入試動向分析

2009年 私立大入試 志願者動向分析
 【2009年5月】

“身の丈”出願で早慶や同志社など難関校を敬遠。
通学範囲の中堅校が志願者増!

前回の特集では、2009年国公立大入試の志願状況を通じて、大学入試のしくみを学んだ。
 今回は、国公立大志望者にとって大切な併願校、私立大志望者にとっては目標校となる、私立大難関校の入試を中心に、人気度の指標となる「志願者動向」と、難易変動の指標となる「実質倍率」を見ていこう。さらに、新設予定の大学・学部など、2010年入試の最新情報もお届けする。

※この記事は『螢雪時代・2009年5月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

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国公立大と同様、センターの難化と景気悪化で1ランクダウンの出願に。
“準難関校”では法政大・立命館大が志願者大幅減、青山学院大が大幅増!

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国公立大志願者数の約3%減とは対照的に、2月入試を中心とした私立大一般入試の志願者数は、2008年より約1%増加した。
   深刻な経済不況とセンター試験の難化が影響し、受験生に「安全志向」と「地元志向」が強まった結果、難関校~準難関校を敬遠し、中堅上位~中堅校の併願を増やす「1ランクダウン」の出願傾向が見られた。学部系統別では社会福祉・国際・理工・農・看護の人気アップと、歯・薬の人気ダウンが目立った。


一般入試の志願者は1%増、
最終的には「前年並み~微減」か

大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移「螢雪時代」編集部では全国の私立大学(576大学)に対して、2009年(以下、09年)一般入試の志願者数を調査した。3月中旬現在で集計した確定志願者数のデータは「全国217大学:約230万人」にのぼる。この集計は2月に行われた各大学の個別試験とセンター試験(以下、セ試)利用入試を主な対象とし、2月下旬~3月の「後期募集(セ試利用も含む)」を一部集計に加えている。

   その結果、私立大一般入試の志願者数は、08年の同時期に比べ、約1%増加したことがわかった。入試方式別に見ると、大学の個別試験、セ試利用入試ともに1%増。国公立大の志願者数が「08年48.8万人→09年47.5万人」と約3%減少したのとは対照的だ。
   ちなみに、09年の4(6)年制大学の受験生数は、「螢雪時代」編集部の推定では08年より約5千人(約1%)減少している。今後発表される大学や「後期募集」の志願者数を集計に加えると、最終的には受験生数の減少に比例し、「前年並み~微減」に落ち着くものとみられる(グラフ1)。


一般入試・セ試利用ともに
2月の3教科入試が基本

私立大の一般入試は国公立大と異なり、日程さえ重複しなければ何校でも受験できる。一般入試の大半は2月に行われるが、2月下旬~3月に「後期募集」を行う大学も数多い。基本は3教科入試だが、最近は2教科型も多く、中には1教科のみの入試方式もある。
   同一学部・学科で、複数の入試方式を行う「複線入試」の中で、代表的なのは「セ試利用入試」で、全私立大の9割近くで行っている。試験科目はセ試(2~3教科)の得点のみで合否判定するケースがほとんど。1~2月の募集が大部分だが、3月にも募集機会を設ける大学が増えている。
   一般入試に先立ち、早ければ7~8月頃から行われるAO(アドミッションオフィス)入試や、11月頃から行われる推薦入試(大きくは、指定校推薦・公募制推薦・自己推薦の3種類)がある。
   私立大全体の入学者の内訳(08年)を見ると、一般入試は全体の半数に満たず(48.6%)、推薦・AO入試で入る人が半数を超える(50.8%)。とはいえ、難関校はあくまで一般入試が主力であることを、肝に銘じておこう。


難関校~準難関校を敬遠、
中堅クラスに人気集中

08年入試では、大都市圏の“準難関校”に人気が集中したが、09年は大きく様変わりした。
   まず、下のグラフ2を見てみよう。駿台予備学校の集計(3月下旬現在)による、文理別・難易ランク別の志願者動向である。ここでいう難易ランクは、同じ大学内でも学部によって異なるが、おおむね、Aランクは難関校や難関医科大、Bランクは準難関校、Cランクは中堅上位校、Dランクは中堅クラスを指す。
   文系はA~C・Eランク、理系はA~Bランクで志願者が減少。一方で、文系ではDランク、理系ではC~Eランクの志願者が増え、中でも文系・理系ともにDランクの志願者増が目立つ。

グラフ2


駿台予備学校の田村明宏課長は「今年の傾向として、難易度差による併願(チャレンジ校→実力相応校→合格確保校)のうち、チャレンジ校をあきらめて合格確保校の併願を厚くし、併願パターンを“十”字から“T”字に変えるケースが増えました (下の「図1」を参照)」と語る。

