入試動向分析

国公立大&私立大 2009年入試結果&2010年入試速報
 【2009年8月】

2009年は福祉・理工・農が難化、法・医・歯・薬・医療系が易化。
2010年は“資格系”が人気復活か?

いよいよ夏休み。受験勉強の本格スタートにあたり、2010年入試のポイントをおさえておこう。まずは、2009年度の一般入試結果を最終チェック。さらに、新設大学・学部や入試改革など、志望動向に影響しそうな要素を紹介し、2010年度の一般入試を予測する。

※この記事は『螢雪時代・2009年8月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

一般入試の合格状況を総ざらい!
定員増の医学部は国公立・私立ともにやや「広き門」に。
私立大は中堅上位~中堅クラスで倍率アップが目立つ。

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2009(以下、09)年の一般入試結果を見ると、国公立大は「志願者3%減、合格者1%減」、私立大は「志願者:前年並み、合格者2%減」。学部系統別では社会福祉・理工・農が難化し、法・医・歯・薬・医療系が易化した模様だ。


国公立大は、志願者3%減、
合格者1%減。準難関校が易化

国公私立大学 推薦入試結果の推移   国公立大の09年一般入試の実施結果を本誌で調査したところ、全体の志願者数は前年比3%減、合格者数は1%減となったが、倍率(志願者÷合格者。以下、特に注記のない場合は同じ)は08年・09年ともに4.0倍であった。

   国語・英語などの難化によるセンター試験(以下、セ試)の平均点ダウン(グラフ1)で、受験生に“安全志向”が強まり、募集枠が縮小された後期(前年比503人減)への出願を控える傾向がみられた。また、08年に人気を集めた千葉大・埼玉大・広島大などの“準難関校”が敬遠され、易化した模様だ。

   日程別にみると、後期が「志願者4%減・合格者3%減」で倍率は8.1倍→8.0倍とダウンしたが、前期は志願者・合格者ともにほぼ前年並みのため、倍率は2.8倍と変動がなかった。
   難関大では、後期を大幅縮小(商で廃止、法・社会で削減)した一橋大の入試結果が注目された。募集人員減(190人→80人)の後期は「志願者37%減、合格者43%減」で経済(後)・社会(後)が難化、募集人員増(740人→840人)の前期では「志願者:前年並み、合格者13%増」で法(前)・社会(前)がやや易化したとみられる。
   この他、北海道大‐歯(後)・農(前)・水産(前)、東京大‐文I(前)・理III(前)、名古屋大‐農(前)、京都大‐総合人間(前)、大阪大‐文(後)・人間科学(後)・外国語(前)・理(後)が難化し、北海道大‐法(後)・工(後)・獣医(前)、東北大‐経済(後)・医(医)(前)・歯(前)、大阪大‐経済ゴ・工(前)(後)、九州大‐経済(後)・医(医)(後)・農(後)が易化したとみられる。

   学部系統別(グラフ2)に見てみよう。社会・社会福祉、理、農・水畜産・獣医で合格者を絞り込み、やや難化した模様。一方、志願者大幅減の歯・薬は、合格者増もあり易化。また、法、経済・経営・商、教員養成の各系統も倍率ダウンでやや易化したとみられる。定員増を行った医は「志願者3%減、合格者7%増」で倍率ダウン、やや「広き門」になったことは確かだ。


私立大は、志願者が前年並み、
合格者2%減。セ試利用が難化

「螢雪時代」編集部では、私立大一般入試の入試結果についても調査した。474大学の集計(志願者262.4万人)によると、志願者数はほぼ08年並みだったが、合格者数は2%減少したため、倍率は全体で08年3.5倍→09年3.6倍とアップした。

   入試方式別にみると、各大学の個別試験は「志願者数:前年並み、合格者1%減」で、倍率は3.8倍と変動なし。一方、セ試利用入試(一般・セ試併用型を含む)は「志願者1%増、合格者4%減」で、倍率は3.0倍→3.1倍とアップした。これを見る限り、セ試利用の方が合格者を絞り込み、難化したといえる。

   09年は、不況の影響もあり、確実な合格を目指して受験校を絞る傾向が強まったため、合格者の入学手続率が上がったといわれる。定員の大幅超過の回避や、入学者の学力レベル維持などのため、合格者を抑え目に出したようだ。

