今月の視点

10月

中教審、“高度専門職業人”として「学び続ける教員像」の確立を答申!

教員養成の“修士レベル”化/3段階の免許制度創設/教委と大学との連携・協働を提言!

旺文社 教育情報センター長 大塚/2012年10月2日掲載

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中教審は24年8月末、『教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について』(以下、『教員の資質能力の向上方策』)を平野博文・前文科大臣に答申した。
 答申では、“高度専門職業人”として「学び続ける教員像」の確立を基本的な理念とし、教員養成の修士レベル化/一般免許状(仮称)・基礎免許状(仮称)・専門免許状(仮称)といった免許制度の創設/教育委員会と大学との連携・協働による教職生活全体を通じた教員養成を提言の柱に据えている。
 ここでは、今回の中教審答申に至る経緯や背景、『教員の資質能力の向上方策』の概要、当面の改善方策の検討、教員養成や教員採用に係る現状等をまとめた。


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<教員養成に関する改善取組の経緯と背景>
『18年答申』以降の経緯

中教審は18年7月、『今後の教員養成・免許制度の在り方について』を答申した(以下、『18年答申』)。当答申では、教員の揺るぎない信頼を確立するために、教員の“養成・採用・研修”等の改革を総合的に進める必要があるとし、「教職大学院」制度の創設、「教員免許更新制」の導入、「教職実践演習」の新設・必修化などを提言した。教職大学院は20年4月から開学され、教員免許更新制は21年4月から実施されている。
 他方、今回の『教員の資質能力の向上方策』については22年6月、川端達夫・文科大臣(当時)が、「教職大学院や教員免許更新制等は実現しているが、学校現場の諸課題に必ずしも十分に対応できていないとの指摘もあり、教員が教職生活の各段階を通じて高度な専門性と実践的な指導力を身に付けられるようさらなる改革が求められる」とする諮問理由を添え、改めて中教審に諮問した。

政権交代に絡む免許制度・教員養成の改革提起

中教審の『18年答申』から4年、「教員免許更新制」実施からわずか1年余りの22年6月に、なぜ、上記のような『教員の資質能力の向上方策』をあえて諮問したのか。
 その背景を探るべく、『18年答申』以降の教員免許制度改革など、最近の教員養成に係る改革方策の経緯を時系列的にたどってみる。(図1参照)
1.中教審『18年答申』=18年7月
 ・教職課程の質的水準の向上(「教職実践演習」の新設・必修化など)/・「教職大学院」制度の創設/・「教員免許更新制」の導入など。
2.「教職大学院」開学=20年4月
 20年度に19大学が設置(国立15大学、私立4大学、入学定員706人)。
3.教員免許の改革法案=21年3月民主党提出。6月参院可決、衆院審議未了廃案
 「教員免許更新制」は自民党政権下の19年6月に成立した「改正教育職員免許法」に基づいて導入された制度であるが、当初から様々な課題が指摘されていた。
 そうした状況のもと、民主党は21年3月(当時は野党)、教員の資質能力の向上のための教員免許制度の改革法案『教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案』を参議院に提出。当法案は6月、参議院で可決され衆議院に回付されたが、審議未了で廃案となった。
 民主党が当時提出した教員免許の改正案は、今回の『教員の資質能力の向上方策』答申における新たな免許制度の創設提言につながるもので、その概要は次のとおりである。


4.「教員免許更新制」の導入=21年4月
 教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識・技能を身に付け、教員の自信と信頼を得ることなどを目的とした制度。
 「教員免許更新制」の概要は、次のとおりである。


