入試動向分析

2019年 私立大入試 志願者動向分析
 【2019年5月】

“超安全志向”で、昨年難化した難関~準難関校が軒並み志願者減!

2019年私立大入試について、難関私立大の一般入試を中心に、人気度を示す「志願者動向」と、難易変動の指標となる「実質倍率」について見ていく。また、2020年入試の最新情報も紹介する。

※この記事は『螢雪時代・2019年5月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

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合格者絞り込みによる難化への警戒心、公募制推薦の志願者激増などが影響。中堅校(資格系以外)で大幅増が目立つ

2019年私立大一般入試(おもに2月入試)の志願者数は、前年比5%増加した。前年の“合格者絞り込み”による難化が影響し、“超安全志向”の出願となった。公募制推薦の難化で、中堅校の一般入試へ再チャレンジ組が押し寄せた模様。学部系統別では医・薬が減少、「文工高・医療低」ともいうべき志願状況だ。

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一般入試の志願者は5%増。センター利用の増加が顕著

旺文社では、学部学生の募集を行う全国の私立大学(586大学。通信制を除く)に対し、2019年(以下、19年。他年度も同様)の一般入試の志願者数を調査した。3月中旬現在で集計した確定志願者数のデータは「201大学:約333.4万人」にのぼる。この集計は2月に行われた各大学の独自入試(大学が独自の試験問題等で行う入試)とセンター試験(以下、セ試)利用入試を主な対象とし、2月下旬~3月の「後期募集(セ試利用含む)」も集計に一部加えた。
 その結果、私立大一般入試の志願者数は、18年の同時期に比べ約5%増加したことがわかった。今後発表される大学の志願者数を加えても、最終的に私立大の一般入試志願者数は「5%前後の増加」に落ち着きそう(グラフ1)。
 ただし、複数の入試日程・方式等を合計した「延べ志願者数」なので、学内併願などの重複を除いた実質的な志願者数は、見かけほど増えていないものと見られる。
 私立大一般入試の志願状況を方式別に見ると(グラフ2)、大学の独自入試が2%増、セ試利用入試が9%増。また、独自・セ試併用型(独自入試の指定科目と、セ試の高得点または指定科目を合計して判定)も15%増。セ試利用入試を軸に志願者が増えている。
 もともと19年の4(6)年制大学の受験生数は、本誌の推定では18年に比べ微増となる見込みで、志願者が増える素地はあった。ほぼ想定(本誌では「6%程度の増加」と予想)に近い結果で、前年同時期(7%増)ほどではないが、“私立大人気”は続いている。

グラフ1.私立大一般入試志願者数と大学受験生数の推移


前年の合格者絞り込みによる難化を敬遠、公募推薦の難化も影響大

19年入試では、一般入試が行われる前に衝撃が走った。関西を中心に、公募制推薦の志願者が前年比18%増と激増したのだ。
 さらに、一般入試の志願状況をレベル別にみると、首都圏を中心に、難関~準難関校が軒並み減少する一方、中堅上位~中堅校は全国的に増加が目立ち、数年前まで低倍率だった大学で、爆発的に増加するケースさえ見られた。
 志願者増も含め、このような現象が起きた理由として、6つのポイントが挙げられる。

(1)合格者絞り込みによる難化を警戒
 大都市圏の定員規模の大きな大学に対し、16年から「定員管理の厳格化」が始まった。18年入試では、補助金が交付されなくなる定員超過率のラインが、大規模校(収容定員8千人以上)で「17年1.14倍→18年1.10倍」、中規模校(同4千人~8千人)で「17年1.24倍→18年1.20倍」に抑制された結果、正規合格者を大幅に減らして難化する大学が続出。「A判定でも合格できない」という嘆きが随所で聞かれた。
 こうした先輩たちの苦戦を目の当たりにし、19年の受験生マインドは“超安全志向”というべき状態になった。定員超過率は18年と同率に固定されたが、なお合格者絞り込みを警戒し、難関~中堅上位で、前年に正規合格者を減らして難化した大学は軒並み敬遠された。中でも、定員増や志願者増にかかわらず合格者を減らした大学で顕著で、例えば上智大(10%減)は前年の「志願者7%増→合格者16%減」、明治大(7%減)は前年の「定員15%増→合格者7%減」が志願者減の最大要因になったものと見られる。
 一方、確実な合格を目指し、第1志望校を1ランクダウンするとともに、併願校を増やす傾向が強まったが、併願パターンは従来の「チャレンジ校→実力相応校→合格確保校」のバランスをとった「十字型」から、チャレンジ校をやめ、実力相応校と合格確保校を増やす「T字型」に変化した模様。このあたりが、中堅上位~中堅校が大幅に増加し、激戦化した最大要因といえる。