図1


さらに、全国6地区ごとの全体的な志願動向を見ると(グラフ3)、中国・四国と九州の志願者増が目立ち、北陸・東海も微増。一方で関西が1%減、前記3地区からの流入が弱まった模様だ。ただし、就職事情を考慮したためか、関東・甲信越(2%増)には比較的志願者が集まっている。

グラフ3



“地元志向”と“安全志向”強まる
「無理しない」受験生気質の変化も


   08年の“チャレンジ志向”とは打って変わった慎重出願と、地方受験生の地元志向の強まりには、次の3つの要素が影響している。

   (1)経済不況の深刻化
   昨秋の金融危機に端を発した深刻な不況で、受験生の家庭の経済事情は急速に悪化した。大学の入試担当者によると、初年度納付金(入学金や1年次の学費など)の延納や、奨学金の申請に関する問い合わせが、08年以前より増えたという。
   このため、各大学では秋以降、特に1月に入ってから、緊急の奨学金や学費の減免措置など、経済的負担の軽減策を打ち出した。また、受験料の減額や学内併願(同じ大学の複数学部・学科への出願)した時の割引制度も人気を集めた。
   学費負担だけで精一杯の様子を見て、「生活費を考えると地元を離れられない」「浪人できない」という意識が働き、それぞれ“地元志向”と“安全志向”に結びつく結果となった。一方、大都市圏の中でも、交通費節約などのため、遠距離通学を敬遠する「通学範囲志向」が見られた。

   (2)セ試の平均点ダウン
   「セ試の難化」が“安全志向”に拍車をかけた。特に、国語、英語といった基幹科目の平均点が、08年に比べ大幅ダウンしたことで、受験生が自信を喪失。私立大専願型の受験生もセ試を積極的に受験するため、セ試利用入試だけでなく、一般入試についても弱気な出願傾向に結びついた。浪人が減少(セ試の志願者中、浪人は2%減)したこともあり、難関校や、08年に人気を集めた準難関校の一部が敬遠され、より確実に合格できそうな中堅クラスの併願を増やしたようだ。
   なお、国公立大の後期日程は、募集枠が「05年24,483人→09年20,273人」と激減。セ試の難化もあり、国公立大志望者が後期の出願をあきらめ、地元の主要私立大(愛知大・広島修道大・松山大・西南学院大・福岡大など)の併願を増やした模様。九州地区の志願状況(国公立大5%減、私立大4%増)が如実に物語っている。

   (3)受験生の気質の変化
   進路指導の先生方は、受験生の気質の変化も指摘する。推薦・AO入試が普及し、早期化している影響もあり、受験生に「早く・確実に」合格を決めたいという意識が強い。そのため「無理を重ねても難関校へ」という意欲が薄れ、志望校を自分が実力相応と判断した大学に絞り込む、現実的な「身の丈」出願が増えているという。



文・国際・理工・農・看護が人気アップ、
歯・薬が人気ダウン

次に、学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。

   文系では社会・社会福祉、国際・国際関係・外国語が人気アップし、文・教育・教養も堅調。青山学院大‐教育人間科学、国学院大‐人間開発、関西大‐外国語、関西学院大‐教育といった新設学部が人気を集めたのに加え、国公立大教員養成系の志望者(とくに女子)が、セ試の難化で弱気になり、私立大の併願を増やしたものとみられる。経済・経営・商は1%増、不況では人気が下がりがちな系統だが、「内定取り消し」など大学生の就職状況が急変したのが入試直前期で、志望変更できなかった事情もあろう。

   理系では、理・工、農・水畜産・獣医が人気アップ。理・工の場合、日本人のノーベル賞受賞の効果もあろう。募集人員の多い工を学科別に見ると、生命科学系の人気アップに対し、建築・土木関連が人気ダウン。また、農・水畜産・獣医は、新聞・テレビの報道などで「食の安全」に対する関心が高まった影響もあろう。また、医療・看護の人気も根強く、“資格志向”の復活を感じさせる。

   一方、歯、薬が人気ダウン。特に歯の急落ぶりが目立つ。両系統とも「6年間の学費負担」と、卒業後の「歯科医師余り」「薬剤師余り」への懸念が敬遠材料になったとみられ、定員増を行った医からの志望変更も減ったようだ。薬の場合、女子を中心に理・農・看護に志望者が流出したとみられる。

   医では、深刻な医師不足や偏在の解消へ向け、医学部を有する29大学中27大学で定員増(前年比253人増:9%増)を行った。その大部分が一般入試に充てられたが、志願者は1%増に留まり、やや「広き門」となったようだ。