   志願者数の上位10大学(表1)の入試結果を見ると、中央大・東洋大・立教大・関西大で合格者を抑え、実質倍率(受験者÷合格者)がアップしている。この他に、志願者の多いおもな大学で実質倍率が変動したケースを紹介する。


(1)倍率アップ
 青山学院大4.6倍→6.4倍、亜細亜大3.6倍→4.4倍、国士舘大2.1倍→2.6倍、国学院大4.4倍→4.7倍、駒澤大3.6倍→3.7倍、成蹊大5.0倍→5.7倍、専修大3.2倍→3.5倍、東京理科大2.8倍→3.1倍、愛知大2.4倍→3.0倍、中京大3.4倍→3.6倍、名城大2.8倍→3.4倍、龍谷大3.8倍→4.2倍、西南学院大3.1倍→3.4倍、福岡大3.2倍→3.5倍、など
(2)倍率ダウン
 慶応義塾大5.0倍→4.6倍、東海大2.8倍→2.7倍、京都産業大5.0倍→4.8倍、同志社大3.6倍→3.1倍、関西学院大3.9倍→3.8倍、甲南大5.3倍→4.0倍、など


“安全志向”や“地元志向”により志願者が増加した、中堅上位~中堅クラスや地方の主要私立大の倍率アップが目立つ。

   全国の私立大を、大学単位の競争率(実質倍率)グループ別に分類すると(グラフ3)、08年に比べ「3.9~3.0倍」と「1.9倍以下」の大学数が増加し、その中間の「2.9~2.0倍」が減少した。中堅上位~中堅クラスの大規模校が合格者を絞り込む一方で、小規模校では定員割れに至るケースが続出。「2倍」を境に、私立大全体が分化していく様子が見て取れる。

私立大志願者数TOP10の入試結果/私立大一般入試・競争率グループ別大学数の分布


文・教育・教養が人気アップ
経済系は合格者減で難化

グラフ4・5   地区別に集計すると(グラフ4)、関西(3.9倍→3.8倍)を除く5地区は、いずれも倍率は前年並みかアップ。特に、北陸・東海地区における合格者絞り込みが目立つ。

   次に、学部系統別の志願・合格状況を見てみよう(グラフ5)。文系では文・教育・教養、社会・社会福祉、国際・国際関係・外国語が志願者増。このうち、社会福祉・教育分野については“資格志向”の復活を感じさせる。各系統とも合格者を絞り込み、やや難化したとみられる。経済・経営・商は不況で人気低下が予想されたが、志願者は前年並み、やはり合格者絞り込みで倍率アップ。一方、法は法科大学院への失望感などから人気ダウン、やや易化した模様。

   理系では、理・工、農・水畜産・獣医が「志願者増・合格者減」でやや難化した。一方、歯・薬は志願者大幅減で易化し、特に歯は1倍台にまで急落した。医療・看護は、相次ぐ学部・学科増設で受験者が分散、やはり易化したとみられる。また、定員増(9%増)の医は、志願者2%増に留まり、高倍率ながらやや易化した模様だ。


10年入試の志願者数は、国公立
が約2%増、私立は09年並みか

次に、10年の一般入試がどう動くのか予測してみよう。前提となるポイントは3つある。

(1)受験生数が少し増える
   10年度の4(6)年制大学の受験生数は、本誌の推定では09年に比べ、66万5千人→67万5千人と約2%増加する見込みだ。

(2)センター試験の平均点が上がる!?
   10年度のセ試は、09年の平均点ダウンの反動で、国語や英語などの出題レベルが易化する可能性があり、平均点はアップしそうだ。そのため、受験生がやや「強気出願」に転じ、国公立大へ積極的に出願することが考えられる。

(3)不況の影響が続く
   とはいえ、不況の影響は09年以上に大きくなりそうで、(1)生活費や通学費の支払能力を考えた“地元志向”が、(2)大学生の就職率が低下するため“資格志向”が、(3)浪人を回避するため“安全志向”が、(4)学費負担を考え“国公立大志向”が強まるものとみられる。

以上の3点に加え、後期の廃止・縮小も小規模であるため、国公立大の一般選抜全体の志願者数は2%程度増加しよう。ただし「セ試を課す」推薦・AOの導入が相次いでいるため、後期を出願せず「セ試を課す推薦・AOと前期日程」を併願するパターンが増えそうだ。