5.新政権発足(21年9月)と中教審への諮問
 21年8月末の衆議院議員総選挙で自民党から民主党へ政権が交代し、教員養成や教職関係の改革論議も新たな展開を迎えることになった。
 21年9月の新政権発足直後から、川端達夫・文科大臣(当時)ら政務三役は、「教員免許更新制」見直しの意向を示しつつ、教員の資質向上策の一環として養成課程の延長や免許制度の見直しなどを唱えていた。
 他方、「教員免許更新制」は21年4月から既に最初の2年間の更新期間に入っており、現職教員の間では「教員免許更新制」はどうなるのか、その行方が注目されていた。
 こうした学校と教員を巡る様々な課題が指摘されていた中、川端達夫・文科大臣(当時)は22年6月、中教審に今回の『教員の資質能力の向上方策』を諮問したのである。
 6.『審議経過報告』=23年1月
 中教審では『教員の資質能力の向上方策』の諮問を受け、既設の「教員養成部会」(旧・教育職員養成審議会)とは別に、“教員養成”のみならず、“採用・研修”など幅広い審議の場として「教員の資質能力向上特別部会」を22年6月に設置。同特別部会は23年1月、今回の答申の基となる『審議経過報告』を提示した。
 その後、24年5月の『審議のまとめ』公表、パブリックコメント(意見募集)等を経て、同年8月の答申に至っている。


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【 『教員の資質能力の向上方策』 答申の概要 】
 24年8月に中教審から答申された『教員の資質能力の向上方策』の概要は、次のとおりである。

<改革の方向性>

まず、『教員の資質能力の向上方策』答申では、教員を取り巻く学校や社会の現状と課題について、次のような点を挙げている。
● グローバル化、情報化、少子高齢化など社会の急激な変化に伴い、学校教育においても求められる人材育成像が変化している。21世紀を生き抜くための力を育成するため、基礎的・基本的な知識・技能の習得に加え、思考力・判断力・表現力等の育成や学習意欲の向上に対応した指導力を身につけることが必要である。
● 学校現場での高度化・複雑化する教科指導、生徒指導、学級経営等の職務に的確に対応すべく、教員養成段階における実践的指導力の育成強化が必要である。
 また、当答申では、教員を取り巻く現状と課題を踏まえ、「“教員になる前の教育”は大学、“教員になった後の研修”は教育委員会」という、これまでの教員養成に係る断絶した役割分担からの脱却を求めている。
 そのうえで、教育委員会と大学との連携・協働により教職生活全体を通じた一体的な改革、つまり“学び続ける教員”を支援する仕組みを構築する必要があるとし、次のような改革の方向性を提言している。

教員養成の改革の方向性 ~ 教員養成の“修士レベル”化 ~



● 教員養成の“修士レベル”化(1年~2年程度の修士レベル)については、教職大学院を主体に、教育委員会・学校と大学との連携・協働を構想している。
 教職大学院では、「現職教員学生」(現職のまま大学院で学ぶ教員)と「学部新卒学生」(学部から直接大学院に進む学生)が共に学び、時には現職教員学生が学部新卒学生の指導・助言者としての役割を果たすなど、互いに刺激を受けるという効果も見られるという。
● 教員養成については、“学部”での能動的な学修等により、基礎的・基本的な知識・技能や汎用的能力を身に付けたうえで、“大学院レベル”で自ら課題を設定し、学校現場における実践とその省察を通じて、解決に向けた探究的活動を行うという学びを教員自身が経験したうえで、新たな学びを支える指導法を身に付ける必要があるとしている。

