入試動向分析

2009年国公立大入試 志願者動向分析
 【2009年4月】

「不況&センター難化」で“準難関校”が人気ダウン、
“地方の公立大”が激戦化!

「あの大学の、こんな学部に入りたい……」
 大学入試を突破するには、そのしくみを知ることからスタート。今月は、国公立大の2009年入試について、人気度を示す「志願者動向」を見ていこう。さらに、この春から高3生になる方が受験する2010年入試の最新情報もお届けする。「基礎力」をしっかり身につけ、最後まであきらめず、第1志望校に合格するための指針にしていただきたい。

※この記事は『螢雪時代・2009年4月号』の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

センター試験の平均点ダウンと経済不況で“安全志向”と
“地元志向”が強まる。1ランク落とした出願に

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国公立大の志願者数は前年比3%減で、志願倍率は4.9倍→4.8倍とダウンした。世界的な経済不況とセンター試験の平均点ダウンの影響で、“地元志向”と“安全志向”が強まり、1ランク落とした慎重な出願傾向がみられた。


志願者数は3%減、志願倍率
は4.9倍→4.8倍にダウン

大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移文部科学省の発表によると、2009年(以下、09年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は475,020人で、08年に比べ2.6%減(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大・高知工科大は集計に含まれない)。そして、全募集人員(99,893人)に対する倍率(志願倍率)は4.8倍と、08年より0.1ポイントダウン(グラフ(1))した。
   入試日程別に志願状況(下のグラフ(2))と志願倍率の変化(08年→09年)をみると、前期は「1%減:3.3倍→3.2倍」、後期は「4%減: 10.0倍→9.8倍」、公立大中期は「5%減: 13.8倍→13.2倍」といずれも志願者が減り、志願倍率もダウンしている。
   センター試験(以下、セ試)の受験者数は増えた(504,387人→507,621人:0.6%増)のに、国公立大の志願者はなぜ減ったのだろうか?


2次試験の日程は3種類
募集枠はほぼ前期8:後期2

国公立大の一般入試は、まずセ試を受験することから始まる。その後、自己採点を行い、全国集計データなどを参考に、2月上旬までに各大学の2次試験(個別学力検査)に出願する。
   2次試験は原則として、同じ大学・学部の募集人員を前期日程と後期日程に分割し、それぞれの試験を分離して行う「分離分割方式」で行われる。募集人員の比率は、ほぼ「前期8:後期2」で、前期の割合が年々高まっている。また、公立大の一部で「公立大中期日程」を行う。

   2次試験への出願は、試験日程の組み合わせにより、
(1)前期→後期、
(2)前期→公立大中期、
(3)前期→公立大中期→後期、
(4)公立大中期→後期

の4通りの併願パターンがある。ただし、前期日程試験に合格し、入学手続をした人は、後期・公立大中期を受験しても合格者とはならない。このため、第1志望校は前期から選ぶのが基本となる。なお、指定された志願倍率を超えた場合、セ試の得点で2次試験の受験者を絞り込む「2段階選抜」を行う大学・学部もある。
   こうした一般入試に先立って、AO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試が行われる。いずれも、「セ試を課さない」「セ試を課す」の2種類あり、後者が徐々に増えている。


セ試では国語・英語が難化。
“英語ショック”で弱気に

2008年 大学入試センター試験 科目別平均点09年国公立大入試に大きな影響を与え、志願者減の原因にもなった要素が2つある。

(1)センター試験の平均点ダウン
   国公立大の志願動向に最も大きく影響するのは、セ試の平均点のアップ(=易化)・ダウン(=難化)だ。09年のセ試は、08年に比べ平均点がダウンした。科目別にみると(表1)、国語(-6.1点)、英語<筆記>(-10.3点)、英語<リスニング>(-5.5点)と、文系・理系ともに受ける基幹科目が大幅にダウン。特に、リスニングを「確実に得点できる科目」と計算していた受験生には、大きな痛手だったようだ。

   国公立大がセ試で課すのは、文系で「地歴・公民各必須」の6教科7科目、理系で「理科2科目」の5教科7科目(いずれも数学は2科目受験で、900点満点)が標準的だ。09年入試では、7科目以上を課す国公立大は、全学部数の73%、全募集人員の66%を占めた。

