今月の視点

8月

 「土曜授業」 復活の方向へ !

文科省 「検討チーム」、省令改正の方針。教委判断の土曜授業を後押し !

旺文社 教育情報センター長 大塚/2013年8月1日掲載

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文科省の「土曜授業に関する検討チーム」(主査:義家弘介大臣政務官)は先ごろ、公立学校の土曜授業を教育委員会の判断で実施しやすくするために省令を改正する方針等を『中間まとめ』に示した。文科省としては、今秋を目途に当検討チームの最終的な検討結果などを得て、26年度からの「土曜授業」復活を目指す。
 現在、完全学校週5日制の下、学校の休業日は、公立学校では法令で規定されており、私立学校では学則で定められている。
 ここでは、文科省の『中間まとめ』の概要や学校週5日制導入の経緯、学習指導要領と授業時数等の関係、土曜授業の状況と課題などをまとめた。


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< 文科省:土曜授業の在り方 『中間まとめ』 >
「検討チーム」 設置の背景

学校週5日制は平成4(1992)年9月から月1回実施で始まり、7年度から月2回、14年度から完全実施されている。学校週5日制導入から21年近く、完全学校週5日制実施から11年余りが経つ。この間、子どもたちを取り巻く教育環境や社会状況も大きく変化している。
 土曜日を必ずしも有意義に過ごせていない子どもたちの存在、「生きる力」の重要な要素である「確かな学力」や規範意識の育成などにとっての土曜日の在り方、学校、家庭、地域の連携による豊かな教育環境の提供などが指摘されている。
 こうした状況の下、文科省では25年3月、省内に「土曜授業に関する検討チーム」(以下、検討チーム)を設置して、土曜授業を実施している教育委員会や学校関係者などからのヒアリングを行い、土曜授業の在り方を検討してきた。「検討チーム」は25年6月末、 次のような土曜授業の在り方の『中間まとめ』を公表した。

『中間まとめ』 概要

◆ 土曜授業の実施に係る教育の基本的方向
 改正教育基本法(18年12月施行)では、「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」(第13条)の条項を新設し、学校、家庭、地域住民など社会を構成する全ての者が、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚し、相互の連携協力に努めることを規定している。
 『中間まとめ』では、こうした改正教育基本法が示している社会全体で子どもたちを育てるという基本理念を前提として、土曜日を必ずしも有意義に過ごせていない子どもたちの存在/子どもの成長期における「確かな学力」や規範意識の育成等に大きな影響を与える土曜日の過ごし方などを踏まえ、次のような取組を求めている。
 すなわち、土曜日においても子どもたちに、学校の授業や地域における多様な学習や体験活動の機会など、これまで以上に豊かな教育環境を提供し、その成長を支えることができるよう、学校、家庭、地域が連携し、役割分担しながら取組を充実する必要があるとしている。
 ◆ 土曜授業の制度設計
 「検討チーム」では、前述のような観点から、学校において子どもたちに土曜日における充実した学習機会を提供する方策の一つとして土曜授業を捉え、その推進のための制度設計について、次の二つの場合に分けて検討したという。


