入試動向分析

2018年 国公立大入試 志願者動向分析【2018年4月】

2018(平成30)年度

国立大の「文系縮小」と公立の新増設が影響、「国立→公立・私立」へ流れる?!

 

 2018年国公立大入試について、各大学・学部や学部系統などの人気度を示す「志願者動向」を分析する。さらに、これから目指す2019年入試の最新情報も紹介する。

 

※この記事は「螢雪時代(2018年4月号)」の特集より転載。(一部、webでの掲載にあたり、加筆・変更を施した)

 

 

センター試験はやや平均点ダウン、文系・理系ともに安全志向強まる。後期縮小で大都市圏に「国立離れ」も


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 国公立大の志願者数は1%減、志願倍率は4.7倍→4.6倍とややダウンした。国立大2%減に対し公立大1%増、後期の志願者減、公立大中期の増加が目立った。センター試験の平均点ダウンは小幅だったが、文系・理系とも安全志向が強まり、国立大の「文系縮小」の改組も影響、「国立→公立・私立」に流れた模様だ。

 


志願者数は1%減。国立2%減に対し、新設の多い公立は1%増

 

 文部科学省の発表によると、2018年(以下、18年)の国公立大一般選抜の確定志願者数は465,708人で、17年に比べ1.1%減少(独自日程で入試を行う国際教養大・新潟県立大・公立小松大は集計に含まれない)。そして、全募集人員(100,547人)に対する倍率(志願倍率)は17年4.7倍→18年4.6倍とややダウンした(グラフ1)。4(6)年制大学の受験生数は前年とほぼ同じ(旺文社推定)、センター試験(以下、セ試)の志願者数が増えた(1.2%増)にもかかわらず、国公立大の志願者数は微減。一方で、私立大一般入試の延べ志願者数は、約7%も増えている(2月中旬現在)。
 入試日程別に志願状況(グラフ2)と志願倍率の変化(17年→18年)をみると、前期は「0.4%減:3.2倍→3.2倍」、後期は「3.2%減:9.9倍→9.7倍」、公立大中期は「7.1%増:14.0倍→13.5倍」となった。いずれも、募集人員の増減(前期0.2%増、後期1.1%減、公立大中期10.9%増)をやや下回る結果となっている。
 また、国立・公立を日程別に比べると、前期は「国立0.9%減、公立1.3%増」、後期は「国立2.9%減、公立4.3%減」と、前期は国立から公立へ流れる一方、後期は受験自体をあきらめた様子が見て取れる。
 17年から「私立→公立」に移行した長野大が、前・中期で入試を実施した初年度であり、18年新設の長野県立大も開設初年度から前・中期で実施した。その分が加わった公立大の増加は当然としても、国公私立の志願状況は、昨年とほぼ同じ傾向が再現されたといえる。

 

グラフ1.大学受験生数と国公立大志願者数・志願倍率等の推移、表1.大学入試センター試験(本試験)科目別平均点

 
 

千葉大・東京外国語大・横浜国立大などで志願者減

 

 18年国公立大入試に影響を与えた要素は4つある。国立大の「文系・教員養成系縮小」と公立大の新増設、推薦・AO枠拡大に伴う一般枠縮小、セ試の2年連続の難化、そして私立大志向の強まりで、昨年とほぼ変わらない。
 
(1)国立大「文系・教員養成系縮小」と公立の新増設
 18年は、公立大で大規模な改組や新増設が相次いだ。前述の長野県立大に加え、新設の公立小松大が別日程で実施、5大学で学部増設。学内で唯一、後期を実施した横浜市立大‐データサイエンス、中期のみ実施の山陽小野田市立山口東京理科大‐薬は、周囲に影響を与えた。
 一方、国立大は前年ほどではないが、文系・教員養成系の縮小と文理融合型学部の増設(3大学で増設)という傾向が続いている。
 好調な就職事情を受け、文系人気が高まっているにもかかわらず、文系の募集枠が縮小される「ねじれ現象」も変わらず、国立大文系志望者は代わりとなる受け皿を求めて、公立大へ志望変更、さらに公立大の収容力の小ささから、定員増が相次いだ大都市圏私立大の文系学部への併願を増やしたものと見られる。
 