   一方、私立大は浪人の減少と不況の影響により、併願校数の減少が予想されるが、難関校の人気回復が見込まれるため、一般入試全体の志願者数はほぼ09年並みになるものとみられる。
   学部系統でみると、就職状況の悪化から経済系の志願者減が見込まれる。一方、資格志向の強まりで、社会福祉と医療系が志願者増、法と教員養成系も人気回復しそう。ただし、私立大の医療系は新設学部・学科が多いので受験者が分散し、易化は必至。
   歯・薬は引き続き志願者減が見込まれるが、理工・農は安定した人気を保ち、医は「地域枠」または「地域医療枠」推薦の導入・拡大や09年の反動から、一般入試が激戦化しそうだ。


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10年入試の変更点をチェック!
電気通信大・東京学芸大などで、全学規模の改組を予定。私立は医療・教育関連の新設が目立つ。

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ここからは10年の、おもに一般入試の変更点をお知らせする。9大学の新設と5大学の募集停止、医療・看護系と教員養成系の学部増設、私立大セ試利用の募集回数増などが目立つ。


岡山大・徳島大・京都府立医科大
の医学科で理科3→2科目に軽減


【国公立大:学部改組など】
   新見公立大(看護系の単科大学)が新設予定。電気通信大では、学部の名称を「電気通信→情報理工」に変更し、7学科(昼・夜間主コース)を昼間4学科・夜間主1課程に統合する(夜間主の先端工学基礎課程はAO入試のみ募集)。東京学芸大では、初等教育教員養成課程に4専修を増設し、教員養成4課程の定員を増やす(計590人→730人)一方、教員養成以外の5課程の定員を削減(計475人→335人)。高知女子大では、生活科学部を廃止(生活デザイン・環境理学の2学科を廃止)する一方、健康栄養学部(40人)を新設し、既設2学部の定員も増加する(看護45人→80人、社会福祉30人→70人)。
【国公立大:一般選抜の変更】
   後期日程の廃止・縮小は09年までに比べ小規模。むしろ、岐阜大‐工(後)(57人→126人)など、後期の募集枠を拡大するケースも見られる。
   長崎大‐医(医)(前)でセ試を7→8科目(理科2→3科目)に負担増。一方、岡山大‐医(医)(前)(後)、徳島大‐医(医)(前)、京都府立医科大‐医(医)(前)では、セ試を8→7科目(理科3→2科目)に軽減する。宮城教育大では、後期を行う全専攻・コースで2次を「課さない→課す」に変更(初等教育‐芸術・体育系は従来から2次<実技>を実施。他は面接を新規実施)


医学部医学科で“地域枠”や
“地域医療枠”の導入相次ぐ

国公私立大学 推薦入試結果の推移
   09年度は医学部の定員増が相次いだが、10年度は出願資格を地元出身者に限定する「地域枠」や卒業後の一定期間の地元勤務を条件に奨学金を支給する「地域医療枠」を新設するケースが目立つ。公立の大阪市立大‐医(医)では、一般前期(90人)の中に「地域枠」10人を新設。私立の獨協医科大では「地域特別枠推薦」(栃木・群馬・茨城・埼玉・福島の5県が対象。10人)を、福岡大‐医(医)でも「地域枠推薦」(九州8県<沖縄を含む>・山口県が対象。10人)を新規実施する。この他、国立の長崎大‐医(医)、私立の東京医科大・兵庫医科大でも「地域医療枠」の推薦を新規実施する(7月号で既報)。


私立大では8大学が新設予定、 一方で5大学が募集停止!

【大学の新設と募集停止】戸板女子大・大阪物療大など6大学の新設が予定されている。このうち、2大学が医療・看護系、2大学が教育・保育系の学科を有する。また、すでに開設している「大学院大学」が4年制の学部を増設し、校名変更を行うという形で、ビジネス・ブレークスルー大(全講義がインターネットによる通信教育課程。株式会社立)と新潟リハビリテーション大の2大学も新設される(表2)。

   一方で、国内初の「株式会社立大学」であるLEC東京リーガルマインド大をはじめ、愛知新城大谷大・三重中京大・聖トマス大・神戸ファッション造形大の計5大学が学生募集を停止する。
   ちなみに、08年では「定員割れ」大学が私立大全体の約47%を占めた(日本私立学校振興・共済事業団調べ)。今後、募集停止する大学はさらに増えそうだ。