   文系・理系に分けて、各科目の平均点と受験者数から、5(6)教科7科目合計の平均点を算出(加重平均)すると、
● 文系標準型=527.9点(20.3点ダウン)
● 理系標準型=531.2点(17.2点ダウン)

と、いずれもダウンしたが、文系の方がより低下している。これは、文系志望者が多く選択する日本史Bの6.4点ダウンと、理系志望者が多く選択する化学Iの5.3点アップの影響が大きい。国語・英語では文系・理系ともにダメージを受けたが、特に女子の文系志望者にとって、精神的な打撃は大きかったようだ。「最近の受験生は打たれ弱い」と進路指導の先生方は口をそろえる。全体が下がったにも関わらず、自分だけが失敗したと思い込みがちなのだ。

(2)世界的な経済不況
   昨秋の金融危機に端を発する世界的な不況は、受験生にも暗い影を落とした。保護者の経済事情の悪化に伴い、「生活費を考えると地元を離れられない」「浪人できない」という意識が働き、それぞれ“地元志向”と“安全志向”に結びついた。さらにセ試の難化もあり、大都市圏や各地区の中心都市にある大学、特に難関校や、08年に人気を集めた“準難関校”を敬遠し、1ランク落とした出願傾向がみられた。

   関西地区の工学部の前期日程を例にとると(下の図(1))、志願者の増減により、難関校(大阪大)から準難関校(神戸大・大阪市立大)へ、さらに中堅クラス(京都工芸繊維大→滋賀県立大・兵庫県立大)へと、順次、志望変更が行われた様子が見て取れる。

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千葉大・金沢大・広島大など、“準難関校”が人気ダウン。
定員増の医学部は3%減、倍率ダウンでやや広き門に

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学部系統別では、経済・歯・薬・教員養成の志願者減、社会福祉・農の志願者増が目立った。定員増の医は志願倍率が大幅ダウン。東京大・大阪大・九州大などの難関校、千葉大・金沢大・広島大などの“準難関校”で志願者が減少する一方で、「地方の公立大」が人気を集めた。


大都市圏から地方へ回帰
関東・甲信越が6%減

全国6地区ごとの全体的な志願動向(グラフ(3))を見ていこう(以下、《前》は前期、《後》は後期、《中》は公立大中期の略)。北海道・東北と中国・四国の2%増に対し、その他の4地区は減少。特に関東・甲信越の6%減が目につく。不況の影響で地元志向が強まり、地方から大都市圏、特に首都圏への受験が減少した模様だ。

   東北地区北部の受験生を例にとると、08年には関東の国立大(茨城大・埼玉大・千葉大など)へ進出する傾向がみられたが、09年では弱まり、地元(弘前大・岩手大・秋田大など)へ回帰した様子が見て取れる(図(2))。
   大都市圏でも地元志向は強まっている。室蘭工業大‐工[昼]《前》、福井大‐工《前》では、名古屋に会場を設置しているが、同会場の志願者が大幅減(室蘭工業大159人→73人、福井大369人→276人)。これまで積極的に地方国公立大へ進出していた東海地区の受験生が、地区内に留まらざるを得ない現実を物語っている。

   各地区のおもな大学に関する分析は、月刊誌「螢雪時代・4月号」の『螢雪ジャーナル』記事をお読みいただきたい。


後期日程廃止の影響―併願先をどこへ求めたか?


経済・歯・薬・教育が人気ダウン
農が人気アップ、理・工も堅調

次に、学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ(4))。経済・経営・商、歯、薬、そして教員養成の人気ダウンが目立つ。
   不況で「内定取り消し」など就職事情が悪化し、「経済系人気」は一気に冷めたようだ。歯・薬では6年間の学費負担が敬遠されたのに加え、後述の「医学部定員増」のため、医からの志望変更が激減したものとみられる。教員養成系は、セ試の得点でほぼ合否が決まるケースが多いため、もともと教員志望の女子が弱気になり、出願をためらった模様だ。

   一方、社会・社会福祉、農・水畜産・獣医が人気アップし、理、工、医療・看護はほぼ前年並み。“ノーベル賞効果”もあるのか、セ試で理工系の必須科目である「物理・化学」の2科目受験者が2.6%増えたことも、「理工系人気」の堅調ぶりを物語っている。