検討1.全国一律で土曜授業を制度化する場合(隔週等で実施する場合も含む)
 ● 全国すべての学校で一律に土曜授業を制度化する場合については、学校教育法施行規則において“土曜日を原則休業日”とした上で「特別の必要がある場合」に授業を行うことができる“現行制度”(後述)から、“原則土曜日に授業を行う”制度へ変更することになる。
 ● 学校、家庭、地域の三者が連携し、役割分担しながら社会全体で子どもを育てるという学校週5日制の下、現在多くの地域では、様々な指導方法の改善や長期休業期間の短縮なども図りながら、平日は、学校が子どもたちの教育の充実に責任を果たし、土曜日には、部活動の練習や大会等、地域における学習やスポーツ、体験活動等を通じて子どもたちの幅広い力を育てようと意図して取り組んでいる。
 また、土曜日に習い事や塾、家族との活動等を希望する家庭も存在する。全国一律で土曜授業を導入する場合は、これら学校週5日制を前提に定着してきた様々な取組や実情があることなどに留意したうえで検討する必要がある。
 ● 教職員の勤務体制についても、1週間の労働時間を40時間と規定している労働基準法第32条との関係等に係る法令改正などを検討する必要があり、労働法制及び公務員法制全体に関わる課題となりうることに留意する必要がある。
検討2.設置者の判断で土曜授業を実施する場合(隔週等で実施する場合も含む)
 ● 設置者の判断で土曜授業を実施する場合については、現在も一部で実施されており、教育委員会等からのヒアリングでも成果が報告されている。
 ● 前述の学校教育法施行規則に定める「特別の必要がある場合」について、何がそれに該当するのかの基準が明確でないことが、各設置者に土曜授業の実施を躊躇させているとの指摘がある。
 ● このため、学校教育法施行規則を改正し、設置者の主体的な判断で土曜日授業を実施することが可能である旨を明確化することで、土曜授業の実施を促進し、子どもたちの学習活動の充実を図ることが考えられる。
 なお、この場合、教職員の勤務日となる土曜日については、各都道府県の条例・規則等に基づき、長期休業期間中などに週休日を振り替えることで休みを取得することになる。



検討結果
◎ 設置者の判断で「土曜授業」実施に取り組みやすくなるよう、省令改正
 「検討チーム」では、前記1.と2.の検討を踏まえ、次のような方向を示している。
 ● 全国一律での土曜授業の制度化(検討1.の場合)については、今後、教育課程全体の在り方の中で検討する必要がある。
 ● まずは、「設置者の判断により、これまで以上に土曜授業に取り組みやすくなるよう、学校教育法施行規則の改正等を行うこと」(検討2.の場合)が考えられる。
 これらのことについては今後、25年度「全国学力・学習状況調査」(25年4月本体調査:小学6年生・中学3年生)における児童生徒の土曜日の過ごし方についての調査(児童生徒・保護者対象)の結果等も踏まえつつ、中教審での議論も求めている。
 ● また、質の高い土曜授業の実施のための支援策や、土曜日の地域における学習やスポーツ、体験活動など様々な活動を一層促進するための方策など、子どもたちの土曜日をトータルとして、より豊かで有意義なものとするための施策についても検討する必要がある。
◆ 「土曜授業」 実施に当たっての留意事項
 「検討チーム」では、土曜授業は子どもたちの土曜日をより有意義なものとし、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」といった「生きる力」の育成に資する観点から行われるべきものであるとしている。
 このことを踏まえ、土曜日にどのような授業を行うかは設置者や学校の判断に委ねられることになるとしたうえで、次のような事例をあげている。
 ● 地域と連携した体験活動や、豊富な知識・経験を持つ社会人等の外部人材の協力を得た取組など、土曜日に実施することのメリットを活かしながら、「道徳」や「総合的な学習の時間」、「特別活動」などの授業を行うといった工夫が期待される。
 ● 土曜授業を実施する場合の頻度などについては、次のように提示している。
 学校や地域の実情、子どもたちの負担等も踏まえながら、設置者において適切に判断する必要がある。
 また、土曜授業以外にも、地域における様々な活動が実施されていることから、学校、家庭、地域が連携して、土曜日を有意義に活用していくことが重要である。
◆ 今後の検討
 ● 「検討チーム」では、『中間まとめ』に示したような土曜授業の実施の基本的方向をもとに、今後さらに必要な調査や情報収集等を行いながら、具体的な制度設計や支援方策等について検討していくとしている。
 ● 今後の制度改正等にも資するよう、改めて各教育委員会等への調査を行うとともに、前述の「全国学力・学習状況調査」における調査結果や、中教審等の議論を踏まえた専門的な検討を行い、今秋を目途に一定の成果を出すことを目指すとしている。

