入試動向分析

2018年度 推薦・AO入試結果速報【2018年4月】

2018(平成30)年度

公募推薦の志願者は、国公立が1%減、私立が6%増。私立が合格者減で難化

 

 2018(以下、18)年度の推薦入試とAO入試の実施結果を『螢雪時代』編集部が調査・集計(17年12月現在)したところ、国公立大のセンター試験を課さない推薦が「志願者1%減、合格者2%減」、私立大公募推薦が「志願者6%増、合格者2%減」。AO入試は「志願者7%増、合格者:前年並み」となった。

 

※この記事は『螢雪時代・2018年4月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 
 

推薦入試(国公立大:センター試験免除)
文系縮小の国立が4%減、公立が1%増

 

 『螢雪時代』編集部では、国公立大のセンター試験(以下、セ試)を課さない推薦(セ試免除推薦)について、18年入試結果の調査を行った。17年12月25日現在(調査締切日)の集計(94校:志願者数=約2万人)では、志願者数は前年比で1%減少(国立大4%減、公立大1%増)した(グラフ1)。
 推薦入試よりもAO入試(しかもセ試を課す方式)に、導入の重点が移った(前年比で、実施学部数は「推薦450→467、AO213→240」、募集人員は「推薦1%増、AO12%増」)こと、国立大で相次いだ学部改組(文系・教員養成系の縮小)、公立2大学の新設などが影響した。
 大学別では、岡山大(7%増)・県立広島大(19%増)・山口県立大(13%増)・長崎県立大(12%増)の志願者増、群馬大(8%減)・富山大(21%減)・香川大(29%減)・埼玉県立大(18%減)・都留文科大(18%減)の志願者減が目立つ。
 一方、合格者数も2%減(国立大3%減、公立大1%減)、倍率(志願者数÷合格者数。以下、同じ)は、国立大が2.5倍で17年とほぼ同様、公立大は2.2倍→2.3倍とややアップした。
 学部系統別にみると、「文系縮小」の影響から、文系学部が志願者減。大都市圏から地方国立大の推薦入試を目指す場合、理系が中心になることもあり、理工、農が増加し、“文低理高”傾向が見られた。さらに、法、教員養成、医療・看護など、文理ともに「資格系」人気が低下した。

 
表2 東京大学「推薦入試」の概要はこうなっている!
 

推薦入試(私立大:公募制推薦)
京阪神で合格者の絞り込みが顕著!

 

 『螢雪時代』では、私立大の公募制推薦の入試結果についても調査した。17年12月25日現在(調査締切日)の集計(140校:志願者数=約21万7千人)では、志願者数は前年比で6%増加した(グラフ2)。また、指定校推薦の志願者(約1万1千人:54校)も前年比6%増加した。
 志願者が増えた要因は、①一般入試の合格者絞り込みを警戒した「より早く確実に」合格を決めたい傾向、②国立大の「文系・教員養成系縮小」と、好調な就職状況による「文系人気」が私立文系に“追い風”となった、③ネット出願が普及し(私立大の約6割が実施)手軽な出願に、④大規模大学の定員増、の4点があげられる。
 地区別にみると、推薦志願者全体の約8割を占める京阪神地区だけでなく、首都圏もその他の地区(東海地区など)も志願者は増加した。大都市圏ごとにおもな大学の志願状況を見ると、次の志願者増減が目立つ。なお、4月から「私立→公立」に移行する諏訪東京理科大では、志願者数が前年の約4.5倍に跳ね上がった。

 
表2 東京大学「推薦入試」の概要はこうなっている!
 

【首都圏】志願者増=法政大29%増・立教大31%増 志願者減=青山学院大11%減・国士舘大10%減・東海大18%減・東京農業大11%減
【京阪神】志願者増=京都産業大23%増・京都橘大22%増・龍谷大12%増・大阪工業大7%増・桃山学院大16%増・甲南大10%増・甲南女子大18%増 志願者減=追手門学院大7%減
【名古屋】志願者増=愛知淑徳大14%増・中京大8%増・中部大8%増 志願者減=名城大7%減
 
 一方、合格者数が全体で2%減少し、私立大の公募推薦全体の倍率は17年3.0倍→18年3.3倍とアップ。首都圏(1.9倍→2.0倍)に比べ、京阪神(3.6倍→4.0倍)の倍率アップが注目される。16年から始まった定員超過率の制限がさらに厳しくなったのに加え、指定校推薦の合格者が増えた分、公募推薦では合格者の絞り込みを、前年より厳しくせざるを得なかったようだ。
 大学別では、京都産業大(3.8倍→5.1倍)・龍谷大(4.6倍→5.7倍)・佛教大(4.7倍→6.8倍)・大阪経済大(5.9倍→7.7倍)・大阪工業大(3.0倍→4.2倍)・近畿大(5.8倍→6.5倍)・武庫川女子大(5.4倍→6.2倍)の倍率アップが目立ち、難化した模様だ。
 学部系統別にみると、好調な就職事情から、文系は軒並み志願者増。一方、理系も理工・看護などで志願者が増加したが、医・薬は志願者減。また、文系全般に合格者絞り込みで倍率アップする一方、農・薬・看護で合格者増、倍率面も含め「文高理低」といえそうだ(グラフ3)。

 
 2017年 私立大公募制推薦入試おもな学部系統の志願者・合格者動向
 

【AO入試】
志願者は国公立9%増、私立7%増

 

 17年12月25日現在の集計(146大学。国公立はセ試を課さないAO。志願者数=約3万1千人)ではAO入試全体で「志願者7%増、合格者:前年並み」と人気が高まった(グラフ4)。
 21年度以降の「入試改革」(論理的思考力・表現力、主体性、多面的・総合的な評価などを重視した選抜)を先取りする形で、AO入試の実施学部・学科や募集枠を拡大する動きが活発化(国立では東北大・香川大など)。これがAO入試の志願者大幅増につながった模様だ。
 国公立大が「志願者・合格者とも9%増」で倍率も3.6倍を保った、一方、私立大は「志願者7%増、合格者1%減」で倍率は1.9倍→2.1倍とアップ。公募推薦と同様、私立大で合格者を抑え目に出す傾向が見られた。
 大学別では、東北大(38%増)・京都工芸繊維大(18%増)・早稲田大(22%増)・京都産業大(17%増)・立命館大(11%増)の志願者増、山口大(9%減)・長野大(18%減)・東海大(7%減)の志願者減が目立った。

 
 2017年 私立大公募制推薦入試おもな学部系統の志願者・合格者動向
 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2018年4月号)」より転載いたしました。

 

このページの先頭へ

記事一覧に戻る