(2)推薦・AO入試の拡大
 東北大・一橋大など、一般入試の募集枠を縮小し、推薦・AO入試の導入や募集枠拡大を行う大学が目立ち、後期の志願者減に影響した。一橋大‐法・社会の後期募集停止で、後期の選択肢が限られる中、首都圏では併願が増えるはずの千葉大・東京外国語大・横浜国立大といった準難関国立大が減少。後期の出願をあきらめ、難関私立大への併願を増やした模様だ。
 
(3)センター試験の2年連続の難化
 18年セ試の結果を科目別に見ると(表1)、化学発展、地理B、倫理、「倫理、政治・経済」で平均点がアップしたが、英語リスニング、生物基礎・発展、政治・経済でダウン(ここでは、セ試の理科の基礎を付さない科目を「理科発展」とする)。理系が主に選択する科目がアップ、文系が主に選択する科目がダウンした。また、小幅なダウンながら意外に影響したのが、国語の2年連続の難化で、文理双方にボディブローのように効いたようだ。
 国公立大受験のセ試科目の標準となる、文系・理系に共通の5教科6科目(地歴・公民合わせて1科目として100点、理科1科目として100点の800点満点)の加重平均点(科目別平均点と受験者数から算出。ただし、理科基礎は2科目受験者の加重平均点で、追試を含む)を算出すると463.1点(得点率57.9%)で、前年に比べ2.1点ダウンとなった。
 理系志望者は得点源の科目(化学発展)で稼げたものの、それでもあまり得点が伸びず、基本的には“初志貫徹”ながら、文系・理系とも、やや“安全志向”の出願となったようだ。前述の通り、ボーダー付近の学力層が「国立→公立」へ出願先を変更するか、募集人員が少ない後期では、出願自体をあきらめたものと見られる。
 
(4)私立大志向の強まり
 主に大都市圏で、私立大志向の方が強まった模様。それは、セ試の受験者の構成にも表れている。国公立大受験者の標準パターンである「7~8科目」受験者が0.2%減少したのに対し、私立専願、または公立まで視野に入れた受験者のパターンである「3~4科目」受験者が3.8%増えた。セ試の受験者増(1.2%増)は、実は私立大志望者層によるものだったのだ。

 

2017年国公立大入試日程別志願状況他


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文理ともに志願者減で「文低理低」に。東北大・大阪大が増加、一橋大が減少。首都圏の準難関校が人気ダウン


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 学部系統別では、社会福祉・薬の増加に対し、法・文・理・医・教員養成が減少。国立大の「文系縮小」の影響も相俟って、全体に「文低理低」となった。難関~準難関校では、東北大・大阪大の増加、首都圏準難関校の減少が目立った。文系は定員減、理系は安全志向が影響し、極端な前年の反動がみられた。

 
 

大都市圏を擁する関東・甲信越、関西で志願者減が目立つ

 

 全国6地区の志願動向(グラフ3)を見ていこう。北海道・東北(4%増)が増加、北陸・東海と九州は前年並み、中国・四国も微減だったのに対し、関東・甲信越(3%減)、関西(4%減)と、大都市圏を擁する地区の減少が目立った。
 各地区とも地元志向が強いので、基本的に地区内で出願が完結するのだが、周囲の地区へ影響が及ぶケースもある。
 関東・甲信越地区では、長野大の前・中期への新規参入、やはり前・中期で実施した新設の長野県立大を入れた数値であり、特に首都圏における減少が顕著だ。これは、一橋大の後期縮小の影響が大きいが、17年の大阪大(後期募集停止で大幅減)と違うのは、その受け皿となるべき準難関校も、千葉大・横浜国立大・首都大学東京など減少していることだ。後期の選択肢が限られる中、最初から後期の出願をあきらめ、私立大難関校(中央大・明治大・早稲田大など)の併願を増やしたものと見られる。
 また、東北地区の受験生が、安全志向から、関東地区の難関~準難関校への進出を控えたことも考えられる。東北大が志願者を伸ばしたのは、その証左といえる。
 関西地区も含め、私立大(2月中旬時点で、関東・甲信越=7%増、関西=9%増)とは対照的な志願状況であり、大都市圏における私立大志向の強まりが見て取れる。
 各地区のおもな大学に関する分析は、『螢雪時代』4月号掲載の「螢雪ジャーナル」をご覧いただきたい。

 
 

社会・薬が増加、文・理・医・農・教員養成が減少、法が大幅減

 