<学校週5日制に関する規定>
公立学校

公立学校の休業日は現在、学校教育法施行規則によって、次のように規定されている。


私立学校

私立学校の休業日等は現在、次のように規定されている。


公立と私立で異なる休業日の規定

学校の休業日に関する上掲の規定をみると、公立学校は法令で規定されているのに対し、私立学校では“当該学校の学則”によるとされている。
 この違いは、私立学校の「建学の精神」や私学の自主性・主体性などによるものであろう。実際、土曜授業を実施している私立学校も少なくない。特に大都市圏の私立中高一貫校などでは、受験対策などから学校週5日制に積極的ではないようだ。
 ところで、学校週5日制は、公立学校だけを対象とするものではない。完全学校週5日制の実施方法等を示した平成8(1996)年の中教審答申(後述)は、「学校週5日制の趣旨は、国公私立の各学校種を通じて異なるものでなく、全国的に統一して実施することが望ましい。・・(中略)・・特に、完全学校週5日制の導入に当たって、学習指導要領を改訂することを踏まえると、国公立学校と歩調を合わせた導入を各私立学校に対し、強く望んでおきたい」と提言している。
 21世紀を控えた十数年前、子どもたちに「ゆとり」を確保し、「生きる力」を育むために、学校週5日制を国公私立も含めて完全実施すべきだとする趣旨がうかがえる。

< 『教育振興基本計画』 等でも土曜授業を促進 >

政府が中教審答申『第2期教育振興基本計画について』(25年4月)を基に策定した25年度~29年度の教育振興に関する総合計画『教育振興基本計画』(25年6月閣議決定)では、「確かな学力」を身に付けるための具体的な方策のひとつに土曜授業の活用を挙げている。
 具体的には、新学習指導要領の着実な実施とフォローアップ等の取組について、「土曜日における授業や体験活動の実施など、各地域の実情を踏まえ、土曜日の活用を促す」といった文言を盛り込み、土曜授業を促進している。
 なお、自民党の「教育再生実行本部」でも、土曜日等を活用した学力の底上げなど学びの保証システムの実現を安倍晋三首相に提言している。

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<「学校週5日制」 導入の経緯>
占領下での実施

学校週5日制は終戦直後、連合国軍の占領下における公立学校において、教員の研修時間の確保や教育の社会化の観点などから、自治体によっては一部の学校で実施されていた。
 しかし、当時の学校週5日制は、占領期の教育改革においてアメリカの教育的慣行が導入されたという面が滲み、加えて学習意欲の減退と学力低下、土曜日の過ごし方に対する保護者の不安、進学率の向上に伴う受験準備教育の拡大などで、教育制度としては馴染まなかった。そして、学校週5日制は、サンフランシスコ講和条約の発効(昭和27<1952>年4月)で占領下の教育政策から解放されると、急激にその姿を消していった。

高度経済成長期での議論

昭和40(1965)年代~50年代にかけての高度経済成長期、日本は貿易摩擦を背景に、市場開放や労働時間の短縮(時短)などを欧米諸国から迫られていた。
 そうした中、昭和40年代半ば頃から大企業を中心に週休2日制が採用されはじめ、教員の週休2日制と学校週5日制の議論も行われるようになった。
 しかし、昭和48年の第1次オイル・ショック以降、“時短”問題は下火になり、学校週5日制の議論も棚上げ状態となった。
◆ 教員の週休2日制
 人事院は高度経済成長当時、労働時間の短縮促進や民間企業の完全週休2日制の普及状況などを背景に、昭和47(1972)年、公務員の週休2日制の本格的な検討に着手。
 これを契機に、まず国家公務員の週休2日制が昭和56(1981)年3月に実施され、公立学校の教員の勤務体制もこれに準じることになった(4週5休方式<まとめ取り方式>)。さらに、昭和63(1988)年の4週6休方式による週休2日制を経て、平成4(1992)年には国家公務員の完全週休2日制に合わせ、教員も“まとめ取り方式”による完全週休2日制(週当たり40時間勤務制)になった。なお、平成14年4月からの完全学校週5日制の実施に伴い、教員の“まとめ取り方式”は解消された。

学校週5日制の段階的導入(図1参照)

