入試動向分析

2010年 国公立大入試 志願者動向分析
 【2010年4月】

不況と「数I・Aショック」で慎重出願。準難関校が人気復活、公立大で激戦続く!

「あの大学の、こんな学部に入りたい……」
 大学入試を突破するには、そのしくみを知ることからスタートしよう。今月は、キミが目標とする国公立大の2010年入試について、人気度を示す「志願者動向」を分析。さらに、キミが受験する2011年入試の最新情報もお届けする。「基礎力」をしっかり身につけ、不況に負けず、第1志望校に合格しよう!

※この記事は『螢雪時代・2010年4月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

経済不況で“国公立大志向”、センター試験の平均点ダウンで“安全志向”が強まる。
1ランク落とした出願に

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国公立大の志願者数は前年比3%増で、志願倍率(志願者数÷募集人員)は4.8倍→4.9倍とアップした。深刻化する不況で“国公立大志向”が、センター試験(以下、セ試)平均点の2年連続ダウンの影響で“安全志向”が強まり、1ランク落とした慎重な出願傾向がみられた。



志願者数は3%増、志願倍率は
4.8倍→4.9倍にアップ

大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移文部科学省(以下、文科省)の発表によると、2010年(以下、10年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は489,275人で、09年に比べ3.0%増(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大・新見公立大は集計に含まれない)。そして、全募集人員(100,012人)に対する倍率(志願倍率)は4.9倍と、09年より0.1ポイントアップ(グラフ(1))した。
   入試日程別に志願状況(グラフ(2))と志願倍率の変化(09年→10年)をみると、前期は「4.6%増:3.2倍→3.3倍」、後期は「1.1%増: 9.8倍→10.1倍」、公立大中期は「2.6%増:13.2倍→13.7倍」といずれも志願者が増え、志願倍率もアップしている。
   『螢雪時代』の推定では、4(6)年制大学の受験生数が8年ぶりに増えた(1.6%増)。また、セ試の受験者数も増え(504,387人→507,621人:0.6%増)、基本ベースが拡大しているとはいえ、国公立大の志願者はそれを上回る増加ぶりで、03年以来7年ぶりの増加となった。



2次試験の日程は3種類募集枠は
ほぼ前期8:後期2

国公立大の一般入試では、まずセ試を受験した後、自己採点を行い、全国集計データなどを参考に、2月上旬までに各大学の2次試験(個別試験)に出願する。2次試験は原則として、各学部の募集人員を前期・後期日程に分割して行われ(分離分割方式)、その比率はほぼ「前期8:後期2」。前期の割合が年々高まっている。また、公立大の一部で公立大中期日程を行う。

大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移    2次試験への出願は、試験日程の組み合せにより、
(1)前期→後期、
(2)前期→公立大中期、
(3)前期→公立大中期→後期、
(4)公立大中期→後期

の4通りの併願パターンがある。ただし、前期日程試験に合格し、入学手続をした人は、後期・公立大中期を受験しても合格者とはならない。このため、第1志望校は前期から選ぶのが基本となる。なお、指定された志願倍率を超えた場合、セ試の得点で2次試験の受験者を絞り込む「2段階選抜」を行う大学・学部もある。
   こうした一般入試に先立って、AO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試が行われる。いずれも、「セ試を課さない」「セ試を課す」の2種類あり、後者が徐々に増えている。



セ試では国語、数学I・A、物理、化学が難化。
理系志望者に打撃

2008年 大学入試センター試験 科目別平均点10年国公立大入試に大きな影響を与えた要素は、「セ試の難化」と「深刻化する不況」だ。


(1)センター試験の平均点ダウン
   国公立大の志願動向に最も大きく影響するのは、セ試の平均点のアップ(=易化)・ダウン(=難化)だ。10年のセ試は09年に比べ平均点がダウンした。08年から2年連続の難化である。科目別にみると(表1)、文系・理系ともに受ける数学I・A、国語や、物理I、化学I、政治・経済が大幅ダウン。一方、数学II・B、生物I、英語リスニングなどでアップした。
   特に数学I・A(-15.0点)は、セ試開始以来はじめて50点を割り込む難化ぶりで、文系・理系ともに「数学I・Aショック」ともいえる痛手を与えた。しかも、学力上位層より、その次に位置する学力層が打撃を受けたという。

