く取り組むよう指導・支援する。
 ・地方公共団体と学校は、生徒が夢や志について主体的に考え、学ぶ意欲を高めるとともに、能動的に学び自己を確立できるよう、キャリア教育を充実する。
 ● 生徒の多様性を踏まえた学校の特色化
 生徒の多様性を踏まえ、地方公共団体と学校は、例えば、次のような特色化を進めるとともに、国の適切な支援により、教育を充実する。


● 学習成果や教育活動の把握・検証による教育の質の向上
 ・国は、基礎的・共通的な学習達成度を把握し、各学校での指導改善等に活かすための新たな試験の仕組み ―「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」(注.提言では新たな試験(達成度テスト(基礎レベル)(仮称))と表記。後述)― を創設する。
 ・国と地方公共団体は、ジュニアマイスター顕彰制度(注.工業系学科の生徒に対し、職業資格の取得や技術・技能検定の合格、競技会等での成果を顕彰する制度)や、職業分野の資格等も活用して多面的な学習成果の評価の仕組みを充実し、生徒が進学や就職にも活用できるようにする。
 ・学校は、教育活動の質を向上させていくために学校評価を通じて、学校運営の組織的・継続的な改善を図るとともに、積極的な情報発信を行う。


2  大学の人材育成機能の強化
 ● 大学の多様性を踏まえた教育機能の強化
 大学は多様性を踏まえ、社会的役割等や建学の精神等を基に、例えば、次のような教育機能の強化を図る。国は、組織的な教育改善を行う大学を積極的に支援する。


● 教育課程の点検・改善、質保証の徹底
 ・大学は教育課程の点検・改善を行い、学生の学びへの意欲を喚起するための教育内容や教育方法の改善に取り組む。また、厳格な成績評価・卒業認定等を行い、学生の学修時間を増加させる。
 ・国は、厳格な教育改革を進める大学の定員管理について、国立大学法人運営費交付金や私学助成の取扱いが不利にならないよう検討するとともに、認証評価で教育の質の向上を図る取組や学修成果を重視する仕組みを整備するなど、教育の質保証を徹底する。
 ● 教育内容・方法等の可視化、教育情報の発信
 ・大学は学生の能動的な活動を取り入れた授業や学習法、双方向授業など教育の質的転換を図るとともに、入学者の状況に応じた教育を充実する。また、個々の教育課程やその体系を徹底して公開し、教育内容・方法、成績評価基準等を可視化する。学生による授業評価結果の活用など、常に効果的な教育の実施を確認する機会を設ける。
 ・国は、情報発信に関する共通の枠組み(注.現在、26年度からの本格稼動に向けて検討されている「大学ポートレート(仮称)」)を整備し、大学はそれを積極的に利用して情報発信に努める。
 ● 入学後の針路変更を柔軟化
 幅広い教養教育とニーズに応じた柔軟な学習を可能にする観点から、大学は入学後の進路変更が柔軟にできる構造に転換する。このため、大学・学部・学科の枠を超えて履修できる機会の拡大や、募集枠の大括り化、転学・転部を可能にする機会の拡大を図る。
 ● グローバル人材、イノベーション創出等の人材育成
 大学は、海外大学との連携、外国語授業の増加、留学生の派遣・受入れや外国人教員の受入れの拡充等によりグローバル人材の育成を進める。また、イノベーション創出を担う人材や地域に貢献する人材を育成するための教育プログラムの実施、産学官の連携等を進める。
 さらに、大学の国際競争力を高めるため、ダブル・ディグリー(注.連携する大学間で開設された学修プログラムの修了者に各大学がそれぞれ学位を授与する)やダブル・メジャー(注.2つの異なる専攻で体系的な教育プログラムを履修して学位を取得する仕組み)等の取組を推進する。
 ● 大学院教育の充実
 日本の大学が世界の大学と伍していくには、大学院教育の重視が必要。大学は、国内外の多様な分野から優秀な大学院生を獲得して体系的な大学院教育プログラムを提供し、卓越したグローバル人材や最善解を見出し社会を牽引する高度人材を育成する。
 その際、大学院教育の充実を図るとともに、産学官の連携により、大学院修了者(特に博士号取得者)のキャリアパスの開拓を積極的に進め、広く社会での活躍を促進する。