【学部・学科の増設】京都産業大‐総合生命科学(工を改組)、立命館大‐スポーツ健康科学、関西大‐社会安全・人間健康、近畿大‐総合社会、関西学院大‐国際など、京阪神の総合大学で学部増設・改組が相次ぐ。また、愛知淑徳大で全学的な学部改組(6学部→8学部)を行う。
   6月下旬に、10年度の学部・学科の増設予定が文部科学省から発表された(5月末認可申請分。表2を参照)。ここ数年と同じく、医療・看護系と教育・保育系、栄養関連の学部・学科増設が目立つ。7大学で医療・看護系、4大学で管理栄養士養成、5大学で教育・保育系の学部または学科の増設を認可申請中だ。


青山学院大で全学部日程入試を導入
駒澤大・東洋大でセ試の募集回数増


 07~09年と同様、「全学部日程入試」とセ試利用入試に関わる変更が目立つ。

【全学部日程入試】青山学院大で「全学部日程」を導入する。すでに実施している大学では、駒澤大が同日程で学外試験場を新設(5会場)、明治学院大が「1学科のみ出願可→2学科まで同時出願可」に変更する。
【一般・セ試併用型】中京大が8学部で「得意科目重視型センタープラス方式」を導入、九州産業大・福岡大などでも実施学部を増加する。
【セ試利用の募集回数増】セ試利用入試の募集回数を、駒澤大(4学部)、成城大(3学部)、東洋大(5学部)などで1→2回に、大東文化大(7学部)などで2→3回に増やす。
【経済的負担の軽減】明治学院大で学内併願の受験料割引制度を導入。九州産業大では給付奨学金制度の対象者を40人→300人に拡大する。
【その他の変更】立教大ではセ試利用を3教科型・4教科型の2方式に統一。上智大では、文の全7学科と総合人間科学(社会)で一般入試の2次を廃止して選考を1段階にまとめる(5学科で面接を廃止)。龍谷大ではセ試利用前期の出願締め切りを、セ試本試験日の後(1/30)→前(1/14)に繰り上げる。


私立11大学がセ試に新規参加
兵庫医科大は数・理各2科目

   文部科学省は、08年12月と09年4月の2回にわたり、10年度からセ試を新たに利用する公私立大学・学部について発表した。

2009年度センター試験 新規利用大学・学部一覧


(1)新規利用大学・学部の顔ぶれ
   セ試を新たに利用する私立大は、兵庫医科大など11大学(17学部)。すでにセ試を利用している大学で、新たに利用学部を増やすのは、公立大が北九州市立大‐地域創生学群の1大学1学群、私立大が青山学院大‐教育人間科学、日本大‐歯、関西大‐外国語など28大学29学部である。一方、前述の募集停止5大学のうち、3大学がセ試を利用していた。
   これで、セ試に参加する私立大は496大学1,424学部(3月末現在)となり、大学数では全私立大の9割近く(約86%)を占める。

(2)利用科目・方法
   私立大では「セ試2~3科目、個別試験なし(小論文や面接を課す場合も)」が一般的で、10年度の新規利用大学・学部でもそのパターンが多いが、次のような“多科目型”で行う場合もある。芝浦工業大‐デザイン工=4教科5科目(数2科目)/兵庫医科大‐医=4教科6科目(数・理各2科目)と面接/兵庫医療大‐薬=4教科6科目(数・理各2科目)。一方、関西大‐外国語のうち、セ試中期はセ試・個別とも英語1科目で受験できる(前期は3教科3科目、後期は4教科4科目)。

(3)英語リスニングへの対応
   英語のリスニングテストは、セ試の英語受験者全員が受験しなければならないが、本誌調査(08年12月時点)によると、09年度でセ試利用入試を行った私立大で、英語を課す(または選択可能な)学部・学科のうち、リスニングを合否判定に利用したのは全体の67%に留まった(国公立大は全体の97%<大学数>が利用)。
   そして10年度の新規参加大学・学部では、英語を課す(または選択可能な)46学部中26学部でリスニングの成績を利用する。ただし、そのうち4学部で「リスニングを含む場合と含まない場合の得点を算出し、高得点の方を合否判定に利用」としている。

以上、詳細は国公立大の選抜要項、私立大の入試ガイドなどで必ず確認してほしい。


(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2009年8月号)」より転載いたしました。

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