   国公立大がセ試で課すのは、文系で「地歴・公民各必須」の6教科7科目、理系で「理科2科目」の5教科7科目(いずれも数学は2科目受験で900点満点)が標準的だ。文系・理系ごとに、各科目の平均点と受験者数から5(6)教科7科目合計の平均点を算出(加重平均)した。
● 文系標準型=513.1点(14.8点ダウン)
● 理系標準型=509.1点(22.0点ダウン)
   と、いずれも大幅ダウンしたが、理系がより強く“逆風”を受けたことがわかる。これは、理系志望者が多く選択する科目(政治・経済、物理I、化学Iなど)に平均点ダウンが目立ち、文系志望者が多く選択する科目(日本史B、生物Iなど)に平均点アップが目立ったためだ。


(2)不況の影響が強まる
   深刻化する不況は、09年以上に受験生の志願動向に影響した。保護者の経済事情の悪化に伴い、「少しでも学費を安く」との意識から、“国公立大志向”が強まった。セ試の7科目受験者の増加(7.4%増)も、国公立大志望者の増加をうかがわせる。また、「生活費を考えると地元に残りたい」「浪人できない」という意識が働き、それぞれ“地元志向”“安全志向”に結びついた。さらにセ試の難化もあり、全体的に1ランク落とした出願傾向がみられた。
   09年と違うのは、募集人員減(09年20,315人→10年19,938人:2%減)にもかかわらず、後期の志願者が増えたこと。昨年(4%減)は最初から後期の出願をあきらめる「後期離れ」がみられたのと対照的だ。とはいえ、募集枠縮小で難化が続く後期では、前期以上に慎重な出願に走ったようだ。ある高校の進路指導の先生によると「後期の場合、従来は自己採点でB判定以下でも出願していたが、今年はA判定の大学でないと出願しない傾向があった」という。「どうしても確実に国公立大へ」と粘らざるを得ない、厳しい受験環境が読み取れる。

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東京学芸大・大阪教育大など、教員養成系が志願者大幅増!
千葉大・金沢大・広島大など、“準難関校”も人気集める

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学部系統別では、教員養成・看護・生活科学の志願者大幅増が目立ち、法・経済・文・工も堅調。3年連続定員増の医は、志願倍率がダウンした。千葉大・金沢大・広島大など“準難関校”で志願者が増加し、公立大も人気を集めた。



北海道・東北と関西が1%増、
他の4地区は4%増

2010年国公立入試 全国6地区ごとの全体的な志願動向(グラフ(3))を見ていこう(以下、《前》は前期、《後》は後期、《中》は公立大中期の略)。全地区で増加したが、関東・甲信越など4地区の4%増に対し、北海道・東北と関西は1%増と全国平均を下回った。

関西の場合、他地区(特に北陸・東海地区)からの流入が減少し、逆に合格可能性を考えて中国・四国の中堅校へ流出した模様だ(例:神戸大・大阪市立大→鳥取大・愛媛大・高知大の志望変更)。また、北海道・東北の場合、地元の就職事情が悪化する中、まだしも就職機会のある首都圏の国立大(埼玉大・千葉大・横浜国立大など)を目指し、積極的に進出した模様だ。

大都市圏でも、おもに理工系で周辺地区の国立大への進出が見られる。福井大‐工《前》では名古屋会場の志願者が増加(276人→327人)。また、山梨大‐工《前》、信州大‐工《前》の増加は、首都圏(東京農工大‐工や横浜国立大‐工など)からの志望変更をうかがわせる。地元志向は強いものの、「どうしても現役で国公立大へ」との制約から、周辺地区まで視野に入れてランクダウンせざるを得ない現実を物語っている。

各地区のおもな大学に関する分析は、月刊誌「螢雪時代・4月号」の『螢雪ジャーナル』記事をお読みいただきたい。



看護をはじめ全般的に志願者増、
3年連続定員増の医は倍率ダウン

次に、学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ(4))。教員養成、医療・看護、家政・生活科学の人気アップが目立つ。

不況に伴う就職事情の悪化で、「資格志向」が強まったようだ。特に、教員養成課程を拡大(前期421人→516人、後期90人→125人)した東京学芸大(12%増)をはじめ、愛知教育大(12%増)・大阪教育大(32%増)・福岡教育大(22%増)・都留文科大(23%増)など、教員養成系単科大の志願者大幅増が注目される。大都市圏における教員採用率の好調さに加え、教員養成課程の「6年制化」も論議される中、駆け込み出願もあったのでは? と推測される。