3  能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定する大学入学者選抜への転換
 ● 大学教育に必要な能力判定のための新たな試験の導入
 ・大学入学者の選抜は、高校教育から大学教育への円滑な接続の観点から、大学教育を受けるために必要な教養や知識、学ぶ意欲等が高校段階で身に付いているかどうかを正しく把握できる選抜方法とすることが重要である。
 主体性、創造性を備えた多様な人材育成には、高校と大学が連携し、若者の能力、意欲等を最大限伸ばしていくような一貫した取組が不可欠である。若者の力を引き出していく上で、知識偏重の1点刻みの試験のみによる選抜や、逆に、学習意欲や努力の減退を招くような学力不問の選抜によって、若者の能力を損ねることがあってはならない。
 こうした観点から、前述した「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」により、高校教育の基礎的・共通的な学習の達成度を客観的に把握し、これを各大学の判断で推薦入試やAO入試にも活用すること、また、各大学が求める学力水準の達成度については、大学教育を受けるために必要な能力を評価し判定するための新たな試験 ―「達成度テスト・発展レベル(仮称)」(注.提言では新たな試験(達成度テスト(発展レベル)(仮称))と表記。後述)― の活用等により確認した上で、各大学の創意工夫により、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定する入学者選抜に転換することが必要である。
 ● 多面的・総合的に評価・判定する大学入学者選抜への転換
 ・大学入学者選抜は、各大学のアドミッションポリシーに基づき、能力・意欲・適性や活動歴を多面的・総合的に評価・判定するものに転換する。
大学は、養成する人材像を明確化し、教育を再構築する。それを踏まえたアドミッションポリシーを具体化し、大学入学後の教育プログラムとともに示す。
 ・各大学が求める学力水準の達成度の判定には、アドミッションポリシーに基づき、「達成度テスト・発展レベル(仮称) 」の積極的な活用が図られるようにする。
 その際、利用する教科・科目やその重点の置き方を柔軟にするなど弾力的な活用を促す。各大学が個別に行う学力検査については、知識偏重の試験にならないよう積極的に改善を図る。国は、TOEFL 等の語学検定試験やジュニアマイスター顕彰制度、職業分野の資格検定試験等も学力水準の達成度の判定と同等に扱われるよう促す。
 ・各大学は、学力水準の達成度の判定を行うとともに、面接(意見発表、集団討論等)、論文、高校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動(生徒会活動、部活動、インターンシップ、ボランティア、海外留学、文化・芸術活動やスポーツ活動、大学や地域と連携した活動等)、大学入学後の学修計画案を評価するなど、アドミッションポリシーに基づき、多様な方法による入学者選抜を実施し、丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る。
 その際、企業人など学外の人材による面接を加えることなども検討する。
 ・推薦入試やAO入試における基礎学力の判定に際しては、高校における学習の達成度を評価するものとして、「達成度テスト・基礎レベル(仮称) 」の結果の活用も可能とし、国は、各大学の判断による活用を促進する。また、推薦入試やAO入試の選抜及び結果発表について、高校教育への影響を考慮した適切な時期に行われるよう促す。
 ・大学は、入学者選抜において国際バカロレア資格及びその成績の積極的な活用を図る。国は、そのために必要な支援を行うとともに、各大学の判断による活用を促進する。
 ・大学は、社会人、留学生、障害者等の受入れや飛び入学等による多様な学生の受入れが進むよう入学者選抜の工夫を図る。
 ・国は、メリハリある財政支援で上記のような取組を行う大学を積極的に支援する。
 国及び大学は、大学入学者選抜の改革の成果を検証し、継続的な改善に取り組む。
 公務員の採用においては、特に平成14 年度以降、人物評価の重視に向けた見直しが図られてきており、引き続き能力・適性等の多面的・総合的な評価による多様な人材の採用が行われることが期待される。


● 高校教育と大学教育の連携強化
 ・国、地方公共団体、大学及び高校は、高校関係者と大学関係者の間で互いの教育目標や教育内容、方法等についての相互理解を図るため、様々な協議や教員の交流など、その機会の拡大を図る。
また、外国語教育などで、高校より前の段階からの連携の強化にも取り組む。
 ・国、地方公共団体、大学及び高校は、高校生を対象とした大学レベルの教育機会の提供(大学教員や社会人が高校に出向いて行う授業や大学の授業公開、アドバンストプレイスメントの実施等)について、ICT 等も活用しつつ推進する。
大学は、こうした学習成果を大学入学者選抜や大学での単位認定にも反映する。特に、スーパーサイエンスハイスクールやスーパーグローバルハイスクール等の高校において、高大連携プログラムの導入を大幅に促進する。
国は、こうした取組を積極的に支援する。
 ・高校段階の学習内容の補習を大学で行う必要性が減少するよう、入学者に求める学力について高校へ情報提供を行ったり、高校と大学が協力して大学入学前の準備教育を実施したりするなど、高大連携を充実させる。
 ・高校卒業後の進路をより柔軟にするため、短大、専門学校から4年制大学への編入学や専門高校等から大学への進学の機会の拡大を図る。
国は、高等学校専攻科修了者について、高等教育としての質保証の仕組みを確保した上で大学への編入学の途を開く。