教員免許制度の改革の方向性 ~ 「一般」「基礎」「専門」(仮称)の免許制度を創設 ~


1.一般免許状(仮称)
● 「一般免許状(仮称)」授与に係る1年~2年程度の“修士レベル”の課程は、教職大学院、修士課程、またはこれらの内容に類する学修プログラムでの学修を標準としている。
 そして、修士レベルの課程の修業年限については、大学制度との関係を見据えつつ詳細な制度設計の際に更に検討を行う必要があるとしている。
● 修士レベルの養成体制の整備は、教職大学院、教員養成系の修士課程、教員養成系以外の国公私立大の一般の修士課程を対象に今後検討する必要があるという。
 その際、教職大学院、国立教員養成系の修士課程の設置数や入学定員が毎年の教員採用数に比べ、圧倒的に少なく、量的な整備にも留意する必要があるという。
 また、国公私立大の一般の修士課程についても、カリキュラムや指導体制などの大幅な改善が早急に必要であろうとしている。
● 「初任者研修」は、教員養成を修士レベル化することに伴い、法律上の実施義務の在り方などについての検討を求めている。
2.基礎免許状(仮称)
● 「基礎免許状(仮称)」は、“学士課程修了レベル”とされるが、“早期”に「一般免許状(仮称)」の取得が期待されるとしている。
 なお、「基礎免許状(仮称)」取得後、「一般免許状(仮称)」取得までの具体的な“期限”などについては言及されていない。
● カリキュラムについては、「教科に関する専門的理解」を十分身に付けるよう、教科の実際に即した内容とするため、「教科に関する科目」と「教職に関する科目」を架橋する内容の展開を求めている。
 また、「教育実習」を中心に、教員として実践的指導の基礎となる力を身に付けるとともに、「教職実践演習」で学部における学びを総括することを求めている。
3.専門免許状(仮称)
● “一定の経験年数”を有する教員等で、大学院レベルでの教育や、国が実施する研修、教育委員会と大学との連携による研修等により取得する。
 なお、『審議経過報告』(23年1月)では、当免許状の取得対象者に「一定の教職経験(例えば教員経験“10年以上”)を求めることの検討」といった例示が記されていた。
● 学校経営の分野については、管理職への登用条件の一つとすることについて、今後更なる検討が必要としている。
4.一般免許状(仮称)と基礎免許状(仮称)との関係
● 「基礎免許状(仮称)」取得者が、「一般免許状(仮称)」を取得する段階については、“採用”との関係から、次の3つの類型に整理されている。


● 上記③において、「基礎免許状(仮称)」を取得し、教員採用後に「一般免許状(仮称)」を取得する場合、その“期限”については“一定期間”のうちとされ、限定されていない。
 この点について、先の『審議経過報告』では、「“一定期間のうちに「一般免許状(仮称)」の取得を義務付ける”ことや、“「基礎免許状(仮称)」に有効期間を設ける”ことなどについても検討する必要がある」としていた。
5.教員免許更新制との関わり
 「教員免許更新制」については、「10年経験者研修」の法律上の実施義務の在り方との関係を含め、詳細な制度設計の際に更に検討する必要があるとしている。

<改革を進めるうえでの留意事項>


● 教員免許制度の改革は、前述の教員養成の“修士レベル”化と一体をなすものである。
 今後、修士レベル化を進めるに当たり、学部とは異なる修士レベルでの具体的な教育内容・方法や、学部段階での免許状の未取得者への対応など、修士レベルのカリキュラム等について更なる検討が必要であるとしている。
● 教員養成が「学部 + 修士レベル」になることによって、優秀な人材が経済的理由で教員志望を諦めることのないよう、授業料減免や奨学金の活用等による学生の経済的負担の軽減についても留意することを求めている。
● 今後、改革の詳細な制度設計を行うに当たり、学校種や職種の特性に配慮すること、国公私の設置形態に留意することなどが必要であるとしている。例えば、幼稚園教諭については、現職教員の「二種免許状」保有者の割合が7割を超える現状、今後の幼児期の教育・保育の総合的な提供に関する制度設計等の状況を踏まえ、新たな時代における質の担保・向上という観点から適切な制度設計の検討が必要であるという。(図3参照)
 また、中学・高校の教員については、その多くが教員養成を主たる目的としない一般の大学・学部等の出身者であることにも留意する必要があるとしている。(図4参照)

<当面の改善方策>

教員養成の当面の改善方策としては、修士レベル化に向け、修士レベルの課程の質と量の充実、教育委員会と大学との連携・協働による研修の充実など、ステップを踏みながら段階的な取組の推進を提言している。そのうち、主要な取組は、第2期「教育振興基本計画」(25年度~29年度)に盛り込み、計画的に進めるとしている。
 教員養成、採用から初任者段階、現職段階、及び管理職段階の研修等を含めた改善方策の概要は、次のとおりである。