◆ 臨教審答申
 昭和59(1984)年8月に当時の総理大臣(中曽根康弘・元首相)の諮問機関として設置された臨時教育審議会(以下、臨教審)は、その『第2次答申』(昭和61年4月)において、生涯学習のための学校、家庭及び地域社会の連携を推進する観点から、子どもの立場を中心に、学校の負担軽減や学校週5日制への移行について検討することを提言した。
◆ 旧・教課審答申
 昭和62(1987)年12月の旧・教育課程審議会(現在の中教審初等中等教育分科会教育課程部会。以下、旧・教課審)の答申では、学校週5日制について“漸進的”に導入する方向で検討するのが適当であるとしている。
 検討に当たっては、教育水準の維持の問題、子どもの学習負担の問題、家庭や地域社会における子どもへの対応の問題、年間の授業日数や授業時数の取扱いの問題に留意する必要があるとしている。学校週5日制をいつからどのような形態で導入するかについては、実験学校などでの調査研究の結果を勘案しながら結論を出すのが適当であるとしている。
◆ 文部省での検討
 文部省(当時)では上述のような旧・教課審の答申を受け、昭和63年に省内に「教員の週休2日制・学校週5日制に関する省内連絡会議」を設けて具体的な対応の検討に入った。さらに学校週5日制については、平成元(1989)年に「社会の変化に対応した新しい学校運営等に関する調査研究協力者会議」(以下、協力者会議)を設置し、実証的な調査研究を開始した。
 なお、平成元年には学習指導要領の改正が告示され(小学校は4年度、中学校は5年度、高校は6年度<学年進行>から実施)、社会の変化に自ら対応して心豊かでたくましく生きることができる資質や能力の育成を図ることを基本的なねらいとしている。
◆「協力者会議」の提言
 文部省の「協力者会議」は、前述の臨教審『第2次答申』及び旧・教課審の答申等を踏まえ、4年2月に『社会の変化に対応した新しい学校運営等の在り方について』(審議のまとめ)を取りまとめた。そこでは、改訂された学習指導要領を踏まえたうえで、学校、家庭及び地域社会を生活の場としている子どもたちにとって、それら三者がもつ教育機能が十分発揮されていない状況が見られると指摘。そして、学校、家庭及び地域社会における子どもの生活全体を見直し、家庭や地域社会での生活時間の比重を高める必要があるとし、学校週5日制を導入してこれを活用することが有効であると提言している。
 また、学校週5日制導入の時期や形態については、まず第1段階として月に1回、毎月の第2土曜日を休業日とし、4年度の2学期から導入するのが適当であるとした。
◆ 3段階で完全実施に
1.月1回実施(第2土曜日休業):4年9月~6年度
 文部省(当時)では前述のような提言を受け、学校教育法施行規則の一部改正を行い、毎月の第2土曜日を休業日と規定し、4年9月から月1回の学校週5日制を導入した。
2.月2回実施(第2・第4土曜日休業):7年度~13年度
 文部省は月1回の学校週5日制以後も、調査研究協力校の調査研究を進める中で、6年11月には前述の「協力者会議」から、月2回(第2及び第4土曜日)の学校週5日制を7年度当初から実施するのが適当であるとする提言を受けた。
 文部省はこれを踏まえ、学校教育法施行規則の一部を改正し、毎月の第2及び第4土曜日を休業日と規定し、7年4月から月2回の学校週5日制を実施した。
3.完全学校週5日制:14年度~
 中教審は平成8(1996)年7月、『21世紀を展望した我が国の教育の在り方について:第1次答申 ~子供に[生きる力]と[ゆとり]を~ 』を答申した。その中で、「学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方」に関して「完全学校週5日制の実施について」の項目をたて、次のように提言した。
 「教育の在り方については、子供たちや社会全体に[ゆとり]を確保する中で、学校・家庭・地域社会が相互に連携しつつ、子供たちに[生きる力]をはぐくむということを基本にして展開されていくべきである。そして、完全学校週5日制の実施は、教育改革の一環であり、今後の望ましい教育を実現していくきっかけとなるものとして積極的にとらえる観点から、様々な条件整備を図りながら、21世紀初頭を目途にその実施を目指すべきである。」
 また、旧・教課審でも10年7月、上記の中教審答申を踏まえ、完全学校週5日制に対応した教育課程の基準の改訂を答申した。
 文部省ではこうした提言を受け、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成や「総合的な学習の時間」の新設、教育内容の厳選などを基本とする学習指導要領の改正を平成10・11年に告示した(小・中学校は14年度、高校は15年度<学年進行>から実施) 。それとともに、学校教育法施行規則の一部を改正して、14年度から公立学校では全ての土曜日を休業日とする完全学校週5日制を実施している。