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< 中教審での審議開始 >

中教審では政府の『第4次提言』を受け、「高等学校教育部会」(23年11月設置)と「高大接続特別部会」(24年8月設置)において25年11月上旬から、実行会議の基本的な改革提言を踏まえた具体的な制度設計等を審議している。事務局(文科省)では、今年度内に一定の方向性をまとめたいとしている。各部会での審議事項は、次のとおりである。


< 達成度テスト(仮称)の背景 >
“基礎レベル”と中教審「学習到達度テスト(仮称)」

 ● 高校教育の「コア」
 中教審の高等学校教育部会ではこれまで、「全ての生徒に共通に身に付けさせるべき資質・能力=“コア”」や、「生徒の学習状況を適切に評価する仕組み」など、高校教育の質保証に向けた方策について検討、議論してきた。
 中教審では「コア」を構成する要素(範囲)を、「確かな学力」、「豊かな心」、「健やかな体」(知・徳・体)のいずれの領域にも含まれるものとして、学習指導要領では高校生として必要な知識・技能と教養を身に付けさせるために設置されている「必履修教科・科目等」(「総合的な学習の時間」「特別活動」含む)であるとしている。
 つまり、「コア」の範囲は「生きる力」の構成要素であり、その一つの領域である「確かな学力」を支える①基礎的な知識・技能/②基礎的な知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等/③主体的に学習に取り組む意欲・態度、といった“学力の3要素”が重要である。
 因みに、新学習指導要領で導入された「共通必履修科目」(国語総合<標準4単位:2単位まで減可>/数学Ⅰ<同3単位:同>/コミュニケーション英語Ⅰ<同3単位:同>)は、全ての高校生が身に付けるべき「コア」の内容を教科・科目として示している。
 また、社会で自立し、社会に参画、貢献していく人材育成の観点から、「コア」の要素を含む資質・能力として、「市民性」、「批判的思考力」、「説明力・議論力」、「創造力」「人間関係形成力」、「主体的行動力」、「自己理解・自己管理力」、「職業観・勤労観」「公共心」「社会奉仕の精神」などを挙げている。
 「コア」の範囲やその要素を含む様々な資質・能力の中には、例えば知識の量を筆記試験や技能試験等で客観的に比較的容易に把握しやすいものと、難しいものとが混在しているとし、「コア」の評価に当たっては、それぞれの性質に応じた適切な方法による把握を行い、客観的な評価の充実を図っていく必要があるとしている。(図1参照)
 ●「高等学校学習到達度テスト(仮称)」の提言
高等学校教育部会では25年1月末、前述のような高校教育の質保証の観点を踏まえ、高校生として共通に求められる基礎的・基本的な知識・技能や思考力・表現力・判断力等に関し、その学習到達度を把握する「高等学校学習到達度テスト(仮称)」を提言した(『審議の経過について』)。
 当テストの位置づけとして、次のような点を挙げている。


また、「学習への意欲・態度」、「社会・職業への円滑な移行に必要な力」、「市民性」、「道徳的な価値・倫理観」など、「高等学校学習到達度テスト(仮称)」の対象とすることが難しい幅広い資質・能力については、評価の妥当性の確保や信頼性の向上に向け、評価の手法や評価指標等に関する調査研究を行うとともに、必要に応じて「指導要録」の様式の見直し(記載事項の改善)など、学習評価の充実につなげていくことも検討すべきだとしている。(図1参照)


● 「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」の実施教科・科目等
 ここまで、政府・実行会議が今回提言した「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」と、中教審・高等学校教育部会が提言した「高等学校学習到達度テスト(仮称)」のそれぞれ目的や位置付けなどをみてきた。
 両テストをみると、「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」は「高等学校学習到達度テスト(仮称)」を踏襲していることが明らかである。
「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」の実施対象となる教科・科目については、高校生が共通に身につける基礎学力の達成度を測る目的から、当面、主要教科・科目の「国語・数学・英語(=共通必履修科目)」を基本とすることを想定した議論であったようだ。
 また、当テストの対象者については、実行会議の委員の間で“義務付け”の意見もあったようだが、中教審提言における「高等学校学習到達度テスト(仮称)」の“希望参加型”も踏まえ、“できるだけ多くの受験”としたようだ。