養成段階


1.学部レベル
● 学校現場での体験機会の充実等によるカリキュラムの改善、いじめ等の生徒指導に係る実践力の向上。
● 実習前の学生の質保証の観点から、医師・歯科医師・薬剤師等の養成で実施されている「共用試験」を参考に、教育実習前に学生の知識・技能等を評価する取組の推進。
● 「教職課程認定」の厳格化など、質保証の改革。
● 全ての「課程認定大学」について、教員養成の理念、養成する教員像、教職指導の体制、教員組織、カリキュラム、学生の教員免許状取得状況や教員就職率等、情報の公表を検討。
2.修士レベル
● 24年度現在、教職大学院は20都道府県に25大学(東京都は国立1校、私立4校の計5校。静岡県は国立1校、私立1校の計2校)設置され、入学定員は合計815人である。(表1参照)
 こうした状況下、教職大学院の設置されていない都道府県での設置の推進。
● いじめ・不登校等、生徒指導に係る事例やノウハウの集積など、教育研究の充実。
● 教職大学院で実践的指導を行う「実務家教員」については、学校現場での経験だけでなく、理論化できる基礎的な素養を求めるとともに、現在、必要専任教員の“4割以上”とされている割合を検討する(緩和の方向)。
● 教員養成系の修士課程については、大学院設置基準によって、教科等の専攻ごとに配置される教員数が定められており、そのことが組織の柔軟な見直しや他大学・学部との柔軟な連携、機能分担の支障になっているとの指摘もある。そのため、これを“大括り”化するなど、教員養成機能の充実・強化に資する教育研究体制の構築を見直す。
● 大学院等で取得する専修免許状は、必ずしも実践的指導力の向上に結びついていない。今後は、専修免許状の課程認定を受けている修士課程において、理論と実践の架橋を重視した実習ベースの科目の必修化を推進。
● 学習科学など、学校現場での実践につながる教育学研究の推進。
● 柔軟かつ多様な大学間連携の推進。

採用段階


● 教員採用試験における受験者の大学での学修状況や教育実習の状況の評価への反映、長期インターンシップ時の評価の採用選考方法の研究、改善を図る。
● 理科についての高い指導力を有する小学校教員の確保など、最近の学校現場の課題に対応した選考方法の改善。
● 現職教員の年齢構成上少なくなっている30代、40代の積極的な採用方策など、資質能力を担保した教員の年齢構成の改善。

初任段階


● 修士レベルの教員養成カリキュラムを視野に、教育委員会と大学との連携・協働による初任段階の研修の高度化。
● 初任者研修に加え、採用前研修、2年目、3年目の教員に対する研修など、初任段階の教員を複数年にわたり支援する仕組みの構築。

現職段階及び管理職の段階


1.現職段階
● 教育委員会と大学との連携・協働による現職研修のプログラム化・単位化、及び教員免許更新制における必修領域の内容充実、受講者のニーズに応じた内容設定等の講習の質向上など、改善に向けた必要な見直しの推進。
2.管理職段階
● マネジメント力を身に付けるための管理職としての職能開発のシステム化の推進。

多様な人材の登用


● 社会人、理数系、英語力のある人材など、多様な人材が教職を志す仕組みの検討。
● 博士課程修了者などの人材について、履修証明制度等によって一定の教職専門性を修得したうえでの特別免許状の活用、理科支援員等としての勤務実績の評価などの検討。
● 中学、高校の理科や数学の教員志望の拡大につながるような情報提供等の支援の充実。特に女子学生に対する支援に留意。

グローバル化への対応


● 教職課程を置く大学において、要件を満たせば海外留学の際に取得した単位を教職課程に係る単位として認めるなど、教員志望の学生の海外留学を促進。
● 英語教員志望者に対しては、指導力向上のため海外留学を積極的に推進。採用に当たっては、海外経験が評価されるよう選考方法を工夫。

特別支援教育の専門性向上


● 特別支援学校における教育の質向上の観点から、養成・採用においては、特別支援学校教諭免許状の取得について留意。

学校が魅力ある職場となるための支援


● 教員に優れた人材が得られるよう、教職や学校を魅力ある職業、職場にすることが重要。
● 修士レベル化に伴う教員の給与等の処遇の在り方について検討するとともに、教職員配置、学校の施設、設備など引き続き教育条件の整備を推進。