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< 学習指導要領にみる授業時数等の変遷 >

土曜授業の有無は、学校における年間の授業日数や授業時数などに関係してくる。そして、授業時数及び高校における必修科目数・単位数、卒業単位数等は、学習指導要領によって規定されている。

そこで、学校週5日制の導入時期も含め、新制学校発足時から現在まで、各時代における学習指導要領の基本的方針、小・中学校の授業時数及び高校の必修科目数・単位数等の概要をたどってみる。


 各時代における学習指導要領の特色と授業時数等(図1・2・3・4参照)

学習指導要領は戦後の新制学校が発足してから今日まで、各時代の教育状況や社会的要請等を踏まえ、教育課程基準の見直しや学習指導上の改善策に対応して改訂、実施されてきた。小・中学校では昭和22(1947)年度から、高校では昭和23年度から実施され、初期の時代を除き、ほぼ10年おきに改訂されてきた。
 なお、学習指導要領の改訂は、昭和30(1955)年代からは文部省(当時)の改正「告示」から数年後に「実施」されている。
1.昭和20年代
 新しい学校制度発足当初の昭和20年代は、児童・生徒の生活経験、生活学習に重点を置いた「経験主義」の学習指導要領であった。
 ● 小学校:年間の総授業時数(1学年~6学年合計。以下、同)は、昭和22年度(「実施」開始年度を示す。以下、同)が5,565~5,915単位時間(昭和36年度から、1単位時間=45分)で、6年生の週当たりの授業時数は30~34単位時間(以下、コマ)だった。
 ● 中学校:年間の総授業時数(1学年~3学年合計。以下、同)は、昭和22年度が3,150~3,570単位時間(昭和24年度以降、1単位時間=50分)で、3年生の週当たりの授業時数は30~34コマであった。
 ● 高校(全日制・普通科。以下、同):必修科目数・単位数は、昭和23年度が6科目・38単位で、要卒業最少単位数は85単位となっていた。なお、「1単位」は、1単位時間を50分として、35単位時間の授業を基に計算する。
2.昭和30年代~40年代
 昭和30年代に入ると、「経験主義」に基づく児童・生徒中心の教育に対する批判が強まり、学習指導要領は系統的知識の習得を重視する「系統主義」へと転換された。
 昭和30年代後半になると、当時の高度経済成長を支える人材養成、能力開発政策などの社会状況と相俟って、学習指導要領は、系統学習の徹底、科学技術教育の向上、授業時数の増加が図られ、「詰め込み教育」路線を強めた。
 ● 小学校:昭和36年度及び46年度の年間の総授業時数は、ともに5,821単位時間で昭和22年度の最高値に次ぐ多さであった。6年生の週当たりの授業時数はともに31コマ。
 ● 中学校:47年度の年間の総授業時数は3,535単位時間と、昭和22年度の最高値に次いで多い授業時数となった。3年生の週当たりの授業時数は33コマ。
 ● 高校:昭和38年度には必修科目数・単位数の増加が図られ、必修科目数は17又は18科目、必修単位数は68~76単位(男子:68~74単位、女子:70~76単位)で、現行も含めてこれまでの過去最高となった。要卒業最少単位数は85単位。
 ただ、この時代は、“大学入試の激戦”(団塊世代による受験生数激増)、“受験対策、学習量の負担過重”、“落ちこぼれ問題”などで、「詰め込み教育」批判が高まった。
3.昭和50年代~64年(1月)
 昭和30年代~40年代の「詰め込み教育」批判に対し、昭和50(1975)年代の学習指導要領は、個性重視、基礎・基本の習得、教育内容の精選・縮減、必修科目の削減など、所謂「ゆとり教育」へと舵を切った。
 ● 小学校:年間の総授業時数は、昭和55年度が5,785単位時間で、前回(昭和46年度)より36単位時間減った。6年生の週当たりの授業時数も29コマに減少した。
 ● 中学校:年間の総授業時数は、昭和56年度が3,150単位時間で、前回(昭和47年度)より385単位時間、約11%も大幅に減った。3年生の週当たりの授業時数も30コマに減少した。
