入試動向分析

2016年一般入試 合格ライン突破対策【2016年1月】

2015(平成27)年度

得意科目を最大限に生かす戦略で、粘り強く合格ラインをクリア!

 

 合格するのに満点は必要なく、合格ラインをクリアすればいい。センター試験、国公立大2次試験、難関私立大入試それぞれについて、合格ラインを突破するための効率的なプランを紹介する。

 

※この記事は『螢雪時代・2016年1月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

センター試験では得点率70%を、国公立大2次試験は50~60%を、難関私立大では60~70%を確保!

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 最難関の医学系で得点率80%以上、その他の学部系統で60~70%台とされる合格ラインを上回るには、得意科目で高得点をかせぎ、不得意科目はなるべく失点を避ける、自分の強みを最大限に生かした効率的な戦略が必要だ。さらに「解ける問題を優先」「部分点狙い」で、冷静に粘り強く合格ラインを突破しよう。

 
 

総合点の「合格ライン」のクリアを目標にしよう

 

 センター試験、そして一般入試の本番を直前に控え、「どれくらい点を取れば合格できるのか」と不安なことだろう。そこで目安となるのが、各大学が案内パンフレットやホームページで発表している「合格最低点」だ。
 入試の合否は、たいてい「総合得点」で決まる(例外的に、受験科目中の特定科目の成績順位で決まるケースもある)。総合得点とは、受験した全ての教科・科目の合計得点だ。国公立大ならばセンター試験(5または6教科が主)と2次の個別試験(2~3教科が主)の合計得点、私立大ならば2~3教科の合計得点ということになる。
 合格最低点は、合格者のうち順位が最下位の人の得点だ。発表方法は、大学・学部によって素点(選択科目は得点調整後の場合も)だったり、得点率(合格最低点÷満点)だったりするので、「合格ライン」「ボーダーライン」とも呼ばれる。合格するには、とにかくこのラインを上回ればいい。特待生を狙わない限り、満点でも合格最低点でも、合格に変わりはない。
 もちろん、年ごとの入試問題の難易や倍率の変動、科目数や配点の変更などによって、合格最低点も上下する。それでも、具体的な合格者像をイメージできる、最も現実的な目安であることは確かだ。特に今年(2016年)は、新課程入試初年度で数学・理科の出題科目や範囲が大幅に変わった2015年(以下、15年)入試の合格ラインを参考にしよう。

 
 

私立大一般入試は、「8・7・6」パターンで60%~70%台を確保

 

 合格ラインについて、まず私立大一般入試(各大学の独自入試:2月実施)のケースを見てみよう。難関私立大の15年入試結果をみると、合格者増による倍率低下が目立ったが、それでも厳しい競争だったことに変わりはない。
 図1に、龍谷大‐経済(A日程:文系型スタンダード方式)の15年入試で、合格ライン付近の人数分布を示した。同方式の科目・配点は「英語」「国語」「世界史、日本史、政治・経済、数学から1」の3科目で各100点、計300点。受験者数2,052人に対し合格者数460人で、実質倍率は4.5倍。合格最低点は213点(得点率71.0%)だった。その分布状況を見ると、
 
(1)合格最低点を含め、上10点幅のゾーンに157人と、全合格者の約34%が集中している。
(2)不合格者の最高点(212点)を含め、下10点幅のゾーンに208人もいる。
(3)合格最低点で合格したのは15人、1点差での不合格者も16 人いる。
 
 合格ライン付近では、総合的にほぼ同じ学力の受験生がひしめきあい、わずか1点差で合否が決まる。では、“1点差”を争う合格ラインを、どうやって突破するのか? 図1の右側に、合格最低点とその1点下の受験者から、特徴のある得点パターンをピックアップした。ここからわかるのは、「得意科目」の大切さと、「苦手科目」克服の必要性だ。
 3科目入試では、1科目で得点が伸びなくても他の科目でカバーできることが多い。AさんやBさんのように絶対的な得意科目があれば、他の2科目が普通、または1科目だけやや苦手であっても、失点をカバーできるので心強い。ただし、CさんやDさんのように苦手科目の失点が大きすぎると、カバーしきれず1点差に泣くことになる。得意科目での優位を生かすには、苦手科目でも6割以上の得点はほしい。
 私立大一般入試で、合格ライン(7割台)をクリアするためには、Bさんのパターンに近い「8・7・6」パターン、つまり得意科目(8割台)、準得意科目(7割台)を持ち、残り1科目は普通(6割台)をキープすることを目標にしよう。

 
図1 龍谷大-経営(A日程)スタンダード方式文系型 合格ライン付近の合否状況
 

難関私立大のセンター利用は80%台の確保が必要

 