<「協力者会議」 設置と新規予算要求>
「協力者会議」による改善方策の検討

文科省は24年9月、前述のような教員の資質能力向上に係る「当面の改善方策」を専門的見地から検討する「協力者会議」を設置した。
 協力者会議は、教職大学院や教職課程を有する学部を設置する国公私立大等の関係者及び教育委員会関係者等により構成される。
 検討事項としては、「当面の改善方策」とされた事項に関し、次の3項目が挙げられている。
① 教職大学院のカリキュラムや組織の在り方の検討等、修士レベルの教員養成課程の改善に関すること。
② 専修免許状の改善等、教職課程の質保証等に関すること。
③ その他

25年度新規予算:1億500万円要求 !

文科省は今回の答申に基づく教員の資質能力向上に係る先導的取組支援事業の新規予算として、1億499万3,000円(15機関:9,381万円<1機関=625万4,000円>/事務費:1,118万3,000円)を25年度概算要求に計上した。主な支援取組事項は、次のとおり。
① 実践的な教員養成システムの構築・試行
② 修士レベル化に向けた大学院修了者の採用選考の在り方に関する調査研究
③ 理工系、社会人経験者、障害者など多様な人材の登用の在り方に関する調査研究
④ 初任者研修の単位化・高度化に向けた検討・試行
⑤ 管理職養成カリキュラムの共同開発・試行

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<教員養成の現状>
小・中学校の教員養成を主体とする国立大教員養成課程

国立の教員養成系大学・学部は昭和24(1949)年の新制大学発足と同時に、「各都道府県には教養教育と教員養成目的の学部等をおく」という基本方針の下、全国に設置されてきた。
 しかし、10年ほど前、少子化と教員需要の低下などから、「1県1教員養成系学部体制」の見直しなど再編・統合を含めた国立大教員養成系の組織・体制の抜本的な改革提言『今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について』(文科省懇談会報告:13年11月)が出された。これらの政策提言を踏まえ、国立大の教員養成系学部では改組、再編、定員の見直し等が進められた。
 24年度現在、全国に44大学・44学部(入学定員1万4,720人)の国立教員養成系大学・学部が設置されており、そのうち、単科大は11大学である。また、教員以外の人材育成を目的とする「新課程」(昭和62<1987>年度から設置)の入学定員は、4,037人(上記入学定員の内数)である。なお、国立教員養成系大学・学部の23年3月卒業者の教員就職率(臨時的任用含む)は、62.0%となっている。
 ところで、教員養成機関の新卒者(23年3月卒業)の学校種別の教員免許状の取得状況をみると、国立大教員養成系での取得は小学校教諭免許状が約47%、中学校教諭免許状が約23%、高等学校教諭免許状が約17%で、国立大教員養成系大学・学部は小・中学校教員養成の中核的な役割を担っている。(図4参照)

国立大教員養成系の「一般入試」志願状況

大学(学部)受験生にとって、教員養成系は手堅い資格取得の一つとして従来から位置づけられてきた。ただ、11年度以降の国立大「一般入試」の教員養成系(教育、学校教育、教育地域科学、教育文化など。一部、「新課程」含む)志願者数の動きをみると、16年度まで6万人程度だった志願者数は17年度以降、19年度の約4万6,800人を除き、5万人台前半から半ばで推移している。24年度の志願者数は前年度より1,649人(3.0%)減の5万4,039人で(募集人員は26人、0.2%減の1万1,973人)、2年連続の減少だった。
 これは、教員採用率の低さや採用選考時期の遅さ、学校現場・教職を巡る厳しい実態などの影響とみられる。(図2参照)
 なお、私立大では17年の所謂、教育分野に係る大学の設置等の“抑制撤廃”を受けて教職課程を設置する「課程認定大学」が急増し、学生獲得策の一環として教員免許状の取得を謳う大学もある。ここ数年、私立大の課程認定大学(学部)への入学者数は増加傾向にある。


