入試動向分析

2016年度 推薦・AO入試結果速報【2016年4月】

2016(平成28)年度

公募推薦の志願者は、国公立が5%減、私立が4%増。経済など文系人気高まる

 

 2016(以下、16)年度の推薦入試とAO入試の実施結果を本誌が調査・集計(15年12月現在)したところ、国公立大のセンター試験を課さない推薦が「志願者5%減、合格者3%減」、私立大公募推薦が「志願者4%増、合格者:前年並み」。AO入試は「志願者6%増、合格者1%増」となった。

 

※この記事は『螢雪時代・2016年4月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 
 

【推薦入試】(国公立大:センター試験免除)
国立の改組とセンター試験を課す方式への移行が影響

 

 『螢雪時代』編集部では、国公立大のセンター試験(以下、セ試)を課さない推薦(セ試免除推薦)について、16年入試結果の調査を行った。15年12月24日現在(調査締切日)の集計(92校:志願者数=約2万1千人)では、志願者数は前年比で5%減。内訳は「国立大6%減、公立大3%減」で、特に国立大の減少が際立った(グラフ①)。
 実施学部数は「セ試を課す推薦183→201、セ試免除推薦348→356」(15年→16年)といずれも増えているが、国立大の相次ぐ学部改組(教員養成系学部における教員養成以外の課程の廃止、文系学部縮小、理系学部拡大)や、北海道教育大‐教育など規模の大きな「セ試免除→課す」方式への移行が、本集計に強く影響した。
 大学別では、宇都宮大(9%増)・宮崎大(26%増)・埼玉県立大(17%増)の志願者増、北海道教育大(68%減)・岩手大(14%減)・群馬大(16%減)・新潟大(17%減)・岡山大(8%減)・都留文科大(8%減)・山口県立大(25%減)の志願者減が目立つ。
 合格者数は3%減(国立大5%減、公立大2%減)、倍率(志願者数÷合格者数。以下同じ)は、国立大が2.5倍で15年と同様だったのに対し、公立大は2.3倍→2.2倍とややダウンした。
 学部系統別では、好調な就職状況から法・経済・文など文系が志願者増。一方、「セ試免除→課す」への移行が多かった理工、教員養成以外の課程廃止が相次いだ教員養成系は減少した。

 
表2 東京大学「推薦入試」の概要はこうなっている!
 

【推薦入試】(私立大:公募制推薦)
首都圏・京阪神とも合格者絞り込みが顕著

 

 『螢雪時代』編集部では、私立大の公募制推薦の入試結果についても調査した。15年12月24日現在の集計(142校:志願者数=約19万9千人)では、志願者数は前年比で4%増加した(グラフ②)。大学受験生数の減少(0.6%減:本誌推定)にもかかわらず志願者が増えた要因は、①私立大専願者の「より早く確実に」合格を決めたい傾向、②国公立大の改組(文系縮小)が、受験生の”文系回帰”の志望動向とミスマッチを起こし、私立文系に”追い風”となった、の2点があげられる。
 地区別にみると、首都圏も、推薦志願者全体の8割近くを占める京阪神地区も、ほぼ同程度増加し、その他の地区(東海地区など)はほぼ前年並みだった。大都市圏ごとにおもな大学の志願状況を見ると、次の志願者増減が目立つ。

 
表3 京都大学「特色入試」の概要はこうなっている!
 

【首都圏】志願者増=青山学院大29%増・亜細亜大58%増・法政大13%増・立教大7%増・早稲田大11%増 志願者減=国士舘大6%減・東海大22%減・東京農業大15%減【京阪神】志願者増=京都産業大9%増・龍谷大8%増・追手門学院大9%増・大阪経済大6%増・大阪工業大12%増・近畿大6%増・桃山学院大20%増・武庫川女子大19%増 志願者減=京都女子大6%減・同志社女子大6%減・摂南大6%減・甲南女子大7%減【名古屋】志願者増=愛知大12%増・愛知学院大16%増 志願者減=愛知淑徳大16%減
 
 一方、合格者数は全体で前年並みに留まり、私立大の公募推薦全体の倍率は15年2.9倍→16年3.0倍とややアップ。地区別にみても、首都圏(1.8倍→1.9倍)、京阪神(3.5倍→3.7倍)ともにアップした。今年(16年)度から段階的に、大都市圏の定員規模の大きな大学では、定員超過率が厳しく抑制される。このため、首都圏では法政大・早稲田大、京阪神では京都産業大・龍谷大などが、志願者増でも合格者を減らしており、倍率面を見る限りやや難化したといえる。
 大学別では、法政大(2.7倍→3.1倍)・早稲田大(3.6倍→4.0倍)・京都産業大(3.4倍→4.0倍)・龍谷大(4.0倍→5.5倍)・桃山学院大(2.5倍→4.5倍)・武庫川女子大(5.0倍→5.9倍)の倍率アップ、愛知淑徳大(2.7倍→1.8倍)・摂南大(3.9倍→3.4倍)の倍率ダウンが目立つ。
 学部系統別にみると、国公立と同じく就職事情の好調さを受け、経済系、国際関係・外国語の志願者増が顕著だ。一方、理系では理工の高人気が続いているが、薬は志願者大幅減。この他、法・経済の合格者絞り込みによる倍率アップ(=難化)も注目される(グラフ③)。

 
表3 京都大学「特色入試」の概要はこうなっている!
 

【AO入試】
志願者は国公立4%増、私立6%増

 

 16年度は、20年度以降に始まる予定の「入試改革」(セ試に代わる「1点刻み」でない共通テストの導入、多面的・総合的な評価を重視した選抜など)を先取りする形で、東京大・京都大など、推薦・AO入試を導入・拡大する動きが活発化。これが国公立・私立ともに、AO入試の人気回復にもつながった模様だ。
 15年12月24日現在の集計(139大学。国公立はセ試を課さないAO。志願者数=約2万7千人)では、AO入試全体で「志願者6%増、合格者1%増」と人気が高まった(グラフ④)。
 国公立大が「志願者4%増、合格者3%増」で倍率は3.5倍と前年並み、私立大が「志願者6%増、合格者1%増」で倍率は1.7倍→1.8倍とややアップ。公募制推薦と同様、私立大でやや合格者を絞り込む傾向が見られた。
 大学別では、東北大(2.9倍→3.3倍)・東北学院大(1.4倍→2.1倍)・早稲田大(3.1倍→3.6倍)の倍率アップ、京都工芸繊維大(8.7倍→7.6倍)・山口大(4.6倍→3.5倍)・福岡大(3.9倍→3.6倍)の倍率ダウンが目立った。

 
表3 京都大学「特色入試」の概要はこうなっている!
 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2016年4月号)」より転載いたしました。

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