(2)推薦・AO入試の難化
 (1)のような一般入試の難化を警戒するあまり、秋の推薦入試やAO入試に志願者が殺到した。これまで、推薦入試を勧めてこなかった進学校でも「指定校も公募制も、例年の5割増しの希望者がいた」という。しかも、合格者を多めに出せないため(後述)、関西地区を中心に、推薦不合格の“再挑戦組”が2月の一般入試に大量流入した模様だ。
 2月入試が激戦化した結果、セ試利用も含めた3月入試(後期募集)の志願者は11%増となり、伸び率は前年同時期並みの大幅アップとなった。もともと募集人員が少ない3月入試は、さらに高倍率の激戦となっている。
 こうした“負の連鎖”は、“超安全志向”が陥りがちなワナといえる。

(3)21年度「入試改革」も影響?!
 21年度から「入試改革」(論理的思考力・表現力、多面的・総合的な評価、英語4技能などの重視)がスタートする。セ試が廃止され、数学・国語の記述式問題、英語外部検定の併用などの新機軸を盛り込んだ「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)が実施される。
 これに対する過度な意識も、確実に合格を決めたい“超安全志向”に結びついた模様。19年の現役生は「入試改革」と直接関係はない。また、現行の入試と比べ、教科書自体が変わるわけではなく、共通テストの出題教科・科目や出題範囲などもセ試とほぼ変わらないが、英語外部検定利用や調査書等の扱いに関する迷走ぶりなど、報道等で漠然とした不安感を、むしろ保護者が強く感じているようだ。また、浪人すると「後がない」入試として激戦化が予想される20年入試に直面する。その事態を避けるためにも、ランクダウンして併願を増やす“超安全志向”が強まったものと見られる。

(4)セ試の国語と英語リスニングの易化
 19年のセ試では、国語と英語リスニングの平均点が大幅にアップ(=易化)した。文系・理系ともに受ける基幹科目の平均点アップは、受験者の自信につながり、事後出願(セ試の本試験日の後に出願を締め切る)のセ試利用入試の志願者増に結びついた模様。特に、中堅校の2月入試が激戦化したため、セ試利用入試の後期募集の出願増につながったと見られる。

(5)既卒者(浪人)の増加
 センター試験の志願者は1.0%減少したが、既卒者(浪人)が2.6%増と、3年連続で増加した。18年の「合格者絞り込み」の影響で、既卒者がかなり増えた模様。現役生より多く併願するため、志願者増の一因になったといえる。

(6)英語外部検定利用の導入
 一般入試で独自試験やセ試の英語の代わりに、「英語外部検定」を利用できる入試方式を行う大学・学部が増えた。21年「共通テスト」でも英語外部検定が利用されることから関心が高まり、新規に検定利用方式を実施した工学院大・東京電機大などで志願者増の一因となった。ただし、既実施校では前年の反動による減少も見られた。

グラフ2.2016年私立大一般入試 方式別志願状況(201大学:旺文社集計)