“発展レベル”とセンター試験の改編

● 現行センター試験の評価と課題
 政府・実行会議の提言では、「達成度テスト・発展レベル(仮称)」を「大学教育を受けるために必要な能力を評価、判定するための新たな試験」と位置づけて成績の表示方法を段階別にすることなどを提起しているものの、センター試験を全面的に廃止するのか、改編して存続させるのか、具体的に明記していない。
 ただ、現行のセンター試験は、難問奇問を排除した良質の問題を提供し、各大学の個別試験との組み合わせによって入学者選抜の個性化・多様化を促進していると評価する一方で、1点刻みの合否判定の助長、試験結果(自己採点)を基にした志願先の選択(出願)による受験生の心理的圧迫などの課題を指摘している。さらに、6教科・29 科目に及ぶ出題科目の準備や毎年50万人を超す受験者の全国一斉・同時実施の負担増など、限界ともいわれているセンター試験実施の運営上の課題も挙げている。
 そして、「達成度テスト・発展レベル(仮称)」の運営については、大学入試センター等が有するノウハウ、利点を活かしつつ、「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」と相互に連携して一体的に行うようにするとしている。
 こうしたことなどから、「達成度テスト・発展レベル(仮称)」は、現行のセンター試験をベースに改編することが伺える。
●「達成度テスト・発展レベル(仮称)」と旧大学審のセンター試験改善提言
 「達成度テスト・発展レベル(仮称)」は上述のようにセンター試験の改編が想定されるが、そのセンター試験の抜本的な改善策が13年前の平成12(2000)年11月、旧・大学審議会(現・中教審大学分科会)答申の『大学入試の改善について』で提言された。
 センター試験の当時の主な改善提言は次のとおりで、既に実施されている事項もある。


今回の「達成度テスト・発展レベル(仮称)」のポイントともいえる「基礎資格としての利用」⇒・素点によらない資格試験的な取り扱い(旧・大学審提言) /「試験結果の段階別表示」⇒・センター試験成績のグループ化と個別試験の選抜方法(同) /「複数回の挑戦」⇒・年度内複数回実施(同)などは、まさに旧・大学審提言を髣髴させる。
 ● 旧・大学審提言に対する当時の懸念等
 旧・大学審は大学入試改善の最終答申に先立ち、12年4月にその「中間まとめ」を発表。これに対し、大学側・高校側のそれぞれ教育関係団体から意見書が提出された。
 意見書では旧・大学審における入試改善策の提言と大学・高校現場における入試観・教育観との齟齬などから、提言を疑問視する意見や懸念も寄せられた。
 以下に、センター試験の「資格試験的な取扱い」と「年度内複数回実施」についての当時出された主な意見を紹介しておく。
 【センター試験の資格試験的な取扱いに対する意見】


* センター試験の“資格試験的な取扱い”の背景には、当時の大学進学率が40%ほどになり、学生の学力低下、学力不揃いに対する“最小限の学力確保”という要望が伺える。
 【センター試験の年度内複数回実施に対する意見】


<  「達成度テスト」 と 『第2期教育振興基本計画』 の政策事項 >
社会を生き抜く力の養成

『第2期教育振興基本計画』(以下、『第2期基本計画』。25年6月閣議決定)は、第1期計画期間中(20年~29年までの10年間)を通じて目指すべき教育の姿の検証結果を踏まえた今後5年間(~29年)における、政府が策定する教育の振興に関する総合計画である。
『第2期基本計画』は、「4つのビジョン」(基本的方向性)、「8つのミッション」(成果目標)及び「30のアクション」(基本施策)で構成されている。「達成度テスト(仮称)」(基本計画では「到達度テスト」)に関しては、「4つのビジョン」のひとつである「社会を生き抜く力の養成」の「ミッション」として、次のような形で盛り込まれている。
 ● 「生きる力」の育成と課題探求能力の修得
 ① 「生きる力」の確実な育成(幼稚園~高校) ⇒ ・高校段階での“到達度テスト導入”など、高校教育の改善・充実。
 ② 課題探求能力の修得(大学~)  ⇒ ・点からプロセスによる質保証を重視した高大接続:高校段階での“到達度テストの活用”を含め、志願者の意欲・能力・適性等の多面的・総合的な評価に基づく大学入試への転換など。
 前記①は政府・実行会議の提言でいう“高校教育の質の向上”に、②は“多面的・総合的な評価に基づく大学入試”に、それぞれ「達成度テスト(仮称)」導入がつながる。

