入試動向分析

国公立大&私立大 2009年入試結果分析【2009年6月】

2009(平成21)年度

定員増の国公立大医学科が倍率ダウン。私立大では、青山学院大・中央大が難化

 

 各大学から、2009年入試結果のデータが本格的に発表されはじめた。今月号では、国公立大・私立大ともに、難化・易化を測る物差しとなる「実質倍率」の変化と、受験生にとってクリアすべき目標ラインの「合格最低点・平均点」について見ていこう。さらに、2010年入試の変更点など、最新情報も引き続きお届けする。

 

※この記事は『螢雪時代・2009年6月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

東京大は文I・理III、一橋大は経済・社会の後期が難化か。
大学発表の“合格ライン”で具体的な目標をイメージしよう

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 国公立大全体の倍率(志願者÷合格者)は、前期は2008年とほぼ変わらず、後期と公立大中期はやや低下。学部系統別では、理・農が難化、医・歯・薬・教員養成が易化した模様だ。

 
 

理・農が難化、医・歯
・薬・教員養成が易化

 

 全国の国公立大学に対し、2009(以下、09)年一般入試の合格状況について「螢雪時代」編集部で調査したところ、全体の志願者数は前年比で3%減少したのに対し、合格者数は1%減となった。
 3月末現在の集計のため、この時点では受験者数が未発表の大学もあるので、ここでは「志願者数÷合格者数」の倍率(以下、当ページ下=★印までの文中まで同じ)を08・09年で比較した。日程別にみると(グラフ2)、募集枠が縮小された後期は「志願者4%減・合格者3%減」で8.1倍→8.0倍、公立大中期も「志願者5%減・合格者4%減」で5.8倍→5.7倍と、いずれもダウンしたが、前期は志願者・合格者ともにほぼ前年並みのため、倍率は2.8倍と変動がなかった。
 
 地区別にみると(グラフ1)、北海道・東北、中国・四国が全体的にやや難化、関東・甲信越、関西、九州がやや易化した模様。
 学部系統別(グラフ3)にみると、理、農・水畜産・獣医の各系統で、合格者を絞り込み倍率アップ(理3.8倍→3.9倍、農・水畜産・獣医3.7倍→3.8倍)、やや難化した模様。一方、志願者大幅減の薬は、合格者増もあり倍率ダウン(5.3倍→4.6倍)、易化したとみられる。この他、歯・教員養成の各系統も倍率ダウンで易化した模様だ。
 定員増を行った医では、一般入試の募集人員が6%増加したが、「志願者3%減、合格者7%増」で倍率ダウン(7.8倍→7.1倍)。やや「広き門」になったことは確かだ。

 
2009年国公立大入試 志願者・合格者動向
 

千葉大・金沢大・広島大
など“準難関校”が易化か

 

 09年では、後期縮小(商で廃止、法・社会で削減)した一橋大の入試結果が注目された。募集人員減(190人→80人)の後期は、「志願者37%減、合格者43%減」で倍率は16.9倍→18.6倍にアップ、経済(後期)・社会(後期)が難化した模様。一方、募集人員増(740人→840人)の前期では、「志願者:前年並み、合格者13%増」で倍率は4.1倍→3.6倍にダウン、法(前期)・社会(前期)がやや易化したとみられる。
 
 東京大では、前期が「志願者2%減、合格者:前年並み」で、倍率は3.4倍→3.3倍とわずかにダウンしたが、文Iと理IIIは難化した模様。09年の特徴として、地方の公立校からの合格者増があげられる。その要因を、駿台予備学校の田村明宏広報課長は「前期の出題内容が、08年より取り組みやすくなりました。特に、英語や文系の数学など“手ごたえがあった”という声も多かったですね」と、出題レベルの変化に求める。難問対策に強い私立中高一貫校(特に首都圏)の出身者と、地方公立校の出身者の差がつかなくなったというのだ。
 全科類一括募集(共通問題で選抜。入学時に希望により所属決定)の後期は、志願者9%減ながら、激戦(31.7倍)に変わりはなかった。合格者100人中、97人が入学したが、所属科類の内訳は「文I43人、文II3人、文III0人、理I30人、理II21人」と、08年に比べ文Iのみ増加(26人→43人)し、他の科類はいずれも減少した。「前期では理Iを受け、後期で合格したら文Iに入学したケースもありました」(田村課長談)など、法学部への進学者が多い文Iの変わらない人気ぶりと、文理にわたりオールマイティーな学力と関心を持つ、東京大合格者の特質がうかがえる。
 