2009年私立大一般入試 学部系統別志願状況


早・慶はセ試利用が大幅減
千葉工業大は前年比8割増

ここから、大学ごとの志願状況を見ていこう。表1では、志願者数(大学合計:3月中旬現在)の多い順に、上位20大学を示した。大都市圏の難関校が敬遠され、準難関校~中堅上位校では大学によってばらつきがある状況が見てとれる。
   志願者トップは早稲田大だが、前年比で3%減。社会科学は「昼夜開講制→昼間学部」への移行とセ試利用の新規実施で15%増と人気を集めたが、社会科学以外のセ試利用は大幅減(16%減)。慶応義塾大もセ試利用(法・薬)の志願者が半減(48%減)、両校とも自己採点時の合格目標ラインの高さが敬遠されたようだ。
   2位の明治大は志願者2%減だが、3年連続で10万人台を保った。3位の日本大はセ試利用が大幅増(12%増)、国公立大受験者層の確実な併願先として狙われたようだ。
   法政大・立命館大はともに12%減、同志社大も6%減。法政大は前年の志願者8%増の反動とみられ、立命館大・同志社大は北陸・東海、中国・四国からの志願者が減少した模様だ。一方、東洋大・青山学院大はともに16%増。東洋大は国際地域のキャンパス移転(群馬県→東京都心)、青山学院大は学部増設やセ試利用の実施学部増も、志願者大幅増に結びついた模様だ。
   ちなみに、20位までの志願者の合計は、全体(217大学:約230万人)の約56%と過半数を占める。さらに、10位までの合計だけでも全体の約38%に達し、いかに大都市圏の総合大学に人気が集中しているかがわかる。

   表2では、志願者1,000人以上の大学について、増加率が高い順に、やはり上位20大学を示した。このうち7大学で、08年の志願者大幅減の反動がみられ、ここにも、前年の倍率や難易度を必要以上に気にする“安全志向”が見て取れる。
   志願者8割増の千葉工業大をはじめ、玉川大・和光大では学内併願の受験料割引制度を導入・拡充し、名古屋学院大ではセ試利用の受験料を減額した。また、静岡文化芸術大は2010年に「私立→公立」へ移行する予定で、在学生も公立大生となることが人気アップの要因となった模様だ。
   この他にも、学部共通入試(複数の学部・学科が共通問題により同一日に試験を行う)の導入、セ試利用入試の導入、一般・セ試併用型(大学の個別試験の指定科目と、セ試の高得点科目または指定科目を合計し、合否判定)の導入が、人気アップの起爆剤になったようだ。