社会・国際など文系は全系統で増加。理工系人気復活、医・薬・農が減少

全国6地区ごとの志願動向を見ると(グラフ3)、北海道・東北、北陸・東海、関西、九州の増加に比べ、関東・甲信越の志願者増は比較的小幅。これは、首都圏の難関~準難関校で、18年の合格者絞り込みによる難化に対する反動が強かったのと、19年度から東京23区内で定員増や学部等の増設が原則として不可とされたことが、主な要因だ。一方、北陸・東海、関西、九州では、“超安全志向”と強い地元志向による中堅校の爆発的な増加が、大幅増の要因となっている。なお、北海道・東北では、「私立→公立」化した千歳科学技術大(4月から「公立千歳科学技術大」に名称変更。19年は私立大として入試を実施)の志願者倍増の影響が大きい。
 次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。良好な就職状況を反映し、国際・国際関係・外国語、社会・社会福祉の大幅増など、文系学部の志願者は全体に増加したが、難関~準難関校の敬遠が影響し、法の増加は鈍った。一方、理系学部では理・工、歯の増加が顕著だが、薬が大幅減、農・水畜産・獣医、医も減少、新増設が相次いだ医療・看護も微増に留まるなど、「理系の資格系」が人気低下し、「文工高・医療低」ともいうべき状況だ。
 東京理科大(7%増)をはじめ、千葉工業大(15%増)・工学院大(18%増)・芝浦工業大(11%増)・東京都市大(17%増)・東京電機大(21%増)・大阪工業大(20%増)といった、理工系中心の大学で志願者増が目立ち、情報系技術者の不足などを背景とした工学系人気の復活を印象づけた。一方、医は複数の大学における“不正入試”(合格者の現浪比や男女比などを操作)発覚の影響が志願者減の要因になったものと見られ、志望者の一部が理・工や歯に流出した模様。また、農・水畜産・獣医、薬は、セ試の化学の難化も影響した模様だ。

グラフ3.2016年私立大一般入試 地区別志願状況(201大学:旺文社集計)


中央大以外の「MARCH」は減少、日本大以外の「日東駒専」は増加

ここから、大学ごとの志願状況を見ていこう。表1では、志願者数(大学合計:3月中旬現在)の多い順に、上位20大学を示した。
 15万人台を維持した近畿大をはじめ、昨年に続き、6大学が志願者数10万人を超えた。20位までの志願者の合計は、全体(201大学:約333.4万人)の約50%と半数を占める。
 ただし、表1以外の大学も含め、首都圏や京阪神の難関~中堅上位校で、志願者減が目立つ。
 首都圏では、青山学院大(4%減)・学習院大(6%減)・上智大(10%減)・法政大(6%減)・明治大(7%減)・立教大(4%減)・早稲田大(5%減)など、前年に志願者増ながら合格者を減らした難関~準難関校が、およそ5~10%の範囲で志願者減。慶應義塾大(3%減)も難化したままの高止まりが敬遠された模様だ。増加した大学は、2学部を増設した中央大(5%増)や、東京理科大(7%増)が目立つ程度。
 いわゆる「日東駒専」は、日本大(12%減)が大幅減の一方、駒澤大(9%増)・専修大(23%増)・東洋大(6%増)が増加した。日本大は部活動の不祥事などにより、当初は3割減との予測もあったが、前年に合格者を絞らなかったこともあり、逆に受験生から狙われた模様。それでも、減少分は他大学に流出したと見られる。
 京阪神では、いわゆる「関関同立」のうち、関西大(1%増)のみ微増で、同志社大(8%減)・立命館大(4%減)・関西学院大(8%減)は志願者減。3大学とも、前年の合格者絞り込みが原因で敬遠されたものと見られる。
 一方、いわゆる「産近甲龍」のうち、京都産業大(9%増)・龍谷大(7%増)・甲南大(16%増)は増加したが、志願者1位の近畿大は1%減と、前年までの勢いが止まった。公募制推薦が志願者大幅増(16%増)で難化したため警戒されたのに加え、やはり前年の合格者絞り込みの影響が強かったようだ。
 表2では、志願者1,000人以上の大学について、増加率が高い順に上位20大学を示した。ほとんどが、いわゆる中堅クラスの大学だ。また、18年に志願者が大幅に増加した大学(桜美林大・追手門学院大・大阪経済法科大など)が、その勢いを持続していることも特徴といえる。1位の大阪商業大(278%増)は新方式実施や受験料減額、5位の千歳科学技術大(116%増)は前述の通り「私立→公立」への移行が要因となった。その他の大学も、学部・学科の増設やキャンパス新設といった人気材料はあるが、それだけでは「爆発的」ともいえる志願者増を説明できない。やはり“超安全志向”が、共通する最大の要因といえる。