 この他、難関大では北海道大‐歯(後期)・農(前期)・水産(前期)、名古屋大‐農(前期)、京都大‐総合人間(前期)、大阪大‐文(後期)・人間科学(後期)・外国語(前期)・理(後期)が難化した模様。
 一方で、北海道大‐法(後期)・工(後期)・獣医(前期)、東北大‐経済(後期)・医(医)(前期)・歯(前期)、大阪大‐経済(後期)・工(前期)(後期)、九州大‐経済(後期)・医(医)(後期)・農(後期)が易化したとみられる。
 
 また、安全志向から敬遠された“準難関校”のうち、千葉大・金沢大・大阪市立大・広島大・熊本大では、倍率が大幅ダウンし、易化したとみられる学部・日程が目立った。

 
 

「合格最低点」より確実な
「合格平均点」を目標に!

 

 志望校選びや目標設定の指針となるのが、合格者の最低点や平均点という「合格者データ」。学部・学科や日程・方式など、募集単位別に公表されることが多い。国公立大では総合点(セ試+2次)だけを公表するケースと、セ試と2次のそれぞれを発表するケースがある。合格最高点は文字通り全合格者中の最高得点で、合格最低点は合否の分かれ目になる、いわゆる「ボーダーライン」。そして合格平均点は、総じて最低点より得点率にして5~10%高い。
 合格するためには満点をとる必要はなく、ボーダーラインぎりぎりでも合格には違いない。合格最低点はまさに「最低目標」として重要なデータといえるが、確実に合格を目指すには、「合格者平均点」のレベルまで学力アップしておくことが望まれる。最低点をクリアするだけでは、問題のレベルや倍率が上がった場合を考えると、リスクが大きいからだ。

 
 

東京大の合格最低ラインは
前期59~69%、後期48%

 

 09年入試の合格者データのうち、東京大と金沢大のケースを紹介しよう。
 
 表1は東京大の合格ラインである。第1段階選抜と、第2段階(つまり最終)選抜に分けて掲載した。まず前期日程について見てみよう。
 第1段階選抜は全科類で実施し、その合格ラインは文I78.2%(前年比+3.0ポイント<以下、p>)、文II80.2%(-1.0p)、文III81.0%(-2.1p)、理I77.1%(-6.1p)、理II79.6%(-2.1p)、理III78.1%(+5.3p)となった。文I・理IIIの得点率アップ、理Iのダウンが目立つ。最終合格を考えると、セ試で確実に9割前後は取っておきたいところだ。
 第2段階(セ試+2次)選抜のデータを見てみよう。セ試は900点を110点に圧縮、2次440点の計550点満点。最終合格ラインは、文I66.5%(前年比+3.3p)、文II65.0%(+3.0p)、文III63.8%(+2.9p)、理I58.8%(+1.6p)、理II58.6%(+2.3p)、理III69.1%(+0.4p)と全科類でアップした。
 次に、後期日程について見てみよう。セ試は第1段階選抜のみに利用し、合否は2次試験のみで判定する。第1段階選抜の合格ラインは88.4%、セ試での9割確保は最低条件といえる。2次は300点満点で最終合格ラインは47.7%、前年より12.3pもダウンしており、高難度の出題に受験生が苦戦した様子が見て取れる。

 
2009年入試/東京大の合格ライン
 

金沢大の合格平均は文系70%、
理工系62%、医療系73%

 

 次に、金沢大の前期日程の合格者データを示した(表2)。総合点を得点率(%)に換算し、各学類を分野別にまとめて平均すると、文系(人間社会学域)で「最低66%・平均70%」、理工系(理工学域)で「最低57%・平均62%」、医療系(医薬保健学域)で「最低68%・平均73%」となった。合格するには、医療系で7~8割程度、文系で7割程度、理工系でも6割程度の得点が要求されるのだ。さらに、合格者平均点をセ試・2次の別に平均すると、「文系=セ試75%・2次62%、理工系=セ試73%・2次52%、医療系=セ試78%・2次67%」となった。マーク式のセ試に比べ、記述式の2次の方が得点しにくいことがわかる。
 