表1 志願者の多い大学 TOP20
  大学名 2009年
志願者数
2008年
志願者数
志願者
指数
増減 前年順位 主な変更点とTOPICS
1 早稲田大 121,166 125,249 97   1 社会科学が「昼夜開講→昼間部」に移行し、セ試利用を新規実施。人間科学のセ試利用で2次(小論文)を廃止。文・文化構想の試験日を繰り上げた(文化構想2/17→2/12、文2/23→2/17)。
2 明治大 106,261 108,946 98   2 国際日本が早稲田大‐文化構想と日程重複、開設2年目の反動も。国際日本でセ試利用を新規実施。法のセ試利用で4科目・5科目型を新規実施。
3 日本大 90,273 85,942 105 6 薬がセ試利用を新規実施。法のセ試利用に3教科型を追加。法・国際関係でセ試利用の出願締切を、セ試本試験日の「後→前」に繰り上げた。
4 関西大 90,066 93,701 96   5 学部増設(外国語)。学部個別日程の試験機会を、5学部で1→2回、2学部で2→3回に増加。全学部日程(23%減)、一般・セ試併用のセ試中期(12%減)が大幅減。
5 法政大 85,686 97,017 88 3 学部増設(スポーツ健康)したが、前年の倍率アップ(5.0倍→6.5倍)の反動が強かったようだ。セ試利用後期の導入2年目の反動も。
6 中央大 85,090 81,144 105 7 法・経済・商・社会で学部共通入試の「統一入試」を新規実施(教科・科目の選択により、複数学部出願可)。
7 立命館大 84,600 95,597 88 4 生命科学で開設2年目の反動。薬でセ試利用を新規実施。6学部のセ試利用で7科目型を導入、国際関係・映像でセ試利用の4教科型を「5教科型」に変更。
8 近畿大 71,734 71,127 101   9 7学部の前期B日程で「高得点科目重視方式」を導入(高得点科目を自動的に2倍)。法・経済・経営のC方式前期(セ試利用)を4→3科目に負担減。9学部でC方式中期(セ試利用)を新規実施。
9 立教大 70,941 71,382 99   8 全学部日程が9%減、前年の志願者25%増の反動か。
10 東洋大 69,157 59,599 116 10 学部増設(総合情報)。国際地域学部がキャンパス移転(群馬県→東京都心)で人気アップ。加えて、箱根駅伝優勝の効果も?
11 青山学院大 54,859 47,210 116 15 学部増設(教育人間科学)、学科増設(経営‐マーケティング)。総合人間文化・社会情報でセ試利用を新規実施。3年後の文系学部(1~2年次)のキャンパス移転構想(神奈川県相模原市→東京都渋谷区)も人気要因に
12 関西学院大 52,180 50,348 104   14 聖和大を統合し、教育学部を増設。理工・総合政策で各2学科増設、入学定員増(4,425人→5,150人)。「関学独自入試」で、総合政策・社会が英数型<2科目>、社会が数学併用型<一般・セ試併用>を新規実施。
13 慶應義塾大 49,889 53,316 94 11 全学(薬以外)の学費制度を改訂(入学金34万円→20万円、在籍基本料6万円を新設、など)。セ試利用(法・薬の2学部)が志願者半減、前年(49%増)の反動か。
14 東京理科大 49,854 50,801 98   12 C方式(一般・セ試併用で全学部日程)で導入2年目の反動(15%減)。
15 同志社大 47,446 50,218 94 13 学部増設(心理)、定員増(5,257人→5,630人)、神・社会の1・2年次を「京都市郊外→中心部」に移転。ただし、前年の大規模な改革(2学部を増設、4学部で理系全学部日程を新規実施、など)の反動が強かったようだ。
16 福岡大 39,436 37,792 104   17 法・経済・薬で一般・セ試併用型を導入。医(看護)でセ試利用を新規実施。
17 龍谷大 38,856 38,245 102   16 A日程の配点セレクト方式で、文系6学部が「選択科目重視型」を、理工が「理科重視型」を新規実施。
18 専修大 31,304 32,702 96   19 スカラシップ方式(4年間の授業料等を免除、自宅外通学者に奨学金も支給)で、導入2年目の反動(10%減)
19 駒澤大 30,131 32,589 92 18 前年の志願者11%増の反動か。学部共通入試の「全学部統一日程」で複数学部の同時出願可に変更(経済を除く)し、受験料割引制度を導入。
20 京都産業大 29,887 26,239 114 23 学科増設(法‐法政策)。一般前期でスタンダード2科目型を新規実施。ノーベル賞効果も?


(注1)「増減」欄の記号は、△=10%以上の増加、↑=5%以上の増加、↓=5%以上の減少、▼=10%以上の減少を示す。
(注2)3月中旬現在のデータによる。一部、大学によっては未集計の方式・日程がある。


表2 志願者の増加率が高い大学 TOP20
  大学名 2009年
志願者数
2008年
志願者数
志願者指数 主な変更点とTOPICS
1 千葉工業大 17,653 9,877 179 学内併願の受験料割引制度を拡充(同一試験日・方式の場合、2併願以降は無料に)。前年の志願者22%減の反動も
2 姫路獨協大 1,994 1,195 167 前年の志願者21%減の反動
3 藤女子大 1,352 884 153 文、人間生活でセ試利用入試を新規実施
4 長浜バイオ大 1,163 767 152 前年の志願者13%減の反動。セ試利用前期Bを負担減(5→4科目:数学2→1科目)
5 和光大 1,726 1,172 147 学内併願の受験料割引制度と、特待生入試(初年度の学費が無料に)を導入。学科共通入試の「全学試験」を新規実施。一般前期で学外試験場を新設(12会場)
6 大谷大 1,742 1,190 146 学科増設(文-教育・心理)。前年の志願者35%減の反動も
7 大正大 2,670 1,872 143 学科増設(人間-アーバン福祉・臨床心理)。前年の志願者22%減の反動も
8 松山大 7,820 5,518 142 一般入試を2分割し、1月実施の(特)期を新規実施(うち、文系4学部は国・英2科目)
9 愛知医科大 3,797 2,720 140 医で一般入試の募集枠拡大(65人→70人)。医、看護でセ試利用入試を新規実施
9 大阪産業大 4,202 3,006 140 2年連続の大幅増(08年は24%増)
9 神戸女子大 3,442 2,462 140 学科増設(健康福祉-健康スポーツ栄養)
12 川崎医療福祉大 2,590 1,892 137 セ試利用入試の募集回数を増やす(1→2回)
13 日本獣医生命科学大 3,191 2,435 131 獣医、応用生命科学でセ試利用入試を新規実施
14 静岡文化芸術大 2,286 1,797 127 2010年4月から「私立(公設民営)→公立」に移行し、在学生の身分も「公立大」の学生となる予定
15 阪南大 2,938 2,339 126 セ試利用前期で3教科型を新規実施(従来は2科目型のみ)
16 大同大 2,039 1,632 125 「大同工業大」から名称変更。前年の志願者20%減の反動も
17 東北芸術工科大 1,028 834 123 学科増設(デザイン工-企画構想)
17 亜細亜大 9,263 7,555 123 学部共通入試の「T方式(全学統一入試)」を導入。前年の志願者29%減の反動も
17 玉川大 9,535 7,727 123 学部共通入試の「全学統一入試」と、学内併願の受験料割引制度を導入
17 名古屋学院大 2,569 2,089 123 一般前期をオールマーク式に変更(記述式を廃止)。一般・セ試併用の「センタープラス」を新規実施。セ試利用入試の受験料を減額(2万円→1万5千円)