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< 「達成度テスト(仮称)」 と大学入試 >
「高大接続」の機能

政府・実行会議が示した『第4次提言』は、「高大接続」と「大学入学者選抜」の在り方がテーマになっている。
 「高大接続」とは、大学進学希望者が高校教育から大学教育へ円滑に移行することができるよう、高校と大学が連帯してそれぞれの責任を果たすことであるといえる。ここでの「接続」はアーティキュレーション(articulation;節)を意味し、「つながり」(連続)と「区別」(不連続)の2面性をもつ。
 「つながり」としては、入学者選抜(入試)の実施や高大連携によるカリキュラム改革(出前授業、大学レベルの単位を高校で取得できるアドバンスト・プレイスメント<AP>の確立など)、初年次教育、リメディアル教育などがあげられる。
 他方、「区別」する面では、高校教育と大学教育とのそれぞれの目的・目標、特性、機能などの明確化がある。
 つまり、「高大接続」の機能に着目するならば、高校教育の“質保証”(達成水準の確保)と大学進学希望者の“選抜”といった2つの機能がある。そして、大学教育のユニバーサル化以前のエリート段階(大学進学率15%まで)、あるいはマス段階(進学率15%~50%)の前半くらいまでは、「高大接続」のパーツのひとつである入試、特に一般入試(学力試験)が高校での学力の一定の達成水準を確保しつつ、進学希望者を選抜するという2つの機能を同時に果たしてきた。
 しかし、高校進学率98%の多様化した高校教育と所謂「全入」状態の大学入試では、一部とはいえ、学力不問とまでいわれる推薦・AO入試を含めて評価尺度の多元化と入試の多様化が進み、現状の「高大接続」(入試)に2つの機能を求めるのは一部の大学(学部)を除き極めて難しくなっている。

高校教育の質保証 -「達成度テスト(仮称)」導入 - 大学入試改革

「高大接続」(入試)が高校教育の一定の達成水準を確保できなくなった状況では、それに替わる高校教育の質保証の仕組みが必要である。政府・実行会議は、その新たな仕組みとして「達成度テスト(仮称)」(“基礎レベル”と“発展レベル”)を提言したとみる。
 この「達成度テスト(仮称)」で高校教育の質保証が一定程度確立されることになれば、実効性のある多様な大学入試改革も可能になる。
 ただ、例えば「達成度テスト・基礎レベル(仮称)」が易しい“素点型の共通テスト”だとすれば、結局、現行のセンター試験を易しくしたような“集団準拠型”のテストになり、専ら得点や平均点、得点率などを意識した受験者や学校の序列化にもつながりかねない。高校での基礎的な学習(最低限、学習指導要領上の必履修科目)の「達成度」を測り、高校教育の「質保証」(一定の達成水準)を確保するのであるならば、“目標準拠型”のテストにすべきである。
 「達成度テスト・発展レベル(仮称)」についても、大学入学者の「選抜基準」の基礎資料として活用するのであれば、学力を絶対評価する“目標準拠型”テストが適している。
◆ 「高大接続テスト(仮称)」の提起
 ところで、中教審答申『学士課程教育の構築に向けて』(20年12月)は、高校段階の学力を客観的に把握・活用できる新たな仕組みづくりについて、国に対して高大接続の観点からの取組を求めた。具体的には、高校での指導改善や大学の初年次教育、大学入試(AO・推薦入試)などに高校・大学が任意に活用できる新しい学力検査(「高大接続テスト(仮称)」)に関し、高校・大学関係者が十分に協議・研究するよう提言した。
 他方、文科省の委託事業「高等学校段階の学力を客観的に把握・活用できる新たな仕組みに関する調査研究」(20年10月~22年9月。代表:北海道大・佐々木隆生)は、複数回受験可能やIRT(Item Response Theory:項目応答理論)などのテスト法も視野に、高校での基礎的な学習の達成度を客観的に評価する“目標準拠型”の「高大接続テスト(仮称)」の仕組みを報告している。

