今月の視点

12月

24年「司法試験」合格率は25.1%、初の上昇に!

法科大学院修了者の合格率24.6%、予備試験組68.2%。文科省、法科大学院の「教育改善プラン」策定!

旺文社 教育情報センター長 大塚/2012年11月1日掲載

この記事の印刷用PDF

法科大学院は、司法の一層の多様化・高度化などの進展に伴い、幅広い知識と教養を身に付けた法曹の量的拡大と質的充実を図るため16(2004)年度に創設された。
 法科大学院修了者による新司法試験は18年から実施されているが、創設時に目標とされた合格者数の年間3,000人、合格率7~8割とはほど遠い状況が続いている。
 そうした中、法科大学院を経由しない「予備試験」合格者も新規参加した24年の司法試験(新・旧司法試験の併行実施終了により「司法試験」と表記)は、合格者数2,102人で過去最多、合格率25.1%で新制度となって初の上昇に転じた。ただ、法科大学院修了者の合格率は24.6%に留まり、予備試験組の68.2%を大きく下回っている。
 文科省は、新たな補助金等減額措置も含めた「法科大学院教育改善プラン」を策定した。


*        *        *

<法科大学院の入試状況>
相次ぐ“募集停止”

法科大学院の設置校数は24年度現在、国立23校、公立2校、私立49校の計74校である。しかし、志願者数・実入学者数の減少、入学定員充足率の低さ(入学定員割れ)、司法試験合格率の低迷などから、私立の“募集停止”が相次いでいる。
 まず、23年度からの姫路獨協大に続き、25年度からは大宮法科大学院大/駿河台大/明治学院大/神戸学院大が募集停止となり、25年度の学生募集は69校(24年10月現在)。

入学定員

法科大学院が創設された16年度から24年度までの入学者選抜状況を概観してみよう。
 法科大学院の入学定員は、創設時の16年度が5,590人、17年度~19年度まで5,825人、20年度5,795人、21年度5,765人と、21年度まで5,000人台後半で推移してきた。
 しかし、中教審の法科大学院特別委員会の法科大学院教育の改善提言(21年4月。後述)の指摘等を受け、多くの法科大学院で入学定員(募集人員)の削減が行われた。その結果、22年度は21年度に比べ856人(14.8%)減の4,909人と、初めて5,000人台を割った。
 さらに、23年度の募集停止(1校)などによって入学定員の減少は続き、24年度は23年度より87人(1.9%)減の4,484人となり、19年度(ピーク時)~24年度の5年間で1,341人(23.0%)の減員となった。
 なお、25年度の入学定員は募集停止5校のほか、5校で定員削減となり、24年度より223人(5.0%)減の4,261人が予定されている(24年9月現在)。

志願者数、倍率

法科大学院の志願者数は、創設された16年度(68校)の7万2,800人を最高に、17年度(22年度まで74校)~19年度が4万人台、20年度4万人割れ、21年度3万人割れ、22年度約2万4,000人、23年度(23・24年度は73校)約2万3,000人、24年度1万8,446人と、志願者減の傾向が続いている。
 平均の志願倍率(志願者数÷募集人員)も16年度の13.0倍を最高に、17年度~20年度は7倍前後、21年度~23年度は5倍前後であったが、24年度は4.1倍に低下している。
 また、競争倍率(受験者数÷合格者数)も低く、最近の競争倍率は21年度2.8倍、22年度2.7倍、23年度2.9倍、24年度2.5倍と、2倍台が続いている。
 ただ、「相応の競争原理がはたらき、適正な入学者選抜が確保できる」と考えられる最低限の“競争倍率2倍”に満たない法科大学院は21年度には74校中42校、22年度40校であったが、23年度(73校中)は19校、24年度(同)は13校に減り、競争性の確保の改善がみられる。

入学者数:法学未修者・既修者別状況

実入学者数は、16年度~19年度まで、17年度の約5,500人を除き5,700人台、20年度約5,400人、21・22年度4,000人台、23年度約3,600人、24年度3,150人と、減少傾向。
 特に、多様な人材養成を目指す「法学未修者コース」(3年制。以下、未修者コース)の入学者の減少が目立つ。当コースの入学者は、18年度の3,605人(全入学者の62.3%)をピークに毎年減少し、23年度は「法学既修者コース」(2年制。以下、既修者コース)の入学者数を創設以来、初めて下回った。24年度入学者3,150人のうち、既修者コースが1,825人(同57.9%)、未修者コースが1,325人(同42.1%)で、未修者コースの減少が続いている。(図1参照)