   医は09年に大きく環境が変化した。深刻な医師不足や偏在の解消へ向け、医学部を有する全ての国公立大で定員増を申請し、前年比で420人の定員増(9%増)となった。また、出願資格を地元出身者に限定する「地域枠」や、全国対象だが卒業後の地元勤務を義務付ける「地域医療枠」を設ける(おもに推薦・AO入試だが、一般入試の場合も)医学部も増えた。
   一般入試の募集人員は6%増えたが、志願者は3%減。志願倍率は7.9倍→7.2倍にダウンした。セ試の難化に加え、過酷な勤務状況など、医師を取り巻く環境の厳しさが敬遠材料となった模様。地域枠・地域医療枠も、研修先や勤務先の制約が敬遠されたようだ。なお、福井大・岐阜大・広島大・大分大などの医学科では後期の募集枠を拡大、「前期のみ実施」が増えた同系統の中で、貴重な併願先として人気を集めた。

グラフ2-4


「前年の反動」や入試科目
・募集人員の変更は要注意

09年の大学・学部別の志願状況を見るためには、次の4つのポイントを押さえておこう。

(1)前年度の倍率アップダウンの反動
 受験生が気にするのは、やはり前年度の倍率。高倍率や倍率アップなら敬遠、低倍率や倍率ダウンなら人気を集めがちで、「前年度の反動」や「隔年現象」が起きやすい。

(2)入試科目の変更、科目数の増減
 入試科目数が増えると志願者減、減ると志願者増に結びつく傾向がある(例:大阪大‐医<医>《前》《後》では、セ試の理科を3→2科目に軽減し、志願者は前期1%増・後期23%増)。
 一方、2次が小論文や面接の場合、対策の立てにくさから敬遠され、学科試験のみの大学・学部が人気アップする傾向がある。

(3)募集人員の変更
 後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の定員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。推薦・AOの募集枠拡大で、一般入試の募集人員が減る場合も、志願者が減ることが多い。

(4)地区内の「玉突き」
 志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、新設大学・学部があると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。


“前期集中化”の影響で
“後期離れ”が進む

09年では、一橋大が後期の募集枠を190人→80人(商で廃止)に縮小。東北大‐文、金沢大‐医・薬・創薬科学、京都大‐医(人間健康科学)、九州大‐教育・医(保健)などで後期を廃止したため、後期の募集人員は08年20,755人→09年20,288人と2%減少した。

   注目すべきは、後期志願者の減少率(4%減)が、募集枠の減少率を上回ったことだ。06年から08年にかけて、後期を廃止・縮小する「前期集中化」が進み、後期は全体的に難化する傾向にあった。このため、後期に対しては、前期以上に弱気な出願に走ったようだ。さらに、セ試で予定より得点できなかった受験生が、ランクを下げても入学したい大学が見つからず、最初から後期の出願をあきらめ、私立大の併願を増やすという「後期離れ」もみられた。近年の受験生気質にみられる「粘りのなさ」もあろう。

   なお一橋大では、後期は募集人員減(58%減)に対し、志願者の減少率は37%減に留まり、志願倍率は13.1倍→19.6倍に急上昇、激戦となった。一方、前期は募集人員増(740人→840人:14%増)に対し、志願者がほぼ前年並みのため、志願倍率は4.3倍→3.7倍とダウンした。


準難関校は軒並み志願者減
志願者大幅増の公立大が続出

表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧表にした。従来から人気が高く、募集人員も多い難関校や“準難関校”が連なるが、09年は志願者減が目立つ。

   1位は大阪大。09年は2段階選抜を4学部の前・後期と2学部の前期で廃止した。しかし、08年に東京大・名古屋大からの併願増、大阪外国語大との統合の効果などで、志願者が増加した反動があらわれたようだ。
   2位は東京大。08年から「全科類一括募集」となった後期は、前年の超高倍率(志願倍率34.9倍)に加え、文科類志望者に不利な数学の出題範囲(数III・Cまで)で敬遠された模様。前期では、文III(11%減)の大幅減、文I(22%増)・理III(29%増)の大幅増が目立った。