“修士レベル”化を担う教職大学院

今回の答申で提言された教員養成の「学部 + 修士レベル」の基本的な背景は、教員の“高度専門職業人”としての位置づけである。
 そして、この高度専門職業人を養成する課程(修士レベル)の中核的な役割を担うのが教職大学院である。
◆ 教職大学院の厳しい現状
 教職大学院は20年度に国立15大学(入学定員571人)、私立4大学(同135人)の計19大学(同706人) で開学した。その後、設置が相次ぎ、24年度現在、国立19大学、私立6大学の計25大学(入学定員815人)が全国に設置されている。ただ、私立6大学は東京都4校、千葉県1校、静岡県1校で、首都圏に集中しており、教職大学院の設置地域としては20都道府県に留まる。(表1参照)
 教職大学院の志願・入学状況は厳しく、創設時の20年度の志願者数は944人(志願倍率1.3倍)、合格者数682人、入学者数644人で、「入学定員充足率」は91.2%だった。“入学定員割れ”の理由としては、教育委員会からの現職教員の派遣者数の少なさ、学修内容・成果の理解への不十分さ、修了後のメリットの不明確さ、学生の経済的負担などが挙げられていた。その後、高度な実践力や応用力を育成する意欲的で多様な取組、教育委員会との連携強化、入学定員の見直しなどによって「入学定員充足率」は、一部を除いて改善の方向にあるという。ただ、23年度の「入学定員充足率」は92.4%で、その時点では“入学定員割れ”状態から脱していない。
 ただ、教員就職率は比較的高く、23年3月卒業者の教員就職率(現職教員学生修了者除く。臨時的任用を含む)は90.4%で、国立教員養成系大学・学部の62.0%を大きく上回る。



◆ 教職大学院の全国設置に向けて
 『教員の資質能力の向上方策』答申では、教員養成の修士レベル化を担う教職大学院を全ての都道府県に設置することを提言している。
 しかし、前述のような現状を踏まえるならば、教職大学院の全国設置は容易ではないとみる。設置には、当該地域の大学と教育委員会との連携・協働が不可欠で、国立大が主体となろう。
 また、設置・拡充に当たっては、国としての支援も求められる。当面の改善方策としては、教職大学院の設置・拡充に係る制度の見直しなど、前述の「協力者会議」での検討が期待される。

<教員免許制度の現状>
現行の教員免許制度

現行の教員免許状は、学校種別に区分されており(幼稚園教諭免許状、高等学校教諭免許状など)、中学校及び高等学校では、教科別に区分されている。
 また、各学校種の「普通免許状」は、「専修免許状」(大学院修士課程修了レベル)/「一種免許状」(大学学部<学士>卒業レベル)/「二種免許状」(短期大学卒業レベル:高等学校には二種免許状なし)に区分されている。


教員免許状の取得状況

24年度の教員総数は、約109万9,000人である。学校種別の教員数は、幼稚園=約11万1,000人、小学校=約41万9,000人、中学校=約25万4,000人、高校=約23万7,000人、中等教育学校=約2,000人、特別支援学校=約7万6,000人となっている。
 ところで、教員は「教育職員免許法」で規定されている前述のような教員免許状を有する者でなければならず(=免許状主義)、教員免許状は教員養成系の大学・学部及び教職課程の認定を受けた一般大学(短大含む)・学部等(=開放性)で取得する。
◆ 教員の“所有する免許状”の種類
 幼稚園、小学校、中学校、高校における現職教員(22年度)の“所有する免許状”(普通免許状)の種類構成は、次のとおりである。(図3参照)