*        *        *

<司法試験の動向>

司法試験(18年~23年の新司法試験を含め「司法試験」と表記。以下、同)のこれまでの受験・合格状況をみると、18年~23年までは受験者数の増加、合格者数の停滞状態と合格率の低下が目立つ。そうした傾向の中、24年は受験者数の減少、合格者数の増加、合格率の上昇といった好転換がみられた。(表1、図2参照)

受験状況

受験者数は、既修者コースのみの受験となった18年(第1回)は2,091人であったが、未修者コースも加わった19年には18年の2.2倍に当たる4,607人となり、以降、年々増加して23年には8,765人に達していた。
 しかし、24年は初参加の「司法試験予備試験」(以下、予備試験。後述)合格者の85人の受験を含め、前年を初めて378人(4.3%)下回る8,387人だった。
 これは、21年度以降の法科大学院修了者数の減少、司法試験の受験は「法科大学院修了後、5年期間内に3回まで」という“受験制限”などが影響しているとみられる。
 なお、24年の受験者8,387人のうち、法科大学院修了者は8,302人で、既修者コースが3,231人(占有率38.9%)、未修者コースが5,071人(同61.1%)で、未修者コースの受験は既修者コースの約1.6倍である。

合格状況

司法試験の合格者数は18年の1,009人から20年の2,065人まで増加したが、21年は前年より22人減の2,043人に減少。22年はやや増加して2,074人であったが、23年は再び前年より11人減の2,063人。24年は予備試験組の合格者58人を含め、前年より39人(1.9%)増加の2,102人となり、過去最多となった。
 しかし、法科大学院修了者の24年合格者数は2,044人で、23年より19人(0.9%)減少し、相変わらず厳しい状況である。なお、この合格者2,044人のうち、既修者コースが1,171人(占有率57.3%)、未修者コースが873人(同42.7%)である。
 合格率は、23年までの受験者増と合格者数の停滞状態を反映して、18年(第1回。既修者コースのみ)の48.3%を最高に年々低下。23年は23.5%まで低下して、新制度となった司法試験では過去最低を更新した。


24年は前述のように受験者数が減少したことに加え、難関をパスした予備試験組の新規参加などから、合格率は23年より1.5ポイント上昇の25.1%となり、19年以降5年連続の下降から初めて脱した。
 ただ、法科大学院修了者の24年合格率は24.6%と、23年より1.1ポイント上昇したものの、予備試験組の合格率68.2%に比べ、その差は43.6ポイントにも及ぶ。なお、24年の既修者コースの合格率は36.2%、未修者コースの合格率は17.2%で、未修者コースの合格率は既修者コースの半分以下である。
◆ 法科大学院の合格実績
 各法科大学院における18年~24年までの司法試験合格実績をみてみよう。(表1参照)
 当期間における全法科大学院の累積合格者数は、1万3,149人である。各法科大学院の合格者数では、東京大1,319人(平均合格率54.2%)/中央大1,209人(同45.7%)/慶應義塾大1,118人(同53.5%)/京都大926人(同53.2%)/早稲田大804人(同35.5%)/明治大560人(同28.3%)の6校が累積合格者数500人以上である。
 一方、国立3校、私立3校が累積合格者数10人台で、私立1校は3人(同2.0%)に留まる。
 この間の各法科大学院の平均合格率は、一橋大60.0%/東京大54.2%/慶應義塾大53.5%/京都大53.2%の4校が50%以上で、全法科大学院の平均合格率28.9%の“半分”に達していないのは29校に上る。合格者数、合格率とも法科大学院間の格差が目立つ。

受験資格の“喪失”

司法試験の「受験資格」は、法科大学院修了者及び予備試験合格者とされているが、受験に際しては“期間”及び“回数”に関しての制限がある。
 法科大学院修了者及び予備試験合格者は、それぞれ「課程修了日後あるいは合格発表日後の最初の4月1日から5年間の期間において、3回の範囲内」で受験することができる。
 ただし、当該受験資格に基づく“5年間の受験期間”を経過し、かつ、最後に司法試験を受験した日後の“2年”を経過しなければ、当該受験資格とは別の受験資格で司法試験を受験することはできない。
 司法試験にこうした“受験制限”(所謂“三振制度”)を設けたことは、不合格者への早期の転進(法曹以外の法学関連分野等)を促し、受験生の停滞(司法試験浪人の累積)を回避することや、法科大学院等での教育・学習効果が時間の経過とともに薄らいでいくことなどを勘案したためとみられる。