   08年に人気を集めた“準難関校”グループは、3位の神戸大、6位の千葉大、8位の横浜国立大と、いずれも志願者減。表2以外でも、東京外国語大(11%減)・金沢大(16%減)・大阪市立大(10%減)・広島大(10%減)など、大幅減の大学が目立った。なお、難関校ではノーベル賞効果もあるのか、名古屋大の6%増が目立つ。

   表3では、志願者の増加率が高い順に、上位10大学を示した。表2と異なり、大都市圏以外の公立大が7大学を占める。
   表3以外でも、福井県立大(28%増)・滋賀県立大(24%増)・岡山県立大(28%増)・長崎県立大(14%増)など、公立大の志願者大幅増が目立った。さらに、文部科学省の集計には入っていないが、09年4月から「私立(公設民営)→公立」に移行する高知工科大(別日程で実施)は、2月中旬の時点で志願者が08年の約12倍に膨れ上がった。

   これら「地方の公立大」が人気を集めたのは、地元志向の強まりに加え、(1)地元出身者の場合、入学金が通常より安く設定されるケースが多い、(2)難易度の面で「お手頃感」がある、(3)セ試の科目数が少ないケースが多く、私立型の受験生(セ試の3教科受験者が2%増えた)が流入しやすい、といった要因が考えられる。
   また、志願者が2倍半に増えた(156%増)、1位の公立はこだて未来大を含め、10大学のうち8大学で、前年の志願者大幅減の反動が強く出ている。
   全体的な傾向としては、大都市圏や各地区を代表する難関校・準難関校から、地方の国立大、さらには公立大へ、順次ランクダウンしていった様子が見て取れる。

医学部医学科の志望者はどう動いたか?


志願倍率は「志願者数÷募集人員」
実質倍率は「受験者数÷合格者数」

次は、入試日程ごとに、特に志願倍率が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4~6。同倍率が多数の場合は20学部未満で掲載。医学部医学科や看護学科は1学部として集計)。
   志願倍率とは「志願者数÷募集人員」で割り出した「見かけの倍率」だ。一方、「受験者数÷合格者数」で割り出した実際の倍率を「実質倍率(競争率)」という。
   志願者から入試当日の欠席者を除いたのが「受験者数」。また、合格者数は前・後期では募集人員に近いが、公立大中期では募集人員の2~3倍を出す場合もある。
   前期では、欠席者は志願者の5~7%程度。しかし、後期では前期の入学手続者が欠席し、志願者の50%程度が欠席するため、志願倍率が10倍でも実質倍率は5倍程度に下がる。公立大中期では、志願者の3分の1程度が欠席し、合格者数が募集人員の2~3倍ならば、志願倍率が15倍前後でも、実質倍率は5倍程度に下がる。受験生は「倍率が高すぎて、絶対ムリ!」などと思わず、冷静に判断したい。


高倍率は医学科、低倍率は
医療系と理工系に目立つ

まず、表4・5の「高倍率の学部」から見ていこう。前・後期とも最高倍率の岐阜大‐医(医)をはじめ、前期では地方の医学部医学科が連なり、難関ぶりを物語る。また、セ試の科目数が少ない場合、例えば福井県立大‐看護福祉《前》(2教科2科目)や筑波大‐社会学類《前》(4教科4科目)、島根県立大‐総合政策《前》(3教科3科目)などは、高倍率になりやすい。

   後期では、募集人員が少ないこともあり、前期以上の高倍率になるが、欠席率の高さ(ほぼ50%が欠席)を割り引いて考える必要がある。その中で、岩手県立大‐ソフトウェア情報《後》(新規実施。セ試・2次とも数学1教科で受験可)の「超高倍率」、一橋大‐社会《後》(募集人員を50→10に削減、2次を数学・外国語→面接に軽減)、愛媛県立医療技術大‐保健科学《後》(前年の志願者61%減の反動)の急激な倍率アップが目立つ。

   一方で、表6のように志願倍率が1倍台のケースもある。医療系や理工系の学部が連なる中で、教員養成系(広島大‐教育、金沢大‐学校教育学類)の低倍率が目を引く。信州大‐繊維《前》、三重県立看護大‐看護《前》など、前年の志願者大幅増の反動(08年は信州大‐繊維が15%増、三重県立看護大‐看護が31%増)で倍率ダウンした場合は、2010年にはもとの倍率に戻る可能性が高く、要注意だ。