「学力試験」と「多面的・総合的な評価、判定」

今回の大学入試(一般入試)の改革提言は、「知識偏重の1点刻みの試験」から脱し、「達成度テスト・発展レベル (仮称)」を活用して、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価、判定する選抜方法への転換を求めている。その具体的な選抜方法として面接、論文、高校の推薦書、主体的に取り組んだ多様な活動、インターンシップ、ボランティア、海外留学などの評価を挙げている。
 こうした提言をみて、「学力重視」から所謂「人物本位」の入試へといった機運が生まれ、「学力試験」の軽減と「面接、論文」の増加、「推薦書、活動歴」重視などから、以前の「ゆとり教育」批判(「生きる力」の本来的な育成が教育現場に正確に伝わらなかったという見方もある)で指摘されたように、学力の低下や底抜けを招かないか懸念される。
◆ 国立大入試に、所謂「人物本位」入試はどこまで浸透するか !?
 国立大はこれまで、知識の創造拠点、高度人材育成の中核、大学教育機会の保証、社会への知的貢献等の役割を担ってきた。こうした公共的性格を強くもち、国民的な教育制度の一環をなす国立大の入試制度は社会の関心度も高く、公平性と公正性が強く求められ、客観性の高い「学力試験」が主流となっている。
 国立大(26年度募集人員9.6万人)の入試形態別の募集人員割合は、一般入試(「分離分割方式」:前期試験・後期試験)が84%、推薦入試が12%、AO入試が3%などとなっている。そして、「学力試験」主体(主にセンター試験5教科7科目以上+個別試験1~3教科)の「前期試験」の募集人員割合は全体の68%を占め、有力大学ほど「後期試験」(主にセンター試験5教科7科目以上+個別試験:課さない/面接、小論文、実技等)の割合が小さい。因みに、「前期試験」と「後期試験」の募集人員比率は「前期」80.3 対「後期」19.7 と、「前期」は「後期」の4倍余りに達している。
● 国立大の入試制度:当面、「分離分割方式」を維持
 国立大の第2期中期目標期間(22年度~27年度)にあたる22年度以降の入試制度の基本的枠組みを示した『平成22年度以降の国立大学の入学者選抜制度改革の基本方向について』(国大協策定:19年11月)をみると、一般入試では「分離分割方式」を維持する中で、後期募集の拡大など「複数受験機会」や「評価尺度の多元化」といった基本方針を維持するとしている。
 特に評価尺度の多元化については、「学力試験」だけではみられない受験生の能力や適性などを測り、多様で有為な人材を求めるため、一般入試の「後期試験」に面接や論文、実技、総合問題などを課したり、推薦・AO入試を導入したりしている。
 また、国立大におけるセンター試験「5(6)教科7科目」化や個別試験の「学力試験」は、高校教育の文系・理系共通の基礎的教科・科目の普遍的な学習を促進させているとともに、各大学の「学力試験」は大学教育に必要な教科・科目の学力担保を支えている。国立大の現行入試制度が担っているこうした役割を鑑みると、「学力試験」主体の国立大入試が近い将来、所謂「人物本位」主体の入試に全面的に切り替わることは想定しにくい。
 ただ、正解のある入試科目に長けた“受験秀才”を選抜するだけでなく、28年度から導入される東京大の推薦入試や京都大の特色入試のように、未知の問題の最善解を見出すような受験生の多様な資質・能力をエビデンスに基づいて丁寧に評価、選抜する方法がより拡大していくことはあるだろう。

幅広い丁寧な議論を!

グローバル化した知識基盤社会において、生き抜く力を如何につけていくか。『第4次提言』は、これからの社会で求められる「人間力」の育成を柱に据えて、高校教育と大学教育及び入学者選抜の在り方をそれぞれ個別に扱うのではなく、点から線、線から面へと有機的な広がりをもたせた全体のプロセスの中で一体的に改革していくことを求めている。
 しかし、準義務教育化と多様化した高校教育、大学進学率50%のユニバーサル化と大学「収容力」(入学者数÷志願者数)90%の所謂、全入化した大学において、「高大接続」や大学入試制度を変えるだけで、小・中学校からつながる高校教育全体の質の向上が図られ、大学の質保証や人材育成機能が根本的に高まるだろうか。
 高校教育と大学教育が抱える様々な課題を解消していくためには、「高大接続」や大学入試改革の枠を超え、初等中等教育から高等教育までの問題を包括的、構造的に捉えた新たな制度設計と、それに対する国民的な賛同が得られないと改革理念の実現は難しい。
 とはいえ、まず今回の提言の目玉である「達成度テスト(仮称)」の実施方法や利用方法、知識偏重とならないような多面的・総合的な丁寧な選抜方法などについては、今後、高校・大学関係者等、教育現場の意見も十分に聴き、幅広い丁寧な検討・議論が求められる。