今月の視点

1月

高校教育の“コア”と 「共通テスト」 !

高校生が共通に身に付ける知識・技能の客観的評価-「共通テスト」-実施の方向!

旺文社 教育情報センター長 大塚/2013年1月7日掲載

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25年大学入試は、1月19・20日のセンター試験で本格的な幕開けを迎える。約109万人の高3生の4割以上がセンター試験に出願し、5割以上が大学・短大に進学するとみられる。
 ところで、中教審では現在、多様化した高校教育の「質保証・向上」に向けて、全ての高校生が共通に身に付けるべき内容である“コア”の範囲とその評価のための「共通テスト」の実施や、円滑な「高大接続」の仕組みなどを検討、議論している。
 ここでは、教育の基本理念や高校教育の目的・目標、学習指導要領の概要、高校教育の現状と課題等を整理し、高校教育に共通する“コア”と「共通テスト」、センター試験の目的・機能等についてまとめた。


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<高校教育とは?> ~ 高校教育の法的な位置づけ ~
教育の基本理念

高校では、「教育基本法」や「学校教育法」などの法的な位置づけの下に、適切な教育課程編成に従って、それらの掲げる目標が達成されるよう教育が行われている。
◆ 教育の目標
 「教育基本法」が18年12月に約60年ぶりに改正され、「教育の目標」等が規定された。
 同法第2条は、幅広い知識と教養、真理を求める態度、豊かな情操と道徳心、健やかな身体といった、所謂「知・徳・体」の調和のとれた発達を基本としつつ、個人の自立、他者や社会との関係、自然や環境との関係などの観点から、21世紀を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す「教育の目標」を定めた。
◆ 「生きる力」と“学力の3要素” 
 「学校教育法」は教育基本法の改正を受けて19年6月に一部改正され、小学校、中学校、高校を通じて、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、次の点に特に意を用いなければならないとされた。(学校教育法第30条第2項、他)
① 基礎的な知識及び技能を習得させること。
② 基礎的な知識及び技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむこと。
③ 主体的に学習に取り組む態度を養うこと。
 このように、教育基本法と学校教育法によって明確に示された教育の基本理念は、学習指導要領が重視している「生きる力」の育成そのものといえる。
 つまり、学習指導要領では、「生きる力」を支える「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の調和を重視し、①基礎的・基本的な知識・技能の習得と、②それらを活用する思考力・判断力・表現力等をいわば“車の両輪”として相互に関連させながら伸ばしていくとともに、③学習意欲の向上を図ることを求めている。そして、それら①、②、③が“学力の3要素”として前記のように学校教育法に明確に規定され、学習指導要領の「総則」にも明記されている。

高校教育の「目的」・「目標」

高校教育の在り方をみるにあたり、学校教育法に規定されている高校教育の「目的」と「目標」を確認しておく。


上掲の条文から、高校教育の「目的」は、生徒の「進路に応じて」→「進学」又は「就職」に応じて、“高度な”普通教育と専門教育を行うこととされている。
 また、「目標」としては、①国家・社会の形成者として必要な資質形成/②一般教養と専門的知識・技能の習得/③個性の確立と健全な批判力の育成、といった3項目が挙げられている。

<高校の教育課程の枠組み>
多様な教育・学習システム

高校では、生徒の多様な興味・関心や進路等に応じることができるよう、単位制を前提に、「普通科」「専門学科」及び「総合学科」の各学科や全日制・定時制・通信制の各課程が設けられ、多様な教育内容を様々な方法で学ぶことができるようになっている。
 ただ、履修形態としては、「単位制高校」以外、「学年制」を重視した「単位制」との併用がほとんどである。
 また、学習指導要領の規定については、共通性を維持しつつ、生徒の多様な学習に対応して一定の弾力性も確保されている。