 ● 高校:57年度の必修科目数は7又は8科目、必修単位数は32単位、要卒業最少単位数は80単位と、いずれも減少した。特に、必修単位数は昭和38年度の最高値に比べ44単位、約58%もの大幅減となった。
4.平成元年~9年
 平成元(1989)年改正(小・中学校、高校とも「告示」)の学習指導要領では、それまでの“知識・理解重視型学力観”から、「自ら学ぶ意欲の育成や思考力、判断力などの能力の育成に重点を置く」とする“新学力観”への転換を図った。
 ● 小学校:平成4年度の年間の総授業時数は5,785単位時間、6年生の週当たりの授業時数は29コマで、ともに前回の昭和55年度と同じである。
 ● 中学校:5年度の年間の総授業時数3,150単位時間と3年生の週当たりの授業時数30コマは、ともに前回の昭和56年度と同じである。
 ● 高校:6年度の高校は、必修科目数が11又は12科目、必修単位数が38単位で、いずれも前回の昭和57年度より増加。要卒業最少単位数は80単位で、変わらない。
 また、この時代は前述したように、学校週5日制が4年9月から月1回、7年度から月2回実施されている。
5.平成10年代
 平成10(1998)年代の学習指導要領は、所謂「ゆとり」の中で「生きる力」の育成を基本的な理念とする“ゆとり教育の集大成”といえる。
 小・中・高校における14 (2002)年度からの「完全学校週5日制」実施、「総合的な学習の時間」の導入などで、小・中学校では教育内容の3割削減と教科学習の授業時数の大幅削減、高校では必修単位数や要卒業最少単位数の削減が図られた。このため、“ゆとり教育”批判、“学力低下”問題が社会的にも大きな波紋を広げた。
 ● 小学校:14年度の年間の総授業時数は5,367単位時間で、前回の4年度に比べ418単位時間、約7%減った。6年生の週当たりの授業時数は前回より2コマ減って27コマとなり、ともに現行も含めて過去最低となった。
 ● 中学校:14年度の年間の総授業時数は2,940単位時間で、前回の5年度に比べ210単位時間、約7%減った。3年生の週当たりの授業時数も前回より2コマ減って28コマとなり、小学校と同様、これまでの最低となった。
 ● 高校:15年度は、必修科目数が13又は14科目で前回の6年度より増えたものの、必修単位数は7単位(約18%)減の31単位となり、要卒業最少単位数も6単位(約8%)減の74単位と、過去最低になった。
6.平成20年代
 平成10年代は“学力低下”論が喧伝される中、“ゆとり”か“詰め込み”か、といった教育の二項対立的な議論がなされてきた。こうした経緯を踏まえ、今回の新学習指導要領(小学校23年度、中学校24年度から全面実施。小・中学校とも算数・数学、理科は21年度から先行実施/高校は25年度から学年進行で全面実施。数学・理科は24年度から先行実施)では、これまでの二項対立的な議論を乗り越え「生きる力」の育成を継承している。そして「確かな学力」の基盤をなす“学力の重要な要素”として、①基礎的・基本的な知識・技能の習得/②知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等/③主体的に学習に取り組む態度、といった3点を挙げている。
 新学習指導要領では教育・学習の基本的な理念に基づき、小・中学校の主要教科の授業時数を1割以上増加させた。高校では全日制の授業を「年間35週行うことを標準」としつつ、“週当たりの標準授業時数が「30単位時間」(コマ)を超えることも可能”とした。
 ● 小学校:23年度の年間の総授業時数は5,645単位時間で、前回の14年度に比べ278単位時間、約5%増。6年生の週当たりの授業時数も前回より1コマ増の28コマである。
 ● 中学校:24年度の年間の総授業時数は3,045単位時間で、前回の14年度に比べ105単位時間、約4%増。3年生の週当たりの授業時数は前回より1コマ増の29コマである。
 ● 高校:25年度の必修科目数は13~15科目、必修単位数は31~35単位と、選択範囲を拡大する中で、理数教育や言語活動の充実を図っている。要卒業最少単位数は74単位で、前回の15年度と変わらない。