この他、法、経済、理、工など満遍なく人気アップ。セ試で理工系の必須科目である「物理・化学」の2科目受験者が5.2%増えたことも、「理工系人気」の堅調ぶりを物語っている。

一方、社会・社会福祉、薬はやや志願者減。また、医師不足解消へ向け定員増(国公立は09年420人増→10年290人増)を行った医では、一般入試の募集人員が4%増えたが、志願者は1%増に留まり、志願倍率は7.9倍→7.2倍にダウンした。定員増加分の多くが地域枠(出願資格を地元出身者に限定)や地域医療枠(卒業後の一定期間の地元勤務を条件に奨学金を支給)に充てられたのに加え、セ試の難化で、医学部にぎりぎり手が届く学力層の一部が、歯・工などへ志望変更したとみられる。

2010年国公立大入試


「前年の反動」や入試科目
・募集人員の変更は要注意

10年の大学・学部別の志願状況を見るためには、次の5つのポイントを押さえておこう。

(1)前年度の倍率アップダウンの反動
   受験生が気にするのは、やはり前年度の倍率。高倍率や倍率アップなら敬遠、低倍率や倍率ダウンなら人気を集めがちで、「前年度の反動」や「隔年現象」が起きやすい。

(2)入試科目の変更、科目数の増減
   入試科目数が増えると志願者減、減ると志願者増に結びつく傾向がある。
   また、2次が小論文や面接の場合、対策の立てにくさから敬遠され、学科試験のみの大学・学部が人気アップする傾向がある。

(3)セ試:2次の配点ウェート
   セ試の平均点ダウンの影響で、2次の配点ウェートが高い(全配点の50%以上を占めるような)学部・学科に、セ試で思うように得点できなかった受験生が、2次逆転を狙って流入するケースが増えた。

(4)募集人員の変更
   後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の定員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。推薦・AOの募集枠拡大で、一般入試の募集人員が減る場合も、志願者が減ることが多い。

(5)地区内の「玉突き」
   志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。


わかりやすい例として、岐阜大‐工と徳島大‐医(医)のケースを紹介しよう。

事例1 岐阜大‐工
   募集人員を「前期366人→297人、後期57人→126人」と後期に移した(→(4))。さらに、後期の入試科目を変更、セ試を7→5科目に軽減(数・理各2→1科目選択に)する一方、2次試験(数学・理科)を新たに課し(→(2))、「セ試400点:2次1200点」と2次重視の配点比率にした(→(3))。
   結果として、セ試で平均点ダウンした数学I・Aと化学Iの影響が弱まり、2次逆転が可能になったこともあり、志願者数は前年の約7倍に膨れ上がった。この影響で、周辺の三重大‐工《後》(67%減)、福井大‐工《後》(38%減)では、志願者が大幅に減少した(→(5))。

事例2 徳島大‐医(医)
   前期でセ試の理科を3→2科目に軽減(→(2))、09年の志願者大幅減(34%減。セ試の理科を2→3科目に増加)の反動もあり(→(1))、志願者は前年比62%も増加した。この影響で、周辺の香川大‐医(医)《前》が28%減、高知大‐医(医)《前》が31%減と大幅に減少した(→(5))。



準難関校が人気復活、志願者
大幅増の公立大が続出

医学部医学科の志望者はどう動いたか?表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧表にした。従来から人気が高く、募集人員も多い難関校や“準難関校”が連なる。

   1位は大阪大で、09年の反動もあって志願者は2%増、特に外国語《後》の21%増が目立った。一方で、2位の東京大は志願者4%減、特に文I《前》の大幅減(23%減)が注目される。10位の京都大(4%増)とともに、関西地区の難関大志望者に地元志向が強まり、「東京大→京都大・大阪大」へ軸足を移したようだ(図1を参照)。この他の難関大では、北海道大・名古屋大でともに志願者が4%減少したのが目立つところ。
   一方、09年に軒並み志願者が減少した“準難関校”では、4位の千葉大、8位の首都大学東京、9位の横浜国立大が反動で志願者増。表2以外でも、金沢大(11%増)・広島大(9%増)・熊本大(7%増)などでゆれ戻しがあった。