 次に学部系統別の志願状況を見てみよう(グラフ4)。文系では社会・社会福祉、国際・国際関係、理系では薬、家政・生活科学が人気アップしたが、他の系統は文系・理系ともに「微減~減少」と低調。国立大の「文系縮小」も相俟って、全体に「文低理低」状態といえる。法は混迷・低迷する法科大学院の状況が大幅減につながり、農ではセ試の生物(発展)の難化も影響した模様。また、教員養成系も昨年と同様、定員減の影響と教職自体の不人気から減少した。
 医の減少は、難化傾向が敬遠されたのに加え、医師不足対策で08年~09年に認められた臨時定員増の期限が17年だったため、大幅な定員減の可能性があったことも要因であろう。国公立42大学の医学部から期限延長が再申請されたため、ほぼ前年に近い定員に落ち着いたが、募集要項の段階では減らされた募集人員が記載されていたので、二の足を踏んだ志望者もいたと思われる。一方、薬の増加は、新設の山陽小野田市立山口東京理科大‐薬が「中期のみ募集」で多くの志願者を集めたことによる。医療・看護系では、公立単科大が多いこともあり、前年の極端な反動が見られた。

 

大阪大の後期募集停止の影響 併願先をどこに求めたか?

 
 

「前年の反動」や入試科目・募集人員の変更は要注意

 

 大学・学部別の18年の志願状況を見るためには、次の4つのポイントを押さえておこう。
 
①前年度の倍率アップダウンの反動
 受験生は前年の倍率を気にする。高倍率や倍率アップなら敬遠、低倍率や倍率ダウンなら人気を集めるため、前年の反動、さらには1年おきに増減を繰り返す“隔年現象”が起きやすい。
 
②入試科目の変更、科目数の増減
 入試科目数の増減、新方式実施、2段階選抜の廃止(導入)や予告倍率緩和(引き締め)など、負担の変化が志願者増減に結びつく傾向がある。
 
③学部・学科の増設・廃止、募集人員の変更
 後期から前期へ(その逆も)募集人員を移したり、学部全体の募集人員が増減したりした大学・学部では、募集人員が増えた(減った)日程は志願者も増える(減る)ことが多い。特に18年は国立大で定員の増減、公立大で学部・学科の増設が多く、最大級の変動要因といえる。
 
④他大学への「玉突き」
 志願者が急激に増えた(減った)大学・学部や、後期日程の廃止・縮小、新設大学・学部などがあると、近隣の大学や学内の他学部で、玉突きのように変動が起きるケースがある。
 具体例として、埼玉大‐経済、神戸大‐経済、香川大‐創造工のケースを紹介する(以下、【前】=前期日程、【後】=後期日程の略)。香川大‐創造工は図1も参照してほしい。

 

志願者の多い国公立大学、志願者の増加率が高い国公立大学

 

例1:埼玉大‐経済[昼]【後】
 経済[昼]【後】は募集人員増(40人→50人。→③)に加え、後期を募集停止した一橋大‐法【前】からの併願増(→④)もあり、志願者86%増。千葉大‐法政経【後】(60%減)の大幅減に結びついた(→④)。千葉大‐法政経【後】は、前年の11%減の反動(→①)も影響したと見られる
 
例2:神戸大‐経済【前】
 経済【前】は、募集人員増(200人→220人。→③)に加え、個別試験(以下、2次)の科目数により3方式(総合選抜、数学選抜、英数選抜)に複線化したため(→②)、志願者は5%増。大阪市立大‐経済【前】の大幅減(28%減)の要因の一つになった(→④)。
 
例3:香川大‐創造工【前】
 学部名称の変更(工→創造工)、学科の統合(4学科→1学科7コース)、定員増(260人→330人)を行った。これに伴い、前期は募集人員増(156人→184人。→③)。前年の志願者12%減の反動もあり(→①)、志願者は54%増。徳島大‐理工[昼]【前】(20%減)、高知大‐理工【前】(69%減)、高知工科大‐システム工学群【前】(24%減)などの減少に結びついた(→④)。徳島大‐理工[昼]【前】、高知大‐理工【前】は、前年の大幅増の反動もあった模様だ(→①)。

 
 

志願者数最多は3年連続で千葉大。金沢大「後期一括入試」が人気集める

 