高等学校学習指導要領

新しい高等学校学習指導要領(21年3月告示。以下、学習指導要領)は、24年度以降入学者から数学、理科、及び理数の各教科に適用(移行措置)、25年度以降入学者から学年進行で全ての教科に適用(全面実施)される。
 今回改訂された学習指導要領の概要は、次のとおりである。(表1参照)
◆ 学習指導要領の基本的な考え方
① 教育基本法改正等で明確となった教育の理念を踏まえ、「生きる力」を育成。
② 知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視。
③ 道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな体を育成。
◆ 卒業単位数等の教育課程の基本的な枠組み
・卒業までに修得させる単位数は、従前どおり74単位以上。
・“多様性”と“共通性”のバランスを重視し、学習の基盤となる国語、数学、外国語に「共通必履修科目」を設定。また、理科の科目履修の柔軟性を向上。
・必履修教科・科目の合計単位数は、従前どおり31単位以上。
・週当たりの授業時数(全日制)は標準である30単位時間を超えて授業を行うことができることを明確化。
・義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設けることを促進。
◆ 教育内容の主な改善事項
・言語活動の充実/・理数教育の充実/・伝統や文化に関する教育の充実/・道徳教育の充実/・体験活動の充実/・外国語教育の充実/・職業に関する教科・科目の改善


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<高校教育の現状と課題>
高校教育の“義務教育化”/“多様化”と“共通性”

中学から高校への進学率が98.3%(24年度)、公立高校「授業料無償制」(私立高校「就学支援金」、22年度創設。24年12月の民主党から自民党への政権交代で所得制限を検討)など、今や高校はまさに“義務教育化”した国民的な後期中等教育機関といえる。
 そのため、生徒の興味・関心、能力・適性、進路等が極めて多様化しており、学力面でも高い学力をもつ者から、小・中学校段階の学習を十分修得していない者まで、学力格差も極めて大きい。
◆ 多様な教育・学習と進路
 生徒の多様な学習ニーズに対応して、教育内容や履修形態を多様にしたことで、高校教育の“多様化”と共通的な基準(最低基準)である学習指導要領における学びの“共通性”との齟齬が大きな課題となっている。
 全国の高校5,022校(公立73.4%、私立26.3%、国立0.3%:24年度。以下、同)の生徒数は約335.6万人で、「本科」の生徒が約334.7万人。この「本科」生の72.4%(約242.4万人)が「普通科」の生徒で、工業・商業・農業などの「専門学科」生が22.4%(約74.9万人)、「総合学科」生が5.2%(約17.5万人)である。(図1参照)
 また、中等教育学校の後期課程は49校(国立4校、公立28校、私立17校)で、生徒数は約1.2万人である。
 卒業後の進路で高校を類型的にみると、ほとんどの生徒が大学へ進学する学校/多くの生徒が就職する学校/進学組と就職組が混在する学校などにタイプが分かれる。
 因みに、高校・中等教育学校後期課程卒業者(24年3月<23年度>卒業105.6万人)の進路をみると、大学・短大等(大学・短大の通信教育部、同「別科」等含む)への進学率は53.6%(大学<学部>進学率は47.7%)、専門学校進学率16.8%、就職率16.8%などで、大学・短大等に5割強、専門学校と就職にそれぞれ1.5割強である。(図2参照)
 このように、高校の教育・学習内容、指導内容(教科指導、生活指導)、進路(進学、就職)等は学校によって千差万別であり、単一の学習指導要領だけに依拠した教育・学習では、もはや限界に達しているといえる。



大学入試の易化と学習意欲の低下

高校生の大学(学部)進学志望者の割合である「現役志願率」(現役の大学受験生数<実数>÷高3生)は、19年51.8% → 20年53.5% → 21年54.9% → 22年55.7% → 23年55.4% → 24年55.0%と、最近は2年連続やや低下しているが、それでも高校生の2人に1人は大学受験を志望し、出願している。
 そして、大学の「収容力」(入学者数÷志願者数<受験生数で実数>:入学者・志願者とも既卒者含む)は、19年89.0% → 20年90.6% → 21年91.0% → 22年91.0% → 23年90.8% → 24年91.1%と、最近は9割を超え、所謂「大学全入時代」となっている。
 また、私立大では577校中、264校(45.8%:24年度)が「入学定員割れ」状態で、原則、学力検査免除の推薦・AO入試(学力把握措置を促進)の入学者も“2人に1人”(50.5%:24年度)に達している。一般入試も含め、選抜性の高い有力大学・学部を除き、大学入試の選抜機能は低下し、大学入試は“広き門”となっている。
 こうした受験環境の緩和は、高校生の概して学力中間層(ボリュームゾーン)に学習意欲の低下や学習時間の減少をもたらしているとみられる。