 総合点でどれくらい取れば合格できるのか、難関私立大の15年一般入試(センター利用を除く)の合格ライン(得点率)をもう少し見てみよう。表1の早稲田大(一般入試)では、文系が60%~70%、理系は50%~60%台前半に合格ラインが分布。また、表2の関西学院大(全学日程)でも、文系が60%台前半~70%、理系が50%前半~後半に合格ラインが分布している。さらに、他大学の合格ラインをみると、ほぼ「文系=60%台前半~70%、理系=50%台前半~70%」に分布していることが多い。ただし、近年は理系受験生がレベルアップし、文系・理系の差は縮まっている。
 一方、難関私立大のセンター試験利用入試では、標準的な3教科型の場合、合格ラインは文系・理系とも70%台後半~80%台と、一般入試に比べかなり高い。合格者を募集人員の10倍程度出すケースも珍しくないセンター利用だが、それでも相当な高得点が必要なのだ。

 
表1 2014年入試/早稲田大(一般入試)の合格ライン、表2 2014年入試/関西学院大(学部個別日程)の合格最低点
 

●特定科目に“基準点”を設ける大学に注意

 

 一般入試で7割台をとるなら「“9・8・4”や“9・9・3”でもよいのでは?」と考える人もいるだろう。ところが、特定科目の得点が一定点に達しない場合、他の科目も含め選考の対象にしない“基準点”を設ける大学・学部がある。
 慶應義塾大‐法では、外国語と地歴の合計点、および地歴の得点が一定の点数に達した受験生だけ「論述力試験」を採点し、その結果を加えて合否を決定する。早稲田大‐教育では、国語国文学科が「国語」、英語英文学科が「英語」、数学科は「数学」について、それぞれの全受験者の平均点を合格基準点としている。また、同志社大‐法・経済で英語(200点満点)に「80点」、関西大‐法も各科目に「配点(素点)の20%」の基準点を設けている。
 基準点は、「特定科目の全受験者の平均点」「配点の4割」とするのが一般的だ。募集要項で必ず確認しておくとともに、苦手科目でもそれ以上を得点できるようにしておこう。

 
 

●得点調整で選択科目間の有利・不利を解消

 

 受験生にとって不安なのは「選択科目」の扱いだ。文系は「地歴・公民・数学から1科目」、理系は理科で「物理・化学・生物から1科目」選択することが多いため、科目の難易で有利・不利が生じ、得点に較差が出てくるからだ。
 ただし、多くの大学・学部では、偏差値(得点を「平均が50、標準偏差10の正規分布での値」に換算したもの)や中央値補正法(成績順で中央に位置する人の得点を、その科目の満点の5割となるように全体を補正)などを用いて調整する。偏差値を用いれば満点が異なっても、ほぼ「30~70の値」に換算できる。
 15年入試の例を見ると、関西学院大では選択科目(学部によっては全科目)で中央値補正法によって得点調整を行い、青山学院大や同志社大も全学部の選択科目の間で得点調整を実施した。慶應義塾大‐文・法・商は「地理歴史」間で、看護医療は選択科目(数学・化学・生物)の間で得点を補正。早稲田大でも理工系3学部以外の10学部で選択科目間の得点調整を行い、表1の合格最低点は調整後のものだ。

 
 

「6・6・6・8・9」パターンで、センター試験は70%台を確保

 

 次は国公立大について説明する。まず、センター試験でどの程度得点すればいいのか?
 センター試験の受験者全体の平均点は、例年ほぼ60%前後。これは、問題レベルが「学習の達成度を見る」ため、教科書(章の練習問題など)の範囲で、受験者平均が60%程度となるように作られるからだ。ちなみに、15年センター試験の受験者平均点(各科目の平均点と受験者数から全体の平均点を算出)は、5教科6科目(地歴・公民あわせて1教科1科目として100点、理科1科目として100点)の800点満点で465.2点(得点率58.2%)。14年より3.3点アップし、得点率としては60%に近い。
 次に、国公立大の15年入試データで、センター試験の合格最低点の得点率を見てみよう。表3の金沢大(前期)では、文系と理工系はほぼ60%台前半~70%、医学類を含む医療系は医が80%超、他が60%台前半~70%台前半。表4の岡山大(前期)では、文系と理工農系は60%台前半~70%台前半、医療系は60%台後半~70%台前半が多く、医学部医学科の83.9%、薬学部薬学科の82.7%が飛びぬけて高い。他大学を見ても、センター試験の合格ラインは、医・薬や超難関校の80%台を除くと、全体的に60~70%台が多い。
 センター試験の得点目標を7割とすると、5(6)教科とも均一に70%台を取れればいいが、科目数が多い上に、得意・不得意があるから、そうはいかないのが普通だ。
 そこで、5教科(ここでは地歴・公民をあわせて1教科)の得点割合を「6・6・6・8・9」と設定し、「3教科は受験者平均並みの60%台、準得意教科は80%台、得意教科は90%台」で平均70%台を確保しよう。志望校が傾斜配点(特定教科の比率を高める)で、得意教科の配点が他教科より高ければ、さらに有効だ。