(注1)3月中旬現在のデータによる。志願者数1,000人以上。一部、大学によっては未集計の方式・日程がある。


日本大・関西学院大が志願者増
関西大・甲南大は志願者減

ここまでに紹介した以外の、各地区のおもな大学の志願状況(2月入試が中心)を見てみよう。

(1)首都圏地区
   早稲田大・慶應義塾大ともにセ試利用が大幅減、東京理科大はC方式(一般・セ試併用の学部共通入試)の導入2年目の反動もあり2%減。一方、上智大(2%増)・国際基督教大(4%増)は安定した人気を保った。
   いわゆる“MARCH”では、青山学院大・中央大が志願者増、明治大・立教大(1%減)が微減、法政大が大幅減。中央大は社会科学系4学部の学部共通入試の導入が志願者増の要因となった。また、いわゆる“日東駒専”では、東洋大・日本大(5%増)が増加、駒澤大(8%減)・専修大(4%減)と明暗が分かれた。
   この他、学習院大(8%増)・国学院大(19%増)・東京女子大(21%増)の志願者増、津田塾大(16%減)の志願者減が目立つ。
   一方、中堅校グループでは、獨協大(13%増)・亜細亜大(23%増)・国士舘大(16%増)・成城大(14%増)・玉川大(23%増)・東京経済大(13%増)・東京農業大(12%増)など、軒並み志願者増。
   芝浦工業大(21%増)・東京電機大(8%増)・東京都市大(23%増)など、理工系大学の人気アップも注目される。このうち、東京都市大は総合大学化(東横学園女子短大を統合し、文系2学部を増設。「武蔵工業大」から名称変更)も志願者増の要因となったようだ。

(2)京阪神地区
   いわゆる「関関同立・産近甲龍」では、関西学院大(4%増)・京都産業大(14%増)・龍谷大(2%増)・近畿大(1%増)の志願者増に対し、同志社大・立命館大・関西大(4%減)・甲南大(14%減)は志願者減と明暗が分かれた。
   関西学院大は教育学部増設や学科増設(理工・総合政策で各2学科)、近畿大は9学部でのセ試利用中期の導入、京都産業大は新方式(一般前期でスタンダード2科目型)の導入に加え「ノーベル賞効果」も志願者増の要因とみられる。近畿大の場合、大阪市中心部を横断する鉄道(阪神なんば線)の開通で利便性の向上が見込まれ、神戸方面からの受験者が増加した模様。
   中堅校グループでは、佛教大(10%増)・大阪経済大(9%増)・大阪工業大(21%増)・摂南大(5%増)などの志願者増と、京都女子大(18%減)・神戸学院大(7%減)などの志願者減が目立った。

(3)その他の地区
   志願者が増えたのは、愛知大(9%増)・松山大(42%増)・西南学院大(16%増)・福岡大(4%増)など。愛知大は受験料の減額(3万5千円→2万5千円)、松山大は1月実施の「一般Ⅰ期」の導入、福岡大は一般・セ試併用型の導入(3学部)、西南学院大は一般・セ試併用型の実施学部増(4学部)も、志願者増の要因となった。    一方、志願者が減少したのは、北海学園大(3%減)・東北学院大(4%減)・金沢工業大(25%減)・南山大(2%減)・九州産業大(8%減)など。


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実質倍率が3.7倍→3.9倍にアップ。合格者を絞り込み、
青山学院大・中央大・東京理科大など首都圏が難化!?