高校の入学者選抜と「適格者主義」

高校の入学者選抜における所謂「適格者主義」については、高校進学率約67%当時の昭和38(1963)年の『公立高等学校入学者選抜要項』(文部省通知)で、「高校の教育課程を履修できる見込みのない者をも入学させることは適当ではない。高校の入学者選抜は、高校教育を受けるに足る資質と能力を判定して行なうものとする」旨の方針が採られていた。
 しかし、その後、進学率が94%に達した昭和59(1984)年の文部省通知では、「高校の入学者選抜は、各高校、学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力・適性等を判定して行う」として、“入学者選抜は設置者及び学校の責任と判断で行う”ことが明確にされた。つまり、高校入試は、一律に高校教育を受けるに足る能力・適性を有することを前提とする方針(=適格者主義)を採らないことになった。

履修主義と修得主義

学年制を重視した単位制との併用が主体の高校教育の現状では、卒業に必要な74単位以上、必履修教科・科目の31単位以上などを履修させることに重点を置く「履修主義」がほとんどで、学習内容の“修得”に重きを置く「修得主義」は弾力的に扱われている。
 つまり、履修した教科・科目の内容を十分理解(修得)しないまま履修単位の取得に重点が置かれている。
 こうした履修主義は、高校教育(学習成果)への不信感を招く一因ともなっており、履修主義の見直しも課題である。
 ただ、履修主義から修得主義への転換には、中退や留年問題など、社会的にも大きな影響を及ぼしかねないだけに、幅広い慎重な検討、議論が必要だ。

高校教育の「質保証」に関する要請

高校教育に対しては、主権者たる高校生が社会の一員として求められる意識・態度や一般的な教養などを身に付けないまま社会に輩出されていたり、職業・社会への円滑な移行に必要な能力・技術を身に付けないまま就職、早期離職したり、高等教育に必要な学力を十分身に付けないまま大学等に進学したりしているなどの指摘がある。
 高校教育は、こうした社会や産業界、高等教育機関等からの「質保証」(出口管理)に関する要請に応えていかなくてはならない。

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<高校教育の在り方を審議>
高校教育の検討課題

本稿ではここまで、高校教育の位置づけ、学力の要素、学習指導要領の概要、高校教育の現状と課題、社会や大学等からの質保証に関する要請などをみてきた。
 高校教育を取り巻く環境はこれまでみてきたような状況に加え、高校生の学習成果の多面的・客観的評価の推進、教育の質保証・向上等を提起した「第1期教育振興基本計画」(20年7月)や、家庭の経済状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が安心して教育を受けることができるよう創設された「公立高校授業料無償制」(私立高校「就学支援金」。22年度)など、国の高校教育政策も変容している。
 中教審はこうした状況を踏まえ、23年11月、初等中等教育分科会に「高等学校教育部会」を設置し、高校教育の在り方について審議を行っている。 高等学校教育部会の設置当初、当面の検討課題(例)として、次の4項目が提示された。
 1.個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築
 2.社会の要請にこたえる人材養成機関としての機能の充実
 3.個々の人格形成の場としての機能の再構築
 4.科学・技術の進展や産業界との連携等による教育方法等の刷新

高校教育の質保証に係る検討の視点

高等学校教育部会では上記の検討課題を柱にそれぞれについて検討・議論し、24年8月に『課題の整理と検討の視点』(以下、『検討の視点』)を取りまとめた。
 『検討の視点』では、今後の高校教育施策の方向性として、全ての生徒に共通に最低限身に付けさせるべきもの(「コア」)についての検討、及び生徒が修得すべき内容を明確にし、その修得状況を明らかにする様々な質保証の仕組みの構築を挙げている。
 前記の施策の実施には、高校として共通に基盤となる教育条件や教育環境を整備した上で、各学校が目標とする人間像に応じて、それぞれをより効果的に実現できるよう支援する観点から、国や地方公共団体が施策を講じることがより効果的であるとしている。
 そして、高校教育の質保証に係る論点として、次の4点を提示している。