 このうち、配点がセ試重視の「経済学類」と、2次重視の「物質化学類」を比較してみよう。
 経済学類(前期)の科目・配点は、セ試が6教科7科目の計900点、2次が「3教科から2教科選択」の計400点で総計1,300点。合格者は、セ試では得点率68%~82%(平均74%)に分布し、最高・最低の差は14p。2次では得点率40~80%(平均60%)に分布し、最高・最低の差は40p。配点の小さい2次の方が最高・最低の得点差が大きく、セ試の得点である程度合否が決まったことがうかがえる。
 一方、物質化学類(前期)の科目・配点は、セ試が5教科7科目の計450点、2次が数学・化学・英語各200点の計600点で、総計1,050点。合格者は、セ試では得点率67%~87%(平均75%)に分布、最高・最低の差は20p。2次では得点率45~72%(平均54%)に分布し、最高・最低の差は27p。経済学類に比べ、セ試と2次で得点幅にそれほど違いがなく、2次の得点力で合否が決まったことがうかがえる。

 
2009年入試/金沢大前期合格者の最低点・平均点
 

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早慶の一般入試は高嶺安定、東京理科大・関西大が難化。
法政大・同志社大・立命館大・甲南大などがやや易化か

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 私立大入試の合格状況をみると、青山学院大・中央大・関西大など、難関校から中堅校に至るまで、合格者を絞り込み(特にセンター試験利用)、やや難化した様子が見て取れる。

 

実質倍率は3.8→3.9にアップ
センター利用で合格者減が顕著

 
2009年私立大一般入試 地区別・方式 受験者・合格者動向

 私立大一般入試の受験者数・合格者数について、「螢雪時代」では5月号に続き調査した。121大学の集計(4月上旬現在)によると、受験者数は前年比で2%増加したのに対し、合格者数は1%減少し(グラフ4)、実質倍率(受験者÷合格者。以下、倍率)は、全体で3.8倍→3.9倍(08年→09年。以下同じ)にアップした。
 
 私立大が集中する大都市圏の大学を集計すると、首都圏は4.3倍→4.4倍とアップしたが、京阪神は4.0倍→3.9倍とダウンした。
 
 入試方式別にみると、一般入試(各大学の個別試験)は「受験者2%増、合格者:前年並み」で、4.0倍→4.1倍とアップ。また、セ試利用では「受験者1%増、合格者5%減」と合格者絞り込みが顕著で、3.3倍→3.5倍と倍率アップの度合いは一般入試を上回る。一般・セ試併用型は新規実施が多く、志願者が分散して倍率ダウン(4.0倍→3.8倍)、やや易化したようだ。
 私立大では国公立大(公立大中期を除く)と異なり、合格者が併願先の他大学にある程度流出することを想定し、正規合格者をかなり多めに出す(一般入試=募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試=5~10倍程度)のが普通だ。さらに、入学手続の状況によっては、追加合格者を発表する場合もある。
 ただし09年は、不況の影響もあり、確実な合格を目指して受験校を絞る傾向が強まったため、合格者の入学手続率が上がったといわれる。定員の大幅超過の回避や、入学者の学力レベル維持などのため、合格者を抑え目に出したようだ。
 以下、おもな大学で倍率が変動したケースを紹介する。

 

(1)倍率アップ
【首都圏】青山学院大4.8倍→6.0倍、国際基督教大2.7倍→3.5倍、成蹊大5.1倍→5.9倍、専修大3.2倍→3.5倍、中央大4.7倍→5.3倍、東京理科大2.8倍→3.1倍、東洋大3.5倍→4.3倍
【京阪神】龍谷大3.9倍→4.2倍、関西大5.5倍→5.6倍、関西学院大3.8倍→3.9倍
【その他】名城大2.8倍→3.2倍、西南学院大3.2倍→3.4倍、福岡大3.2倍→3.5倍
 
(2)倍率ダウン
【首都圏】慶応義塾大5.0倍→4.6倍、法政大6.7倍→5.5倍、明治大5.3倍→4.9倍、早稲田大6.5倍→6.4倍
【京阪神】同志社大3.6倍→3.0倍、立命館大3.5倍→3.4倍、近畿大4.5倍→4.3倍、甲南大5.3倍→4.0倍

 
 