学部系統別の志願状況


東北学院大・愛知大・西南学院大など、各地域の拠点校が増加

ここまで紹介した以外の大学を中心に、各地区の志願状況(おもに2月入試)を見てみよう。

①首都圏地区
 難関~中堅上位校では、國學院大(19%増)・成蹊大(18%増)・津田塾大(8%増)・東京都市大(17%増)・日本女子大(24%増)・武蔵大(4%増)が増加。一方、国際基督教大(13%減)・成城大(9%減)・東京女子大(3%減)・東京農業大(6%減)・明治学院大(11%減)が減少した。
 中堅グループでは、獨協大(6%増)・亜細亜大(10%増)・東海大(17%増)が増加。一方、国士舘大(13%減)・大東文化大(10%減)・東京経済大(2%減)が減少した。
 いずれも、前年の志願者増減の反動が随所に見られる。また、國學院大は前年の合格者増(3%増)、東海大は英語外部検定利用が可能な入試方式の増加などが要因となった模様だ。


②京阪神地区
 女子大では、京都女子大(4%増)・同志社女子大(2%増)・神戸女学院大(6%増)の志願者増に対し、武庫川女子大は前年並みに留まった。中堅グループでは、追手門学院大(49%増)・大阪経済大(11%増)・大阪工業大(20%増)・摂南大(19%増)・桃山学院大(61%増)・神戸学院大(39%増)など、大幅増が珍しくない中、佛教大(10%減)の志願者減が目につく。


③その他の地区
 北海学園大(12%増)・東北学院大(5%増)・愛知大(5%増)・広島修道大(11%増)・西南学院大(4%増)・福岡大(3%増)と、国公立大との併願が多い各地域の拠点大学で志願者が増加。東北学院大は、前年の易化(志願者3%減・合格者6%増)の反動と見られる。一方で、前年に「絞り込み難化」した中京大(3%減)・南山大(2%減)は志願者が減少した。

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合格者絞り込みは、全体にやや緩和される。早稲田大・京都産業大などが倍率ダウン、龍谷大・甲南大などが倍率アップ

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受験生が注目すべきは、見かけの「志願倍率」よりも「実質倍率」だ。2月入試を中心に、一般入試の受験・合格状況を集計したところ、「受験者6%増、合格者1%増」のため、実質倍率は18年4.1倍→19年4.3倍にアップしたが、ここ数年と異なり、全体に合格者絞り込みはやや緩和された模様だ。


「志願倍率」に惑わされず、「実質倍率」に注目しよう

次に、私立大一般入試の合格状況を見よう。中でも倍率の変化は、「難化・易化」を計る物差しとなる重要データだが、一般的に使われる「倍率」には次の2通りあることに注意したい。

*志願倍率=志願者数÷募集人員=見かけの倍率
*実質倍率=受験者数÷合格者数=実際の倍率


私立大では合格者の入学手続率を考え、一般入試で募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試では10倍程度の合格者を出すのが普通だ。
 グラフ5で関西学院大‐理工の例を見てみよう。一般入試(学部個別日程)の志願倍率は11.4倍だが、合格者(補欠合格を除く)を募集人員の3.2倍出しているので、実質倍率は3.4倍となる。また、セ試利用入試(1月出願)の志願倍率は39.9倍もの超高倍率だが、合格者を募集人員の10.8倍も出しているので、実質倍率は3.7倍におさまった。これなら「とても手が出ない」という倍率ではないだろう。
 見かけの倍率に惑わされることなく、実際の倍率を志望校選びのデータとして活用しよう。