高等学校教育部会では24年8月の『検討の視点』のまとめ以降、全ての生徒に共通に身に付けさせるべきものである「コア」と、高校教育の質保証に向けた評価の仕組みを中心に検討・議論し、24年12月の時点で、およそ次のように整理している。
 なお、同部会は25年1月下旬頃、それらを『審議の経過』として報告するとみられる。

<高校教育における 「コア」 の基本的な考え方>
「コア」の範囲



● 上掲に示された「コア」の範囲は、前述した「生きる力」の構成要素であり、その一つの領域である「確かな学力」を支える①基礎的な知識・技能/②基礎的な知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等/③主体的に学習に取り組む意欲・態度、といった“学力の3要素”は重要である。(図3参照)
● 「コア」の範囲を学習指導要領で示せば、高校生として必要な知識・技能と教養を身に付けさせるために設置されている「必履修教科・科目等」(「総合的な学習の時間」「特別活動」含む)である。
 特に新学習指導要領で導入された「共通必履修科目」(国語総合<標準4単位:2単位まで減可>/数学Ⅰ<同3単位:同>/コミュニケーション英語Ⅰ<同3単位:同>)は、全ての高校生に身に付けさせるべき「コア」の内容を教科・科目として示している。
 なお、地理歴史や公民、理科などの「必履修教科・科目」は、当該教科の複数の科目から、いずれかの科目を所定の枠内で全ての生徒に必ず履修させ(選択必履修)、高校生として必要な知識・技能と教養を身に付けさせるために設置されている。(表1参照)

「コア」の要素を含む資質・能力

上述の「コア」の範囲を踏まえつつ、「コア」の要素を含む資質・能力として、次のような力や態度、精神などを挙げている。(図3参照)



● 社会で自立し、社会に参画、貢献していく人材育成の観点から、「確かな学力」を支える“学力の3要素”とともに、特に「社会・職業への円滑な移行に必要な力」「市民性」(市民社会に関する知識理解、社会の一員として参画し貢献する意識など)の力は、「コア」の要素を含む資質・能力の重要な柱として重視していくべきだとしている。

<高校教育の質保証に向けた評価の仕組み> (図3参照)
「コア」と評価

前述したような「コア」の範囲やその要素を含む様々な資質・能力の中には、例えば知識の量を筆記試験や技能試験等で客観的に比較的容易に把握しやすいものと、難しいものとが混在している。
 「コア」の評価に当たっては、様々な資質・能力について、それぞれの性質に応じた適切な方法による把握を行い、客観的な評価の充実を図っていく必要があるとしている。


基礎的な知識・技能、思考力・判断力・表現力等の評価



● 学力の要素となる「基礎的な知識・技能や、課題解決に必要な思考力、判断力、表現力」等の一部については、“筆記試験や技能試験等”による客観的な評価の対象となりやすいことから、これらの方法による評価を各学校の取組みに加え、システムとして充実させていく必要があるとしている。

<全国規模の調査 - 「共通テスト」 - の仕組みの構築> (図3参照)
基礎学力の修得を確認する「共通テスト」



● 高校生の学力向上や教科指導の充実等を図る観点から、24年度において、既に12道府県の高校等で1・2年生を主体に国語、数学、英語などの学力を測定する学力調査を実施している。
 また、学力テストを伴わない学習や進路に関する調査も2県(24年度)で行われている。(表2参照)
● これらの取組みについては、生徒の修得状況を適切に把握し、学校における指導の改善・教育の質向上につなげていくうえで有効であるとしている。
● 学力調査によって生徒に学習を進めるうえでの目標を与えられれば、生徒の学習意欲の向上の面でも大きな意義があるという。
● 単なる「知識・技能」の量だけでなく、「思考力・判断力・表現力」等を求める良質の問題による調査を実施することになれば、新学習指導要領が目指す学力観の現場での共有を進めていくうえでの効果も大きいとしている。