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2月入試を中心に、一般入試の受験・合格状況を本誌が集計したところ、受験者2%増に対し合格者2%減で、実質倍率は3.7倍→3.9倍とアップした。入学手続率の良好さを背景に、難関校・中堅校ともに合格者を絞り込むケースがみられ、青山学院大・中央大・東京理科大・龍谷大などが難化した模様。


「志願倍率」に惑わされず、
「実質倍率」に注目しよう

大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移    次に、私立大一般入試の合格状況を見ていこう。中でも倍率の変化は、「難化・易化」を計る物差しとなる重要データだが、一般的に使われる「倍率」には、次の2通りあることに注意したい。

*志願倍率=志願者数÷募集人員=見かけの倍率
*実質倍率=受験者数÷合格者数=実際の倍率


   私立大の場合、合格者の入学手続率を考え、一般入試で募集人員の3~5倍程度、セ試利用入試では5~10倍程度の合格者を出すのが普通だ。

   グラフ5で東京理科大‐理工の例を見てみよう。一般入試(B日程)の志願倍率は18.3倍だが、合格者を募集人員の6.4倍出しているので、実質倍率は2.7倍となる。また、セ試利用入試(A日程)の志願倍率は33.2倍もの高倍率だが、合格者を募集人員の10.6倍も出しているので、実質倍率は3.1倍におさまっている。これなら「とても手が出ない」という倍率ではないだろう。
   見かけの倍率に惑わされることなく、実際の倍率を志望校選びのデータとして活用してほしい。


受験者2%増・合格者2%減
龍谷大・関西大も倍率アップ

「螢雪時代」編集部が私立大一般入試(おもに2月入試)の受験・合格状況について調査したところ、正規合格者まで発表した116大学の集計(3月中旬現在)では、受験者数は2%増えたが、合格者数は2%減少(グラフ6)。実質倍率(以下、倍率)は全体で08年3.7倍→09年3.9倍にアップした。
    不況の影響もあり、確実な合格を目指して受験校を絞る傾向が強まったため、合格者の入学手続率がアップ。定員の大幅超過の回避や、入学者の学力レベル維持などのため、合格者を抑え目に出したようだ。
    私立大が集中する大都市圏の集計をみると、倍率は首都圏で4.2倍→4.4倍にアップしたが、京阪神は4.0倍→3.9倍とわずかにダウンした。
    おもな大学で倍率が変動したケースを紹介する(受験者・合格者ともに判明した大学のみ)。

(1)倍率アップ青山学院大4.8倍→6.0倍、国際基督教大2.7倍→3.5倍、中央大4.7倍→5.3倍、東京理科大3.0倍→3.3倍、東洋大3.5倍→4.3倍、龍谷大3.9倍→4.2倍、関西大5.5倍→5.6倍、関西学院大3.8倍→3.9倍、西南学院大3.2倍→3.4倍、福岡大3.2倍→3.5倍
(2)倍率ダウン明治大5.3倍→4.9倍、早稲田大6.5倍→6.4倍、同志社大3.6倍→3.0倍、近畿大4.5倍→4.3倍、甲南大5.3倍→4.0倍

   青山学院大は「受験者16%増、合格者6%減」、東京理科大は「受験者:増減なし、合格者10%減」、東洋大は「受験者17%増、合格者3%減」、龍谷大は「受験者2%増、合格者6%減」、関西大は「受験者4%減、合格者6%減」と合格者を絞り込み、難化した模様だ。
   また、08年と異なり、難関校のみならず中堅校でも合格者の絞り込み(例:神奈川大が「受験者1%減、合格者11%減」、大阪経済大が「受験者11%増、合格者14%減」、大阪工業大が「受験者22%増、合格者10%減」)がみられた。


ボーダーライン付近は激戦
明暗を分ける1点の重み

受験生たちの中には、ふだん「1点の差」を気に留めない人もいるだろう。しかし、入試本番では、その「1点」が重要な役割を果たす。

   グラフ7に、関西大学法学部の「学部個別日程」の09年入試結果から、合格ライン付近の上下10点幅の人数分布を示した。同日程は受験者3,461人、合格者630人で倍率は5.5倍。合格最低点は450点満点で285点(得点率63.3%)だった。注目すべきは、最低点を含めた「上10点幅」の部分で、ここに合格者全体の約27%が集中している。最低点ぴったりのボーダーライン上にいるのは23人。わずか1点差で不合格になった人も20人いる。合格ライン付近には、同じ得点帯の中に、多くの受験生がひしめき合っているのだ。

   単語のスペルミスや計算間違いなど、たった1つのケアレスミスが命取りになる。ふだんの勉強から解答の見直しを習慣づけよう。

ボーダーライン付近の人数分布

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「近場で・早く・確実に…」推薦・AOとも人気アップ。
京都産業大・龍谷大・近畿大が合格者絞り込みで難化