学部系統別の志願状況


受験者6%増、合格者1%増。全体で4.1→4.3に倍率アップ

旺文社が、私立大一般入試(主に2月入試)の受験・合格状況について調査したところ、正規合格者まで発表した100大学の集計(3月中旬現在)では、受験者数(未公表の場合は志願者で代替)の6%増に対し、合格者数は1%増のため(グラフ6)、実質倍率(以下、倍率)は18年4.1倍→19年4.3倍にアップした。
 地区別の集計では、首都圏(5.1倍→5.2倍)、京阪神(4.7倍→5.1倍)、その他の地区(3.0倍→3.1倍)と、いずれも倍率アップしたが、昨年と比べ、合格者絞り込みはやや緩和された。段階的に抑制されてきた、定員規模の大きな大学の入学定員超過率が、今年で固定されたのが要因だが、京阪神を中心に公募制推薦が志願者大幅増で難化したため(後述)、2月入試へ再挑戦組が大量流入し、主に中堅校の倍率アップにつながった模様。ただし、最終的には難関校の追加合格が影響し、倍率はやや緩和されそうだ。



学部系統別の志願状況

以下、おもな大学で倍率が目立って変動したケースを紹介する(*は「志願者÷合格者」、その他は実質倍率。おもに2月入試の集計)。


①倍率アップ 亜細亜大4.6倍→6.1倍*、日本女子大2.7倍→3.5倍、同志社女子大3.9倍→4.6倍、龍谷大4.7倍→5.1倍、摂南大5.2倍→8.3倍、甲南大4.4倍→5.7倍、九州産業大2.0倍→2.5倍


②倍率ダウン 北里大4.1倍→3.7倍、東京農業大3.6倍→3.0倍、早稲田大7.8倍→7.3倍、京都産業大7.9倍→5.6倍、佛教大5.4倍→3.5倍、武庫川女子大4.3倍→3.1倍


このうち、京都産業大では受験者9%増に対し、合格者を52%も増やし、早稲田大でも受験者6%減に対し、合格者を前年並みに出した。この他にも、18年に合格者を絞り込んで難化した大学で、正規合格者を増やすケースが見られた。激戦覚悟で出願した結果、意外な合格を手にした受験者もいたのではないだろうか。
 一方、上智大は「志願者10%減、合格者11%減」で、倍率(志願者÷合格者)は7.1倍のハイレベルのまま。関西学院大も「受験者9%減、合格者8%減」で、4.4倍→4.3倍とわずかな倍率ダウンに留まった。


ボーダーライン付近は激戦。明暗を分ける1点の重み

受験生の中には、ふだん「1点の差」を気にも留めない人がいるだろう。しかし、入試本番では、その「1点」が大切なのだ。
 グラフ7に、関西大学商学部の2月一般入試(学部個別日程と全学部日程の合計)の19年入試結果から、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。受験者7,063人、合格者1,017人で倍率は6.9倍。合格最低点は450点満点で285点(得点率63.3%)だった。
 注目すべきは、最低点を含めた「上10点幅」の部分で、ここに合格者全体の29%が集中する。最低点ぴったりのボーダーライン上にいるのは31人。高校の1クラス分にあたる人数だ。わずか1点差での不合格者も33人(やはりほぼ1クラス分)、10点差以内の不合格者は357人もいる。合格ライン付近は、同じ得点帯の中に、多くの受験生がひしめき合っているのだ。
 たった1つのケアレスミスが命取りになり、合否が入れ替わるのが「入試本番」。ふだんの勉強から解答の見直しを習慣づけよう。


学部系統別の志願状況

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公募制推薦は“驚きの”志願者18%増。特に京阪神で激増、倍率アップも顕著。近畿大・追手門学院大などが難化か

一般入試に先立って行われた「公募制推薦」とAO入試。旺文社の集計では、公募制推薦は「志願者18%増、合格者:前年並み」という、驚きの結果が出た。AO入試も「志願者8%増、合格者3%増」で、ともに倍率アップ。公募制推薦では、近畿大をはじめ、京阪神で志願者大幅増と倍率アップが目立った。