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< 完全学校週5日制下での 「確かな学力」 定着の施策 >
学力低下と「確かな学力」

前述したように平成10年代は所謂ゆとり教育の下、完全学校週5日制が導入され、学習内容や授業時数が大幅に削減された。
 その一方で、国際的な学力調査であるPISA(OECD<経済協力開発機構>の学習到達度調査)やTIMSS (国際数学・理科教育動向調査)などで、日本の子どもの学力や学習意欲の低下などが問題視され、学力低下論議やゆとり教育批判を活発化させた。
 そうした中、当時の遠山敦子文科相は14年度からの完全学校週5日制導入を控えた14年1月、緊急アピール『確かな学力向上のための2002アピール「学びのすすめ」 』(以下、『学びのすすめ』)を発表した。
 『学びのすすめ』は、変化の激しい社会で「生きる力」を育むために、基礎・基本の確実な定着、自ら学び自ら考える力の育成、学習指導要領の最低基準性と発展的な学習の促進、学習意欲の向上など、「確かな学力」という文言を用いて、その確立を促した。

新課程にも引き継がれている『学びのすすめ』

さらに文科省は15年5月、子どもたちに「豊かな心」を育み、「確かな学力」を身に付けさせるための教育課程や指導の充実・改善方策を中教審に諮問した。
 そして15年12月には、その諮問に対する中教審答申『初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について』(15年10月)を踏まえ、実施されて間もない学習指導要領(小・中学校14年度から実施、高校15年度から学年進行で実施)の総則を中心に一部改正し、学習指導要領の基準性を明確にするとともに、発展的な学習内容の指導、習熟度別指導、標準授業時数を上回る授業時間の確保などを盛り込んだ。
 今回の新しい学習指導要領においても、完全学校週5日制を維持しつつ、授業時数の増加や学習内容の拡大・充実を図り、「確かな学力」(学力の3要素)の確実な定着を目指している。つまり、10年程前に掲げられた『学びのすすめ』は、初等中等教育の新課程にも引き継がれているといえる。

<学校週5日制と“土曜活用”等の課題>

所謂、ゆとり教育の象徴ともいえる完全学校週5日制によって、平成10年代の教育課程上の授業時数や履修単位数等は大幅に減少した。
 その一方、完全学校週5日制の下での“脱・ゆとり教育”への転換といった流れの中で、各教育委員会や公立学校ではこの10年ほどの間、『学びのすすめ』の趣旨を踏まえ、希望者対象の「土曜スクール」「土曜講座」による体験活動や発展・補習学習などの“土曜活用”、始業前の“0時限”、短縮授業による“7時限”授業、「特別活動」である学校行事の見直しなど、授業時数の確保に腐心してきた。
 ところで、学校教育法施行規則では、前述したように「特別の必要がある場合」と限定して土曜授業を認めているが、実際には、運動会・体育祭等の学校行事や「総合的な学習の時間」の実施が1~2%程度、保護者や地域住民への公開授業の実施が4~6%程度と、土曜授業の活動は全国的にみると低調である。これは、土曜休業の趣旨を曲げてまで土曜授業を実施するのは、保護者や地域住民、教育委員会の積極的な取組みがないと、難しいことをうかがわせている。(図5参照)


今回の新学習指導要領における小・中学校の主要教科の“授業時数10%増”や高校の必修科目・必修単位数の拡充等は、現時点では「土曜休業」を規定している学校教育法施行規則の改正まで踏み込まず、教育委員会や学校の運用(裁量)に任している。
 「土曜授業」復活による完全学校週5日制の見直しで懸念されるのは、授業を実施する学校側の条件整備である。教職員については週40時間労働や超過勤務などの労働法規上の問題、外部や地域社会の人材活用については財政的な面など、課題が多い。
 また、子どもたちの視点にたち、保護者と学校の共通理解、コンセンサスのもとで行われなければ、期待される成果は得られない。土曜授業のやり方によっては、私立と公立も含め、学校間や地域間の教育(学習)格差を一層拡大してしまうことも懸念される。