 
表3 2014年入試/金沢大(前期日程)の合格ライン
 
表4 2014 年入試/岡山大(前期日程)の合格ライン
 

国公立大の2次試験は50~60%台を確保しよう

 
図2 2014年入試/東北大(前期)センター試験・2次試験 合格者平均得点率の比較

 国公立大2次試験は記述式の2~3教科が主流なので、基本的には私立大と同様に考えよう。
 まず、総合点(センター・2次合計)の合格ラインを見ていこう。表3の金沢大(前期)をみると、文系と理工系は50%台後半~60%台前半、医療系は60%台前半~70%の範囲に分布し、医学科は80%に迫る。さらに、表4の岡山大(前期)や、大阪市立大・神戸大・九州大・熊本大などの前期の合格ラインをみると、「文系・理工農系・医療系60~70%程度、医は80%程度」と、ほぼ共通した傾向を示す。私立大と同様、理系受験生のレベルアップにより、文系・理系の差はなくなっている。
 次に、2次の合格最低点を見てみよう。金沢大・岡山大とも、意外と低い学部・学科もあるが、その場合はセンター試験でかなり高得点を取らないと、総合点の合格ラインに届かない。
 例えば、金沢大‐電子情報学類(前期)の2次の合格最低点は191.6点(43.5%)だが、総合では528.5点(59.4%)なので、センターで336.9点(74.9%)も必要だ(合格者平均は72.8%)。また、岡山大‐法[昼](前期)の2次の合格最低点は384.0点(48.0%)だが、総合では1062.0点(62.5%)なので、やはりセンターで678.0点(75.3%)が必要だ(合格者平均は72.5%)。
 受験生、とりわけ現役生の学力は入試直前で大きく伸びる。配点にもよるが、なるべく医学部志望者は「センター9割+2次7割」で総合点8割台を、それ以外は「センター7~8割+2次5~6割」で総合点7割台を確実に得点し、無理なく合格ラインをクリアしたいところだ。
 東北大の前期における各学部(学科・専攻)の、センター・2次それぞれの合格者平均得点率を見ると(図2)、医(医)のみ「センター87.6%、2次76.9%」と突出しているが、その他はセンター試験がほぼ75%~85%の範囲であるのに対し、2次は55%~65%の範囲に留まる。
 ただし、センター試験の8割はともかく、2次で6割を得点するのは容易ではない。センターより難度が高いことが多く、特に数学・理科は記述式で計算量も多いので得点しにくい。しかも各大学の個別試験だから、それぞれの個性が強く出る。過去問(特に新課程初年度の15年入試の数学・理科)を徹底研究し、出題傾向を把握しておくことが、合格ライン突破のカギを握っていることに変わりはない。

 
 

入試本番では「捨てて勝つ」戦術でリズムに乗ろう

 

 合格ラインを突破する得点パターンが決まったら、入試本番ではその戦略に沿って問題を解いていこう。問題用紙が配られたら、まず全問を見渡す。第1問から順番に解くのではなく、解けそうな問題から着手し、リズムに乗ろう。この方法は全教科に共通するが、特に数学や、物理・化学など理科系科目では重要だ。その際、次の手順を忘れないこと。

 

①全問に目を通す(読むのではない)。
②問題ごとに、「解けそうだ」=○、「いけるかな」=△、「無理かも」=×、と印をつける。
③○から先に解く(問題番号順とは限らない)。

 

 ×には手を付けず、まず○から始め、次は△へ……という順に、集中的に解く。1題解けると落ち着き、次の○や△もふだん通りに解けることが多い。何よりも大切なのは「時間配分」。難問にてこずり貴重な解答時間を浪費するより、○や△を優先して時間をかけよう。
 数学で、○や△が完全に解けない場合は、とにかく小問(1)だけを解こう。例えば、大問が小問2つで構成されていれば、(1)は教科書にある基本的な問題解法で解けるように作成してあり、(2)は(1)の結果を利用すれば解けるようになっているケースが多い。また、×の問題にも比較的易しい小問が用意されていることがあり、各大問のうち小問(1)だけを解くだけで、全体の得点の3~4割近くを取れる。あきらめずコツコツ部分点をかせぐことが、合格ライン際の1点差を制することにつながるのだ。
 以上の「捨てて勝つ」戦術は、ふだんの過去問演習の時に、指定時間内に解くことを強く意識し、手順をしっかり身に付けよう。時間内で、各年度の合格ラインを常に超えられるようになれば、本番でも冷静に対処できるはずだ。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2016年1月号)」より転載いたしました。

 

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