   表3では、志願者の増加率が高い順に上位10大学を示した(同率で10位が2大学のため、計11大学を掲載)。表2と異なり、大都市圏以外の公立大が8大学を占める。
   表3以外でも、富山県立大(39%増)・山口県立大(38%増)・北九州市立大(27%増)など、09年と同様に、公立大で志願者大幅増が目立った。また、10年4月から「私立→公立」に移行する静岡文化芸術大と名桜大(沖縄県)は、私立大として入試を行ったが、2月中旬の時点で志願者が急増。静岡文化芸術大は前年比27%増、名桜大は09年の約3倍に膨れ上がった。
   さらに、09年4月に「私立→公立」に移行した高知工科大では、10年から国公立大の分離分割方式(セ試を課し、前期・後期で実施)に新規参入。全学群(学部)・日程で多くの志願者を集め、中国・四国地区のおもに工学系の志願動向に影響を与えた(図2を参照)。
   首都大学東京をはじめ、公立大が09年に続き人気を集めたのは、地元志向の強まりに加え、(1)地元出身者の場合、入学金が通常より安く設定されるケースが多い、(2)難易度の面で「お手頃感」がある、(3)セ試の科目数が少ないケースが多く、私立型の受験生が流入しやすい、といった要因が考えられる。
   また、志願者がほぼ2倍に増えた(103%増)、1位の長岡技術科学大を含め、11大学のうち9大学で、前年の志願者大幅減の反動が強く出ている。ここにも「与し易い」と思われる大学に集中する「慎重出願」の特徴が見て取れる。

図1・図2


後期・中期の志願倍率は
割り引いて判断しよう

次は、入試日程ごとに、特に志願倍率が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4~6。同倍率が多数の場合は20学部未満で掲載。医学部医学科や看護学科は1学部として集計)。
   志願倍率とは「志願者数÷募集人員」で割り出した「見かけの倍率」だ。一方、「受験者数÷合格者数」で割り出した実際の倍率を「実質倍率(競争率)」という。
   志願者から入試当日の欠席者を除いたのが「受験者数」。また、合格者数は前・後期では募集人員に近いが、公立大中期では募集人員の2~3倍を出す場合もある。
   前期では、欠席者は志願者の5~7%程度。しかし、後期では前期の入学手続者が欠席し、志願者の50%程度が欠席するため、志願倍率が10倍でも実質倍率は5倍程度に下がる。公立大中期では、志願者の3分の1程度が欠席し、合格者数が募集人員の2~3倍ならば、志願倍率が15倍前後でも、実質倍率は5倍程度に下がる。「倍率が高すぎて、絶対ムリ!」と思わず、冷静に判断しよう。



少数科目の学部は高倍率
になりやすく、要注意!

まず、表4・5の「高倍率の学部」から見ていこう。前期では、岐阜大‐医(医)《前》など医学部(医学科)が連なり、難関ぶりを物語る。また、セ試の科目数が少ない場合、例えば前期で最高倍率の北九州市立大‐地域創生学群(2教科2科目)や福井県立大‐看護福祉《前》(2教科2科目)、高知工科大‐マネジメント《前》(B方式が3科目型)などは高倍率になりやすい。
   後期では、募集人員が少ないこともあり、最高倍率の岐阜大‐医(医)《後》の78.5倍をはじめ、前期以上の高倍率になるが、欠席率の高さ(ほぼ50%が欠席)を割り引いて考える必要がある。その中で、岩手県立大‐ソフトウェア情報《後》(セ試・2次とも1教科)、高知工科大‐情報・システム工・マネジメント(セ試が3教科)の高倍率や、山梨県立大‐看護、山口県立大‐看護栄養、宮崎県立看護大の急激な倍率アップ(前年の志願者大幅減の反動)が目立つ。
   一方で、表6のように志願倍率が1倍台のケースもある。例年、医療系や理工系の学部が多い。京都府立医科大‐医<看護>《前》のように、前年の志願者増(09年は志願者が91%増)の反動で倍率ダウンした場合は、11年にはもとの倍率にゆれ戻す可能性が高く、要注意だ。



前期日程の第1段階選抜
では2,922人が不合格に

最後に、前期日程の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。予告した学部(51大学147学部)に対し、実際に行ったのは16大学28学部と2割足らずだが、09年より1大学2学部増加。第1段階選抜の不合格者も、志願者増に伴い09年2,630人→10年2,922人と増加した。不合格者の多かった大学は、一橋大(795人) 、東京大(715人)、大阪大(375人)、千葉県立保健医療大(231人)、京都大(163人)など。大阪大は、09年は予告のみで実施しなかっただけに注目される(外国語で2段階選抜を復活)。
   東京大からは、前期の第1段階選抜合格者の最高・最低・平均点が発表された(表7)。得点率に直すと、平均点が83.3%(理II)~87.8%(理III)の範囲、最低点が68.1%(文I)~79.7(文III)の範囲であった。セ試の平均点ダウンに加え、慎重出願による第1段階不合格者数の大幅減(1,164人→715人)もあって、全科類で平均点がダウン、文I・II・III、理II・IIIで最低点がダウンする中、志願者が5%増加した理Iの最低点アップ(77.1%→78.3%)が注目される。