県別「共通テスト」と全国規模の「共通テスト」

◆ 県別「共通テスト」の性格 (表2参照)
 上記のような道府県における既存の「共通テスト」(学力調査)は、生徒の学力向上や教員の教科指導などに役立てられている。
 ただ、これらの「共通テスト」は、全国の全ての生徒に共通に求める学習の到達目標を設定し、その到達度を測るようなテストとしての性格は弱いという。
 そして、県別「共通テスト」は全国の高校生に共通する一定の学力を担保する意味での質保証の仕組みとは、その用途・目的において、多少異なる面があるとしている。


◆ 全国規模の「共通テスト」の構築
 高等学校教育部会では、高校全体の質保証の観点から、高校教育が共通に目指すべき学習の到達目標の明確化を図るとともに、その到達度を把握する共通的な調査の仕組みを設け、全国の高校・全ての高校生が、それぞれの希望に応じて、この調査 -「共通テスト」- の機会にアクセスできるようにすることが望まれるとしている。
 当部会では、高校生として共通に求められる「基礎的な知識・技能や思考力・表現力・判断力」等を把握する全国規模の調査 -「共通テスト」- の導入に向けて、今後さらに、その仕組み等を検討していくとしている。
● 全国規模の「共通テスト」のイメージとしては、全ての高校生が共通に学習する「国語総合」、「数学Ⅰ」、「コミュニケーション英語Ⅰ」といった「共通必履修科目」からの“基礎的な知識・技能、思考力・判断力・表現力”などを客観的に評価する学力テストが想定される。
 出題内容は、現在、小学校(6年生)・中学校(3年生)で行われている「全国学力・学習状況調査」における、①主として「知識」(基礎的な知識・技能)に関する問題/②主として「活用」(課題解決のための思考力・判断力・表現力等)に関する問題が想定される。
 なお、基礎的な知識・技能や思考力・判断力・表現力等の調査に加え、学習時間や学習意欲など、高校生の学習状況を客観的に把握するための調査等の取組みも推進する必要があるとしている。

<到達度の客観的把握が難しい資質・能力の評価> (図3参照)



● 「学習への意欲・態度」、「社会・職業への円滑な移行に必要な力」、「市民性」、「道徳的な価値・倫理観」、「健康の保持増進のための実践力」等の評価については、知・徳・体の全体にわたる“幅広い力”に及ぶものである。そのため、筆記試験等の評定でそれらの全体を評価することは難しいとしている。
● 幅広い資質・能力の評価については、様々な先進的評価手法の活用も視野に入れながら、どのような資質・能力を、どのような手法で把握するか、評価の指標をどうするか等の調査研究の推進を求めている。
 学力の一要素である「思考力・判断力・表現力」等についても、その評価については、筆記試験等以外の活用も含めた評価手法の改善により、一層の充実が図れるとしている。
 なお、国において、高校現場で普及可能な「評価モデル」を開発し、その成果の普及も求めている。
● 到達度の客観的把握が難しい資質・能力の評価の研究成果については、必要に応じ、「指導要録」の様式の見直し(記載事項の改善)など、学習評価の充実につなげていくことも検討すべきだとしている。