 表2では、志願者数の多い順に、上位10大学を一覧にした。国公立の難関~準難関校が連なるが、難関校よりも“準難関校”で安全志向がより強く反映され、志願者減が目立つ。
【難関校】17年は推薦・AO「世界適塾入試」の導入で後期を募集停止し、志願者3割減となった大阪大は、18年は経済・工・医(保健)の募集人員減にもかかわらず前年比6%増。推薦・AOの合格者が募集枠をかなり割り込み、前期の募集人員に回されたことから、倍率緩和を期待して出願した結果とみられる。その分、京都大は2%減、前期は前年並みだったが、法【後】が前年の反動から大幅減となった。
 東京大は全体としては堅調に志願者を集めたが、その中では文Ⅱの7%増と、面接を追加した理Ⅲは15%減と、対照的な結果となった。
 この他、表2以外の大学も含めると、難関校では北海道大(2%増)・東北大(9%増)が増加、東京工業大・名古屋大・神戸大がほぼ増減なし、東京医科歯科大(8%減)・一橋大(8%減)・九州大(3%減)が減少した。
 東北大は世界最高水準の研究を行う「指定国立大学」に選ばれた効果に加え、経済・理の後期が難関国立大の数少ない併願先であることも大幅増の要因といえる。一方、一橋大は法・社会で推薦入試導入に伴い、後期を募集停止したため。首都圏の準難関校の後期に併願先を求めるとみられたが、実際の受け皿は私立大難関校が多かった模様だ。
【準難関校】受験生の安全志向は、難関校よりむしろ“準難関校”でみられた。
 志願者数が最も多い国公立大は、3年連続で千葉大だが前年比8%減。工・薬・園芸の後期縮小に加え、前年の反動が強く出た。また、横浜国立大も前年比3%減、教育【前】の推薦枠拡大に伴う募集人員減と2次負担増(面接を追加)の影響が大きかった。
 その他の準難関校も、筑波大(13%減)・東京外国語大(12%減)・熊本大(12%減)・大阪市立大(13%減)が大幅に減少するなど、全体的に志願者減が目立つ。準難関校の後期は、規模の点からもはや難関校の確実な併願先とはなりえない、との判断から、併願先を私立大難関校へ求めたものと見られる。
 一方、志願者が増加したケースは、東京農工大(12%増)・金沢大(17%増)など少数派だ。金沢大は、後期の募集人員増(235人→290人)に加え、学類別募集の他に「後期一括入試(文系・理系)」を導入。同入試の入学者は、2年次から各学類に配属されるため、専門を決めかねる受験生の人気を集めたと見られる。
【国公立中堅校】各地区の国公立大中堅校も、「文系・教員養成系」縮小を行った大学だけでなく、全体に志願者減の大学が多く、安全志向から前年の極端な反動が随所に見られた。特に変動が大きかった主な大学は次の通り。
 
[1] 国立大
【志願者増】秋田大67%増、茨城大10%増、福井大11%増、岐阜大18%増、九州工業大13%増、鹿児島大23%増
【志願者減】東京海洋大21%減、東京学芸大13%減、新潟大12%減、山梨大11%減、静岡大18%減、愛知教育大13%減、三重大14%減、大阪教育大10%減、山口大10%減、徳島大20%減、香川大16%減、高知大32%減、大分大20%減
 
[2] 公立大
【志願者増】釧路公立大21%増、宮城大13%増、横浜市立大14%増、富山県立大43%増、公立鳥取環境大36%増、島根県立大33%増、岡山県立大18%増、熊本県立大16%増
【志願者減】秋田県立大17%減、都留文科大24%減、山梨県立大13%減、静岡県立大25%減、愛知県立大11%減、滋賀県立大12%減、神戸市外国語大21%減、下関市立大11%減、高知県立大37%減、福岡女子大13%減
 
 表3では、志願者の増加率が高い順に上位10大学を示した。表2と異なり、単科大が7大学を、公立が8大学を占める。1位の山陽小野田市立山口東京理科大は志願者が2倍超に急増。薬学部を新設、しかも中期のみで募集するため、中国・四国~九州の薬学部志望者の貴重な併願先として人気を集めた。
 この他、7大学で前年の志願者大幅減の反動が出ている(ちなみに、昨年は志願者が2倍超に増え、1位だった神戸市看護大は32%減)。秋田大では理工の前期の入試複線化(セ試・個別の配点比率により2方式に分割)、埼玉県立大では筑波大‐医療科学類の後期募集停止も、志願者大幅増に影響したものと見られる。