法科大学院修了者の5割以上が司法試験の“受験資格喪失”

ところで、上記のような受験制限内に司法試験の合格を果たせず、“受験資格喪失”となった法科大学院修了者は、これまでの司法試験において、17年度修了者(既修者コースのみ)の約3割を除き、修了者の5割以上に及ぶ。受験資格喪失者の多くは所謂“三振者”(5年期間内に3回受験して全て不合格)であるが、受験機会の放棄者、物故者等も含まれる。また、未修者コースの喪失率は既修者コースの喪失率より大幅に高く、法学未修者(法学部出身の“隠れ既修者”も含む)が標準修業年限3年の教育カリキュラムで司法試験に合格することの難しさを示している。


“受験制限”を経過した各年度修了者の司法試験合格状況

法科大学院修了者による司法試験は、これまで7回(18年~24年)実施されており、17年度~19年度の各修了者が「5年期間内に3回受験」の受験制限を経過している。
 受験制限を経過した当該年度修了者の司法試験合格状況の概要は、次のとおりである。
① 17年度修了者(18年~22年司法試験受験可能)
  ・実入学者数(16年度「既修者コース」のみ)=2,350人 → 17年度修了者数(「既修者コース」のみ)=2,176人  → 合格者数(18年~22年)=1,518人 → 合格率=69.8%
  ・受験資格喪失者数=658人 → 受験資格喪失率=30.2%
② 18年度修了者(19年~23年司法試験受験可能)
  ・実入学者数(16年度「未修者コース」+17年度「既修者コース」)=5,480人 → 18年度修了者数=4,418人  → 合格者数(19年~23年)=2,188人 → 合格率=49.5%
  ・受験資格喪失者数=2,230人 → 受験資格喪失率=50.5%
③ 19年度修了者(20年~24年司法試験受験可能)
  ・実入学者数(17年度「未修者コース」+18年度「既修者コース」)=5,660人 → 19年度修了者数=4,911人  → 合格者数(20年~24年)=2,273人 → 合格率=46.3%
  ・受験資格喪失者数=2,638人 → 受験資格喪失率=53.7%


<予備試験の実施>
法科大学院を経由しない、“超難関の例外的ルート”

18年~23年まで新司法試験と併行実施されていた旧司法試験の廃止を受け、司法試験受験の資格が得られる「司法試験予備試験」(予備試験)が23年から実施されている。
 予備試験は、経済的事情や既に実社会で十分な法律に関する実務を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する途を開くために設けられた、いわば法科大学院の“例外的ルート”に当たる。
 そのため、予備試験は法科大学院課程修了と同等の学識や応用能力、法律に関する実務の基礎的な素養などを判定する試験である。予備試験合格者は、法科大学院修了者と同等の資格で司法試験を受験することができ、受験制限も前述のように同様に適用される。
 23年に実施された予備試験は、出願者数=8,971人 → 受験者数=6,477人(最初の短答式試験)  → 合格者数=116人(最終の口述試験)  → 合格率=“1.8%”と、旧司法試験の合格率(17年までの単独実施時の合格率は2~3%台)よりも厳しい“超難関”試験といえる。

予備試験“合格者”の「司法試験」合格率“68.2%”
 / 
予備試験“受験者”の「司法試験」合格率“0.9%”!

上記のような超難関の予備試験をパスした23年“「予備試験」合格者”116人のうち、24年「司法試験」の出願者は95人、受験者は85人、合格者は58人で、「予備試験」受験者(予備試験組)の「司法試験」合格率は“68.2%”だった。
 ところで、23年「予備試験」の最終合格発表は23年11月で、24年「司法試験」の試験は24年5月(短答式試験)からスタートしており、その間、約半年である。
 したがって、「司法試験」の合格を目指す“「予備試験」受験者”にとっては、「予備試験」が“1次試験”、「司法試験」が“2次試験”(本番)とみることができる。こうした試験日程の流れからみれば、当初の“「予備試験」受験者”6,477人のうち、最終目標の「司法試験」に合格したのは58人で、その合格率は“0.9%”に過ぎない。
 ただ、「司法試験」における受験者の試験結果に限定するならば、予備試験組の合格率68.2%は、法科大学院修了者の24.6%を3倍近く上回り、さらに法科大学院中トップの合格率である一橋大(57.0%)を10ポイント以上上回っている。