<20年ぶりの本格的な高校教育審議>

ところで、中教審での高校教育についての本格的な検討、議論は20年ぶりである。
 平成3(1991)年4月の中教審答申『新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について』において、高校教育の多様化に関しては、次のような教育改革を提言している。
 なお、当答申では、大学や高校の入学者選抜についての評価尺度の多元化や複数化、入試情報提供の充実なども提言している。
● 生徒の選択の幅を広げ、個性の伸張を図る観点から、①学科制度を見直し、新たに普通科と職業学科を総合したような学科を設けること/②新タイプの高校の設置を奨励すること/③単位制の活用を図ること/④学校・学科間の移動をしやすくするため、各学校・学科に一定幅の編入学定員枠を用意すること、など。
 こうした高校教育の多様化提言に対し、文部省(当時)は、その具体化に取り組み、「単位制高校」の全日制課程への拡大:平成5年度制度化 → 24年度=960校/「総合学科」創設:6年度制度化 → 24年度=352校/「中高一貫教育校」の推進:11年度制度化 → 24年度=441校(中等教育学校49校、併設型309校、連携型83校)などの改革を進めてきた。
 また、高校への進学率の向上で多様化した生徒への対応は、設置者である都道府県教委が中心となって具体的に取り組んできた。この間、文科省の初等中等教育政策は、義務教育段階の小・中学校教育を中心に行われてきたといえる。そのことは、中教審における幼稚園から高校までの教育課程編成の改訂(学習指導要領改正)審議などにもあらわれている。
 他方、近年の教育改革を巡る動きは、小・中学校を中心に「ゆとり教育」や大学の「質保証・向上」に向けられ、高校教育はその挟間でいわばブラックボックス化していた。
 しかし、義務教育化で極めて多様化した高校教育の「質保証・向上」は、社会においても、「高大接続」の観点からも喫緊の課題である。
 こうしたことから、中教審で20年ぶりに高校教育の本格的審議が行われているとみる。

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<高校と大学の接続>
高校教育と大学教育の円滑な接続

大学進学適齢者(18歳)の約51%(学部進学率:24年度)、高3生の約48%(同)が大学(学部)に進学する「ユニバーサル・アクセス」型の大学進学状況にあって、円滑な高大接続は、高校教育と大学教育の質保証の観点からも重要なテーマである。
 とりわけ、高校教育に多大な影響を及ぼしている大学入試の在り方については、双方の質保証・向上に向けた喫緊の課題といえる。
◆ 中教審、「高大接続特別部会」設置
 文科省は24年6月、『大学改革実行プラン』を策定し、その中で大学入試の改革の観点として、「高校教育から一貫した質保証へ」と「教科の知識偏重入試から、意欲・能力・適性等の多面的・総合的な評価へ」といった2つの基本方針を掲げている。そして、大学入試改革等の検討・議論は、24年夏から開始するとしていた。
 文科省はこうした大学改革プランや最近の高校教育と大学教育の接続に係る質保証の問題などを踏まえ、24年8月、中教審に「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」を諮問した。
 諮問では、例えば次のような点に留意した審議を求めている。


中教審では諮問を受けて「高大接続特別部会」を設置し、①高校から大学までを通じて育成すべき力と育成するための方策/②大学入学者選抜の在り方/③高校教育と大学教育の接続・連携の在り方、といった3つを主な視点として審議している。
 同部会では24年12月現在、入学者選抜の在り方を中心に検討・議論を進めている。

センター試験は、“コア”を評価する「共通テスト」にそぐわない !


◆ センター試験の「目的」
 センター試験の「目的」は、大学に入学を志願する者● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●の高等学校の段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的として大学が共同して実施することとする試験」(独立行政法人大学入試センター法第13条)として規定されている。
 すなわち、センター試験は“大学(短大含む。以下、同)進学志望者”の高校段階での基礎的な学習の達成度を測る試験で、“全ての高校生(高3生)”を対象にした基礎的な学習の達成度を測る試験ではない。
 そのため、出題教科・科目も現行では6教科・29科目(英語は筆記、リスニング出題)の多岐にわたり、主要科目の出題レベル(難易度)は“平均点6割程度”にすることを基本方針としているようだ。
◆ センター試験のもつ“二面性”
 センター試験は大学志願者の基礎学力の達成度を測るという「目的」(目標準拠型の“達成度テスト”=絶対評価)と、センター試験を利用する大学に対し「当該大学入学者を選抜するための基礎資料を提供する」という「機能」(集団準拠型の“選抜テスト”=相対評価)といった“二面性”をもっているといえる。
◆ センター試験は、“選抜機能”重視
 センター試験の前身である「共通第1次学力試験」(昭和54<1979>年~平成元<1989>年。以下、共通1次試験)の設置については当初、高校の学習成果を公正に表示する「調査書」を選抜資料とするために、広域的な「共通テスト」を開発し、学校間の評価水準の格差を補正することなどが構想されていた(中教審の所謂『四六答申』:昭和46<1971>年6月)。
 しかし、中教審の『四六答申』で提起された「共通テスト」(教育機能)構想は、国大協(国立大)の「高校教育の尊重」(高校での学習成果を入学者選抜に反映=1次試験)と「各大学の独自性」(個別試験=2次試験)とを組み合わせた入学者選抜の“二部構成”を構想した共通1次試験、さらに私立大も参加するセンター試験(平成2年~)へと改変されていく中で、“選抜機能”重視の「選抜テスト」へと変容していった。
 こうしたことから、現行のセンター試験は、前述したような全ての高校生が共通に身に付けるべき知識・技能(コア)を客観的に評価する「共通テスト」にはそぐわないといえる。