文系・理系ともに中堅校が
合格者絞り込みで難化か

 

 グラフ5・6で文理別・難易ランク別の志願者・合格者動向(4月中旬現在:駿台予備学校の集計)を見てみよう。おおむね、Aランクが難関校や難関医科大、Bランクは準難関校、Cランクが中堅上位校、Dランクが中堅校を指す。
 
 志願者増が合格者増を上回ったり、志願者がほぼ同じでも合格者が減ったりすれば倍率は上がる。逆なら倍率は下がり、それが難易レベルの変動につながる。また、志願者・合格者が同程度に増減すれば倍率の変動は小さく、難易レベルはほぼ前年並みとなる。
 注目すべきは、文系・理系を問わず、全てのランクで合格者を絞り込んでいることだ。特に文系のD~Eランク、理系のC~Eランクでは、志願者増にもかかわらず合格者を大幅に減らし、全体的に難化した模様。「安全志向」は、かえって皮肉な結果につながったようだ。D~Eランクの場合、推薦・AO入試の募集枠を拡大する傾向にあり、入学定員に占める一般入試の比率が相対的に下がっている事情もあろう。
 
 高校の先生方への取材結果も総合すると、青山学院大・中央大・東京理科大・関西大などが難化した模様。早稲田大・慶応義塾大はセ試利用入試が敬遠されたが、一般入試の難易レベルは高嶺安定で、特に早稲田大‐社会科学は難化した模様。一方、法政大・同志社大・立命館大・甲南大などが、やや易化したとみられる。

 
2009年私立大一般入試 難易ランク別志願者・合格者増減率
 

関西学院大の文系学部の
合格最低点は6割台

 
関西学院大(A日程:文系学部のみ)の合格最低点

 次に、私立大から発表された「合格ライン」を見ていこう。合格ラインは、志願者の増減や倍率のアップダウン、受験生のレベルの変化、さらに入試問題の難易によって上下するが、大学によっては選択科目間の有利・不利をなくす得点調整を行う場合もある。いずれにせよ、志望校の「過去問題」にチャレンジする時に、目標となる数字だ。
 京阪神地区のデータは他地区に先がけて発表されるため、ここでは関西学院大・同志社大・龍谷大の事例を紹介する。
 
 まず、表4に関西学院大(文系学部)の一般入試A日程の合格最低点を示した。得点率にして48%~73%(08年は51%~78%)の間に分布しているが、全学部を平均すると、例年60%台が合格最低ラインの目安となる。その中で、開設2年目で倍率が急激にダウンした、人間福祉‐社会福祉・人間科学の合格ラインの急下降と、倍率アップした文‐アジア史学・心理科学の合格ラインの上昇が注目される。入試問題の難易もあり一概には言えないが、倍率の変動が合格ラインに影響した好例といえる。

 
 

同志社大の科目別データで、
多様な合格者像をイメージ

 

 同志社大では、総合点の合格ラインに加え、合格者の科目別の最高・最低点も公表している。表3に、文系・理系の各学部・学科等に共通の「全学部日程」のデータを示した。
 
 全学部日程(文系)では、総合点の合格最低ラインは平均して70%前後。社会‐社会・メディア(73.4%)が最も高く、神(62.2%)が最も低かった。
 科目別に見ると(極端に低い学部・学科を除く)、英語の最高点は169~196点で全体的に満点に近く、最低点は105~138点。全学的に英語の得点力を重視し、例年長文を出題するため、ある程度ハイレベルな学力が要求される。不得意でも、60~70%は得点したい。国語の最高点は85~97%、最低点は35~60%と幅広く分布し、選択科目(日本史・世界史・数学など)では、最高点は80%~100%、最低点は60%前後のケースが多い。
 一方、全学部日程(理系)では、総合点の合格最低ラインは平均して60%近く。心理<理系型>(65.6%)が最も高く、理工‐情報システムデザイン<理系型>(50.4%)が最も低かった。
 科目別に見ると、英語の最高点は得点率90%前後だが、最低点は40%前後が多い。数学は、最高点がほぼ満点で、最低点はやはり40%前後が多い。物理・化学・生物は、最高点は70%~満点で、最低点は物理がほぼ30%~40%、化学が40~50%と比較的低いが、生物は50~60%とやや高い。
 理系学部の場合、文系学部に比べ実質倍率が低いこともあり、文系学部より合格者の得点ゾーンが広いのが特徴といえる。
 