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“超安全志向”の影響が大きく、指定校推薦も志願者8%増

私立大の公募制推薦について、19年入試結果の調査を行ったところ、昨年12月末現在の集計データ(137校:志願者数=約25万3千人)では、前述の通り、前年度に比べ志願者数18%も増加した(グラフ8)。また、指定校推薦の志願者(約9千人:52校)も前年比で8%増えた。
 公募推薦の志願者激増をもたらした最大の要因は、一般入試の合格者絞り込みによる難化を極度に警戒した“超安全志向”だ。「より早く確実に」合格を決めたい意識が強まり、まず指定校推薦の希望者が増え、さらに公募制推薦へ波及。特に学科試験中心で併願可能な推薦が主流の京阪神地区では、私大専願者が殺到した模様だ。一方で、推薦・AO入試におけるインターネット出願と受験料併願割引の普及が、手軽な出願に結びついた面もあろう。
 地区別にみると、推薦志願者全体の8割超を占める京阪神だけでなく、首都圏もその他の地区(東海地区など)も志願者は増加したが、特に京阪神の激増(21%増)が突出している。
 一方、合格者数は全体でほぼ前年並みのため、私立大の公募推薦全体の倍率(ここでは志願者数÷合格者数。AO入試も同じ)は18年3.3倍→19年3.9倍とアップした。大~中規模校で定員超過率の制限が厳しいまま固定されたのに加え、指定校推薦の合格者が増えた分、公募制推薦では合格者を多めに出せなかったようだ。
 地区別に見ると、首都圏(1.9倍→2.1倍)に比べ、京阪神(4.0倍→4.8倍)の倍率大幅アップが目立つ。特に、「志願者16%増、合格者14%減」の近畿大(6.5倍→8.8倍)をはじめ、追手門学院大(3.3倍→7.5倍)・大阪経済大(7.7倍→9.0倍)・摂南大(3.4倍→4.1倍)・神戸学院大(2.8倍→3.9倍)の倍率アップが目立ち、難化した模様だ。一方、佛教大(6.8倍→4.2倍)・武庫川女子大(6.2倍→4.3倍)などで倍率ダウンした。
 学部系統別にみると(グラフ9)、好調な就職事情から、文系学部は軒並み大幅増。一方、理系も理工は大幅に増加したが、医・薬は減少、新増設が多い医療系も微増に留まり、やはり「文工高・医療低」状態に。また、薬は合格者大幅増もあって倍率ダウン、易化したと見られる。

学部系統別の志願状況


AO入試は志願者8%増、合格者3%増でやや倍率アップ

一方、AO入試についても調査を行ったところ、昨年12月末現在の集計(108大学:志願者数=約2万9千人)によると、前年比で「志願者8%増、合格者3%増」で、AO入試全体の倍率は18年2.0倍→19年2.1倍とややアップしたものの、合格者絞り込みは緩やかだった。
 21年「入試改革」(論理的思考力・表現力、主体性、多面的・総合的な評価などを重視した選抜)を先取りする形で、AO入試の導入・拡大が活発化し、志願者増につながった模様だ。
 おもな実施大学(原則として志願者300人以上)を見ると、千葉工業大(2.1倍→2.4倍)・早稲田大(4.0倍→5.1倍)・成城大(4.5倍→6.3倍)・東京都市大(1.8倍→2.6倍)・関西大(3.4倍→4.3倍)などで倍率アップ、金沢医科大(16.9倍→12.6倍)などでダウンした。また、志願者が前年並みの京都産業大・福岡大で、合格者を増やし(京都産業大で8%増、福岡大で11%増)、やや倍率ダウンしたのも注目される。

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20年の私立大入試はここに注目! 国際系や工学系の学部増設・改組が目立つ。専修大‐商が都心回帰のキャンパス移転!

ここからは、20年私立大入試における、3月中旬現在で判明した主な変更点を紹介する。4大学と13専門職大学が新設予定、専修大などの国際系学部増設が注目される。21年「入試改革」を直前に控えるため、一般入試も推薦・AO入試も変更点は少ない。「後がない入試」との意識から、19年以上の“超安全志向”が予想される。

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4大学と13専門職大学が新設予定。北里大‐薬でセ試利用入試を廃止

私立大の20年入試においては、新増設や学部改組はここ数年並みの規模で予定されているが、その他の変更は、推薦・AO入試も一般入試も、前年までに比べ極端に少ない。くわしくは、5月以降に各大学から発表される入試ガイドや案内パンフレットなどで、必ず確認してほしい。