表4-6


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推薦入試・AO入試ともにやや難化!? 
一般入試に先立ち、東京学芸大など教員養成系の人気高まる

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一般入試に先立って行われた「セ試を課さない」推薦・AO入試。本誌の集計では、推薦は「志願者:6%増、合格者1%増」、AOは「志願者1%増、合格者3%減」との結果が出た。


推薦は志願者6%増、
法・看護も人気集める

「螢雪時代」では、国公立大のセ試を課さない推薦について、10年入試結果の調査を行った。09年12月22日現在の集計データ(101校:志願者数=約2万5千人)では、志願者数は前年度に比べ6%増加した。国公立大全体の推薦枠は09年18,142人→10年18,368人と1%増えたが、セ試を課さない推薦の実施学部数は346→342に減少(セ試を課す推薦は140→152)。それでも志願者が増えたのは、不況による国公立大志向の強まりに加え、新型インフルエンザに備えて受験機会を増やした、という側面もあろう。

   国立・公立別の志願者数は、国立大7%増、公立大5%増(私立→公立に移行した高知工科大を除く)。弘前大(15%増)・東京学芸大(13%増)・新潟大(11%増)・京都教育大(14%増)・島根大(42%増)・大分大(15%増)・大阪府立大(15%増)の志願者増と、宇都宮大(6%減)・兵庫県立大(9%減)の志願者減が目立つところ。

   合格者数は国立大が1%増、公立大が2%増で、倍率(ここでは、志願者数÷合格者数。以下同じ)は、国立大で09年2.5倍→10年2.7倍、公立大は08・09年とも2.2倍→2.3倍とアップ、全体的にやや難化した模様だ。
   学部系統別にみると、志願者減は国際関係、芸術・体育など少数で、法、教員養成、医療・看護など資格系の志願者大幅増が目立つ。特に教員養成系は難化した模様だ。


AO入試は志願者1%増、
合格者3%減で倍率アップ

2010年国公立大「セ試を課さない推薦入試」結果AO入試は国公立大の42%(66大学)で実施。10年度は群馬大・東京農工大で導入し、募集枠も3,095人→3,306人と09年度に比べて7%増えた。そのうち、セ試を課さないAO入試は、09年12月22日現在の集計(36大学:志願者数=約5千人)によると、前年度に比べ「志願者1%増、合格者3%減」で、倍率は4.1倍→4.2倍とアップ。全体としてはやや難化した模様だ。おもな実施校(志願者200人以上)では、東京工業大(4%増)・静岡大(5%増)・山口大(12%増)などの志願者増、東北大(10%減)・京都工芸繊維大(11%減)・熊本県立大(12%増)などの志願者減が目立つ。

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11年入試の変更点を速報!
北海道大で「総合入試」を導入、入学後の進路決定が可能に。
教育系でセ試を課す推薦が増加

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新高3生が受験する2011年(以下、11年)入試では、12年のセ試の試験枠に関する変更を控え、一般入試では大きな変動要因はみられず、落ち着いた入試環境になる。その中で、北海道大の「総合入試」導入が注目される。また、教員養成系でセ試を課す推薦の導入が目立つ。



山梨大‐医(医)で前期を廃止
埼玉大・和歌山大でAO導入

ここからは、キミが受験する11年国公立大入試について、その特徴と、志願動向に影響しそうなポイントを見ていこう。

(1)北海道大の「総合入試」
   最大の変更点といえるのが、北海道大の全学的な入試改革だ。前期日程の2次試験について、従来の学部別入試に加え、学部の枠を超えた大きな募集枠(文系・理系に大別)で学生を受け入れる「総合入試」を全学部で導入する。
   総合入試の入学者は1年間、学部別入学者とともに総合教育部に所属し、文系・理系ごとに教養教育等を学ぶ。そして本人の希望や1年次の成績などによって、2年次以降の学部進学が決まる。文系・理系ごとに全学部・学科への移行が可能で、一定の人数制限のもと他系への移行も可能。入学後にじっくり学部・学科の内容を見定めた上で進路決定できるようになる。
   総合入試の募集人員(表7を参照)は文系100人、理系1,027人で全入試の45%を占める。理・薬・工・農の4学部は、前期を総合入試に一本化し、学部別入試は後期のみとなる。また、理系では特定科目重視の「選抜群」を設ける。