 こうして見ると、私立大入試の3科目型では、1科目が得意で、もう1科目がまずまずならば、残りの1科目はやや不得意でも、合格は十分可能であることがわかる。合否はあくまで、3科目の合計点次第なのだ。

 
2009年入試/同志社大<全学部日程>の科目別・総合点の合格ライン
 

ボーダーライン付近に
合格者の4割超が集中

 

 最後に、合格ライン付近がいかに激戦となるかを紹介する。グラフ7に龍谷大-経済(A日程:スタンダード方式文系型)の、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。同方式は、国語・英語・「世界史B・日本史B・政治経済・数学から1」の3科目で各100点、計300点の均等配点。09年では、受験者数2,133人に対し、合格者345人で倍率は約6.2倍。合格最低点は209点、得点率は約70%だった。
 
 注目すべきは、最低点を含め上10点幅の部分に、合格者全体の実に44%も集中していることだ。1点違いで不合格になった受験生も14人いるなど、合格ライン付近には多くの受験生がひしめきあっている。
 ふだんの勉強から「1点の重み」をしっかり認識し、解答の見直しを習慣づけよう。

 
龍谷大-経済(A日程)スタンダード方式文系型/ボーダーライン付近の合否状況
 

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新見公立大・戸板女子大など公私立7大学が新設予定。
青山学院大で「全学部日程」を、兵庫医科大で地域枠推薦を導入!

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 ここからは前回までの特集に続き、文部科学省や各大学から発表された2010(以下、10)年入試の変更点をお知らせする。青山学院大の「全学部日程」導入、駒澤大の学外試験場新設、立教大の新奨学金制度の導入などが注目される。

 
 

新設大学:
公立1大学、私立6大学が新設予定。
医療・教育関連が目立つ

 
2010年度新設予定の公私立大学

文部科学省の発表(4月中旬)によると、公立1大学と私立6大学の新設が予定されている(表5)。7大学中、3大学で医療・看護系、2大学で教育・保育系の学科を有する。これで、定員は公立大全体で60人、私立大全体で880人増える。

 

国公立大:
山口大‐医(医)で推薦枠拡大、
後期で2段階選抜を新規実施

 

(1)募集人員の変更
●山口大 医学部医学科で、前期を60人→50人に削減し、公募推薦を「全国枠5人→10人、地域枠10人→15人」に増員する。
●横浜市立大 医学部看護学科で指定校推薦を導入(10人)、一般入試(前期のみ実施)の募集人員を80人→70人に削減する。
●岐阜県立看護大 看護学部で後期を15人→10人に削減、公募推薦を15人→20人に増加。
●滋賀県立大 人間看護学部で後期を15人→10人に削減、公募推薦を15人→20人に増加。

(2)一般選抜の変更など
●広島大 理学部地球惑星システム学科の後期で、2次を「小論文→面接」に変更。
●山口大 医学部医学科の後期で2段階選抜を導入(予告倍率は募集人員<15人>の10倍)。
●山形県立保健医療大 前期日程で、2次に総合問題を追加(従来は面接のみ)。
●大阪府立大 全入試(一般・推薦・AO)の受験料を1万7千円→3万円に増額する。

 
 

私立大:
立教大で成績優秀者対象
の奨学金制度を導入

 

(1)学部・学科の増設
●法政大 現代福祉学部を、1学科(現代福祉)→2学科(福祉コミュニティ・臨床心理<いずれも仮称>)に改組する予定。定員は、福祉コミュニティ140人・臨床心理80人の予定。
●明治学院大 心理学部に「教育発達学科」を増設する予定。小学校・特別支援学校・幼稚園の教員免許(1種免許)の取得が可能になる。
 