< 「高大接続」 に係る “学力把握” の構想  >

「高大接続」に関してはこれまで中教審はじめ、関係機関等で議論、提言されてきた。
 中教審答申『学士課程教育の構築に向けて』(20年12月)では、「高校と大学は“選抜だけの関係”から、“客観的できめ細やかな学力把握”とそれに基づく“適切な指導”で学力向上が図られるよう共に力を合わせて取組む関係へと転換していくこと」を求めている。
 こうした「高大接続」に係る入試改善策の答申に関し、文科省委託の所謂「高大接続テスト(仮称)」の協議・研究(国公私立大、高校関係者等で構成)の『最終報告』(22年9月)は、高校段階の基礎的教科・科目についての学習の達成度を客観的に評価する“目標準拠型”の「達成度テスト」の基本的方向性を提言している。
 他方、大学入試センターでは現在、センター試験での“学力把握機能”(識別力)の低い受験者層(難関大・学部志願の高学力者層、あるいは低学力者層)や、センター試験の非利用者層(センター試験を課さない推薦・AO入試など)を対象にした“識別力のある”新しいテストを研究、開発しているという。
◆ 大学入試センターの「新テスト」研究・開発
 大学入試センターでは現在、上記のような低学力者層やセンター試験非利用者層を対象に、次のような「教科科目型」と「適性試験型」の新テストの研究、開発を進めているという。
① 「教科科目型」学力試験
この学力試験は国語、数学の2教科で、高校教育へのフィードバックが有効であるという。
● 国語:国語のリスニング(コミュニケーション)試験で、「国語総合」のうち、「話すこと・聞くこと」の内容。
● 数学:中学校の数学の内容から「数学Ⅰ」(及び「数学活用」)の範囲。特定の科目内容からの出題ではなく、社会生活などの現実場面を題材にした数理論理力、問題解決能力などをみる問題。
② 「適性試験型」学力試験
この学力試験は、大学での就学支援の手立てとしての活用が見込まれているようだ。
● 言語運用力:適性試験型の「日本語 + 英語」の学力試験。
● 数理分析力:数と式、関数に関わる計算/定義・ルールの理解、適用/グラフ・数表の読み取り/数理的思考力など。
◆ 「高大接続」と「共通テスト」構想の整理を !
 中教審の高等学校教育部会で検討している、全ての高校生が共通に身に付けるべき高校教育の“コア”を客観的に評価する「共通テスト」/現在、各県等で行われている生徒の学力向上、教科指導充実等のための「共通テスト」(学力調査)/高校生を対象とする基礎的教科・科目の学習の達成度を客観的に評価する目標準拠型の「共通テスト」(「高大接続テスト(仮称)」)/大学志願者の高校段階における基礎的な学習の達成度を測る集団準拠型の「共通テスト」(センター試験)/大学入試センターが研究・開発を進めている「新テスト」など、高校生や受験生、高校側からみれば、いずれも“テスト”であることに違いはない。
 「高大接続」は、高校教育と大学教育の“主従関係”(両者間の全ての連続性)を示すものではない。高校側は高校教育の目的・目標、共通性などを、大学側は大学教育の質保証、大学の役割・機能などをそれぞれ踏まえた上で、「高大接続」を考えるべきだ。
 そして、いずれの“テスト”においても、当該のテストを受験する側が、その目的や目標、機能などを十分理解できるような各テストの位置付け、差別化が必要だ。