(2)日程の変更
   ここ数年続いていた後期日程の廃止や募集枠縮小は、11年入試では北海道大‐医(医、保健<看護・作業療法>)など、医学科や医療系学科、教員養成系の一部課程・専攻などで行われる程度。一方、山梨大‐医(医)では前期を廃止し「後期のみ実施」になる。同系統で後期を行うのは50校中32校(10年)しかないので、志願者集中が予想される。また、山梨大‐医(看護)でも後期を新規実施する。
   なお、10年4月から「私立→公立」に移行する静岡文化芸術大が、11年から他の国公立大と同じ分離分割方式(前期・後期)に参入する(p.180に概略を掲載)。近隣の文・芸術関連の学部に影響を及ぼしそうだ。

推薦AO入試の胴導入・廃止
(3)推薦・AO入試の導入・廃止
   推薦・AO入試についても目立った変更は少ない。ただし、医学部で定員増を行った時、一般入試の募集人員に上乗せした大学では、その分を「地域枠」推薦・AO(セ試を課す)に振り向けるケースが増えそうだ。
【推薦入試】三重大‐教育、愛媛大‐教育、都留文科大‐文など、教員養成系でセ試を課す推薦の導入が目立つ。また、島根大‐医(看護)では地域枠推薦(セ試を課す)を導入する。一方、愛媛大‐理・農、大阪市立大‐商などで、セ試を課す推薦を廃止する。
【AO入試】埼玉大‐工、東京農工大‐工、和歌山大‐観光でセ試を課さないAOを、北海道大‐医でセ試を課すAOを導入する。一方、北海道大‐教育・経済・薬・農でAOを廃止、鳥取大‐工でも実施学科を「4→3」に削減する。



大阪市立大-医(医)でセ試
の理科を3→2科目に軽減


(4)入試科目の増減
   再来年の12年入試からセ試の実施方式が変わる。(1)地歴と公民の試験枠を統合し、「地歴・公民から最大2科目選択」となる。これで、「日本史・世界史」など地歴2科目選択が可能になる。また、公民(従来は3科目)に新科目「倫理、政治・経済」が加わる。(2)理科でグループ制(2科目ずつの3試験枠に区分け)を廃止し、理科6科目から最大2科目選択となる。このため、理科3科目選択はできなくなる。
   こうした大幅な変更を直前に控え、各大学では11年一般入試の科目変更を小幅に留めるケースが多い。その中で、志望動向に影響しそうな変更点は次のとおり。全体にセ試を軽減し、2次の科目数を増やす傾向がみられる。
【センター試験】大阪市立大‐医(医)《前期》で理科を3→2科目に軽減。また、山梨大‐医(看護)《前期》で7→6科目、静岡県立大‐経営情報《前期》と三重県立看護大《前期》《後期》で7→5科目に軽減する。志願者が急増することもあるので要注意だ。
【2次試験】北海道大‐医(医)《前期》で面接を追加、山形大‐医(医)《前期》で国語・外国語を追加、千葉大‐看護《前期》で理科・外国語を追加。三重大‐生物資源《後期》で新たに2次を課す(数・理から1)。

(5)大学統合・新設など
   10年は、福山市立女子短大が母体となり、4年制で共学の「福山市立大」が新設される予定。教育・都市経営の2学部で構成される。  また、福岡女子大が全学的な改編(文・人間環境の2学部を「国際文理学部(仮称)」に統合)を予定。さらに、高知女子大が男女共学に移行し「高知県立大」と名称変更する予定だ。


以上、紹介した事例を含め、2月下旬までに発表された「2011年国公立大入試のおもな変更点」の一覧を掲載した。ただし、各大学から6~7月に発表される「選抜要項」(一般入試や推薦・AO入試の概略を紹介した冊子)、10~12月に発表される「募集要項(出願書類を備えた正式な入試要項)」、さらに「螢雪時代」やその付録などで、必ず入念に確認してほしい。

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2010年4月号)」より転載いたしました。

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