(2)一般入試の変更など
●青山学院大 (1)全学部日程を導入する。英語は全学部共通、国語・地歴・公民および文系の数学は文系7学部と社会情報A方式に共通、理系の数学は理工と社会情報B方式に共通した出題となる。個別学部日程との併願はできるが、同一日の複数学部・学科出願はできない。募集人員や科目・配点は、下のカコミを参照。(2)文学部でセ試利用入試の実施学科を増やす(英米文・日本文。各5人)。(3)文学部史学科で自己推薦入試を新規実施する。募集人員は10人、出願資格は「(1)評定平均値4.2以上、(2)評定平均値3.8以上、かつ世界史Bまたは日本史Bが4.5以上」のいずれかで、選考方法は「1次=書類審査(出願時に課題論文提出)、2次=論述(歴史分野)・面接」。
●亜細亜大 (1)法・国際関係でアジア夢カレッジAO入試の実施を取りやめる。(2)セ試利用入試で、3月募集のD方式(後期)を廃止し、B方式(前期)をB‐I(1教科型)・B‐II(2教科型)・B‐III(3教科型)として実施する。
●国士舘大 成績優秀奨学生制度(デリバリー入試とセ試利用C方式I期の成績上位者<総得点80%以上>に対し、入学金・授業料等を免除)の対象者を、20人→50人に拡大する。
●駒澤大 「全学部統一日程入試」で、学外試験場を新設する(札幌・仙台・新潟・名古屋・福岡の5会場)。
●法政大 (1)人間環境学部でT日程を「3→2科目」に軽減する一方、A方式を「2→3科目」に負担増。(2)キャリアデザイン学部のT日程で小論文を除外し、学科試験のみ2科目に軽減。
●立教大 (1)一般入試(個別日程・全学部日程)およびセ試利用入試で、成績優秀者対象の奨学金制度(学費相当額を支給)を導入する。(2)セ試利用入試の実施方式を、全学部・学科で「3教科型・4教科型」の2タイプに統一。文(教育以外)・異文化コミュニケーション・コミュニティ福祉・現代心理の4学部で4教科型を新規実施する。また、観光学部と、理(数学)・文(教育)の2学科で3教科型を新規実施する。
●兵庫医科大 (1)「特定診療科医師養成奨学資金(仮称)」を導入。一般入試の受験者中、大学指定の診療科(年度ごとに指定。10年度は消化器外科・産婦人科を各1人)の志望者を対象とした奨学金制度で、学費(入学金を除く)の半分(年額300万円)を貸与する。臨床研修の後、附属病院の指定診療科に5年以上勤務(臨床研修の期間を含む)すると返還義務は免除される。(2)「地域指定推薦入試」を導入。兵庫県内(神戸・芦屋・西宮・尼崎の4市を除く)の出身者対象の推薦入試で、募集人員は5人。評定平均値4.0以上の普通科・理数科出身者(1浪まで可)が対象で、選考方法は「基礎学力検査(数学・理科2科目・英語)、小論文、面接、書類審査」。

 

●青山学院大「全学部日程」の概要
 
(1) 募集人員(学部・学科別)
(英米文15人、フランス文10人、日本文7人、史学10人)、教育人間科学(教育15人、心理5人)、経済(経済30人、現代経済デザイン10人)、30人、経営(経営30人、マーケティング15人)、国際政治経済(国際政治5人、国際経済5人、国際コミュニケーション5人)、総合文化政策20人、理工(物理・数理7人、化学・生命科学7人、電気電子工5人、機械創造工5人、経営システム工3人、情報テクノロジー5人)、社会情報(A方式15人、B方式5人)
 
(2) 教科・科目・配点
【文・教育人間科学・経済・法・経営・国際政治経済・総合文化政策・社会情報<A方式>】
国語=国語総合〈古文・漢文を除く〉(100点)
地理歴史・公民・数学=世界史B・日本史B・政治経済・「数学I・II・A・B(数列・ベクトル)」から1科目選択(100点)
外国語=「英語I・英語II・リーディング・ライティング」(150点)
(注)文‐日本文・史学の国語は古文・漢文を含み、150点満点。
【理工】
数学=「数学I・II・III・A・B(数列・ベクトル)・C(行列とその応用・式と曲線)」(150点)
理科=物理・化学から1科目選択(各I・II。100点)
外国語=「英語I・英語II・リーディング・ライティング」(150点)
(注)物理・数理学科の理科は物理必須。
【社会情報<B方式>】
数学=「数学I・II・III・A・B(数列・ベクトル)・C(行列とその応用・式と曲線)」(150点)
外国語=「英語I・英語II・リーディング・ライティング」(150点)

 

詳細は、国公立大の入学者選抜要項(7月頃に発表)、私立大の入試ガイド(5月以降に発表)などで、必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2009年6月号)」より転載いたしました。

 

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