●新設予定大学
 東都学院大(保健医療学部)、湘南鎌倉医療大(看護学部)、名古屋柳城女子大(こども学部)、高知学園大(健康科学部)の4大学が新設予定だ(いずれも仮称)。
●専門職大学の新設予定
 19年に誕生した大学の種類「専門職大学」については、3月中旬現在で、私立では以下の13校が20年の開設を申請中(いずれも仮称)。看護・医療系と情報系が多く、前年開設予定だった専門職大の再申請も目立つ。

保健科学専門職大(医療技術)、東京医療福祉専門職大(医療福祉、看護保健)、東京国際工科専門職大(工科学)、東京専門職大(医療福祉)、i専門職大(ICTイノベーション)、開志専門職大(事業創造、国際観光、ICT高度情報、アニメ・マンガ)、名古屋医療福祉専門職大(医療福祉、看護保健)、藍野専門職大(リハビリテーション)、大阪医療福祉専門職大(医療福祉)、専門職大学 和歌山国際厚生学院(健康科学)、岡山専門職大(健康科学)、国際貢献専門職大(国際貢献)、熊本健康創生専門職大(看護) ※カッコ内は学部名


●学部等の増設・改組
 ここ数年の「看護増設ラッシュ」は落ち着き、国際系、工学系の学部増設・改組が目立つ。
 国際系では、麗澤大‐国際、専修大‐国際コミュニケーション、神奈川大‐国際日本、甲南女子大‐国際などが増設予定。また、中京大の学部改組(国際英語・国際教養の2学部を「国際学部」に統合予定)も注目される。
 工学系では、東北工業大‐建築、明星大‐建築、京都先端科学大‐工、大和大‐理工などが増設予定。また、東京都市大の学部改組(工・知識工の2学部を、理工・建築都市デザイン・情報工の3学部に再編)、龍谷大‐先端理工の開設(理工学部を改組)も注目される。
 この他、文系学部では成蹊大‐経営の増設、西南学院大‐文の「外国語学部」への改組、理系学部では岐阜医療科学大‐薬、摂南大‐農の増設が、志願者増の要因として注目される。
●推薦・AO入試の変更
 中央大‐経済で「高大接続入試」、同‐理工で「高大接続型自己推薦」を新規実施(いずれも自己推薦をリニューアル)。立教大‐社会で自由選抜入試を再開。大阪医科大‐看護でAO「建学の精神」入試を新規実施する。
●一般入試の変更
 北里大‐薬でセ試利用入試を廃止。東京慈恵会医科大‐医(医)で、任意ながら出願書類に英語外部検定結果を追加。大阪医科大‐医の一般前期で研究医枠を廃止する。
●キャンパス移転
 専修大‐商が、生田キャンパス(神奈川県川崎市)から神田キャンパス(東京都千代田区)に移転する予定。ここ数年のトレンドである「都心回帰」として人気を集めそうだ。


21年「入試改革」を過度に意識せず、“超安全志向”のワナを回避しよう

21年「入試改革」を直前に控えている20年入試では、「現行入試のうちに、絶対に合格したい」という意識が強く働き、19年以上の“超安全志向”が予想される。また、19年に目立った志望校のランクダウンで、不本意入学による潜在的な「仮面浪人」も増えたと思われる。
 19年入試の再現さながら、受験機会を増やすために推薦・AO入試に殺到し、一般入試では志望校のランクダウンや、前年の入試結果を極度に意識した出願が予想される。この場合、思わぬ競争激化で苦戦を強いられる可能性が高い。受験生には“超安全志向”のワナに陥らない、冷静な判断が求められる。
 前述の通り、21年「入試改革」は、教科書が変わるわけでも、「共通テスト」の出題範囲・内容がセ試と大きく変わるわけでもない。記述式問題や英語外部検定利用への対応は必要だが、過度に「入試改革」を意識しない方が、冷静な志望校選びができる。一方、難関~準難関校における合格者絞り込みは止まりそうだし、各大学は21年入試の対応に追われているため、入試科目・方式の変更や推薦・AO入試の導入などは例年より少ない。その点は、落ち着いて入試対策に取り組める環境なので、周囲に振り回されず準備を進めてほしい。

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2019年5月号)」より転載いたしました。

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