「司法試験」合格率68%の予備試験組の4割強が大学生、1割強が法科大学院生

予備試験組の合格者58人の職種をみると、大学生が26人(予備試験組の合格者の44.8%)で最も多く、次いで無職14人(同24.1%)、法科大学院生8人(同13.8%)などである。最終学歴では大学が46人(同79.3%)で8割近くを占め、そのうち、半数以上が在学中である。
 また、年齢別でも、6割近くが20代で占められている。(図3参照)

懸念される法科大学院の“空洞化” ~「予備試験」制度の検証・分析 ~

上記のような予備試験組の司法試験合格者の実態を踏まえ、予備試験が前述のような本来の趣旨に沿った試験制度となっているかどうか、検証・分析を求める意見もみられる。
 また、予備試験の合格レベルが法科大学院課程修了レベルと同等であるとするならば、法科大学院修了者と予備試験組の司法試験の合格率は、同程度になるはずである。法科大学院の成績評価・修了認定の基準が低く、厳格さに欠けるのか、あるいは予備試験の合格要件が高すぎるのか、といった両者の質保証に関する課題もある。
 第2回目の24年予備試験の出願者数は9,118人(前年比1.6%増)で、受験者数(24年5月短答式試験)は23年より706人(10.9%)多い7,183人だった(合格発表は24年11月上旬)。
 最終合格発表を待たないと判断は難しいが、今後、予備試験の合格要件が緩和され(合格率アップ)、学費と時間を節約できる“バイパスルート”として予備試験組が拡大・定着すれば、法科大学院の“空洞化”も懸念される。


*        *        *

<法科大学院の改善方策>
法科大学院修了者:7年間で約3万人、司法試験合格者約1万3,000人、合格率44%

法科大学院は16年度の創設以降、24年度で9年目を迎え、17年度~23年度の“累積修了者数”は2万9,763人にのぼる。その間の司法試験(18年~24年受験可能)の“累積合格者数”は1万3,149人で、“累積修了者数”に対する平均合格率は44.2%になる。
 なお、17年度~19年度修了者は前述したように司法試験の“受験制限”を既に経過しているが、20年度~23年度修了者は受験機会を残しており、今後、当該修了者による司法試験合格者数の増加、平均合格率の上昇もあり得る。
 法科大学院ではこれまで約3万人の修了者を、法曹はじめ企業の法務部門など様々な分野に輩出してきた。特に弁護士については、現在の全登録者数(約3万2,000人)の約四分の一は法科大学院修了者だという。