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一般入試に先立って行われた「公募制推薦」とAO入試。本誌の集計では、公募制推薦は「志願者3%増、合格者1%減」、AO入試は「志願者6%増、合格者8%増」との結果が出た。


推薦は法・理工が難化、医療系が易化
経済系がやや人気ダウン

2009年度 私立大公募制推薦入試/地区別/志願者・合格者動向「螢雪時代」編集部では、私立大の公募制推薦について、09年度入試結果の調査を行ったが、昨年12月末現在の集計データ(168校:志願者数=約15万2千人)では、志願者数は08年度に比べ3%増加した(グラフ8)。急激な経済状況の悪化により、AO入試も含め「近場で・早く・確実に」入学を決めたい意識が受験生に強まったようだ。
   地区ごとの志願状況をみると、首都圏の2%減に対し、京阪神は4%増と対照的。国士舘大(17%増)・東京農業大(17%増)・佛教大(47%増)・大阪経済大(13%増)・桃山学院大(16%増)の志願者増、立教大(15%減)・大阪産業大(15%減)・神戸学院大(19%減)の志願者減が目立った。
   合格者数は全体で1%減ったため、倍率(ここでは志願者数÷合格者数)は08年2.5倍→09年2.6倍とアップした。京阪神の一部大学で合格者を絞り込む傾向がみられ、倍率は地区全体で3.2倍→3.4倍とアップ。京都産業大(志願者6%増・合格者3%減、3.7倍→4.0倍)、龍谷大(志願者7%増・合格者7%減、4.6倍→5.3倍)、近畿大(志願者4%増・合格者12%減、倍率4.7倍→5.5倍)など、倍率面ではやや難化した。
   学部系統別では、法・理工がやや難化、文・国際関係で志願者増が目立った。一方、経済がやや人気ダウン、医療系が易化した模様。


AO入試は志願者6%増、
合格者8%増で安定

09年度にAO入試を実施した私立大は453校で、実施校数は08年度より24大学(6%)増えた。また、実施学部も増加した(神奈川大‐理・工、京都産業大‐法など)。
   昨年12月末現在の集計(111大学:志願者数=約2万2千人)によると、AO入試全体では08年度に比べ志願者が6%増加したが、合格者数も8%増えた。倍率は08年1.9倍→09年1.9倍と前年並みを保ち、全体的に安定していた。
   ただし、慶応義塾大‐法(5.9倍)、成蹊大‐経済(5.3倍)・法(7.8倍)、早稲田大‐政治経済(5.0倍)、金沢医科大‐医(15.7倍)、同志社大‐商(5.0倍)、立命館大‐法(5.1倍)など、高倍率の激戦となるケースもみられた。


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10年入試はここが変わる! 立命館大・関西大・近畿大など京阪神で学部増設が相次ぐ。
6大学でセンター利用を導入

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ここまで、2009年入試の志願状況や合格状況について、どんな要素が入試に影響したかを見てきた。2010年入試でも、大学・学部の新設や、セ試利用入試の導入など、私立大の多様な変化から目が離せない。


順天堂大・椙山女学園大など
医療・看護系の新設が目立つ

ここからは2010(以下、10)年入試について、現時点(3月下旬現在)で公表されている大学・学部等の新増設や、セ試利用入試の新規実施といった注目すべきポイントを紹介する。  くわしくは、5月以降に各大学から発表される「入試ガイド」や案内パンフレットを取り寄せ、必ず確認してほしい。

(1)大学の新設 
   東北文教大、日本保健医療大、戸板女子大、ビジネス・ブレークスルー大、横浜美術大などが開設される予定(いずれも仮称)。このうち、日本保健医療大では医療・看護系の、東北文教大・戸板女子大では教育・保育系の学科を設ける。また、ビジネス・ブレークスルー大では、全講義をインターネットによる通信教育で行う予定だ。

(2)学部・学科の増設・改組
   京阪神の総合大学で、学部の増設が相次ぐ。
   特に注目されるのは、関西大の規模拡大だ。大阪府内の2ヵ所(高槻市と堺市)にキャンパスを新設し、高槻市にリスク管理や防災などを学ぶ「社会安全学部」を、堺市に健康・スポーツ・福祉などを学ぶ「健康文化学部」を新設する予定。
   この他にも、京都産業大が「総合生命科学部」、立命館大が「スポーツ健康科学部」、近畿大が「総合社会学部」、関西学院大が「国際学部」を新設する予定。ここ数年続く「関関同立・産近甲龍」の積極的な規模拡大は、さらにブランド力を高める効果を生むことだろう。
   一方、首都圏では、専修大(「人間科学部」を増設、文学部の学科数を4→7に増やす予定)、東海大(開発工学部を募集停止し、「観光学部」を新設予定)が目立つ程度。
   なお、医療・看護系の学部・学科増設は、ここ数年盛んに行われているが、10年度も上記の新設大学に加え、群馬医療福祉大(群馬社会福祉大を名称変更予定)・順天堂大・椙山女学園大・宝塚造形芸術大などで予定されている。同系統の志願者分散、そして易化につながろう。