 

前期日程で高倍率の学部など、後期日程・公立大子中期日程で高倍率の学部等

 
 

前・中期の志願倍率トップは、山陽小野田市立山口東京理科大‐工

 

 次は、各入試日程で特に志願倍率(志願者数÷募集人員)が高い(低い)学部を各20学部紹介する(表4~6。同倍率が多数の場合は20を超えて掲載。医学部医学科や看護学科などは1学部として扱う)。なお、「受験者数÷合格者数」で割り出す、実際の倍率を「実質倍率(または競争率)」という。
 まず、表4・5の「高倍率の学部等」から見ていこう。前期では、医学部医学科が連なり、「医学部人気」が落ち着いたとはいえ、難関ぶりは変わらない。その中で、新設の横浜市立大‐データサイエンスが、人気分野であることから高倍率となったことが注目される。
 後期・中期は募集人員が少なく、実施学部・学科も減っているので、最高倍率(38.5倍)の山陽小野田市立山口東京理科大‐工【中】など、前期以上の「超高倍率」になるが、欠席率の高さ(例えば後期の場合、前期の入学手続者が欠席するので、志願者の約50%が欠席)を割り引いて考える必要がある。公立大は中期に加え、後期が国立大に比べ多く残っていることから、併願先たり得る私立大が限られる大都市圏以外の地域では、志願者が集中しがちだ。
 一方で、表6のように前期で志願倍率が1倍台のケースもある。例年、医療・看護系の学部・学科が比較的多いのだが、18年では新潟大‐農【前】をはじめ、理・工・農学系統も多いことが特徴だ。また、長崎大‐多文化社会【前】の場合は、前年の大幅増(39%増)の反動によるもので、19年は再び揺れ戻す可能性がある。

 

前期日程で高倍率の学部など、後期日程・公立大子中期日程で高倍率の学部等

 
 

前期の第1段階選抜の不合格者は3,070人とほぼ前年並み

 

 最後に、前期日程の2段階選抜の実施状況を紹介しよう。予告した学部(59大学152学部等)に対し、実際に行ったのは21大学40学部等と、学部数は前年と変わらず、第1段階選抜の不合格者も「17年3,073人→18年3,070人」とほぼ同じだった。難関校志望者以外は、安全志向で無理せず出願した結果といえそうだ。また、新規予告した浜松医科大・山口大の医学部医学科が敬遠されたことも要因といえる。
 東京大では全6科類で第1段階選抜を行い、不合格者が増加(826人→962人:16%増)。次に多かったのが首都大学東京で、志願者減ながら不合格者が増加(387人→428人:11%増)した。一方、京都大では不合格者が6割も減少した(201人→81人)。この他、第1段階での不合格者が多かった大学は、一橋大(410人)、長崎大(159人)、大分大(146人)など。
 また予告大学のうち、17年に第1段階選抜を実施しなかった秋田大・金沢大・高知大が不合格者を出し、17年は不合格者を出した筑波大・群馬大・福井大・信州大・熊本大・福島県立医科大・和歌山県立医科大は実施しなかった。


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19年入試の変更点を速報! 神戸大など推薦・AOの導入が続く。東京工業大が「学院別」募集に移行!


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 19年入試は、ここ数年と同じく、神戸大の「『志』特別入試」をはじめとして、難関校を中心に推薦・AO入試を導入・拡充する動きが目立つ。国立大の理工系学部における学科の統合・改組や大括り募集の導入、英語外部検定利用の導入の加速、「面接重視」の入試科目変更なども注目される。


 
 

2次で面接の追加が目立つ。理工系で学科の統合が相次ぐ

 

ここからは19年国公立大入試の特徴と、志願動向に影響しそうな変更点を見ていこう。
  ここ数年と同様、20年度以降に始まる「入試改革」(論理的思考力・表現力の重視、多面的・総合的な評価の重視、英語外部検定利用の促進、など)を先取りする変更が多い。具体的には、推薦・AOの導入・拡充、一般入試での面接や英語外部検定利用の導入である。
 学部増設・改組は、ここ数年では比較的規模が小さい(新設学部・学科等の名称は仮称)。
 