前期日程の第1段階選抜では
2,630人が不合格に

最後に、前期日程の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。予告した学部(51大学151学部)に対し、実際に行ったのは15大学26学部と2割足らず。第1段階選抜の不合格者は08年3,226人→09年2,630人と減少した。ここにも、慎重な出願傾向があらわれている

   不合格者の多い大学は、東京大(1,164人)、一橋大(608人) 、長崎大(106人)、福島県立医科大(100人)など。また、新設の千葉県立保健医療大でも実施(138人が不合格)された。

   東京大からは、前期の第1段階選抜合格者の最高・最低・平均点が発表された(表7)。得点率に直すと、平均点が85.9%(文I)~88.6%(理III)の範囲、最低点が77.1%(理I)~81.0(文III)の範囲であった。
   全科類で平均点がダウン、文II・文III・理I・理IIで最低点がダウンする中、文I・理IIIの最低点アップ(文I75.2%→78.2%、理III72.8%→78.1%)が注目される。

表4-6


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推薦入試・AO入試ともにやや易化!?
一般入試に先立ち、埼玉県立大など公立大の人気高まる

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一般入試に先立って行われた「セ試を課さない」推薦・AO入試。「螢雪時代」編集部の集計では、推薦は「志願者:前年並み、合格者2%増」、AOは「志願者1%増、合格者6%増」との結果が出た。


推薦は工が難化、法・経済
・教員養成・看護がやや易化

「螢雪時代」では、国公立大のセ試を課さない推薦について、09年入試結果の調査を行った。08年12月22日現在の集計データ(99校:志願者数=約2万2千人)では、志願者数は08年度とほぼ同じであった。国公立大全体の推薦枠は08年17,297人→09年17,926人と4%増えたが、セ試を課さない推薦の実施学部数は342のまま(セ試を課す推薦は135→140)。それが志願状況にも反映されている。

   国立・公立別の志願者数は「国立大2%減、公立大3%増」(グラフ(5))。一般入試に先立ち、すでに公立大人気の兆しが見られた。国立では北海道教育大(11%減)・東京学芸大(10%減)・富山大(9%減)の減少と、香川大(11%増)・高知大(12%増)の増加、公立は埼玉県立大(9%増)・北九州市立大(14%増)の増加が目立つ。

   合格者数は国立大が「前年並み」、公立大が4%増で、倍率(ここでは、志願者数÷合格者数。以下同じ)は、国立大で08年2.6倍→09年2.5倍とややダウン、公立大は08・09年とも2.2倍と、前年並みの水準を保った。
   学部系統別では理工系の志願者増が目立ち、特に工は難化した模様。一方、法・経済は人気ダウン、医療・看護や教員養成系とあわせ、やや易化した模様だ。


AO入試は志願者1%増、
合格者6%増で倍率ダウン

2009年国公立大「セ試を課さない推薦入試」結果AO入試は国公立大の40%(62大学)で実施。09年度は弘前大など4大学で導入し、募集枠も2,870人→3,080人と、08年度に比べて7%増えた。そのうち、セ試を課さないAO入試は、08年12月22日現在の集計(38大学:志願者数=約6千人)によると、08年度に比べ「志願者1%増、合格者6%増」で、倍率は4.2倍→4.0倍とダウン。全体としてはやや易化した模様だ。

 文系では東北大‐文(6.6倍)、山口大‐人文(7.6倍)・経済(5.1倍)、岩手県立大‐社会福祉(6.3倍)など、理系では東京工業大‐理(27.1倍)、鳥取大‐農(12.2倍)、九州大‐薬(6.3倍)、山口県立大‐看護栄養(14.4倍)など、高倍率の激戦となるケースもみられた。

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10年入試の変更点を速報!
目立った日程や科目の変更は少なく、落ち着いた入試に。
セ試を課す推薦・AOが増加