日本大‐歯、関西大‐外国語
などでセ試利用を新規実施


(3)セ試利用入試の新規実施
   10年入試からセ試を初めて利用する大学は、昨年12月の文部科学省の発表では、兵庫医科大など6大学(9学部)。また、すでにセ試を利用している大学でも、青山学院大‐教育人間科学、日本大‐歯、関西大‐外国語など8大学8学部が、新たにセ試利用入試を行う。
   これで、セ試を利用する私立大は493大学1,397学部(09年1月現在)となり、大学数では全私立大の9割近く(86%)を占める。
   私立大では「セ試2~3科目、個別試験なし(医・歯・医療系では小論文や面接を課す場合も)」が一般的で、10年度の新規利用大学・学部でもそのパターンが多いが、兵庫医科大‐医では4教科6科目(数・理各2科目)と個別(面接)、久留米大‐医(看護)では4教科4科目を課す。一方、関西大‐外国語のうち、セ試中期はセ試・個別ともに英語1科目で受験できる(前期は3教科3科目、後期は4教科4科目)。
   なお、セ試の新規利用大学・学部は年2回発表される。4月中にも2回目が発表される予定で、セ試を利用する大学・学部はさらに増加する。

(4)その他の変更
●国学院大 文・経済の2学部の1年次を「横浜市郊外→東京都心」にキャンパス移転する(2年次以降は09年以前も東京)。大都市郊外から都心キャンパスへの回帰は、近年の傾向であり(09年は東洋大‐国際地域、同志社大‐神・社会など)、志願者増の要因となろう。
●東京医科大 09年で募集人員増(110人→113人)を行ったが、10年に地域枠推薦(3人:茨城県が対象)を導入する予定。
●早稲田大 (1)スポーツ科学部のセ試利用入試で、小論文方式(2次で小論文を課す)を廃止し、セ試のみで合否判定する方式と、一般・セ試併用方式(一般2科目+セ試1科目)を導入(競技歴方式は存続)。(2)文化構想学部で夜間特別枠を廃止する。(3)商学部で9月入学を廃止する。
●同志社大 (1)政策学部のセ試利用で3科目型を導入する。(2)生命医科学部と、理工学部の2学科で、セ試利用から2次を除外。(3)政策学部と、理工学部の4学科で、AO入試を廃止。
●関西外国語大 学外試験場を同校で初めて設置(名古屋・広島・福岡)する。


第1志望校への早道は
3教科対策とセ試の活用で!

2010年入試では、4(6)年制大学受験生数の増加(約2%増:本誌推定)が見込まれることから、私立大全体では志願者増が予想される。
   ただし、不況の影響が続くことから、(1)生活費の支払能力を考えて“地元志向”が、(2)大学生の就職率低下が予想されるため“資格志向”が、(3)浪人を回避するため“安全志向”が、09年以上に強まるものとみられる。他方、大都市圏では、入学手続率の良好さを背景に、合格者を絞り込む傾向が続くことになろう。
   学部系統別では、経済が人気ダウン、法が人気回復しそうだ。また、理工、農、医療・看護は09年に続き、安定した人気を保つものとみられる。


私立大入試は、選抜方法が多様かつ複雑なので、志望校選びの際に迷うこともあろうが、私立大難関校は「3教科入試」が基本であることを肝に銘じよう。
   科目数の少ない方式は一見魅力的だが、得意科目を生かして試験に臨む受験生が集中するので、それだけ激戦化し、合格ラインも高めになる。早いうちから1~2教科に絞らず、まずは不得意科目を克服し、得意科目で失敗してもカバーできるようにすることが、かえって私立大難関校合格への早道となる。
   さらに、国公立大志望でなくとも、セ試を受験しておくこと。セ試利用入試を上手に活用して、“目標校”へのチャンスを広げよう。
   志望大学・学部で推薦・AO入試を実施していれば、活用するのもいい。ただし、必ず一般入試の準備も並行して進めよう。また、「早く合格したい」というだけで、本来の志望校でない大学を受けるのは考えもの。「ここまでなら入学しても満足」というゆずれない基準を設けよう。



(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2009年5月号)」より転載いたしました。

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