・幼稚園=専修免許状(以下、「免許状」を略記):0.5%、一種:22.5%、二種:71.8%/・小学校=専修:3.7%、一種:79.2%、二種:15.1%/・中学校=専修:6.5%、一種:88.5%、二種:4.5%/・高校=専修:22.2%、一種:76.8%、二種:0.4%。
 幼稚園教諭は短大卒程度で取得する「二種免許状」の所有が約72%、小学校教諭は大学(学部)卒程度の「一種免許状」の所有が約79%、中学校教諭は「一種免許状」の所有が約89%、高等学校教諭は「一種免許状」の所有が約77%で、修士課程修了程度で取得する「専修免許状」も約22%に及ぶ。
◆ 新卒者の教員免許状取得状況
 学校種ごとの教員免許状について、教員養成機関における23年3月卒業者の教員免許状の取得状況(免許状を取得した養成機関の構成比率)は、次のようになっている。(図4参照)
● 幼稚園教諭免許状取得者:約3万5,000人=短大約62%、大学学部約38%(公私立大約30%、国立教員養成系約7%など)
● 小学校教諭免許状取得者:約2万人=大学学部約90%(国立教員養成系約47%、公私立大約42%など)、大学院約6%(国立教員養成系約5%など)、 短大約4%
● 中学校教諭免許状取得者:約4万8,000人=大学学部約89%(公私立大約59%、国立教員養成系約23%、国立一般系約7%)、大学院約9%(国立教員養成系、公私立大とも約4%、国立一般系2%)、短大約2%
● 高等学校教諭免許状取得者:約6万1,000人=大学学部約91%(公私立大63%、国立教員養成系約17%、国立一般系約11%)、大学院約10%(公私立大約4%、国立教員養成系、国立一般系とも3%)となっている。
 幼稚園教諭免許状取得者は短大での取得が約6割。小・中・高等学校教諭免許状取得者は、それぞれ9割程度が大学(学部)での取得である。また、小学校は“学級担任制”などから、国立教員養成系での取得が5割近くを占めるのに対し、中学・高校は“教科担任制”であるため、国立教員養成系よりも「公私立大 + 国立大一般系」での取得が多い。


<教員採用の実態>

教員の採用状況について、各都道府県・指定都市教育委員会(以下、県市)が実施している「公立学校教員採用選考試験」(小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、及び養護教諭、栄養教諭)の11年度~23年度までの概要をみてみよう。(図5参照)



● 受験者数:17年度の約16万4,400人まで増加した後、21年度まで増減を繰り返し、ほぼ横ばい状態であった。22年度から増加に転じ、23年度は前年度より約1万1,600人(7.0%)増の約17万8,400人で、17万人台に達している。小学校約5万7,800人、中学校約6万3,100人、高等学校約3万7,600人などとなっている。
● 採用者数:12年度にやや減少した後、13年度に増加に転じて以降、23年度まで増加が続いている。23年度の採用者数は約2万9,600人で、前年度より約2,700人(10.2%)の増加。小学校の採用者数は約1万2,900人で前年度より約600人(4.9%)の増加に転じ、中学校約1,300人(前年度比18.5%)増の約8,000人、高等学校約600人(同14.4%)増の約4,900人など。
 教員の採用者数が増加している背景には、現職教員の年齢構成上、最も多い50歳以上(24年3月末時点で約20万人、全体の35.6%)の高年齢層の大量退職や、教員定数などに対する採用計画があるとみられる。

<教員免許状取得と教員就職率>

教員免許状取得者における教員就職率の低調ぶりは、以前から指摘されてきた。
 例えば、昭和50(1975)年度(免許状授与年度。以下、同)の教員免許状取得者実数(当該年度に課程認定大学を卒業して免許状を取得)は約15万3,000人で、翌51年度の教員採用者数(国公私立の各学校種の教諭・講師等)は約5万3,000人だった(採用年度は免許状授与年度の翌年度)。これは、教員免許状取得者の35%程度しか教職に就いていないことを示している。
 教員免許状取得者の教員就職率の低迷は、平成時代に移っても続いている。17年度の教員免許状取得者実数は約11万8,000人で、翌年度の教員採用者数は、その約34%に当たる約4万人。20年度には、教員免許状取得者実数が約11万1,000人に減り、翌年度の教員採用者数は約4万6,000人に増加したものの、教員就職率は約42%に留まる。
 今後は、教員養成の質保証(課程認定の厳格化、カリキュラムの充実等)を前提としたうえで、教員の需給バランスを見据えつつ、教員養成の規模(教員養成機関の定員、教員免許状取得者数など)と教員就職率とのギャップを如何に解消していくかが課題である。