(1)推薦・AO入試の導入・廃止
 16年の東京大・京都大に始まった、難関国立大における推薦・AO入試の導入・拡充。19年は神戸大で、セ試を課さないAOである「『志』特別入試」を新規実施する。文・国際人間科学・法・医(保健)・工・農・海事科学の7学部で行われ(募集は合計48人)、模擬講義やレポート、小論文、面接などで選抜する。
【推薦入試】東京外国語大‐国際社会でセ試を課さない推薦を、大阪市立大‐医(医)でセ試を課す推薦(地域医療枠)を新規実施。一方、熊本大‐工でセ試を課さない推薦を廃止する。また、浜松医科大‐医(看護)、香川大‐農で「セ試を課さない→課す」に移行。さらに、愛媛大‐理ではセ試を課すAOを推薦に移行する。
【AO入試】東北大‐文・理、千葉大‐法政経、徳島大‐医(医)、九州工業大‐工・情報工、大阪市立大‐医(医)でセ試を課すAOを、秋田大‐国際資源、東北大‐法、福島大‐食農学類(新設予定)、香川大‐農でセ試を課さないAOを導入。また、佐賀大‐理工・農ではいずれも導入する。一方、筑波大‐社会工学類、福井大‐工では、セ試を課さないAOを廃止する。
 
(2)新設・改組、日程・募集人員の変更
18年の首都大学東京のような全学的な改組は見られないが、国立大の理系学部で、複数の学科を1学科、またはより少数の学科にまとめ、コース制を採用して、入学後に専攻するコースを決定する動きが目立つ。室蘭工業大で学部改組(工→理工:4→2学科)する他、宇都宮大‐工(4→1学科)、東京農工大‐工(8→6学科)、愛媛大‐理(5→1学科)・工(6→1学科)、佐賀大‐理工(7→1学科)・農(3→1学科)などで、学科を統合・再編する。
 学部等の増設(名称は仮称)は、国立で福島大‐食農学類、東京外国語大‐国際日本が、公立では富山県立大‐看護が予定されている。
 また、横浜市立大では国際総合科学部を、国際教養・国際商・理の3学部に分割する予定(それぞれ、現学部の国際教養学系と国際都市学系、経営科学系、理学系を移行)。兵庫県立大‐経済・経営も「社会情報科学・国際商経」の2学部に改組される予定だ。
 一般入試の日程変更では、宇都宮大‐教育、香川大‐農、熊本大‐教育、名古屋市立大‐看護の後期募集停止、公立諏訪東京理科大の前期・中期の新規実施などが注目される。
 募集人員の配分では、宇都宮大‐工、愛媛大‐理・工の「前期増加、後期削減」と、推薦枠拡大に伴う岐阜大‐教育【後】の大幅減が目立つ。

 

前期日程で高倍率の学部など、後期日程・公立大子中期日程で高倍率の学部等

 
(3)入試科目の増減など
 入試科目の変更では、2次に小論文・面接などを追加するケースが目立つ。
 宇都宮大‐教育【前】、上越教育大【前】で面接を追加。帯広畜産大‐畜産【後】で小論文・面接を追加。兵庫教育大【前】で「実技→面接」に、和歌山大‐経済【前】で「数学・英語→総合問題」に、同‐経済【後】・観光【後】で「小論文→総合問題」に変更する。
 募集単位の変更では、東京工業大が「類別募集→学院別募集」に移行。ただし前期は全学一括募集で、希望順に3学院を選び、入試成績順に所属が決まる。また、山形大‐理【前】が「分野別募集→学部一括募集」となる。
 
(4)英語外部検定利用の拡大
 推薦・AOでも一般入試でも、英語外部検定の等級・スコアを利用する傾向が強まっている(出願資格、セ試・2次の英語の得点換算、など)。例えば、広島大は全学の前・後期とセ試を課す推薦・AOのセ試で、英語外部検定を利用できるようになる。また、東京外国語大‐国際社会で導入する推薦入試も、英語外部検定を利用する。
 
 以上、2月下旬までに判明した、2019年国公立大入試の主な変更点の一部を紹介した。詳細は次号(螢雪時代5月号)の特別付録『速報!国公立大学入試科目・配点一覧』を見てほしい。さらに今後、各大学が6~7月に発表する「選抜要項」(入試の概略を紹介した冊子)、10~12月に発表する「募集要項(出願書類を備えた正式な入試要項)」などで必ず確認してほしい。

 

(文責/小林)

この記事は「螢雪時代(2018年4月号)」より転載いたしました。


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