法科特別委の改善提言

法科大学院修了者については、従来の旧司法試験にみられた“点”のみによる選抜ではなく、「法学教育-司法試験-司法修習」といった“プロセス”としての法曹養成制度の理念が実現しつつあるとの評価もある。
 しかし、その一方では一部の法科大学院を除き、入学者選抜の低調、司法試験結果の低迷、教育課程実施状況の問題点等が顕在化している。
 中教審の法科大学院特別委員会(以下、法科特別委)では法科大学院の実態を踏まえ、これまで次のように2回にわたって法科大学院の改善方策を提言している。
◆ 『21年改善方策』
 法科特別委は21年4月、『法科大学院教育の質の向上のための改善方策について』(以下、『21年改善方策』)で、入学者の質と多様性の確保等について次のような提言を示した。
  ① 入学定員の見直しなどにより、入学者選抜における競争的な環境(競争倍率2倍以上)を確保。
  ② 適性試験の改善と総受験者の下位から15%程度の人数を目安とした統一入学最低基準の設定。
  ③ 法学既修者認定の統一的運用による厳格化。
  ④ 夜間コースや長期履修コースの拡充等による社会人のアクセスしやすい環境整備。
 さらに法科特別委は22年3月、深刻な課題を抱えながら改善が進んでいない法科大学院について、財政的支援の見直しや人的支援の中止などの措置を早急に検討すべきであるとする「公的支援の見直し」(後述)を提言した。
 各法科大学院ではこうした提言等に基づき、これまでに入学定員の見直し(募集人員削減)や教育課程改善等に向けた取組を進め、例えば次のような成果をあげている。
● 入学定員の適正化:「入学定員数」…16年度(創設時)=5,590人 → 17年度~19年度(この間ピーク時)=5,825人 → 20・21年度=5,700人台 → 22・23年度=4,000人台後半 → 24年度=4,484人(ピーク時の23.0%減)
● 選抜機能の確保 ~競争倍率“2倍未満”の法科大学院の減少~ :「競争倍率2倍未満の法科大学院数」…21年度=42校(全校数の56.8%)  →  22年度=40校(同54.1%)  → 23年度=19校(同26.0%)  → 24年度=13校(同17.8%。21年度より39.0ポイント減)
● 入学者の質の確保 ~入学者数の縮減~ :「実入学者数」…16年度~20年度=5,000人台(ピークは18年度5,784人)  → 21・22年度=4,000人台 → 23年度=3,620人 → 24年度=3,150人(ピーク時の45.5%減)
 法科特別委では、上記のような改善取組等を評価する一方、全体としてみると、司法試験合格者数や合格率の低迷、弁護士など法曹有資格者の就職難などから、法科大学院への志願者減の傾向が続き、一部の法科大学院では十分な成果があげられず、法科大学院の入学者選抜状況や司法試験の合格状況などで、法科大学院間の格差が拡大しつつあると分析。
 また、法科大学院は多様なバックグラウンドを持つ入学者の法曹養成を理念の一つとして創設されているが、現状では社会人や非法学部出身者の入学者は減少傾向にあり、司法試験合格率でも法学既修者と法学未修者との差が大きく、拡大の方向にあると指摘している。
◆ 『24年改善方策』
 法科特別委では、『21年改善方策』提言以降の法科大学院の現状と課題を踏まえ、法科大学院制度全体を早期に安定させるため、更なる改善策が必要であるとし、24年7月に『法科大学院教育の更なる充実に向けた改善方策について』(以下、『24年改善方策』)を次のような4つの観点から改めて提言した。


法科特別委は今回の提言に際し、各法科大学院に対しては教育の質の更なる向上に向けた改善方策に速やかに取り組むことを、文科省に対しては当提言を踏まえた実効性のある施策を迅速かつ計画的に立案し実行に移すことを、それぞれ強く求めている。

文科省の「法科大学院教育改善プラン」

文科省は、中教審法科特別委の『24年改善方策』提言を踏まえ、次のような「法科大学院教育改善プラン」(24年7月。以下、「改善プラン」)を策定して、成果目標の設定と具体的な改善方策を明確にし、その実現に向けて迅速かつ着実に取り組むとしている。
◆ 目指すべき成果目標


◆ 具体的な改善方策
 「改善プラン」では、法科特別委が『24年改善方策』で提言した4つの観点の改善方策について、次のような具体的な施策を明示している。


<公的支援の更なる見直し>
法科大学院の組織見直し促進のため、不振・低迷校の交付金・補助金の減額措置

法科特別委は22年3月、深刻な課題を抱えながら改善が進んでいない法科大学院について、文科省に対し財政的支援の見直しや人的支援の中止などの措置を早急に検討すべきであるとする『法科大学院における組織見直しの促進方策について』を提言した。この提言は、法科大学院の再編等(統廃合含む)も視野に、各校の自主的・自律的な組織の見直しを促進する狙いがある。
 文科省は当提言を受けて22年9月、次のような「公的支援の見直し」を決定した。
 具体的には、[指標1] =「前年度の入学者選抜の競争倍率が2倍未満」/ [指標2]  =「①司法試験合格率が全国平均の半分未満、②司法試験直前の直近修了者のうち司法試験受験者数が半数未満で、その合格率も全国平均の半数未満。①、②のいずれかが3年以上継続」といった2つの観点(競争倍率と司法試験合格率)を指標として、両方の指標に当てはまる法科大学院の補助金(私立大)と交付金(国立大)の減額措置を講じるとしている。
◆ 補助金等の減額対象校:24年度6校、25年度4校
 上記の2つの指標に該当する法科大学院は、24年度から補助金等が減額されている。
 24年度の対象校は、大宮法科大学院大/大東文化大/東海大/明治学院大/関東学院大/桐蔭横浜大の私立6校で、私立大学等経常費補助金が減額される。
 25年度は、国立の島根大(運営費交付金の減額)のほか、愛知学院大/大東文化大/東海大の私立3校が補助金減額の対象となっている。