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新高3生が受験する2010年(以下、10年)入試では、不況の影響は09年よりも深刻になり、国公立大志向はさらに強まりそうだ。ただし、一般入試では09年ほど大きな変動要因はみられず、落ち着いた入試環境になる。一方で、セ試を課す推薦・AO入試の導入が目立つ


大分大‐医(医)で後期廃止
岐阜大‐工で後期を倍増

ここからは、キミが受験する10年国公立大入試について、その特徴と、志願動向に影響しそうなポイントを見ていこう。

(1)「前期集中化」は落ち着く
   06年から09年にかけ、おもに難関校で大規模な「前期集中化」(後期の廃止や募集枠縮小)が相次いだが、10年入試では医学科や医療系学科、教員養成系の一部課程・専攻などで行われる程度。「前期集中化」は落ち着いた模様だ。
   後期を廃止するのは、広島大‐医(保健)、大分大‐医(医)、札幌医科大‐保健医療、和歌山県立医科大‐医や、信州大‐工の7学科中4学科など。近隣の同系統学部の後期に影響を及ぼしそうだ。一方、岐阜大‐工では後期の募集枠を倍増(57人→126人)、セ試の負担減(7→5科目)もあり、志願者急増は必至だ。

(2)セ試を課す推薦・AOが増える
   10年入試では、セ試を課す推薦・AOを導入・拡大し、セ試を課さない推薦・AOを廃止・縮小するケースが目立つ。
   10年度では、東京農工大‐農、島根大‐教育、大分大‐医(医)などでセ試を課すAO入試を、信州大‐工、香川大‐工、札幌医科大‐保健医療などでセ試を課す推薦を導入。九州大‐法でセ試を課さないAOを廃止する。
   また、推薦入試では新潟大-人文、富山大-人間発達科学(発達教育)、県立広島大-人間文化(健康科学)など、AO入試では東北大‐法や広島大‐教育(一部のコース)などが、「セ試を課さない→課す」に変更する。

   なお、09年の医学科の定員増では、一般入試の募集人員に上乗せするケースが目立ったが、10年度はその分を「地域枠・地域医療枠」推薦・AOに振り向けるケースが増えそうだ。


京都府立医科大-医(医)が
理科3→2科目に軽減


(3)入試科目の増減
   一般入試の科目変更は、09年に比べて学科レベルの小規模なものが多いが、理系学部で科目数を減らすケースが目につく。岐阜大‐工《後》でセ試を7→5科目に、香川大‐工《前》で2次を2→1科目に軽減し、福井県立大では理系3学部の後期で小論文を除外する。この場合、志願者が急増することもあるので要注意だ。
   一方、医学部では負担増が目立つ。長崎大‐医(医)《前》で、理科をセ試で2→3科目、2次で1→2科目に増やす。熊本大‐医(医)《前》も2次の理科を1→2科目に増やし、山梨大‐医(医)《後》、大分大‐医(医)《前》で新たに面接を課す。その中で、京都府立医科大‐医(医)《前》の負担減(セ試の理科3→2科目)が注目される。

(4)大学統合・新設など
   10年は、新見公立短大が母体となり「新見公立大」が新設される予定。また、私立(公設民営)の静岡文化芸術大が公立に移管される予定だ。この他、大阪市立大で文系4学部の2部(夜間部)の募集を停止する。


「セ試7科目」に耐える基礎学力と
後期までの粘りで国公立大合格を!

新・高3生が受けることになる10年入試では、不況の影響がより深刻化し、“国公立大志向”と“安全志向”が09年以上に強まりそうだ。
   「より確実に合格したい」との思いから、入試結果のデータや入試科目の増減といった情報が気になるはず。ただし、あまり情報に振り回されると、かえって激戦に巻き込まれたり、本来の夢や志とかけ離れた“不本意入学”をしたりすることになりかねない。
   少なくとも第1志望校は「自分が将来やりたいこと」を基準に決めよう。幸い、一般入試では09年ほど大きな変化(日程や科目など)はみられないので、落ち着いて対策を立てることができる。「セ試=7科目、2次=2~3科目」に耐えられる基礎学力をしっかり身に付け、後期の終了まであきらめないこと。それが、国公立大への最も確実な“王道”だ。

(文責/小林)
この記事は「螢雪時代(2009年4月号)」より転載いたしました。

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