更なる公的支援見直しの背景

各法科大学院では、中教審の『21年改善方策』提言や文科省の「公的支援の見直し」施策(22年9月)などを踏まえて、前述したような入学定員の適正化、選抜機能の確保、入学者の質の確保などの改善が図られ、一定の評価もみられる。
 他方、深刻な課題を抱える法科大学院では、入学定員に占める実入学者の割合、すなわち「入学定員充足率」(実入学者数÷入学定員)の低さと、その拡大が課題となっている。
 21年度~24年度までの「入学定員充足率」等は、次のような傾向を示している。
● 全体の「入学定員充足率」の低下傾向:21年度=84.0% → 22年度=84.0% → 23年度=79.2% → 24年度=70.2%
● 入学定員充足率“50%未満”の校数の拡大傾向:21年度=13校(全校数の17.6%)  →22年度=13校(同17.6%)  → 23年度=21校(同28.8%)  → 24年度=35校(同47.9%)
● 実入学者数“1桁”の校数の拡大傾向:21年度=1校(全校数の1.4%)  → 22年度=6校(同8.1%)  → 23年度=11校(同15.1%)  → 24年度=20校(同27.4%)
 上記のような入学者数に係る最近の傾向をみると、「競争倍率」が補助金減額の指標となった23年度入学者選抜からの実入学者数の減少が著しい。これは、小規模校などで、“「競争倍率」確保”のために、「合格者数」を削減(受験者が増えないための苦肉の策)した結果、「実入学者減」→「入学定員充足率の低下」(入学定員の減員は限界状態で、定員削減は困難)に陥るケースなどもあるようだ。
 法科特別委ではこうした状況を改善するため、前述した現行の「入学者選抜の競争倍率」と「司法試験合格率」の2つの観点の指標に加え、入学定員と実入学者数が大きく乖離する事態を是正する観点から、「入学定員充足率」を“新たな指標”(指標3)として追加する措置を講じるよう文科省に求めた(『24年改善方策』及び『法科大学院における組織見直しの更なる促進方策について』:24年7月)。
◆ 新たな補助金等の減額措置
 文科省は、中教審法科特別委の『24年改善方策』等の提言を受け、深刻な課題を抱える法科大学院について、自主的・自律的な組織見直しを更に促進する観点から、現行の公的支援における補助金等の減額措置を改善すべく、新たに「入学定員充足率」を指標として追加した次のような措置を決めた。(図4参照)


<“法学系離れ”に歯止めを!>

本稿では、創設から8年経過した法科大学院のこれまでの入学者選抜や司法試験結果、中教審の「法科大学院教育の改善」提言、文科省の「改善プラン」などをみてきた。
 政府の司法制度改革を受け、法曹養成制度の中核的機関として創設された法科大学院であるが、想定外ともいわれる法科大学院設置の多さ/法学未修者の不振/司法試験合格者数と合格率の低迷/法科大学院志願者の減少/厳しい弁護士需要の現状、といった法科大学院に象徴される法曹養成の“負のイメージ”が、一段と強まっている。加えて、23年度には1校であった法科大学院の募集停止が、25年度には5校に上り、不振・低迷校への補助金等の減額措置も24年度6校、25年度4校に及ぶ。
 こうした法科大学院の“負のイメージ”は、大学受験生、とりわけ法学系統の志願動向にも少なからず影響しているとみられる。大学「一般入試」における法学系統の志願者状況(旺文社調べ)をみると、国公立大は23・ 24年ともそれぞれ約4%減、私立大は23年約4%減、24年約7%減と、大学志願者の“法学系離れ”が見て取れる。
 このような状況の中、23年11月の「行政刷新会議」では、法科大学院の需給のミスマッチや定員の適正化などが指摘され、法科大学院制度の抜本的見直しの検討が提言された。また、政府の「法曹の養成に関するフォーラム」は24年5月、法曹養成制度に関する『論点整理』をまとめた。更に24年8月には「法曹養成制度関係閣僚会議」が設置され、法曹人口や法科大学院、司法試験の在り方などを集中審議し、1年以内に結論をまとめるという。
 文科省の「改善プラン」や政府の法曹養成制度の検討・議論など、法曹養成改善に向けた動きが本格化してきた。法曹養成制度の見直しには、法科大学院に限らず、法学部や研究者育成の大学院も含め、“法学系離れ”に歯止めがかかるような総合的な議論が望まれる。